伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

アンケート結果にも政府・東電の処理水説明の取り組みの遅さが鮮明

2023年02月06日 | 原発・エネルギー
 公表された評議会の資料は、経済産業省のホームページで資料を閲覧することができる。


 資料を見ると、経産省等の取り組みによる処理水対応に関する認識の浸透具合は次の通りになっている。



 上の表は評議会に提出された資料から抜粋したものだが、調査結果を比較するとALPS処理水の認知率も海洋放出の賛成も、幾分増えている。しかし、全国の認知率は55.3%に止まり、福島県在住者の84.2%に遠く及ばない。

 また、処理水の海洋放出に賛成も全国で46%、認知度が高い福島県在住者でも50.9%にすぎない。処理水についての認知が高いのに、海洋放出には半分程度しか賛成していない現状。そこには福島県民の中で風評被害への懸念が強い現状を示しているように思える。

 アンケート結果の総括的意見では、「処理水の認知率やその海洋放出への賛成の割合について向上が見られている」としている。確かにそうなのかもしれない。しかし、より見るべきは、認知も賛成もこれしかない現状なのだと思う。

 政府は、処理水の放出時期を今年の「春から夏」の間に始めるとしている。事故後の第一原発の事故対応と廃炉に向けた作業過程で、何らかの事故等の発生で風評が強まったことは記憶に新しい。全国的に処理水の認知率が半数程度、しかもその内容には「何となく見聞きしたことがある」も含まれている。この程度の認知でトリチウムを含む処理水への理解が深まったとは考えにくい。理解されていない状況で、政府の方針通りに処理水放出を実施するなら風評被害の再燃は必死だ。

 アンケート結果が説明された福島評議会の映像記録を見ると、福島県や関係市町村等が処理水や海洋放出等の全国的広報を引き続き強化することを求めたことに対して、経産省担当者等が、今後も必要な対応をする旨回答している。


 回答通りに、国民に向けた説明や広報を強め国民的合意を作り上げ、被災者や被災地が風評被害の憂き目にあわない状況作りに全力を尽くすことが必要だろう。

 そこで大切なのは、「春から夏」として実施時期をいったん棚上げすることだと思う。認知や賛否の現状から考えて、その時期までに国民的合意ができるとは思えない。

 そもそも原発で事故が発生して以降、風評被害克服のために事故処理や廃炉に向けた取り組み、トリチウム等放射性核種等について、継続的に国民的説明に取り組み、広報を強めることが必要だった。

 私が市議会議員だった2014年4月に開かれた「いわき市議会東日本復興特別委員会」の場で、運転されている原発からトリチウム等の放射性核種が国の基準値内で放出されてきたことを説明するよう、経産省担当者や東電関係者に求めたことがある。モニタリング井戸からくみ上げた地下水を、トリチウムを1,500ベクレル以下になるよう薄めて海洋放出することが問題になっていた時期だ。国や東電は「(事故)前から出して(放出して)いるから大丈夫」と捉えられかねないと消極的な姿勢だった。事故から3年しか経っていないという時期的な関係から躊躇があったのかもしれないが、広報強化の問題提起は当時からあったということだ。その時から9年経っている。その間、処理水や事故の対応関係の説明を国・東電が能動的かつ積極的に取り組んできたならば、今回とったようなアンケートでは、その結果は異なっていたかもしれない。

 政府や東電にこの間の取り組みを反省する気持ちがあるのかどうかは知らない。しかし、必要な規模や質での取り組みを展開せず、政府の都合で海洋放出を強行することは地元被災者のことを考えてもあってはならないことだと思う。風評被害に対する賠償があるから大丈夫とは決して鳴らないはずだ。

 まずは、公表したスケジュールはいったん凍結して、国民に向けて原発事故対応や処理水処分の妥当性と必要性、そしてトリチウムを含む放射性核種の性質や人体への影響をしっかりと説明し、処理水対応への国民的合意を得た上で、処分の方法や実施時期を決める。こうした対応をとることが必要だ。今度のアンケート結果はそのことを示していると思う。


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