いわき市議会2月定例会はきょう終了しました。初日の提案に加え、今日、追加提案をされた議案を含め102議案が議決されました。日本共産党市議団としては96議案に賛成、6議案に反対し、私が討論に立ちました。その内容は次のとおりです。
議案第7号と19号の討論は、先の11月定例会の討論のおり、集団的自衛権行使など戦争をできる国づくりをすすめようとする安倍政権の批判を「極端な懸念」と評価する討論があったため、これに反論する気持ちも込めて行いました。最後のほうが少し膨らみすぎた感がありますが、がっちり討論できたと思います。
また、議案第42号と86号は、介護保険料の値上げに関する議案でしたが、これには議会の役割という観点から討論をしました。
討論中の太字は中身出しで、見やすくしてみました。まっ、いつものように字だらけで読むことは大変でしょうけど・・。
2月定例会の討論
10番、日本共産党いわき市議団の伊藤浩之です。
私は、議案第7号、議案第19号、議案第39号、議案第40号、議案第42号、及び議案第86号、以上6議案について反対の立場から討論いたします。
戦争できる国づくりと教育委員会改革
まず議案第19号、いわき市教育長の給与、勤務時間その他の勤務条件に関する条例の改正について、ですが、これには議案第7号、いわき市特別職の職員で非常勤の者の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例もかかわりますので、一括して討論いたします。
議案第19号は、国が「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律」で、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の一部を改定し、教育委員長と教育長を一本化したことにより、本市の教育委員会も、教育委員長を廃止して教育長を教育委員会の責任者とすることに伴い改定されるもので、議案第7号は、教育委員長と教育長を一本化することから、教育委員長の給与月額を削除することを内容としています。
今回の教育と教育委員会制度の改定の問題は、先の11月定例会の一般質問及び討論の中でも指摘しておりますが、
一つには、教育委員長を廃止した上で、教育長の任命権を教育委員会ではなく首長とすることによって、地方政治ひいては国の教育行政への介入を人事面で強めかねないこと、
二つには、首長に教育委員をメンバーとする総合教育会議の設置と教育大綱の策定を義務付けたことが、教育委員会の行政からの独立を弱めかねないこと、
そして三つには、これらの措置が、教育の国家統制によって国民を戦争に動員し、アジア人民と国民に多大な犠牲を強いた反省を踏みにじって、同じ過ちを繰り返すことになりかねないこと、
などの問題を持っています。
これは決して「政治が教育に関与することによって戦前のような状態に戻るのではないかという極端な懸念」というものではありません。
昨日、政府与党である自民・公明のもとで、新たな安全保障法制に関する与党協議会を開き、集団的自衛権行使の容認などを踏まえた自衛隊活動を拡大する法制の骨格について実施的に合意しました。
その主な柱は、
一つは、武力行使する米軍やその他の軍隊の後方支援を、いつでも、世界中のどこでも、どんなケースでも可能にする自衛隊の海外派兵の恒久法を制定する、
二つに、米国の戦争に参加する集団的自衛権行使の根拠を自衛隊法などに創設する、
三つに、国連平和維持活動や他国領域内での治安維持活動のための派兵法制定、
が内容であり、アメリカが世界中で行うあらゆる戦争、軍事活動に切れ目なく参加し、支援する体制の構築です。
そしてその方向は、自主憲法制定の名のもとに、自衛隊をれっきとした軍隊に変えて、同盟国アメリカがかかわる海外の戦争や紛争に派兵し、その兵員は軍事法廷で裁き、また有事の国家運営を支えるために人権の制限なども加えようとする。こうした憲法改定の一つの考えの元にあることは明らかです。
その考えを前に進める動きは性急さをともなっています。
武器輸出を禁じた武器輸出三原則を防衛装備移転三原則に変えて、兵器の輸出をできるようにしました。
自衛隊の文民統制を弱める防衛省設置法12条の文官統制を削除して、制服組の権限を強めようとしています。
また、日本国憲法に違反すると自民党の元幹部でさえ批判する、集団的自衛権行使に必要な法整備、すなわち今回、与党間で合意にいたった新たな法整備の合意です。
さらに、現在開会中の国会の施政方針演説で安倍首相は憲法改正に向けた議論を国民に呼びかけるようになっています。
この行き着く先には、どんな日本社会が待ち受けているのでしょうか。私も希望的には、戦前のように国民に戦争を強制し、国民の命を奪ったような社会ではないと考えたい。
しかし、戦前の反省の上に、歴代の自民党政治のもとで、現在の憲法のぎりぎりの解釈のもとで作られてきた自ら戦争をしないという歯止めが、いとも簡単に壊されようとする現状を見る時に、より厳しく世情を見ることの大切さを感じています。
先の大戦以降、ただの一度も戦争を行ったことがない我が国の歴史、未来に向かって継続し、もう二度と戦争はしないという日本国民が共有する決して揺らぐことのない普遍的な価値観を次の世代につないでいくためにも、戦前の反省を忘却の彼方に押し流す措置には断固たる態度を示す。そのことが何よりも求められていると思います。
今回の教育委員会制度改革は、政治が教育に関与することにより、教育が政治によってゆがめられるという疑念を深くすることになりました。
