雲のたまてばこ~ゆうすげびとに捧げる詩とひとりごと

窓の雨つぶのような、高原のヒグラシの声のような、青春の日々の大切な箱の中の詩を、ゆうすげびとに捧げます

アンジェリーナ

2011年11月10日 | ポエム

 アンジェリーナ

 食欲の秋は大好きだ。別に秋に限らず1年中食欲はあるが。
 秋で楽しみな食材の一つは、栗。季節限定のいろんな栗のお菓子を食べまくる。
 ああ、ついに我がブログで禁断の食べ物の話をしてしまった。(ん?もうすでに何度も食べ物のネタが登場していたか‥‥)
 僕は食いしん坊だ。お酒も甘いものも好きな、例えばあんこをなめながら、お酒が飲める食い意地の張った一番イヤしい男です。
 食べものの話を始めたら、ネタがつきない。でも決してグルメではないし、高級品とそうでないものの違いも多分わかりません。だから単なる食いしん坊だ。
 最近は食べたものの記憶も残らない。家人に「あなたには高級なものを食べさせる価値がない」とも言われている。
 そこで美味しいものに出会ったら、禁を破り、時々はこのブログでお話をし記録しておきたいと思う。
 今は秋、栗を使ったモンブランの話。
 今日のブログのお題、落ち葉とアンジェリーナでモンブランを思い浮かべたあなたは、かなりのスィーツ好きですね。 
 さて僕は若い頃、パリに2年程住んでいたことがある。
 ルーブル美術館や旧オペラ座に近い、パリのほぼ真ん中、リボリー通りにあるアパルトマンなどに寝起こし、近くの日本料理店に勤めていた。週に一度の休日には、すぐ横のチュルリー公園やセーヌ河岸を散歩したり、すぐ近所の英国書店の2階にあるイングリッシュ・ティールームに出かけ、ミルクティーとスコーンなんかでアフタヌーンティーを楽しみながら数時間も本を読んだり、手紙を書いたりして贅沢な時間を一人で過ごした。
 普段はそれこそ近所のカフェでエスプレッソやたまにはビールやワインを立ち飲みのカウンターで飲んだりするのだが、休日は気分を変えて落ち着いた店のテーブル席で時間を過ごすことは、小さな贅沢だった。
 住んでいたアパルトマンの3軒となりにもう一軒、めったに行かないが休日に出かけるお気に入りのサロン・ド・テ(喫茶店)があった。そこのお目当てはモンブランというケーキだった。フランス語で「白い山」というお菓子は、メレンゲかスポンジの台に生クリームをのせ、栗のペーストをたっぷりとかけた山に白い粉砂糖がふりかけてある日本でもおなじみのケーキだ。知らなかったが、モンブランというケーキは、この店が考案したという。その元祖モンブランは、とても大きくて頭が痛くなる程甘いのだが、なんと言ってもフランス産の栗のペーストが抜群に美味しく、濃くのある生クルームもなかなか日本では味わえない。土台のメレンゲが湿気らずぱりっとしているところも美味しい。今や日本のケーキ屋さんの定番ケーキの一つであるモンブラン。和栗のペーストも美味しいがやはりモンブランはフランス産の栗のペーストが格段に美味しい。と、僕は思う。
 日本に帰国してしばらくすると、バブル景気に沸く東京になんとそのお店の支店が出来た。そして僕が状況した際や、関東に住む姉が帰郷する歳のお土産候補ナンバーワンだった。その店のモンブランは、大きさこそハーフサイズが中心だが日本人にも受け入れられ、デパ地下を中心に全国に出店して行く。信じられないことに、僕の郷土のデパート「鶴屋」でも、全国うまいもの展だったか、その店のモンブランが売られたことがあり、感慨深く思った。今でこそ熊本のケーキ屋さんでも500円以上のケーキがショーケースに並んでいる店がたくさんあるが、さすがに当時の熊本では、ケーキ1個の価格としては、まだまだ驚きの価格だったかもしれない。今では、福岡三越に出店し、博多に行った際の定番お土産となっている。
 まだ東京でしか買えず、めったに口に出来ないモンブランが手に入り、家族で食後のお茶を準備していたときのことだ。
 当時幼犬だった我が家のブラック・ラブラトールのノアを家の中で放し飼いをしていた。
 箱から出してテーブルに置いていたモンブランを(うっかり端に置いていたのだ)、狙いを定めテーブルに顔を乗り上がるように斜めに大きく口を開き、ノアはがぶりとひと噛みで横取りしたのだ。止める間もないあっという間の出来事で、目の前で僕はしっかりと見ていた。それは映画「ジョーズ」のサメが船を襲う表情にそっくりだった。
 ノアは、ほとんどドッグフードで暮らしている。ときどき飛んで来るトンボやセミをオヤツで食べるくらいだ。しかし、モンブランを食べて以来、我が家でケーキの箱を開くと、味を覚えているのか、鼻のいいノアはクーンクーンと騒ぎ出す。
 唯一食べたケーキがアンジェリーナのモンブランとは罪作りだったかもしれない。
(2011.11.14)
 
 
 


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