右肩上がりなRTD市場
少子高齢化による人口減少により、ビール市場は縮小しています。そんななか大ブレイクしているのがRTD市場です。RTDは「ready to drink」の略で、そのまま飲めるお酒という意味です。缶チューハイを中心に、缶のハイボールや瓶入りのカクテルなどが含まれます。
なかでも爆売れしているのが、ストロング系のアルコール飲料です。アルコール度数が9%で、レモンなどのすっきりした味わいの缶チューハイです。350ml缶なら120円程度、500ml缶なら170円程度で買えます。特保のお茶よりも安いくらいです。
飲みやすく安価で酔えるので、幅広い層に受入れられています。自宅で飲むお酒としてビールやワイン、焼酎を押さえて第1位となっています。
そのためRTD市場は、12年連続右肩上がりで成長し、2018年と2019年は2桁成長。今年も大きく伸びると思われます。そのなかでも、レモンフレーバーのRTDは2018年から爆発的に増え、2020年には9600万ケースも出荷される見込みです。
レモン味のRTDが大人気です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/54/df/cada0379493fb3a990a35d99be0ff641.jpg)
写真は「-196℃ ストロングゼロ〈ダブルレモン〉」(サントリースピリッツ)500ml缶
ちなみにレモンだけ特別なのは、圧倒的に売れているからです。サントリーが行ったアンケートによると、よく飲むフレーバーでは54.1%がレモンと過半数を超えています。2位のグレープフルーツは13.7%、3位は3.9%しかいません。
ストロング缶500mlのアルコール量はテキーラ換算で……
ストロング缶は酔います。それは、単純にアルコール量が多いからです。 実際に計算してみましょう。500mlのストロング缶に入っているアルコール量は500×9%で45mlです。例えば、アルコール度数40%のテキーラに換算すると、なんと3.75杯となります。
例えば、テキーラのカクテルをBARで4杯注文したら、2時間くらい楽しめます。料金も数千円かかります。それが、ストロング缶なら200円以下で済みます。しかも、ゆっくり飲んでも1本20~30分で飲んでしまうでしょう。これを効率が良いと感じるなら、ちょっと考え物です。お酒は酔うことよりも楽しむことを重視したいものです。
酒税法改正で2026年までにビール、発泡酒、新ジャンルの酒税が一緒に!
ビールを作っているメーカーは、長年死力を尽くして商品を開発してきました。酒税が高くなれば発泡酒を作り、その酒税も高くなったら新ジャンルを作りました。今度は、その新ジャンルも増税されようとしています。最近また酒税法が改正され、2026年までにビールと発泡酒、新ジャンルの酒税が統一されます。
ビールは350mlあたり77円から70円に引き下げられますが、新ジャンルは28円から38円に税率アップです。段階的に調整され、2026年には350mlあたり55円になります。発泡酒もこの時点で増税になります。
一方、RTDは350mlあたり28円で据え置きになります。これは強力な追い風になります。2026年には増税されますが、それでも35円になるだけです。
メーカーとしては、手間のかかるビールを作っても税金でいじめられるなら、やってられないでしょう。手間も原価もかからないストロング缶のほうが税金も安いというなら、そのほうがラクです。しかも、消費者にも受入れられています。筆者としては、せっかく世界的に飲まれている日本のビール文化を育てる方向の税制にしてほしいなと思います。
大人気のRTDですが、余りの飲みやすさに急ピッチで飲んでしまい、体調を崩したりトラブルを起こしたりするという話題がSNSにたくさん投稿されています。もちろん、どんなお酒でも飲み過ぎれば泥酔して自己コントロールを失います。継続して飲み続ければカラダを壊します。
お酒を飲み慣れていない人でもストロング缶は飲めてしまうので、コントロールが利かなくなってしまうことがあります。ストロング缶を飲むときは、アルコール量が半端ではなく多いことを認識するようにしましょう。