これまでも本議場で、「総合教育会議は、日常行われている市長と教育委員会の協議の場の明確化ととらえている」とする答弁がありました。この答弁は別の角度から見れば、総合教育会議がなくても、市長と教育委員会の協議が日常的に行われており、現状でも教育行政と一般の行政が必要な連携を図りながら教育行をすすめることに何ら差し障りはないということを示すことにもなっているのです。
こうした総合教育会議、そして教育大綱は、政治が教育に介入する仕組みの土台となり、教育委員会の独立性を弱めかねません。議案第19号は、教育長の勤務などの問題を通じて、その整備をはかる一環であり、議案第7号は教育委員長の給与月額を削除し、教育長への一本化にかかわるものであることから、問題があるものと考えます。
マイナンバーカード
次に、議案第39号、平成27年度いわき市一般会計予算について討論いたします。
本案の問題は、マイナンバーカードの活用のための予算が計上されている点です。
国は、「社会保障・税番号制度」を導入し、これに合わせて国民一人ひとりに原則として生涯変わることのない12桁の個人番号、いわゆるマイナンバーを付けることにしました。
この事業目的を、本市は、国は、公共サービスがワンストップで誰でもいつでもどこでも受けられる社会を実現するもので、市は国が交付するマイナンバーカードの活用の一環として、市民の利便性の向上・行政事務の効率化を図るために、全国のコンビニで住民票、印鑑登録証明書、戸籍及び戸籍の附票の交付が受けられる環境を整備することにする、としています。
あわせて証明書交付件数の多い窓口で、カードを活用して申請書の作成や証明書の出力を自動で行う簡易窓口交付システムを整備する、としています。
作家のジョージ・オーウェルの「一九八四」という小説は、近未来の全体主義国家を舞台に、歴史が常に自国に都合が良いように書き換えられ、それ以外の記録は許されないこと、そして国民が常に国家によって監視されている社会の恐怖を描きました。
クレジットカードやポイントカードなどが普通に使われ、個人の消費動向も電子回路上に逐一記録される社会が到来している現代において、マイナンバー制度は、その活用によっては、個人を丸ごと監視する社会の中に置くことになりかねない。小説「一九八四」を思い起こすとき、そんな思いがふと湧き上がってきます。
しかし当面、このマイナンバーは、2016(平成28)年1月から国の行政機関や地方公共団体などが、社会保障、税、災害対策の分野で利用することになっており、国民は、年金・雇用保険・医療保険の手続、生活保護・児童手当その他福祉の給付、確定申告をはじめ税の手続などで、申請書等にマイナンバーの記載を求められることになります。
また、事業主や証券会社、保険会社などが個人に代わって税や社会保険の手続きを行う際には、勤務先や証券会社、保険会社などの金融機関にもマイナンバーの提出が必要となる場合があるとされています。監視社会になるという思いが、思い過ごしにすぎないことを願うばかりです。
このマイナンバー制度で懸念されるのは、国や行政機関が管理する行政情報が大量に漏洩しかねない点にあります。
政府はこの制度を作るにあたって、制度面では特定個人情報の収集の禁止などの保護措置に加え、システム面では個人情報を従来通りに分散管理し、個人番号を直接利用しない情報連携や暗号化、アクセスできる人の制限・管理を実施するなどの保護なども取り入れ、個人情報に万全を尽くしているように説明しています。しかし、これで完璧な防護ができるのかは未知数と言って良いと思います。
マイナンバーと同様の個人番号制を利用している諸外国でも、個人情報の流出が発覚しています。
一つの実例が韓国です。韓国では、国民一人ひとりに住民登録番号が付番されており、身分証明に利用されています。この住民登録番号付きで大量に個人情報が流出し、その個人情報が住民登録番号で名寄せされていることが発覚しました。
韓国当局が逮捕した容疑者のパソコンから、氏名、バスワード、住民登録番号といった個人情報が1億4000万件発見され、この個人情報は、「経済・金融」、「教育・外国語」といった13のカテゴリーと13の下位グループに体系的に分類保管され、さまざまな目的に使用されていたといわれています。
日本でも、いわゆる振り込め詐欺などの犯人グループを検挙した際に、「大手企業退職者」、「先物取引経験者」、「夢見る老人データ」などの名簿が押収されていますが、マイナンバーの導入によって、個人番号付きの個人情報が流出することがあれば、韓国の例のように、個人情報がコピーされ、その情報が売買されて、犯罪などに活用されることになりかねないと考えます。
我が国でも、2010年には、警察がテロ対策と称して違法に集めたイスラム教徒等のデータがインタネット上に流出する事件がおきています。警察はこれらのデータが警察のものであることを認めていないそうですが、こうした情報が流出しているという現実は直視する必要があると思います。
二つ目にはマイナンバーの悪用です。アメリカでは、個人番号であるセキュリティーナンバーを利用したなりすましが問題になっています。
不法移民が職を得るためにナンバーを盗んだり、死んだ家族になりすましてナンバーを使い続け、年金を受け取るなどの事件もおこっているそうです。
その被害は深刻で、被害者は、2006(平成8)年から2008(平成10)年までの2年間で約1,000万人にのぼり、損害額は年間500億ドルとも言われています。
