二度と通らない道~国道219号線と古墳と鰻
11月の初めに、宮崎市に行った。
私がボランティアで地区の役員を務めている社会保険委員会の他県との連合会の会合に出席するためだ。同じ地区の役員5名と一緒に1台の車で1泊2日の出張となった。
金曜日の午後に目的の連絡会議があり、翌日の土曜日は熊本に帰るだけの予定だったが、せっかく宮崎まで来たのだから、私の提案で西都原古墳群を見ることとなった。地元の方から西都市にある鰻屋さんを紹介してもらい、そのまま国道219号線で峠を越えて人吉市に出て、人吉から高速に乗ったらよいとアドバイスをもらった。
私は日本史が嫌いではないが、古墳時代まで遡ると、ほとんど教科書程度の知識しかない。そんな私でも宮崎の西都原古墳の名前は知っていた。遅めの朝食を食べた一行は、晴れ渡った日向路を一路西都市へ向かった。
何の知識も情報もないまま、西都原古墳群に着いた。ニニギノミコトの墓とされる男狭穂(おさほ)古墳をはじめ、大小300基の古墳が集まる国内最大の古墳群だ。車を降りた一行は、まず思いがけず見渡す限り一面に広がる花畑に歓声をあげた。ちょうど時期がよかったのかコスモスが満開。古墳群を保存した広大な敷地に、コスモス畑が広がっている。花好きでなくても感激するだろう。
私は家族にこのコスモス畑を見せに、もう一度訪れたいものだと思った。
コスモス目当ての観光客かと思っていたら、当日は年に一度の西都古墳祭りが開かれていて、車も人も多かった。
古墳時代の衣装を身に着けた女性に心を惹かれつつ、露店など祭りの雰囲気を楽しんだ後、会場の案内係の人に道を聞いて、昨晩聞いていた鰻屋に向かった。
朝がゆっくりだったので、11時を過ぎたばかりで昼食に向かうには早過ぎたのだが、そのことが後で幸いした。
私達が訪ねた西都市の鰻屋「入舟(いりふね)」は、明治27年開業の創業110数年の老舗で、県の内外から年間25万人もの客さんがあるという超人気店だったのだ。
休日は2時間待ちもあるそうだから、私達が早めに到着し、すぐに席に着けたのは、実にラッキーだったのだ。
全員がたのんだ鰻丼には、鰻の肝の串焼きと漬け物、驚いたことに吸い物ではなく、なつかしい「ご汁」で、これがまた名物となっているそうだ。
鰻もご汁も美味しかったが、ご飯が米自体のうまみ炊き加減がとてもよくてすっかり満足した。これまた家族を連れて来たいと思った。
花と食べ物の感激は大きい。私の中で、秋の西都市の評価は◎であった。
その後は教わった国道219号線を通って熊本県の人吉市を目指した。県境を南北に連なる山深い九州山地を抜ける峠越えが待っていた。
時期的には、紅葉を期待したのだが、まだ少し早かったのか、峠近くまで登ってやっと一部見られただけだった。
道路は想像していたとおり、いくつかのダムとダム湖のある耳川に沿って、山を登る程道が狭くなり、クネクネの離合に気を遣うような箇所が増えてきた。かと思うと、突然立派な2車線の直線的な道や新しいトンネルにぶつかり、工事中の箇所もいくつか通った。つまり改良中なのだ。国道ながら道も悪いけど、対向車も少なかった。
夜は真っ暗で怖いくらい静かなんだろうな。
こんなところに、民家があったりバス停もあった。工事のために片側通行の信号待ちで停車すると、とたんに鳥の声が聞こえ、道路脇の木にシジュウカラが群れているのが見えた。こんな山奥の生活は、どんな毎日なんだろう。何をして生計を立てているのだろう。想像もつかない。
結果的には、西都市の入り船からまた宮崎市方面に引き返し、西都インターから宮崎自動車道に遠回りした方が、時間的にも運転のしやすさからも良かったようだ。また西都市に行くとしても、国道219号の峠越えは無いだろう。
「二度と通らんよね」
一堂、そう結論を出した。
この歳になると、一期一会。旅行をしていて、また来たいと思っても、二度と見ることが出来ないかもしれないという思いが心のどこかにある。まず用件が無い、必要性が無い、走りにくい国道219号をもう二度とここを通ることは無いのだ。居眠りをする一行の中で、運転するY さん以外では一人起きて、ずっと車窓を見ていた。
(2012.12.24)
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