SNSで福島県産の米にかんする投稿を見かけたので、投稿者の方と少しやりとりしました。その根拠になっている記事が、原発事故があった年、2011年12月のものだったので、これは違うなと思ったのです。
そのやりとりが自分自身にとってもあらためて勉強になったので、ブログで加筆修正してまとめておきたいと思います。
まず第1回目の返信。
伊藤 浩之 これって2011年12月の記事ですよね。このことがあったので、福島県では2012年からコメの全袋検査を実施しており、基準値を超えるコメは出荷されないことになっています。ちなみに2014年の全袋検査では基準値を超えるコメは一袋もなかったと記憶しています。【終】
これに対して検査方法に対する疑問や、基準値設定や、その値のコメへの表示について意見がありました。
伊藤 浩之 検査の方法及びその考え方は、福島県のHPで確認できます。
⇒ http://www.pref.fukushima.lg.jp/・・・/zenryouzenhukurokensa・・・
つまり基準値を100Bqとした場合、その50%(装置によっては80%)を超えた場合は、ゲルマニウム半導体検出器による詳細検査に回し、その汚染の状況を確認するという方式をとっている。こうして基準値を超えるコメは市場に出回らないようにしているのです。
Cs(セシウム)134とCs137の100Bq基準値をどう評価するかは、こちらにあります。⇒http://www.caa.go.jp/jisin/pdf/120427-1_food_qa.pdf 。
これをどう考えるかは、人それぞれとなってしまうと思いますが、これって日常の食生活の中で、自然界にあって普通に食している食品の放射性カリウムの含有量の違いの中におさまってしまう値だと思います。と考えた時に、この100bqをどうとらえるのか、ということになります。
最後に、ベクレル数の表示の問題は、自分としてこうして勉強してきて、なぜ表示しないか分かりました。
基準値を超える、越えないという数値は、あくまで概算値です。概算だからこそ、その余白を大きくとって判断しているわけです。ベクレル表示があればいいのですが、そもそも大雑把に測って、基準値を超えないようにしようという測り方ですから、誤差が生じることが前提なわけです。例えば40Bqと表記されたものが、測りなおしたら80Bqでした、となれば、検査の信頼性が失われてしまうと行政は考えるでしょう。
精密検査では、時間がかかりすぎて検査を終えることができないのです。私は、こうした検査の特性を把握して考えることが必要だと思うのです。少なくとも、3年前の情報を根拠に、今を語るのは間違いだと思っています。【終】
さらに、人工放射能と自然放射能は違うということと、基準値に関する疑問が寄せられたので、次のように返信をしました。
伊藤浩之 放射能は、放射線を出す能力のことを言い、放射能を持つ放射性核種から放出される放射線は、γ線、β線、α線などがあり、放射線の種類が同じであれば、自然であれ、人工であれ、当然に同じ性質を持つようです。
自然界には、カリウム(K)40という放射性物質があり、γ線を出して崩壊しています。同じく、核実験等により拡散した人工の放射性物質であるセシウム(Cs)137が原発事故前から存在し、同じくγ線を出しています。Cs137のγ線を浴びたから病気になる、K40のγ線の線を浴びたから病気にならない。人体がこんな線源の違いを識別できるはずはないのです。
また、基準値の考え方については消費者庁が出しているパンフレットで解説しています。 http://www.caa.go.jp/jisin/pdf/141113_food_qa.pdf
これを大丈夫ととらえるかどうか、ということになりますが・・。【終】
さらにさらに、矢ヶ崎さんや小出さんなどが、内部被曝の危険性を指摘するのはなぜか、という問いかけがありました。何ででしょうね・・ということで、次のように返信しようと思います。
伊藤浩之 おはようございます。専門家ではないので、私には分からないことがたくさんあることを前提に読んでください。考え方だけは示すことができると思います。
そもそも、私たちは、原発事故がなくても内部被曝をしています。食べ物等を通じてカリウム(K)40を取り込み、だいたい4,000ベクレル(以下、bq)とか、6,000bqとかいった放射性核種を体の中に持っているようなのです。
1bqは1秒間に1発の放射線を出すことを意味しますから、私たちは、食物を通して取り込んだK40によって、毎秒数千bqの体内被曝をしていることになります。環境中にCsがあればこれを体内に取り込む可能性もあり、Csによる体内被曝も問題になるのはその通りだと思います。