我が国でも、住民基本台帳の不正交付が2008(平成10)年度から2012(平成14)年度の間に106件もおきていることを考えれば、このアメリカでの犯罪行為が、我が国で起きることはないと断言できるものではありません。
こうした個人情報流出の懸念があるマイナンバー制度に関して、今回提案された議案第39号には、歳出の2款総務費、1項総務管理費、2目人事管理費、及び同じく7目企画費、社会保障税番号制度にともなう中間サーバー・プラットフォーム構築にかかる負担金としてネットワークに接続に必要なシステム構築の費用が、また同じく歳出の2款総務費、3項戸籍住民基本台帳費、1目戸籍住民基本台帳費に「マイナンバーカードによるコンビニでの証明書公布事業費」として、マイナンバーカードを利用するために地方公共団体情報システム機構・J-LIS(ジェイ・リス)のシステムに接続するための機器保守やリースの費用が計上されています。
質疑で答弁があったように、本市が直接実施することになる、コンビニでの住民票等の交付事業に関して言えば、交付の過程にコンビニ店員はかかわらず、機器を自ら操作して交付をすることなどから個人情報漏えいのリスクは小さいものと思われます。
しかし先にあげたような個人情報漏洩のリスクを考慮すれば、このシステムに接続するかどうかの判断は慎重に行われなければならないと思います。
市民福祉常任委員会の質疑では、このカードの活用は、市の判断として行うものだという答弁がありました。すなわち、接続する、あるいは接続しないという判断は市が行ったということです。
かつて県内の矢祭町は、住民基本台帳ネットワークシステム、いわゆる住基ネットに町としては接続しないという判断をし、独自のまちづくりに取り組みました。報道によると、今回のマイナンバーカードの導入に合わせて接続する方向にあり、大きなうねりの中に飲み込まれようとしているようですが、少なくとも、個人の情報を町として守るために接続しないという勇気ある判断をしたという事実を消すことはできないものと考えます。
マイナンバーカードを活用するために、本市の住民基本台帳をネットワークに接続することには、そこに保存される個人情報の漏出の懸念が拡大することになります。従って、かつての矢祭町の決断に学びながら、接続は慎重の上にも慎重を期し、ここは接続をしないという判断をすることが求められます。
以上のことから、議案第39号には問題があります。
国保・被保険者資格証
次に議案第40号、平成27年度いわき市国民健康保険事業特別会計予算についてです。
本案では、歳出1款総務費、1項総務管理費、1目一般管理費が、被保険者資格証明書の交付・郵送を前提として編成されております。
窓口でいったん医療費の全額を払わなければならない資格証には、これまでも取り上げてきましたが、第一には、加入者の命と健康にかかわる大きな問題があります。
全日本民主医療機関連合会、略称を民医連と言いますが2013年の1年間で、経済的理由による受診の遅れで傷病の症状が悪化し、死亡した事例が全国で56例にのぼるとの調査結果を発表しました。
全国の民医連加盟の医療機関で受診や相談した人が対象にした8回目の調査ですが、毎年、こうして不幸にも医療に恵まれずに亡くなる方があることは、同調査を引きながらこれまでもたびたび指摘してきました。
今回の調査で、亡くなった56人のうち、国民健康保険税を滞納したために保険証を交付されず、代わりに資格証明書や、有効期間の短い短期保険証を発行されていた人が32人で、57%を占めました。
そのうち資格証明書や短期保険証さえ持たない無保険の人は23人でした。その内訳は、国保料が高すぎるために国保加入の手続きをしなかった人が11人、資格証となった人が7人、合わせて18人、8割の人が保険証を持っていませんでした。
市内でも、資格証の所持世帯が病院にかかった時には手遅れで亡くなった事例があると聞いています。死亡の原因に資格証が直接かかわるのかどうかは検証が必要ですが、十分に留意・検討しなければならない状況があると思います。
第二には、滞納者との納税相談を増やすなどの目的の資格証にもかかわらず、滞納問題の解消に十分つながらないという問題です。
質疑で答弁された資格証の世帯が1200世帯程度で推移していることがそのことを示しています。中には相談の結果、資格証が交付された世帯から、保険証が交付される世帯に切り替わる世帯があるかもしれません。しかし、新たに同程度の方が保険証の交付が止められ、資格証の世帯に切り替わっていることが、この数字にはあらわれています。
そもそも資格証が交付される理由となっている滞納の原因は、負担の限度を越えて高すぎる国保税になっていることにあります。この問題を解決することなく、国保加入者であることだけを示し、保険証の代わりにはならない資格証を交付することには問題があると考えます。
以上のことから、資格証の交付を予定する本予算案には問題があり反対すべきです。
介護保険の値上げ
次に議案第86号、いわき市介護保険条例の改正について、討論いたします。これには議案第42号、いわき市介護保険特別会計予算が関連しますので、一括して討論いたします。
議案第86号は、65歳以上の介護保険加入者、いわゆる第1号被保険者の介護保険料を、基準額となる第5段階で、現在より23.9%にあたる1,117円値上げして5,789円とし、合わせて現在9段階となっている所得階層を再編し11段階とする内容を含み、議案第42号は値上げを前提として編成されています。
