雲のたまてばこ~ゆうすげびとに捧げる詩とひとりごと

窓の雨つぶのような、高原のヒグラシの声のような、青春の日々の大切な箱の中の詩を、ゆうすげびとに捧げます

鷹と巨人

2011年11月21日 | ポエム


 鷹と巨人

 「巨人・大鵬・卵焼き」
 昭和30年の半ば、日本人の多くの人の好きなものを表すそんな言葉があったけど、今はどうなんだろう。
 僕は、自慢ではないが自らスポーツをすることについては、苦手でほとんど経験がないし、これからやりたいという意欲もない。でもスポーツ観戦は嫌いではない。
 小さい頃は、大相撲が大好きだった。母方の祖母が特に相撲好きだったせいで、一緒に見ていた僕も相撲が好きになった。しかし祖母の好みの影響で、小さい頃好きだったのは大鵬ではなかった。
 野球は、漠然とした巨人ファンだった。当時の監督が郷土出身の川上哲治さんだったこともあり、回りは当然巨人びいきだった。と、言うより大鵬と卵焼きと並んで、日本人の多くが野球は巨人だった。
 プロ野球を熱心に見出したのは、高校を卒業して上京した後で、小さい頃応援していた巨人をそのまま贔屓にしていて、各選手の打率や防御率などもチェックする位、熱心に毎日一喜一憂していた。行く気があれば、いつでも球場に行けたのだが、経済的にも余裕がなく、とうとう当時は行く機会が無かった。唯一、兄が上京した際に、いよいよ後楽園球場に行くことになったが、その日は玉川の堤防が崩落するような歴史的な大雨となり巨人戦は中止となった。生の長嶋選手を見ることが出来る最後のシーズンだった。
 今から20年程前までは、それでも巨人戦の野球放送を毎日のように見ていた。阪神戦のときは、なぜか阪神ファンになった幼い長男と阪神巨人戦では、親子で対抗して応援合戦をした。その長男が野球ではなく、サッカーを始めた。そしてJリーグが始まり、今度は親子して同じチームの横浜フリューゲルスのファンとなった。横浜フリューゲルスは、Jリーグのチームの無かった九州を準フランチャイズとしていて、年に数回行われた熊本での試合も応援に行った。
 しだいにプロ野球に興味が無くなり、テレビの中継放送もほとんど見なくなった。
 サッカーの魅力が増し、すっかり目移りしてしまったこともある。それよりも大きかったのは、少し前からの東京読売ジャイアンツのお家騒動の「あのお方」の言動だ。僕の中の巨人軍を応援したいという気持ちを、毎年のように「これでもか、これでもか」という位傷つけ、嫌気が差したことの方が大きい。
 かと言って、幼い頃より「野球は巨人」で大きくなった僕は、馴染みのない他のチームをチームを今更応援する気にならない。
 結果的にあんなに好きで楽しんでいたプロ野球は、僕の中ですっかり関心が無くなってしまった。1年間にひと試合もテレビ中継を見ることが無くなって久しい。
 それでもホークスが福岡に移って、一番ひいきのチームになった。数回福岡ドームに応援にも行ったが、依然のジャイアンツに対するようには、どうしてものめり込めない。
 今年もホークスの試合をテレビのニュースと新聞で気にし、勝ち負けをチェックする程度の関心だった。今年はクライマックスシリーズからちょっと興味を持つ様になった。まずセリーグでは、ヤクルトを応援した。僕の全く勝手な好みだけど、選手時代から落合監督がなぜか嫌いなのだ。同様に、中日の主力捕手の谷繁選手がこれまた同様に我がままな好みで、横浜に入団したころから嫌い。そして球団として12球団の中で唯一嫌いなのが、中日ドラゴンズだ。その理由は、巨人のV10を阻み、前夜セリーグ優勝を決めた中日ドラゴンズが長嶋選手の公式戦最後の試合にベストメンバーで臨まなかったという逆恨み的思いから来ている。
 その嫌いな落合監督率いる中日が、やっとのことでクライマックスシリーズを勝ち抜いたホークスの相手となった。そしてホークスの監督、秋山は我が郷土の出身。リーグを制し乍ら日本シリーズに参戦すら出来なかった悔しさを「今年こそ」はらしてほしい。ぜひとも秋山ホークスに日本一になって欲しい。
 本当に何年ぶりだろう。日本シリーズを応援した。何試合か見るうちに、主力以外の選手の顔と名前も覚えた。そして4勝3敗でホークス勝利。最後までどちらが勝つか分からない試合がほとんどで、久しぶりにプロ野球を面白く思った。
 胴上げ直後のインタビューの秋山監督の涙乍らに東日本大震災に触れた話には胸が熱くなった。一方、そんな秋山監督の姿を見乍ら、震災直後となった春のセリーグ開幕日に関する「あの方」の関係したゴタゴタを思い出した。
 僕が知っているあの方は、あの方の一部に過ぎないのかもしれないと思う。とてもえらい立派な方なんだろう。でも僕の知っている言動だけで、人間的にはとても尊敬できない。プロ野球選手でもない、たかが一人の日本人としてだけど。(2011.11.21)

 
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