そこで放射線の人体への作用を考えてみます。
人間が体内に放射性核種を持っているということは、人間の遺伝子が常に放射線による内部被曝の影響を受けているということを示します。放射線によって遺伝子が傷つけられているわけです。この影響で、運悪く病気になる人もいるかもしれません。しかし、多くの人は病気にならず健康に過ごしています。これが示すのは、悪影響を受けても、遺伝子はそれを修復する能力も持っているということです。
問題になるのは、被ばくの程度です。
例えば通常4,000bqの放射性核種を持っている人物が、1万5,000bqになったらどうなるだろう、2万bqになったらどうなるだろう、ということです。ただここであげた数値は、放射性セシウムの体内での均衡量が分からないので、この数値が妥当かどうかは分からないということを前提として、例え話として読んでください(実際にはもっと大きい値が問題になるかもしれないので・・、あくまで考え方を分かりやすく示す例えの数値です)。
体内の放射性核種の量が増えれば、放射線がより頻繁に遺伝子を傷つけることにもなります。こうなると遺伝子の修復スピードが間に合わず、傷ついたままの遺伝子がさらに傷つけられて、結果、異常が固定化してしまう怖れがでてきます。この遺伝子の異常が、病気を発生させてしまうわけです。
その影響の出かたは一概には言えないと思いますが、少なくとも今、示されている基準は、先の消費者庁パンフにあるように一定の根拠を持って、影響が極力少ない数値を示しているのではなのではないか、と考えています。
記事の中で矢ヶ崎氏が言っている「正確には、『今は大丈夫です。でも先々は病気になる可能性もありますし、何とも言えません』と言うべきでしょう。」ということは、それはそれで妥当なのかもしれません。
そこでこの言葉の示す意味って何なのか、考えてみたいと思います。
一つは、矢ヶ崎氏の言う「何ともいえない」は、時間が経過して結果が出てみないと分からないということを意味しています。
私たちが福島で体験しているの日々の線量は、急性障害をおこすレベルではありません。双葉郡からの避難者の関連死など不幸な事件はありますが、事故から4年が過ぎても多くの方が元気に生活していらっしゃいます。
問題になるのは、ここから10年先、20年先、30年先(私の場合はすでにその到達すべき年令となっていますが)に、発症するであろう病気をどうとらえるかということになります。
将来、福島などに他の地域に比べて特定のガンが多発するような事態が発生することがあれば、原発事故の影響と考えることは十分可能です。しかし、現時点では何ともいえません。一方、一般的に人間は、生きてきた時間が長くなると、病気が起こりやすくなります。原発事故がなくても、生活習慣病が発症するかもしれません。タバコ、飲酒、その他の影響が人体に影響を与え、病気になるかもしれません。それでなくても日本人の2人に1人はガンになり、3割程度だったと思うのですが、それだけの人がガンで亡くなっている現実があります。
ということは、今回の原発事故が将来引き起こす影響は、日常生活で出てくるリスクの中に、埋もれてしまう可能性があるということになります。矢ヶ崎氏の言う「何ともいえない」には、このような形で分からないということも含まれてきます。将来、何らかの影響が出るとしても、それが日常生活のリスクに埋もれる程度であれば、さほど問題にならないということになるでしょう。
私も地元でとれた米を食べ、また自宅の畑で義母が作る野菜を食べ、同じく先だっては自宅裏で義母が栽培したフキノトウの天ぷらをいただきました。福島県の農業試験場の研究で、植物の栄養分としてカリウム分が十分あれば、セシウムは作物に吸収されないことが分かっています。いずれも施肥しながらきちんと作っているものなので、問題が無いと考えて食べています。毒を食べているなんてこれっぽちも思っていません。農業試験場の研究があったために、安心してとることができる行動です。
同時に、そうはいっても余計な被ばくはしないことが良いので、福島県は先のコメの検査をはじめ、様々な食品検査の体制を整え、問題のある食品は流通させないよう努力をしているわけです。
専門家の中でも、例えば野口邦和さんや安斎育郎さんのように、福島の現実を冷静に見つめて現状に対処することを要請している専門家もいます。その考え方については、最近「放射線被曝の理科・社会~4年目の福島の真実」(野口邦和氏他著、かもがわ出版)などで知ることができると思います。
