伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む元市議会議員。1960年生まれ。最近は遠野和紙に関わる話題が多し。気ままに更新中。

ART MEETING 2014

2014年08月17日 | イベント
 田人町で「ART MEETING 2014」が開催されています。本日、帰省中の娘と田人町に点在する会場をめぐり、作品を拝見してきました。

 展示されている作品は、一つひとつの造形物で作者の意図を伝えるというものではなく、作品の置かれた空間そのものに、鑑賞者がどのようなインスピーレーションを感じるかという性質のものらしい。受付に座っていた作者の一人に聞くと「空間展示」といい、英語ではインスタレーション。

 この作品の手法では、空間全体が作品であり、鑑賞者がその空間を見たり、聞いたり、感じたり、考えたりする方法をどのように変化させるかを要点とする芸術手法である、とされているようです。ということは、作品には作家の意図が織り込まれていることはもちろんですが、鑑賞者が作品から何を感じるかは個人差が出てしまう。個人の感覚で自由に鑑賞してよいということなのでしょう。メイン会場は旧南大平分校で、校舎に残された学習教材などと合わせて空間が構成されています。その意図するところを汲み取ることが難しい作品もありますが、何となく感じることができる作品もあります。

 講堂の壇上に飾られた落陽と題された作品は、おそらくもともとそこに飾られている「日の丸」と並べて展示され、枠内の赤丸に薄く模様がついた幕がかかったような作品。私の勝手な解釈は、戦後一貫して日本国憲法のもとで、まがりなりにも世界でも先進的な平和国家の歩みを続けてきた日本を「太陽」に例え、安倍首相の集団的自衛権行使の閣議決定で世界の先進的な地位から滑り落ちようとしてる姿を批判的に「落陽」としたのではないか、としました。



 このように解釈すれば、この芸術は美の追求だけでなく、社会に働きかけ行動する一員なのだと認識することができます。

 また原発、原子力を批判的に展示する作品もあります。除染作業員などの声を収録したビデオ作品が上映されていました。廊下を挟んで展示された「記録」(下写真1枚目)と「変化」(同2枚目)という作品は被ばくの影響への警鐘を鳴らしているようですし、「原子力・ボート」(同3枚目)と題された作品は、原発の爆発と思われる造形を部屋の真ん中に置き、「NO NUKES(ノー・ニュークス)」を訴えるポスターを貼ってストレートに脱原発を訴えていました。造形の周辺に展示された下方の黒色から上に向かって白色に変化するパネルは、脱原発が安心・安全の未来を暗示するようにも思えます(同3枚目)。







 このように作品を感じ、考えながら鑑賞するのもなかなか楽しいものです。

 子どもたちや来館者に田人の良さを書いていただいて会場に展示。その空間の真中には「ごちそうさま」と題された作品が置かれている空間作品もあります。田人を丸ごと楽しんで下さい、食べ尽くして下さい、ということなのでしょうね。



 ちなみに校庭に展示された「ハネノアル」と名付けられたこの作品。「羽のある」だから空を飛ぶに関することなのだと類推されます。娘は「セミだ」といいます。でもセミに限ったものではないだろうとは、私の感想。写真の奥にはミツバチの巣箱らしき四角い木の箱があります。関係あるのかな、ないのかな。いずれにせよ、ミツバチにせよ、「ハネノアル」にせよ、飛ぶということでは共通します。この「ハネノアル」は羽のあるものすべてを一般的に飛象徴する作品と考えるのが妥当かな。

 ただ正直、現場では地に置かれているようにしか見えなかったのですが、写真でみると羽ばたいて浮き上がっているように感じるから不思議。おそらく後方にある円形の物体の見え方による効果です。現場では針金か何かでつながって枝からぶら下がっていることがはっきり見えるのですが、写真のサイズで見るとあまり目立たなくなり、その結果、円形の物体が空中に浮いているように見えています。これが浮遊感を漂わせるのかもしれません。思わぬ作品の効果を見た思いです。



 分校の脇には池もあり、水中にはコイ、水上にはあめんぼとイトトンボ。蒸し暑い中で、訪れた方に涼を提供しているようでした。



 南大平分校から国道289号線を西に向かい、田人おふくろの宿に到着。向かい側には水車がありますが、その池には「森の深呼吸」という作品が鉄の船に乗って浮かんでいます。比較的、具象的な作品ですから、違和感なく鑑賞できるかもしれません。池の水と水草、そして背景にある森。「森の深呼吸」がここに展示されるのは必然なんだと思いました。



 さらに西に向かって旧田人二小の校庭に作品が展示されています。敷地に入ると巨大なアリに出会います。「アリゃ なんだ!」と題された作品。実はこの作品の作家は娘が高校時代に数学を教わった恩師。娘に伝えると「あ、本当だ」と、スマホで写真をパチパチとっていました。この作品ではリアルタイム線量計のそばに展示されていることに意味を感じました。原発事故で放射性物質がばらまかれ、その線量を測定する測定器は、アリから見れば謎の物体ですもの。原発事故後の現実を捉えた作品と感じました。

 でも娘は違いました。校庭の真ん中に高い竿の頂上に、小さい椅子を取り付けた作品があり、アリの視線はその椅子に向けられているようにも見えます。「なんだ!」はこの作品に向けられた言葉だというのです。実際その通りかもしれません。そこは好きなように解釈しておきたいと思います。



 さらに西に向かい山本宅周辺では、「キチV」という作品が渓流の脇に展示されていました。昨年も同じような作品が展示されていたと思うのですが、今年の作品は猫耳つき。森の中に秘密基地を置いて遊んだ子どもの頃のワクワク感を思い出します。



 今度は北に向かい貝泊地区へ。旧貝泊小・中学校では校舎2階の窓に外に向けて各種のダルマの絵が並べられています。何を意図するのかは分かりませんが、校舎全体を作品にしたその大きさには舌を巻きました。



 たくさんの作品が田人町全体に点在して配置されたこのイベント。芸術を感じるとともに、田人を丸ごと楽しむ機会にもなります。8月24日までのイベントですので訪ねてみてください。


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