雲のたまてばこ~ゆうすげびとに捧げる詩とひとりごと

窓の雨つぶのような、高原のヒグラシの声のような、青春の日々の大切な箱の中の詩を、ゆうすげびとに捧げます

平原綾香の明日とアンドレ・ギャニオン

2013年12月11日 | エッセイ


 平原綾香の明日とアンドレ・ギャニオン


 いつの頃からか、テレビの歌番組をほとんど見ることがなくなった。年に一度、大晦日の紅白を家族で見るが、あとはNHKの「SONGS」という番組で好きな歌手が特集されているとき位だ。ラジオもFMのクラッシック音楽の番組しか聴かず、歌謡曲が流れても消すかCDに切り替えてしまう。
 父達が、若い頃の歌謡曲を特集した「なつかしのメロディ」という歌番組を見ながら、声を出して歌っていたように、私も若い頃に聴いたなつかしのメロディがあれば十分だと、近年は思っている。CDを買うのも、若い頃聴いた歌手やグループのベストアルバムだったりすることが多い。音楽を聴くタイミングとしては、車の運転中が一番多いが、10代後半から30歳くらいまでに聴いていて歌手やグループのアルバムを聴くことがほとんどだ。
 だけど、最近の歌手が歌う曲の中にも、すっと心に響いてくる曲がないこともない。
 その曲は、テレビではなく、どこかのお店で買い物をしていて、BGMとして流れていた曲が耳に飛び込んできた。「誰の曲だろう。いい歌だなあ」と思った。とてもゆったりとしたテンポで女性が歌う曲。その後も、たまたまテレビのチャンネルを切り替えた際に、その曲を耳にした。自分の家ではなかったし、大勢の人がいて、歌の話しをする場面でもなかったので、曲も歌手も不明のままだった。いずれの機会も全曲を聴いた訳ではなく、部分的に聴いただけだったけど、それでも私はそのなぞの女性歌手が歌うその曲が好きになった。
 続いていいなあと思ったのは、音楽大学でサックスを勉強していたという平原綾香が歌う「Jupiter」という曲。ホルストの組曲「惑星」の中の「木星」を原曲に歌詞を付けたものだ。もともと原曲の「惑星」が好きで若い頃から聴いていたし、中でも「木星」が一番好きな曲だった。平原綾香という名前もしっかりと覚えた。
 ところが毎回放送を楽しみにしている脚本家の倉本聰さんのドラマ「優しい時間」が始まると、謎だった曲が、「Jupiter」と同じ平原綾香が歌っていたのだとわかった。そのドラマのテーマ曲が、平原綾香の「明日」という曲だった。曲調や歌い方の違いから、二つの曲が結びつかなかった。
 続いて倉本聰さんの「風のガーデン」というドラマの主題曲も平原綾香が担当した。「Jupiter」と同様に、クラッシックの曲に歌詞を付けたものだ。原曲はあまりにも有名なショパンのノクターンで、私も若い頃から大好きな曲の一つだが、この「ノクターン/カンパニュラの恋」という題名がつけられた平原綾香のカバー曲もすっかり気に入ってしまった。
 このクラッシックの名曲に歌詞をつけて歌う、というような曲がそもそも私は好きなのかも知れない。クラッシックを勉強した訳ではないので、真偽は確かでないけど、楽曲に歌詞を付けて歌曲として編曲されることは昔からあったみたいで、後世の人が、歌詞を付ける場合もあるし、原曲の作曲家自身が、歌曲として編曲する場合もあるらしい。誰もが知っている「家路」という学校で習った曲は、ドボルザークの「新世界から」の一部の曲に歌詞をつけたもの、昔Hi-Fi Setというグループが歌った「白い道」という曲はビィバルディの「四季」の一節だし、スメタナのモルダウやシベリウスのフィンランデアも歌詞付きの演奏がある。いずれも大好きだ。平原綾香は、このクラッシックの名曲に歌詞を付けて歌うカバーでアルバムを出しており、私も気に入って運転中に時折聴いている。やはり私の中の一番は「ノクターン/カンパニュラの恋」かなあ。
 私が好きな作家の一人、椎名誠さんが、映画を作っていた頃にみた「白い馬」という映画の主題曲や挿入歌として使い知ったのがアンドレギャニオンというカナダ人の作曲家だ。透明感のある美しいメロディーの曲が多くて、ときどきどうしても聴きたくなってしまう作曲家だが、あの平原綾香の「明日」という曲の作曲がアンドレギャニオンであることを最近知りとても納得してしまった。
(2013.12.11)

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