よろしければ、これまで学んできたものと、比較・検証するためにも、ご一読してみてはいかがでしょうか。【終】
カリウムがあればセシウムは吸収されないの、ストロンチウムやプルトニウムの影響はないの。こんな疑問がよせられました。
伊藤浩之 前の投稿で福島県農業試験場と書いていましたが、間違いで福島県農業総合センターでした。ここでさまざま研究し、研究論文を発表していますので、のぞいてみてください。
ちなみに福島県の農業振興課のHpで、次のようなパンフレットが発行されています。
https://www.pref.fukushima.lg.jp/upl・・・/attachment/61508.pdf
検査される放射性核種は放射性セシウムだけです。
その理由の一つは、今回の事故によって放出された放射性性核種は、半減期の短い放射性ヨウ素と、比較的長いCs134及びCs137が多いく、ご心配のSr(トストロンチウム)やPu(プルトニウム)は、非常に少ない比率となっていることが分かっており、Csの動向を探ることで、その他の核種の汚染状況が、十分に推定できるからです。つまりCsの汚染の状況が低いレベルにあるということは、それに比例してSrやPuは十分に低い値になるということが分かっているということです。
ちなみに県内でも土壌中のSrを検査した事例はありますが、そこで検出されたSrは、過去の核実験に由来するものと推測されるという報道を読んだ記憶があります。
二つ目に、Srはβ線を出す核種ですが、これの検査は記憶では1週間程度かかり、迅速な検査ができないということがあったと思います。前記のように、Cs検査で動向が推測できるのならば、Srの検査に時間を取らず、他に必要な検査を実施した方が良いという考え方をしているのだと記憶しています。
原子力機構が2011年に公表した資料を見つけました。それによると、環境中に放出されたSr90の量は、Cs137の約100分の1であり、土壌中の比率は、700分の1から4000分の1だったとされています。
作物を考えた場合、土壌中のSr90が問題になりますが、たとえばCsが基準値上限の100bq検出された米がSr90を吸収していたとして、土壌中最大値であった700分の1を例にとってみても、その汚染度は0.15bqということになります。
こう書きながら、そもそも米はSrを吸収し、米粒の部分に蓄えるのだろうかという疑問が湧いてきましたが、すみません調べに時間もかかるので、ここは疑問のまま残します。
ウィキペディアによると、Puに至っては、5つの同位体元素があるようですが、最大でPu241の0.0012(×10の15乗)、Pu238が0.000019(同)、Pu239と240がそれぞれ0.0000032(同)、Pu242は記載なし、という状況です。
蓄積が問題になるという部分については少し計算してみました。
Sr90の経口実効線量(食べた場合ですね)は、2.8×10の-8乗です。この単位はシーベルト(㏜)ですので、μSvに換算すると0.028μ㏜/bqということになると思います。仮にSr90を100bq摂取した場合の内部被ばくの影響は2.8μ㏜ということになります。
ではSr90を100bq摂取するためにはどのくらいの期間を要するかというと、先ほどのCs137を100bq検出した米を食べ続けると仮定すると、日本人1人当たりの1年間の米消費量が2010(平成22)年で59kgですので、こんな計算式になりますか・・。
100÷(0.15×59)=約11年
現実には、100bqというものはほとんどないわけで、これ以上の期間を要することは間違いありません。そしてその期間での人体への影響が2.8μ㏜であり、仮に80年生きて、生物学的半減期などの要素を考えずに丸ごと影響を受けたとしてその値が20μSvということになります。
現実には、これだけの被ばくには至らないと思いますから、この値をどうみるか、ということになりますね。計算が間違っていないとしてですが・・。
算数が苦手の私としては、普段やりなれないことをして、頭が痛くなってきました。まあ、こんなところです。
最初にお願いしたように、どんな見方をしてもそれは、いろいろなとらえ方が存在することも事実ですので、少なくとも最初の投稿で引用した資料が古く、その後の対応が変わっていることを踏まえて、その上で批判するならしてほしいということが一つ。
もう一つは、原発に反対であろうと、賛成であろうと、様々な見方に視野を広げて検証し、最終的な判断してほしいということです。
