2021
3月9日に閣議決定された「プラスチック資源循環促進法案」。コンビニなどでもらえるスプーンやフォークの有料化を事業者に求め、プラスチックの使用量の削減や海洋プラスチックごみ(プラごみ)対策が目的だ。政府は2021年度の国会での成立を目指し、早ければ2022年春にも施行される。
【写真あり】小泉進次郎、ライバル視する「河野外務相」とは総理の相談相手“神奈川県連”メンバー同士
国会に上程された、この法案に関して、ネット上で小泉進次郎環境相(39)に対する非難の声が上がっているのだ。
《不便ですね…》
《今取り組むべきことじゃない》
《問題の本質はポイ捨てなんだからそっち規制しろよ》
プラごみの削減は、世界各国が取り組んでいる問題だが、今回提出された法案では、大きな削減量は見込めないという。
「たしかに、プラスプーンの有料化によるプラごみの削減量はは、ビニール袋の有料化によるものより大きい。スプーンやフォークには、ビニール袋よりも多くのプラスチックが使われているからです。
しかし、プラスチックごみのうち、もっとも大きな割合を占めているのはペットボトルなんです。日本のペットボトルの回収率や再使用率は、国際的に見てもかなり高い水準なんですが、ごみとして捨てられてしまうペットボトルは、まだまだ多い。ペットボトルの利用を規制すれば、プラごみは大きく削減できますが、飲料メーカーが抵抗し続けているんです。
というのも、プラスチックを用いないビンなどのリターナブル容器に転換していこうとすると、企業には新たな設備投資の必要が出てくる。すると飲料メーカーは、そのコストを価格に転嫁せざるを得ないので、飲料の消費量が減ってしまう。企業の売り上げも当然減ってしまうので、抵抗しますよね」(環境省担当記者)
また、医療現場への懸念も、環境省内で上がったという。
「医療従事者たちにとっては、使い捨てのプラスチック製のスプーンやフォークを使うほうが衛生的ですから、『医療現場に、しわ寄せがなければいいが』という声もありました。
医療従事者の食事のときや、入院患者に食事を摂ってもらうときも、コロナ禍のこのご時世、なるべく感染リスクを下げるためには、使い捨ての容器や食器を使ったほうが安全です」(同前)
ある環境省関係者は、「法案は、もっと早くに閣議決定できたはず」と明かし、こう続ける。
「じつはちょうど3月9日に、ウチの小泉進次郎環境相が気候変動担当大臣を兼務することになったんです。なんでも、これの調整で閣議に上げるのが遅れたんだと、官邸から聞きました。法案自体は、ずっと前から環境省で準備されていたものです。
総理側近のひとりに聞くと、小泉大臣は総理に『気候変動担当大臣を置けば、支持率は上がります。私にやらせてください』と直訴したと言うんですね。『大臣の “目立ちたがり” の悪癖が、また出たか』と思いましたよ。なぜなら、気候変動問題は、これまでもずっと環境相が担当していて、気候変動問題についての国際会議にも、小泉大臣が出ているんです。
たしかに、カーボンニュートラルは菅政権の重要政策のひとつです。気候変動担当大臣として、小泉大臣は関係省庁や産業界、有識者との総合調整を担うことになりましたが、そもそも担当大臣を、わざわざ設けるまでもないんです」(環境省関係者)
メディアがおこなう「次の首相にふさわしい人」の調査でも、ワクチン担当相を兼ねる河野太郎行革担当相(58)に水をあけられている。
「以前から、小泉大臣は河野大臣をライバル視しているし、かたや河野大臣はワクチン担当としてマスコミへの露出は増えていますよね。『ウチの大臣は最近目立ててないからな……』という空気が、ひしひしと環境省内には感じられますね」(同前)
小泉氏を気候変動担当大臣に充てたことには、菅義偉首相(72)が内閣支持率のテコ入れを図りたい思惑もあるが、菅首相が頼れる “味方” が閣内で限られている状況も影響しているという。