介護保険料は3年に1度見直される高齢者保健福祉計画で、次期の3年間に想定される介護保険サービスの需要量を算定し、これをまかなうために必要な保険料が算定される仕組みとなっています。
今回の値上げの理由は、2015(平成27)年度から2017(平成29)年度までの次期計画を策定するために介護サービスの需要量を見込んだところ、需要の伸びに対し現行の保険料のままでは3年間で30数億円の不足が見込まれることが一つ。
もう一つは、「介護保険法施行令及び介護保険法の国庫負担金の算定時に関する政令の一部を改正する政令」で介護保険法施行令の一部が改正されたことにより、第1号被保険者と第2号被保険者の負担割合が変更されたこと。
具体的には、5割を公費、保険料を5割とする介護保険の財源のうち、保険料は21%を第1号被保険者が負担し、29%を40歳以上64歳までの第2号被保険者が負担していましたが、この負担比率を変更し、2号被保険者の負担を1%減らし、1号被保険者の負担を1%増やしたことにともない、その増加分を保険料の値上がりに反映させたことがあります。
もともとこの介護保険制度は、高齢者による高齢者の介護、いわゆる老々介護や、社会から孤立した家庭内介護による介護の行き詰まりなどが原因となって不幸な事件が続いたことを背景に、介護の社会化を理由として制定されました。
これによってそれまで措置制度のもとで9割に負担がなかった福祉サービスが有料化され、40歳以上の国民はそれまでなかった保険料を負担することになりました。
それでも制度開始直後は、サービス基盤が弱かったこともあったでしょう、第1号被保険者の負担は基準額で2,514円にとどまりましたが、3年に1度の見直しの中で基本的に値上がりを続け、第2期計画で247円、第3期で1,515円、第5期で396円、それぞれ値上がり続いてきました。
また一方で、第1号被保険者の中心的な生活の糧である年金額の引き下げなどが続いている現状を見た時に、介護保険料の負担は限界を過ぎています。今後、高齢社会がさらに進行することにともない介護需要は増加し、現在の仕組みのままならば介護保険料はいっそう値上がりし、その結果、第1号被保険者の生活は破綻に導かれていくことは火を見るよりも明らかです。過日行われた一般質問では、「介護保険制度はすでに行き詰まっている」との発言がありましたが、この負担の現実をみれば、そのとおりであると思います。
市民福祉常任委員会質疑の中で執行部も、介護保険料の負担が厳しいということを自覚し、市長会等を通じて国庫負担を拡大することなどを要望しており、今後も強く要望していくことを発言しました。ここからは、市民生活の現実から介護保険制度を見た時に、被保険者の負担は限界に達しているとの執行部の認識、自覚を見ることできます。
一方でその執行部の手を縛っているのは、公費負担5割、保険料負担5割という今の制度の仕組みの中では、公費を使って保険料負担を引き下げることはこの負担割合を事実上変更することになるということ、そして国も「制度の根幹にかかわる問題」として、保険料引き下げのための公費負担の投入禁止を強く指導していることがあります。
市は国の強い指導のもと、「制度の根幹にかかわる問題」として、保険料引き下げのための一般財源からの繰り入れを否定しますが、これは別の見方をするならば法と制度を忠実に守ろうとする、行政としての真面目さと見ることもできます。
私の代表質問で、本市に対して防衛省からの自衛官の適齢者名簿の提供の求めがあっても、紙媒体による提供が法に規定されていないことから、法が誰にでも認めている閲覧という方法がとられているとの答弁がありましたが、ここにも同様の行政の法・制度に対する姿勢を見ることが出来ました。
ただ、介護保険の現実を見た時に、この判断で良いのかは問われなければなりません。保険料負担の増加によって、生活が破綻する市民が増加してしまえば、住み良いいわき市などということはできず、本市のまちづくりの方向にも反することになると思います。
保険料抑制のための一般財源からの繰入は、公費負担を増やすことになり、制度の根幹にかかわる問題でできないといいます。
一方では、介護保険料の値上げは市民の暮らしの根幹にかかわることでありますのでそのままにしておくことはできません。
執行部は、その役割として制度と法の枠内で判断せざるを得ないというのであれば、市民の暮らしの観点から判断を下して、執行部が保険料の抑制に向かって行動できる土俵を作るのが市議会の役割であろうと考えます。
市議会としてこのままの引き上げはできないと判断し、本引き上げ案を認めないことになれば、執行部としてこの議会の判断を根拠にして、何らかの方策を取らねばならなくなります。再議を求めるのか、あるいは4月からの介護保険の運営に向けて暫定予算を組んだり、また、その後の本予算を算定したりするのか、執行部にはご苦労を掛けることにはなりますが、それも市民生活を守るために必要なことであります。
執行部と議会は車の両輪と例えられます。この言葉を私は、決して交わることなく、互いに牽制し合いながら市民生活を支える関係を指す言葉だと解しておりますが、今この介護保険料の引き上げを巡っても、市議会の判断が市のとるべき選択肢を増やす動機になるという点において、まさに車の両輪の役割を発揮することになると考えております。
以上のことから議案第86号、及び議案第42号には市議会として否の姿勢を示すべきと考えます。
以上、議案第7号、議案第19号、議案第39号、議案第40号、議案第42号、及び議案第86号について反対の立場から討論してまいりましたが、会派をこえてみな様のご賛同を心からお願いしまして、討論を終わります。