また、長々とすみませんでした。お付き合いいただきありがとうございます。
そのやりとりが自分自身にとってもあらためて勉強になったので、ブログで加筆修正してまとめておきたいと思います。
まず第1回目の返信。
伊藤 浩之 これって2011年12月の記事ですよね。このことがあったので、福島県では2012年からコメの全袋検査を実施しており、基準値を超えるコメは出荷されないことになっています。ちなみに2014年の全袋検査では基準値を超えるコメは一袋もなかったと記憶しています。【終】
これに対して検査方法に対する疑問や、基準値設定や、その値のコメへの表示について意見がありました。
伊藤 浩之 検査の方法及びその考え方は、福島県のHPで確認できます。
⇒ http://www.pref.fukushima.lg.jp/・・・/zenryouzenhukurokensa・・・
つまり基準値を100Bqとした場合、その50%(装置によっては80%)を超えた場合は、ゲルマニウム半導体検出器による詳細検査に回し、その汚染の状況を確認するという方式をとっている。こうして基準値を超えるコメは市場に出回らないようにしているのです。
Cs(セシウム)134とCs137の100Bq基準値をどう評価するかは、こちらにあります。⇒http://www.caa.go.jp/jisin/pdf/120427-1_food_qa.pdf 。
これをどう考えるかは、人それぞれとなってしまうと思いますが、これって日常の食生活の中で、自然界にあって普通に食している食品の放射性カリウムの含有量の違いの中におさまってしまう値だと思います。と考えた時に、この100bqをどうとらえるのか、ということになります。
最後に、ベクレル数の表示の問題は、自分としてこうして勉強してきて、なぜ表示しないか分かりました。
基準値を超える、越えないという数値は、あくまで概算値です。概算だからこそ、その余白を大きくとって判断しているわけです。ベクレル表示があればいいのですが、そもそも大雑把に測って、基準値を超えないようにしようという測り方ですから、誤差が生じることが前提なわけです。例えば40Bqと表記されたものが、測りなおしたら80Bqでした、となれば、検査の信頼性が失われてしまうと行政は考えるでしょう。
精密検査では、時間がかかりすぎて検査を終えることができないのです。私は、こうした検査の特性を把握して考えることが必要だと思うのです。少なくとも、3年前の情報を根拠に、今を語るのは間違いだと思っています。【終】
さらに、人工放射能と自然放射能は違うということと、基準値に関する疑問が寄せられたので、次のように返信をしました。
伊藤浩之 放射能は、放射線を出す能力のことを言い、放射能を持つ放射性核種から放出される放射線は、γ線、β線、α線などがあり、放射線の種類が同じであれば、自然であれ、人工であれ、当然に同じ性質を持つようです。
自然界には、カリウム(K)40という放射性物質があり、γ線を出して崩壊しています。同じく、核実験等により拡散した人工の放射性物質であるセシウム(Cs)137が原発事故前から存在し、同じくγ線を出しています。Cs137のγ線を浴びたから病気になる、K40のγ線の線を浴びたから病気にならない。人体がこんな線源の違いを識別できるはずはないのです。
また、基準値の考え方については消費者庁が出しているパンフレットで解説しています。 http://www.caa.go.jp/jisin/pdf/141113_food_qa.pdf
これを大丈夫ととらえるかどうか、ということになりますが・・。【終】
さらにさらに、矢ヶ崎さんや小出さんなどが、内部被曝の危険性を指摘するのはなぜか、という問いかけがありました。何ででしょうね・・ということで、次のように返信しようと思います。
伊藤浩之 おはようございます。専門家ではないので、私には分からないことがたくさんあることを前提に読んでください。考え方だけは示すことができると思います。
そもそも、私たちは、原発事故がなくても内部被曝をしています。食べ物等を通じてカリウム(K)40を取り込み、だいたい4,000ベクレル(以下、bq)とか、6,000bqとかいった放射性核種を体の中に持っているようなのです。
1bqは1秒間に1発の放射線を出すことを意味しますから、私たちは、食物を通して取り込んだK40によって、毎秒数千bqの体内被曝をしていることになります。環境中にCsがあればこれを体内に取り込む可能性もあり、Csによる体内被曝も問題になるのはその通りだと思います。
そこで放射線の人体への作用を考えてみます。
