BELOVED

好きな漫画やBL小説の二次小説を書いています。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。

何度生まれ変わっても・・序

2025年01月10日 | 天上の愛地上の恋現代昼ドラ人魚転生パラレル二次創作小説「何度生まれ変わっても…」

表紙素材は、mabotofu様様からお借りしました。

「天上の愛地上の恋」二次小説です。

作者様·出版社様とは一切関係ありません。

両性具有·男性妊娠設定あり、苦手な方はご注意ください。

二次創作·BLが苦手な方はご注意ください。


―アルフレート。
何処からか、波の音と共に誰かの呼ぶ声が聞こえたような気がした。
(これは、夢?それとも・・)
アルフレートがそんな事を思いながら寝返りを打っていると、外から雷鳴が轟き、彼は不思議な夢から覚めた。
「まだ三時、か・・」
寝直そうとしても目が冴えて眠れないので、アルフレートはベッドから出てこたつの中に入り、数日前に図書館から借りて来て読み始めた本を手に取った。
物語の世界に没入し、気づけばアルフレートは朝を迎えていた。
「おはよう、アルフレート。今日は早いんだね。」
「はい、雷で目が覚めてしまって・・」
「あぁ、夜中の?あれは凄かったわよね。」
台所アルフレートが入ると、そこには朝食を作っている彼の遠縁の叔母・ふみの姿があった。
「はい、これ。」
「ありがとうございます。」
「ねぇアルフレート、本当に大学に行かないの?」
「はい。この家に置いて頂けるだけでも有難いので・・」
「そんなに自分を卑下しなくてもいいじゃない。あんたの爪の垢を篤也に煎じて飲ませてやりたい位だわ。」
ふみが言った、篤也というのは、彼女の息子でアルフレートの良き義理の兄のような存在である。
十二歳で両親を交通事故で亡くし、ふみとその家族の一員となって、この小さな漁師町で暮らし始めてから、五年の歳月が経った。
アルフレートは、現在十七歳。
そろそろ進路を考える時期でもあり、アルフレートは大学へ行かない事を決めた。
今までふみ達に良くして貰ったのだから、これから先は彼らに恩返しをしなければ―そんな事を思いながら、アルフレートは自転車で高校へと向かった。
潮の香りを嗅ぎながらアルフレートが自転車のペダルを漕いでいると、港に一人の男が立っている事に気づいた。
少し赤みがかったブロンドの髪は冬の陽光に照らされ、神々しい光を放ち、まるでその姿は地上に降り立った天使のようだった。
こんな田舎に、珍しいな―アルフレートがそんな事を思いながら港を通り過ぎようとした時、男の蒼い瞳と、アルフレートの翠の瞳がぶつかった。
(え、何?)
男に見つめられた時、アルフレートの脳裏に、ある光景が浮かんで来た。
“約束する、何度生まれ変わっても、お前を・・”
(この人は、一体・・)
暫くアルフレートが男と見つめ合っていた時、遠くから始業を告げるチャイムが聞こえて来たので、アルフレートは我に返り、港を離れた。
「やっと見つけた、わたしの・・」
男の声は、海鳥の泣き声に掻き消された。
(今朝港で見かけた人、一体何者だったんだろう・・)
放課後、学校から出てアルバイト先の食堂へと自転車で向かったアルフレートは、その途中で一台の車と擦れ違った。
「今晩は~」
「アルフレート君、今日もよろしくね。」
「はい。」
この食堂は、この町唯一の憩いの場であった。
「カニクリームコロッケ定食、あがりました!」
夕飯時には、町民達が集まり、賑わっていた。
この食堂の一番人気のメニューは、新鮮なカツオの切り身の上に細かく切り刻んだタマネギ、マヨネーズをかけ、それを熱々のご飯の上にかける、“カツオマヨ丼”だった。
「アルフレートちゃん、カツオマヨ丼ひとつ!」
「はいよ!」
その日はいつものように、アルフレートが働いていると、そこへ一人の男が店に入って来た。
「いらっしゃいませ~」
アルフレートがそう言って男に笑顔を浮かべると、彼は突然アルフレートの前に跪き、アルフレートにこう言った。
「やっと見つけた、わたしの伴侶。」
「え?」
男はアルフレートを蒼い瞳で見つめた後、彼の唇を塞いだ。
突然の事に、アルフレートは一瞬驚きで固まったが、男の頬を平手打ちした。
「何するんだ、この変態!」
「わたしの伴侶になってくれ。」
「誰か、警察呼んで下さい!」
その後、アルフレートと男はそれぞれ店に駆け付けた警察官から事情を聞かれ、アルフレートが帰宅したのは夜十時を過ぎた頃だった。
「災難だったねぇ、明日は休んで、ゆっくりしなさい。」
「はい・・」
ふみと共に帰宅したアルフレートは、自室に入ると深い溜息を吐いた後ベッドの中に入った。
すると、また昨夜と同じ夢を見た。
―アルフレート。
そう言って自分に微笑んでいるのは、バイト先の食堂で自分に突然キスをして来た男と瓜二つの顔をしていた。
(何なんだ、もう!)
夢から覚めたアルフレートが、苛立ち紛れに枕を殴っている頃、アルフレートに平手打ちをされた男は、札幌市内のホテルの一室で目を覚ました。
(今日も、彼に会わなければ・・)
男がそんな事を思いながらベッドから出てコーヒーを飲んでいると、枕元に置いてあったスマートフォンがけたたましく鳴った。
「もしもし?」
『ルドルフ様、どちらにいらっしゃるのですか?すぐにウィーンにお戻りになって・・』
「わたしには、まだやるべき事がある。それまでウィーンには戻らないと、父上に伝えておけ。」

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