議案第7号と19号の討論は、先の11月定例会の討論のおり、集団的自衛権行使など戦争をできる国づくりをすすめようとする安倍政権の批判を「極端な懸念」と評価する討論があったため、これに反論する気持ちも込めて行いました。最後のほうが少し膨らみすぎた感がありますが、がっちり討論できたと思います。
また、議案第42号と86号は、介護保険料の値上げに関する議案でしたが、これには議会の役割という観点から討論をしました。
討論中の太字は中身出しで、見やすくしてみました。まっ、いつものように字だらけで読むことは大変でしょうけど・・。
2月定例会の討論
10番、日本共産党いわき市議団の伊藤浩之です。
私は、議案第7号、議案第19号、議案第39号、議案第40号、議案第42号、及び議案第86号、以上6議案について反対の立場から討論いたします。
戦争できる国づくりと教育委員会改革
まず議案第19号、いわき市教育長の給与、勤務時間その他の勤務条件に関する条例の改正について、ですが、これには議案第7号、いわき市特別職の職員で非常勤の者の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例もかかわりますので、一括して討論いたします。
議案第19号は、国が「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律」で、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の一部を改定し、教育委員長と教育長を一本化したことにより、本市の教育委員会も、教育委員長を廃止して教育長を教育委員会の責任者とすることに伴い改定されるもので、議案第7号は、教育委員長と教育長を一本化することから、教育委員長の給与月額を削除することを内容としています。
今回の教育と教育委員会制度の改定の問題は、先の11月定例会の一般質問及び討論の中でも指摘しておりますが、
一つには、教育委員長を廃止した上で、教育長の任命権を教育委員会ではなく首長とすることによって、地方政治ひいては国の教育行政への介入を人事面で強めかねないこと、
二つには、首長に教育委員をメンバーとする総合教育会議の設置と教育大綱の策定を義務付けたことが、教育委員会の行政からの独立を弱めかねないこと、
そして三つには、これらの措置が、教育の国家統制によって国民を戦争に動員し、アジア人民と国民に多大な犠牲を強いた反省を踏みにじって、同じ過ちを繰り返すことになりかねないこと、
などの問題を持っています。
これは決して「政治が教育に関与することによって戦前のような状態に戻るのではないかという極端な懸念」というものではありません。
昨日、政府与党である自民・公明のもとで、新たな安全保障法制に関する与党協議会を開き、集団的自衛権行使の容認などを踏まえた自衛隊活動を拡大する法制の骨格について実施的に合意しました。
その主な柱は、
一つは、武力行使する米軍やその他の軍隊の後方支援を、いつでも、世界中のどこでも、どんなケースでも可能にする自衛隊の海外派兵の恒久法を制定する、
二つに、米国の戦争に参加する集団的自衛権行使の根拠を自衛隊法などに創設する、
三つに、国連平和維持活動や他国領域内での治安維持活動のための派兵法制定、
が内容であり、アメリカが世界中で行うあらゆる戦争、軍事活動に切れ目なく参加し、支援する体制の構築です。
そしてその方向は、自主憲法制定の名のもとに、自衛隊をれっきとした軍隊に変えて、同盟国アメリカがかかわる海外の戦争や紛争に派兵し、その兵員は軍事法廷で裁き、また有事の国家運営を支えるために人権の制限なども加えようとする。こうした憲法改定の一つの考えの元にあることは明らかです。
その考えを前に進める動きは性急さをともなっています。
武器輸出を禁じた武器輸出三原則を防衛装備移転三原則に変えて、兵器の輸出をできるようにしました。
自衛隊の文民統制を弱める防衛省設置法12条の文官統制を削除して、制服組の権限を強めようとしています。
また、日本国憲法に違反すると自民党の元幹部でさえ批判する、集団的自衛権行使に必要な法整備、すなわち今回、与党間で合意にいたった新たな法整備の合意です。
さらに、現在開会中の国会の施政方針演説で安倍首相は憲法改正に向けた議論を国民に呼びかけるようになっています。
この行き着く先には、どんな日本社会が待ち受けているのでしょうか。私も希望的には、戦前のように国民に戦争を強制し、国民の命を奪ったような社会ではないと考えたい。
しかし、戦前の反省の上に、歴代の自民党政治のもとで、現在の憲法のぎりぎりの解釈のもとで作られてきた自ら戦争をしないという歯止めが、いとも簡単に壊されようとする現状を見る時に、より厳しく世情を見ることの大切さを感じています。
先の大戦以降、ただの一度も戦争を行ったことがない我が国の歴史、未来に向かって継続し、もう二度と戦争はしないという日本国民が共有する決して揺らぐことのない普遍的な価値観を次の世代につないでいくためにも、戦前の反省を忘却の彼方に押し流す措置には断固たる態度を示す。そのことが何よりも求められていると思います。
今回の教育委員会制度改革は、政治が教育に関与することにより、教育が政治によってゆがめられるという疑念を深くすることになりました。
