伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む元市議会議員。1960年生まれ。最近は遠野和紙に関わる話題が多し。気ままに更新中。

入学おめでとう

2020年04月06日 | 学校教育
 考えてみれば、新入生たちも同じ時間を過ごしたであろうこの9年間には、様々な重大事態が発生してきた。この重大事態を子ども達も大人たちと共有してきたのだ。

 今年、中学校に入学した生徒達は、2007(平成19)年度に生まれている。4歳の頃に東日本大震災と原発事故による放射性物質の放出を体験し、大人たちとともに不安な時間を過ごし、甲状腺検査やホールボディカウンタによる内部被ばく検査など、他ではありえない特別の経験を積み重ねてきた。

 また、小学校の新入生は、2013(平成25)年度に生まれている。当時は、震災・原発事故から2年がたっている。しかし、原発事故で放出された放射性物質に社会的に強い不安が残っていた。鮫川村青生野地区で環境省が実施を計画した、農業系廃棄物の焼却実証実験の開始に向けて、前年に市議会で安全確保の請願が採択されていたが、市民には不安の声が残っており、
市がホールボディカウンタによる体内被曝の検査を開始していたものの検査できていない市民たちには不安といらだちが蓄積し、
また、子ども達の甲状腺検査に向けた準備で先行検査が進められていたなど、
社会的にも、心理的にも、まだまだ揺れが大きかった時代に生まれている。

 この東日本大震災・原発事故から9年の間に、本市では、東日本台風(2019年台風第19号)による本市最大規模の水害で多数の市民が被災し、また、2020年は、潜伏期が長いことなどから感染防止がやっかいで、重篤に陥ると命を失いかねない新型コロナウイルスが襲ってきた。

 本市では、この新型コロナウイルスの感染は、大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」を下船した1名の感染(退院済み)にとどまっており、現在のところ、他に感染事例が発見されていない状況ではある。しかし、いつ何時、市内にも感染が広がるかもしれないという、危機的状況が常に隣り合わせしており、この中での入学式となった。

 それだけに、健康を維持することは、学びをすすめる最大の課題になると思う。健やかに勉学ができるよう、手洗い、うがい、そしてマスクの着用を忘れずに、感染防止に努力しながら新しい学校生活を有意義に送って欲しいと思う。

 学校生活では、先生方に教えられたことを学ぶだけではなく、学ぶ中で気づいた疑問を自分で解消する学び方・調べ学習にも取り組むことがより深い学びに役立つと思う。

 最近、テレビでも取り上げられ、書籍化もされた「桃太郎は盗人なのか?」(新日本出版社)という本を読んだ。当時小学校5年生だった女子児童が、福沢諭吉が「桃太郎は盗人だ」と言っていたことを知り、図書館の活用や司書等のアドバイスも受けながらその真相に迫ろうとした調べ学習の記録だ。書籍「盗人なのか?」に表現された、とことん調べ、考察を繰り返す、小学5年生の姿勢には舌を巻く思だった。新入生のみなさんにも、そのような学習姿勢に学んでいただきたい。そう思う。

 調べ、考え、その上に膨らんだ疑問を解消するためにまた調べ、考える――こうした考える循環が、より深い学びにいざない、その後の学習する力を養っていくものと思う。学習の効果が一番高いのは、本人がその気になった時。フィンランドでは同じスタートラインに立たせて子ども達に学習をさせるようなことはせず、本人が興味・関心を持った時から学習をスタートさせると、同国の教育事情を紹介した本で読んだことがある。疑問を持った時が、学習する意欲を本人が持った時だ。その意欲を活かす学習に自らもチャレンジしてほしいのだ。

 6日の入学式は、新学期の学習の始まりでもある。
 安倍首相の突然の自粛要請で、3月4日から休校となり、そのまま春休みに突入し、児童・生徒は約1ヶ月間の長期休暇を過ごしてきた。前学年の3学期で学べなかった分も含めて、新しい学年での学習が始まっていくことになる

 児童・生徒のみなさんが、安心して学ぶことができるようにするのは、大人の責任となる。新型コロナウイルスの感染拡大という懸念の中で、空気の入れ替えを適宜行い「密閉」を避ける・多人数が集まる「密集」を避ける・間近で会話や発声をする「密接」を避けるという「3つの密」の環境を作り、感染防止に努めることは、安心して学ぶ環境毒理のために大人が心がけなければならない注意点となるだろう。

 もともと学校は、多人数の子ども達が一つの空間を共有しており、「3つの密」とは正反対の生活スタイルが求められてきた場所だ。その場所で、マスクの不足をどうするのか、児童・生徒間の距離をいかに保つのかなどの生活上の配慮に、学校及び大人社会の責任として心を砕いていかなければならないと思う。もちろん、新入生のみなさんの安心した生活に向けて、市議会議員としても心を尽くすことが求められている。

 何はともあれ、新入学をしたみなさんには祝意を伝えたい。おめでとう。


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