人間が体内に放射性核種を持っているということは、人間の遺伝子が常に放射線による内部被曝の影響を受けているということを示します。放射線によって遺伝子が傷つけられているわけです。この影響で、運悪く病気になる人もいるかもしれません。しかし、多くの人は病気にならず健康に過ごしています。これが示すのは、悪影響を受けても、遺伝子はそれを修復する能力も持っているということです。
問題になるのは、被ばくの程度です。
例えば通常4,000bqの放射性核種を持っている人物が、1万5,000bqになったらどうなるだろう、2万bqになったらどうなるだろう、ということです。ただここであげた数値は、放射性セシウムの体内での均衡量が分からないので、この数値が妥当かどうかは分からないということを前提として、例え話として読んでください(実際にはもっと大きい値が問題になるかもしれないので・・、あくまで考え方を分かりやすく示す例えの数値です)。
体内の放射性核種の量が増えれば、放射線がより頻繁に遺伝子を傷つけることにもなります。こうなると遺伝子の修復スピードが間に合わず、傷ついたままの遺伝子がさらに傷つけられて、結果、異常が固定化してしまう怖れがでてきます。この遺伝子の異常が、病気を発生させてしまうわけです。
その影響の出かたは一概には言えないと思いますが、少なくとも今、示されている基準は、先の消費者庁パンフにあるように一定の根拠を持って、影響が極力少ない数値を示しているのではなのではないか、と考えています。
記事の中で矢ヶ崎氏が言っている「正確には、『今は大丈夫です。でも先々は病気になる可能性もありますし、何とも言えません』と言うべきでしょう。」ということは、それはそれで妥当なのかもしれません。
そこでこの言葉の示す意味って何なのか、考えてみたいと思います。
一つは、矢ヶ崎氏の言う「何ともいえない」は、時間が経過して結果が出てみないと分からないということを意味しています。
私たちが福島で体験しているの日々の線量は、急性障害をおこすレベルではありません。双葉郡からの避難者の関連死など不幸な事件はありますが、事故から4年が過ぎても多くの方が元気に生活していらっしゃいます。
問題になるのは、ここから10年先、20年先、30年先(私の場合はすでにその到達すべき年令となっていますが)に、発症するであろう病気をどうとらえるかということになります。
将来、福島などに他の地域に比べて特定のガンが多発するような事態が発生することがあれば、原発事故の影響と考えることは十分可能です。しかし、現時点では何ともいえません。一方、一般的に人間は、生きてきた時間が長くなると、病気が起こりやすくなります。原発事故がなくても、生活習慣病が発症するかもしれません。タバコ、飲酒、その他の影響が人体に影響を与え、病気になるかもしれません。それでなくても日本人の2人に1人はガンになり、3割程度だったと思うのですが、それだけの人がガンで亡くなっている現実があります。
ということは、今回の原発事故が将来引き起こす影響は、日常生活で出てくるリスクの中に、埋もれてしまう可能性があるということになります。矢ヶ崎氏の言う「何ともいえない」には、このような形で分からないということも含まれてきます。将来、何らかの影響が出るとしても、それが日常生活のリスクに埋もれる程度であれば、さほど問題にならないということになるでしょう。
私も地元でとれた米を食べ、また自宅の畑で義母が作る野菜を食べ、同じく先だっては自宅裏で義母が栽培したフキノトウの天ぷらをいただきました。福島県の農業試験場の研究で、植物の栄養分としてカリウム分が十分あれば、セシウムは作物に吸収されないことが分かっています。いずれも施肥しながらきちんと作っているものなので、問題が無いと考えて食べています。毒を食べているなんてこれっぽちも思っていません。農業試験場の研究があったために、安心してとることができる行動です。
同時に、そうはいっても余計な被ばくはしないことが良いので、福島県は先のコメの検査をはじめ、様々な食品検査の体制を整え、問題のある食品は流通させないよう努力をしているわけです。
専門家の中でも、例えば野口邦和さんや安斎育郎さんのように、福島の現実を冷静に見つめて現状に対処することを要請している専門家もいます。その考え方については、最近「放射線被曝の理科・社会~4年目の福島の真実」(野口邦和氏他著、かもがわ出版)などで知ることができると思います。
よろしければ、これまで学んできたものと、比較・検証するためにも、ご一読してみてはいかがでしょうか。【終】