これまでも本議場で、「総合教育会議は、日常行われている市長と教育委員会の協議の場の明確化ととらえている」とする答弁がありました。この答弁は別の角度から見れば、総合教育会議がなくても、市長と教育委員会の協議が日常的に行われており、現状でも教育行政と一般の行政が必要な連携を図りながら教育行をすすめることに何ら差し障りはないということを示すことにもなっているのです。
こうした総合教育会議、そして教育大綱は、政治が教育に介入する仕組みの土台となり、教育委員会の独立性を弱めかねません。議案第19号は、教育長の勤務などの問題を通じて、その整備をはかる一環であり、議案第7号は教育委員長の給与月額を削除し、教育長への一本化にかかわるものであることから、問題があるものと考えます。
マイナンバーカード
次に、議案第39号、平成27年度いわき市一般会計予算について討論いたします。
本案の問題は、マイナンバーカードの活用のための予算が計上されている点です。
国は、「社会保障・税番号制度」を導入し、これに合わせて国民一人ひとりに原則として生涯変わることのない12桁の個人番号、いわゆるマイナンバーを付けることにしました。
この事業目的を、本市は、国は、公共サービスがワンストップで誰でもいつでもどこでも受けられる社会を実現するもので、市は国が交付するマイナンバーカードの活用の一環として、市民の利便性の向上・行政事務の効率化を図るために、全国のコンビニで住民票、印鑑登録証明書、戸籍及び戸籍の附票の交付が受けられる環境を整備することにする、としています。
あわせて証明書交付件数の多い窓口で、カードを活用して申請書の作成や証明書の出力を自動で行う簡易窓口交付システムを整備する、としています。
作家のジョージ・オーウェルの「一九八四」という小説は、近未来の全体主義国家を舞台に、歴史が常に自国に都合が良いように書き換えられ、それ以外の記録は許されないこと、そして国民が常に国家によって監視されている社会の恐怖を描きました。
クレジットカードやポイントカードなどが普通に使われ、個人の消費動向も電子回路上に逐一記録される社会が到来している現代において、マイナンバー制度は、その活用によっては、個人を丸ごと監視する社会の中に置くことになりかねない。小説「一九八四」を思い起こすとき、そんな思いがふと湧き上がってきます。
しかし当面、このマイナンバーは、2016(平成28)年1月から国の行政機関や地方公共団体などが、社会保障、税、災害対策の分野で利用することになっており、国民は、年金・雇用保険・医療保険の手続、生活保護・児童手当その他福祉の給付、確定申告をはじめ税の手続などで、申請書等にマイナンバーの記載を求められることになります。
また、事業主や証券会社、保険会社などが個人に代わって税や社会保険の手続きを行う際には、勤務先や証券会社、保険会社などの金融機関にもマイナンバーの提出が必要となる場合があるとされています。監視社会になるという思いが、思い過ごしにすぎないことを願うばかりです。
このマイナンバー制度で懸念されるのは、国や行政機関が管理する行政情報が大量に漏洩しかねない点にあります。
政府はこの制度を作るにあたって、制度面では特定個人情報の収集の禁止などの保護措置に加え、システム面では個人情報を従来通りに分散管理し、個人番号を直接利用しない情報連携や暗号化、アクセスできる人の制限・管理を実施するなどの保護なども取り入れ、個人情報に万全を尽くしているように説明しています。しかし、これで完璧な防護ができるのかは未知数と言って良いと思います。
マイナンバーと同様の個人番号制を利用している諸外国でも、個人情報の流出が発覚しています。
一つの実例が韓国です。韓国では、国民一人ひとりに住民登録番号が付番されており、身分証明に利用されています。この住民登録番号付きで大量に個人情報が流出し、その個人情報が住民登録番号で名寄せされていることが発覚しました。
韓国当局が逮捕した容疑者のパソコンから、氏名、バスワード、住民登録番号といった個人情報が1億4000万件発見され、この個人情報は、「経済・金融」、「教育・外国語」といった13のカテゴリーと13の下位グループに体系的に分類保管され、さまざまな目的に使用されていたといわれています。
日本でも、いわゆる振り込め詐欺などの犯人グループを検挙した際に、「大手企業退職者」、「先物取引経験者」、「夢見る老人データ」などの名簿が押収されていますが、マイナンバーの導入によって、個人番号付きの個人情報が流出することがあれば、韓国の例のように、個人情報がコピーされ、その情報が売買されて、犯罪などに活用されることになりかねないと考えます。
我が国でも、2010年には、警察がテロ対策と称して違法に集めたイスラム教徒等のデータがインタネット上に流出する事件がおきています。警察はこれらのデータが警察のものであることを認めていないそうですが、こうした情報が流出しているという現実は直視する必要があると思います。
二つ目にはマイナンバーの悪用です。アメリカでは、個人番号であるセキュリティーナンバーを利用したなりすましが問題になっています。
不法移民が職を得るためにナンバーを盗んだり、死んだ家族になりすましてナンバーを使い続け、年金を受け取るなどの事件もおこっているそうです。
その被害は深刻で、被害者は、2006(平成8)年から2008(平成10)年までの2年間で約1,000万人にのぼり、損害額は年間500億ドルとも言われています。
我が国でも、住民基本台帳の不正交付が2008(平成10)年度から2012(平成14)年度の間に106件もおきていることを考えれば、このアメリカでの犯罪行為が、我が国で起きることはないと断言できるものではありません。
