きんぴらごぼう
自分の舌にはまったく自信が無い。
だからグルメかと問われると間違いなく否定したい。
だが食べることが大好きで、生活の中で食関連に自身の大きな関心があることは間違いない。
最近は私と同様の人が多くなったのか、食をテーマ、あるいはサブテーマにした小説やテレビドラマ、ドキュメンタリー番組が増えてきたように思う。私の家人や子ども達、兄弟もそうだ。
例えば本屋に行って新刊本や文庫本などのタイトルを見ながらそぞろ歩きしていると、目につくのは食関係のタイトルである。
小川糸・著の「食堂かたつむり」、坂本司・著の「和菓子のアン」。すっかりはまった高田郁の「みをつくし料理帖」のシリーズ。
いずれの本も食が重要な要素になっている。
テレビ番組も直接の料理番組をはじめ、食を連想するタイトルやキーワードがあると、見てみたくなる。
そのまんまの料理番組も、自分で作ってみたい料理はもちろん、まず自分で作る機会はないだろうという料理も興味津々でみてしまう。料理人が紹介される番組もジャンルに関わらず好んで見ることが多いし、食が重要な要素となっているドラマがあれば注視して初回の放送をチェックする。
その中で、テレビ東京の「孤独のグルメ」という番組を特に気に入っている。残念なのは私が住んでいる地方都市ではテレビ東京の放送は見ることができないので、深夜の時間帯に、本放送よりずいぶん遅れた分の回の放送を待って見るしかないことだ。
「孤独のグルメ」は、同名の漫画が原作のドラマで、輸入の食器やインテリヤを個人で扱っている主人公が、毎回仕事の依頼のあった町を訪ね、仕事を終えた出張先の町で見つけた飲食店で昼食や夕食を食べるという内容。
グルメで頭に浮かぶような高級な食材や豪華な店作りとは程遠い、どちらかといえば薄汚れた店内であったり、ユニークなメニューであることが多い。ドラマではお酒の飲めない主人公が一人思いつきと勘で選んだ料理や周りの常連客に出された料理に惹かれて次々に注文し、たいらげていく。主人公の食べっぷりと相まって登場する料理が実にうまそうなのだ。
よく似た系統のドラマで「深夜食堂」がある。
これまた地元のテレビ局のネットではないので放映が不定期で、私にとってはほとんど幻のような番組であったが、映画化されて現在ロードショーがあっているようで、映画のPRを兼ねて過去の回の数回分だが年末に一挙放送があった。
これも同名の漫画が原作らしい。
新宿の裏路地にありそうな店は深夜0時に開店し朝7時頃に閉店する店主一人で切り盛りするカウンターだけの小さな大衆食堂。
ユニークなのはメニューに載っている料理は豚汁定食だけで、あとは客の様々な注文に応じて可能な限りの料理を作るということ。
オカマバーのママやヤクザやストリッパー。個性的な常連客に混じって、ふらりと店に現れた客が注文した料理を縦糸にその客の人生の一場面が語られる。
年末の一挙放送の回できんぴらごぼうが登場した。
ささがきではなく拍子切りをした牛蒡と人参を使ったきんぴらごぼう。
シャキシャキとした歯ごたえの残ったきんぴらごぼう。
今は認知症になってしまった私の母は料理が得意だった。
食いしん坊の私には当然たくさんのおふくろの味があり、母の作る料理にまつわる思い出がたくさんある。
その母が作るきんぴらごぼうは、ささがきにした牛蒡のみを使った柔らかい口当たりのきんぴらだった。
大きな特徴はごぼうに火がとおった後に卵を落とし、水分がなくなるまで煮詰めることだ。母のきんぴらごぼうを食べるときは、この牛房を炊いた甘辛い煮汁を吸った薄茶色の卵を拾い喰いをするのが美味しかった。
ところが、ささがきに卵の入った母のきんぴらごぼうを食べて育った私は、高校を卒業して家を出た後で、拍子切りの歯ごたえのあるきんぴらごぼうの美味しさに目覚めてしまった。帰省した時に食べる母の作ったきんぴらごぼうに物足りなさを感じるようになったのだ。
「おいしい」と母に言って食べながら、
心の中では「シャキシャキのきんぴらごぼうの方が美味しい」と思っていた。
そんな自分が後ろめたいような、でもそう思ってしまう自分の気持ちは仕方なく、親から離れていく自分を認識しはじめる機会となった。
深夜食堂を見ていてそんなことを思い出した。
(2015.2.18)
自分の舌にはまったく自信が無い。