カリウムがあればセシウムは吸収されないの、ストロンチウムやプルトニウムの影響はないの。こんな疑問がよせられました。
伊藤浩之 前の投稿で福島県農業試験場と書いていましたが、間違いで福島県農業総合センターでした。ここでさまざま研究し、研究論文を発表していますので、のぞいてみてください。
ちなみに福島県の農業振興課のHpで、次のようなパンフレットが発行されています。
https://www.pref.fukushima.lg.jp/upl・・・/attachment/61508.pdf
検査される放射性核種は放射性セシウムだけです。
その理由の一つは、今回の事故によって放出された放射性性核種は、半減期の短い放射性ヨウ素と、比較的長いCs134及びCs137が多いく、ご心配のSr(トストロンチウム)やPu(プルトニウム)は、非常に少ない比率となっていることが分かっており、Csの動向を探ることで、その他の核種の汚染状況が、十分に推定できるからです。つまりCsの汚染の状況が低いレベルにあるということは、それに比例してSrやPuは十分に低い値になるということが分かっているということです。
ちなみに県内でも土壌中のSrを検査した事例はありますが、そこで検出されたSrは、過去の核実験に由来するものと推測されるという報道を読んだ記憶があります。
二つ目に、Srはβ線を出す核種ですが、これの検査は記憶では1週間程度かかり、迅速な検査ができないということがあったと思います。前記のように、Cs検査で動向が推測できるのならば、Srの検査に時間を取らず、他に必要な検査を実施した方が良いという考え方をしているのだと記憶しています。
原子力機構が2011年に公表した資料を見つけました。それによると、環境中に放出されたSr90の量は、Cs137の約100分の1であり、土壌中の比率は、700分の1から4000分の1だったとされています。
作物を考えた場合、土壌中のSr90が問題になりますが、たとえばCsが基準値上限の100bq検出された米がSr90を吸収していたとして、土壌中最大値であった700分の1を例にとってみても、その汚染度は0.15bqということになります。
こう書きながら、そもそも米はSrを吸収し、米粒の部分に蓄えるのだろうかという疑問が湧いてきましたが、すみません調べに時間もかかるので、ここは疑問のまま残します。
ウィキペディアによると、Puに至っては、5つの同位体元素があるようですが、最大でPu241の0.0012(×10の15乗)、Pu238が0.000019(同)、Pu239と240がそれぞれ0.0000032(同)、Pu242は記載なし、という状況です。
蓄積が問題になるという部分については少し計算してみました。
Sr90の経口実効線量(食べた場合ですね)は、2.8×10の-8乗です。この単位はシーベルト(㏜)ですので、μSvに換算すると0.028μ㏜/bqということになると思います。仮にSr90を100bq摂取した場合の内部被ばくの影響は2.8μ㏜ということになります。
ではSr90を100bq摂取するためにはどのくらいの期間を要するかというと、先ほどのCs137を100bq検出した米を食べ続けると仮定すると、日本人1人当たりの1年間の米消費量が2010(平成22)年で59kgですので、こんな計算式になりますか・・。
100÷(0.15×59)=約11年
現実には、100bqというものはほとんどないわけで、これ以上の期間を要することは間違いありません。そしてその期間での人体への影響が2.8μ㏜であり、仮に80年生きて、生物学的半減期などの要素を考えずに丸ごと影響を受けたとしてその値が20μSvということになります。
現実には、これだけの被ばくには至らないと思いますから、この値をどうみるか、ということになりますね。計算が間違っていないとしてですが・・。
算数が苦手の私としては、普段やりなれないことをして、頭が痛くなってきました。まあ、こんなところです。
最初にお願いしたように、どんな見方をしてもそれは、いろいろなとらえ方が存在することも事実ですので、少なくとも最初の投稿で引用した資料が古く、その後の対応が変わっていることを踏まえて、その上で批判するならしてほしいということが一つ。
もう一つは、原発に反対であろうと、賛成であろうと、様々な見方に視野を広げて検証し、最終的な判断してほしいということです。
また、長々とすみませんでした。お付き合いいただきありがとうございます。
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