こうした個人情報流出の懸念があるマイナンバー制度に関して、今回提案された議案第39号には、歳出の2款総務費、1項総務管理費、2目人事管理費、及び同じく7目企画費、社会保障税番号制度にともなう中間サーバー・プラットフォーム構築にかかる負担金としてネットワークに接続に必要なシステム構築の費用が、また同じく歳出の2款総務費、3項戸籍住民基本台帳費、1目戸籍住民基本台帳費に「マイナンバーカードによるコンビニでの証明書公布事業費」として、マイナンバーカードを利用するために地方公共団体情報システム機構・J-LIS(ジェイ・リス)のシステムに接続するための機器保守やリースの費用が計上されています。
質疑で答弁があったように、本市が直接実施することになる、コンビニでの住民票等の交付事業に関して言えば、交付の過程にコンビニ店員はかかわらず、機器を自ら操作して交付をすることなどから個人情報漏えいのリスクは小さいものと思われます。
しかし先にあげたような個人情報漏洩のリスクを考慮すれば、このシステムに接続するかどうかの判断は慎重に行われなければならないと思います。
市民福祉常任委員会の質疑では、このカードの活用は、市の判断として行うものだという答弁がありました。すなわち、接続する、あるいは接続しないという判断は市が行ったということです。
かつて県内の矢祭町は、住民基本台帳ネットワークシステム、いわゆる住基ネットに町としては接続しないという判断をし、独自のまちづくりに取り組みました。報道によると、今回のマイナンバーカードの導入に合わせて接続する方向にあり、大きなうねりの中に飲み込まれようとしているようですが、少なくとも、個人の情報を町として守るために接続しないという勇気ある判断をしたという事実を消すことはできないものと考えます。
マイナンバーカードを活用するために、本市の住民基本台帳をネットワークに接続することには、そこに保存される個人情報の漏出の懸念が拡大することになります。従って、かつての矢祭町の決断に学びながら、接続は慎重の上にも慎重を期し、ここは接続をしないという判断をすることが求められます。
以上のことから、議案第39号には問題があります。
国保・被保険者資格証
次に議案第40号、平成27年度いわき市国民健康保険事業特別会計予算についてです。
本案では、歳出1款総務費、1項総務管理費、1目一般管理費が、被保険者資格証明書の交付・郵送を前提として編成されております。
窓口でいったん医療費の全額を払わなければならない資格証には、これまでも取り上げてきましたが、第一には、加入者の命と健康にかかわる大きな問題があります。
全日本民主医療機関連合会、略称を民医連と言いますが2013年の1年間で、経済的理由による受診の遅れで傷病の症状が悪化し、死亡した事例が全国で56例にのぼるとの調査結果を発表しました。
全国の民医連加盟の医療機関で受診や相談した人が対象にした8回目の調査ですが、毎年、こうして不幸にも医療に恵まれずに亡くなる方があることは、同調査を引きながらこれまでもたびたび指摘してきました。
今回の調査で、亡くなった56人のうち、国民健康保険税を滞納したために保険証を交付されず、代わりに資格証明書や、有効期間の短い短期保険証を発行されていた人が32人で、57%を占めました。
そのうち資格証明書や短期保険証さえ持たない無保険の人は23人でした。その内訳は、国保料が高すぎるために国保加入の手続きをしなかった人が11人、資格証となった人が7人、合わせて18人、8割の人が保険証を持っていませんでした。
市内でも、資格証の所持世帯が病院にかかった時には手遅れで亡くなった事例があると聞いています。死亡の原因に資格証が直接かかわるのかどうかは検証が必要ですが、十分に留意・検討しなければならない状況があると思います。
第二には、滞納者との納税相談を増やすなどの目的の資格証にもかかわらず、滞納問題の解消に十分つながらないという問題です。
質疑で答弁された資格証の世帯が1200世帯程度で推移していることがそのことを示しています。中には相談の結果、資格証が交付された世帯から、保険証が交付される世帯に切り替わる世帯があるかもしれません。しかし、新たに同程度の方が保険証の交付が止められ、資格証の世帯に切り替わっていることが、この数字にはあらわれています。
そもそも資格証が交付される理由となっている滞納の原因は、負担の限度を越えて高すぎる国保税になっていることにあります。この問題を解決することなく、国保加入者であることだけを示し、保険証の代わりにはならない資格証を交付することには問題があると考えます。
以上のことから、資格証の交付を予定する本予算案には問題があり反対すべきです。
介護保険の値上げ
次に議案第86号、いわき市介護保険条例の改正について、討論いたします。これには議案第42号、いわき市介護保険特別会計予算が関連しますので、一括して討論いたします。
議案第86号は、65歳以上の介護保険加入者、いわゆる第1号被保険者の介護保険料を、基準額となる第5段階で、現在より23.9%にあたる1,117円値上げして5,789円とし、合わせて現在9段階となっている所得階層を再編し11段階とする内容を含み、議案第42号は値上げを前提として編成されています。
介護保険料は3年に1度見直される高齢者保健福祉計画で、次期の3年間に想定される介護保険サービスの需要量を算定し、これをまかなうために必要な保険料が算定される仕組みとなっています。