だからグルメかと問われると間違いなく否定したい。
だが食べることが大好きで、生活の中で食関連に自身の大きな関心があることは間違いない。
最近は私と同様の人が多くなったのか、食をテーマ、あるいはサブテーマにした小説やテレビドラマ、ドキュメンタリー番組が増えてきたように思う。私の家人や子ども達、兄弟もそうだ。
例えば本屋に行って新刊本や文庫本などのタイトルを見ながらそぞろ歩きしていると、目につくのは食関係のタイトルである。
小川糸・著の「食堂かたつむり」、坂本司・著の「和菓子のアン」。すっかりはまった高田郁の「みをつくし料理帖」のシリーズ。
いずれの本も食が重要な要素になっている。
テレビ番組も直接の料理番組をはじめ、食を連想するタイトルやキーワードがあると、見てみたくなる。
そのまんまの料理番組も、自分で作ってみたい料理はもちろん、まず自分で作る機会はないだろうという料理も興味津々でみてしまう。料理人が紹介される番組もジャンルに関わらず好んで見ることが多いし、食が重要な要素となっているドラマがあれば注視して初回の放送をチェックする。
その中で、テレビ東京の「孤独のグルメ」という番組を特に気に入っている。残念なのは私が住んでいる地方都市ではテレビ東京の放送は見ることができないので、深夜の時間帯に、本放送よりずいぶん遅れた分の回の放送を待って見るしかないことだ。
「孤独のグルメ」は、同名の漫画が原作のドラマで、輸入の食器やインテリヤを個人で扱っている主人公が、毎回仕事の依頼のあった町を訪ね、仕事を終えた出張先の町で見つけた飲食店で昼食や夕食を食べるという内容。
グルメで頭に浮かぶような高級な食材や豪華な店作りとは程遠い、どちらかといえば薄汚れた店内であったり、ユニークなメニューであることが多い。ドラマではお酒の飲めない主人公が一人思いつきと勘で選んだ料理や周りの常連客に出された料理に惹かれて次々に注文し、たいらげていく。主人公の食べっぷりと相まって登場する料理が実にうまそうなのだ。
よく似た系統のドラマで「深夜食堂」がある。
これまた地元のテレビ局のネットではないので放映が不定期で、私にとってはほとんど幻のような番組であったが、映画化されて現在ロードショーがあっているようで、映画のPRを兼ねて過去の回の数回分だが年末に一挙放送があった。
これも同名の漫画が原作らしい。
新宿の裏路地にありそうな店は深夜0時に開店し朝7時頃に閉店する店主一人で切り盛りするカウンターだけの小さな大衆食堂。
ユニークなのはメニューに載っている料理は豚汁定食だけで、あとは客の様々な注文に応じて可能な限りの料理を作るということ。
オカマバーのママやヤクザやストリッパー。個性的な常連客に混じって、ふらりと店に現れた客が注文した料理を縦糸にその客の人生の一場面が語られる。
年末の一挙放送の回できんぴらごぼうが登場した。
ささがきではなく拍子切りをした牛蒡と人参を使ったきんぴらごぼう。
シャキシャキとした歯ごたえの残ったきんぴらごぼう。
今は認知症になってしまった私の母は料理が得意だった。
食いしん坊の私には当然たくさんのおふくろの味があり、母の作る料理にまつわる思い出がたくさんある。
その母が作るきんぴらごぼうは、ささがきにした牛蒡のみを使った柔らかい口当たりのきんぴらだった。
大きな特徴はごぼうに火がとおった後に卵を落とし、水分がなくなるまで煮詰めることだ。母のきんぴらごぼうを食べるときは、この牛房を炊いた甘辛い煮汁を吸った薄茶色の卵を拾い喰いをするのが美味しかった。
ところが、ささがきに卵の入った母のきんぴらごぼうを食べて育った私は、高校を卒業して家を出た後で、拍子切りの歯ごたえのあるきんぴらごぼうの美味しさに目覚めてしまった。帰省した時に食べる母の作ったきんぴらごぼうに物足りなさを感じるようになったのだ。
「おいしい」と母に言って食べながら、
心の中では「シャキシャキのきんぴらごぼうの方が美味しい」と思っていた。
そんな自分が後ろめたいような、でもそう思ってしまう自分の気持ちは仕方なく、親から離れていく自分を認識しはじめる機会となった。
深夜食堂を見ていてそんなことを思い出した。
(2015.2.18)
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