今回の値上げの理由は、2015(平成27)年度から2017(平成29)年度までの次期計画を策定するために介護サービスの需要量を見込んだところ、需要の伸びに対し現行の保険料のままでは3年間で30数億円の不足が見込まれることが一つ。
もう一つは、「介護保険法施行令及び介護保険法の国庫負担金の算定時に関する政令の一部を改正する政令」で介護保険法施行令の一部が改正されたことにより、第1号被保険者と第2号被保険者の負担割合が変更されたこと。
具体的には、5割を公費、保険料を5割とする介護保険の財源のうち、保険料は21%を第1号被保険者が負担し、29%を40歳以上64歳までの第2号被保険者が負担していましたが、この負担比率を変更し、2号被保険者の負担を1%減らし、1号被保険者の負担を1%増やしたことにともない、その増加分を保険料の値上がりに反映させたことがあります。
もともとこの介護保険制度は、高齢者による高齢者の介護、いわゆる老々介護や、社会から孤立した家庭内介護による介護の行き詰まりなどが原因となって不幸な事件が続いたことを背景に、介護の社会化を理由として制定されました。
これによってそれまで措置制度のもとで9割に負担がなかった福祉サービスが有料化され、40歳以上の国民はそれまでなかった保険料を負担することになりました。
それでも制度開始直後は、サービス基盤が弱かったこともあったでしょう、第1号被保険者の負担は基準額で2,514円にとどまりましたが、3年に1度の見直しの中で基本的に値上がりを続け、第2期計画で247円、第3期で1,515円、第5期で396円、それぞれ値上がり続いてきました。
また一方で、第1号被保険者の中心的な生活の糧である年金額の引き下げなどが続いている現状を見た時に、介護保険料の負担は限界を過ぎています。今後、高齢社会がさらに進行することにともない介護需要は増加し、現在の仕組みのままならば介護保険料はいっそう値上がりし、その結果、第1号被保険者の生活は破綻に導かれていくことは火を見るよりも明らかです。過日行われた一般質問では、「介護保険制度はすでに行き詰まっている」との発言がありましたが、この負担の現実をみれば、そのとおりであると思います。
市民福祉常任委員会質疑の中で執行部も、介護保険料の負担が厳しいということを自覚し、市長会等を通じて国庫負担を拡大することなどを要望しており、今後も強く要望していくことを発言しました。ここからは、市民生活の現実から介護保険制度を見た時に、被保険者の負担は限界に達しているとの執行部の認識、自覚を見ることできます。
一方でその執行部の手を縛っているのは、公費負担5割、保険料負担5割という今の制度の仕組みの中では、公費を使って保険料負担を引き下げることはこの負担割合を事実上変更することになるということ、そして国も「制度の根幹にかかわる問題」として、保険料引き下げのための公費負担の投入禁止を強く指導していることがあります。
市は国の強い指導のもと、「制度の根幹にかかわる問題」として、保険料引き下げのための一般財源からの繰り入れを否定しますが、これは別の見方をするならば法と制度を忠実に守ろうとする、行政としての真面目さと見ることもできます。
私の代表質問で、本市に対して防衛省からの自衛官の適齢者名簿の提供の求めがあっても、紙媒体による提供が法に規定されていないことから、法が誰にでも認めている閲覧という方法がとられているとの答弁がありましたが、ここにも同様の行政の法・制度に対する姿勢を見ることが出来ました。
ただ、介護保険の現実を見た時に、この判断で良いのかは問われなければなりません。保険料負担の増加によって、生活が破綻する市民が増加してしまえば、住み良いいわき市などということはできず、本市のまちづくりの方向にも反することになると思います。
保険料抑制のための一般財源からの繰入は、公費負担を増やすことになり、制度の根幹にかかわる問題でできないといいます。
一方では、介護保険料の値上げは市民の暮らしの根幹にかかわることでありますのでそのままにしておくことはできません。
執行部は、その役割として制度と法の枠内で判断せざるを得ないというのであれば、市民の暮らしの観点から判断を下して、執行部が保険料の抑制に向かって行動できる土俵を作るのが市議会の役割であろうと考えます。
市議会としてこのままの引き上げはできないと判断し、本引き上げ案を認めないことになれば、執行部としてこの議会の判断を根拠にして、何らかの方策を取らねばならなくなります。再議を求めるのか、あるいは4月からの介護保険の運営に向けて暫定予算を組んだり、また、その後の本予算を算定したりするのか、執行部にはご苦労を掛けることにはなりますが、それも市民生活を守るために必要なことであります。
執行部と議会は車の両輪と例えられます。この言葉を私は、決して交わることなく、互いに牽制し合いながら市民生活を支える関係を指す言葉だと解しておりますが、今この介護保険料の引き上げを巡っても、市議会の判断が市のとるべき選択肢を増やす動機になるという点において、まさに車の両輪の役割を発揮することになると考えております。
以上のことから議案第86号、及び議案第42号には市議会として否の姿勢を示すべきと考えます。
以上、議案第7号、議案第19号、議案第39号、議案第40号、議案第42号、及び議案第86号について反対の立場から討論してまいりましたが、会派をこえてみな様のご賛同を心からお願いしまして、討論を終わります。
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