「最近、“後見人” として頼みにしてきた二階(俊博)幹事長が、総理と距離を取っています。GoToキャンペーンの一時中止の根回しがなかったことへの意趣返しと見られていますが、このところ連絡や会合も少なくなりました。
なので、総理が味方と見て相談相手にしているのが、閣内の “神奈川県連” です。メンバーは、河野さん、小泉さん、小此木八郎国家公安委員長、坂井学官房副長官です。総理は赤坂の議員宿舎に帰ると、夜な夜な彼らを呼んで、宿舎の中で会合を持っています。マスコミも中には入ってこれませんし、いろんな相談をしています」(官邸関係者)
だが、こうした密室での “謀議” は、すでに現場とのギャップを生んでしまっているようで――。
「外務省としては、非常に迷惑しています。気候変動問題については、これまでも外務省と環境省、経産省が連携してやってきているのに、わざわざ肩書きをつける必要もない。
現に、すでにアメリカ側から『小泉で大丈夫か、意味のある人事なのか』というリアクションがあります。バイデン政権は、ジョン・ケリー元国務長官を気候変動問題担当の大統領特使として起用し、非常に力を入れている政策分野です。
小泉環境相が、石炭火力発電削減の問題では経産省と対立し、衛星を使った北方四島の植生図作成をやると言い出したときには、外務省とも軋轢を生みました。ロシアを刺激することなのに、事前にウチに根回しがなかったんです。 ケリー氏のカウンターパートに、調整力に疑問符がついている小泉大臣では、やはり荷が重いのでは……という声は上がっています」(外務省担当者) 世界的な課題について “兼務” することになった小泉氏は、結果を出せるのか――。

韓国の「冷凍人間」第1号申請者キム・ジョンギルさん(仮名)は、自身の母親に再会したら、「お母さん、よく寝られた?」と聞きたいと言って涙をぬぐった。キムさんが22日SBSスペシャル夏特集『不滅の時代第2部:冷凍人間』編で語った。
8・24・2021
キムさんは昨年5月、血液のがんで死去した80代の母親を冷凍保存した。韓国初の事例だった。キムさんは「救急車で(母親は体が)揺れるほどもがいていた」「『私はまだ逝きたくないのに、なぜお前の父親は私を呼ぶんだ』と(叫んだ)」と回想した。そして、「母とは長年一緒に暮らしているが、そのような姿は初めて見た。あまりにも胸が痛んだ」「これほどまでに(母親が)生きようという意志を持っているのだ(と感じた)」と言った。
父親を亡くして6カ月後に母親まで亡くすのがつらかったキムさんは、冷凍保存を決めた。キムさんは「弟は反対した」「私が『父の葬儀の時、これは違うと思った。(母親を)粉にするのは自分が許せない』と押し通した」と言った。
キムさんの母親は死去してすぐ第1次冷凍処理された後、冷凍保存用タンクがあるロシアのモスクワに移送された。保存契約期間は医療技術の発展速度や冷凍保存者の蘇生(そせい)の可能性などを考慮して、100年に定められた。

1. 最年少の冷凍保存ケースとなったタイ人の2歳の少女
1・8・2015
脳に出来た腫瘍が原因で亡くなった2歳の女の子が、いつの日か進歩した科学の力で蘇生させられる時が来ることを願って、冷凍保存された
なぜホームレスはコロナに感染しないのか?支援団体が明かす究極の対策
● 新型コロナの意外な「安全地帯」は 貧困当事者支援
コロナ禍が世の中の重大関心事となり始めて以来、すでに約半年が経過している。手洗いやマスク装着は世の中の“常識”として根付いているように見えるが、感染者は再び増加しつつある。
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しかも、感染発生は「クルーズ船」「施設」「夜の街」といった特定の場所に限られているわけではない。むしろ、増えているのは経路不明の感染例だ。何にどこまで注意すれば、「まあまあ安心だ」と思えるのだろうか。 ホームレスを含む貧困層や低所得層の支援現場は、意外な“安全地帯”かもしれない。このような現場で感染が拡大した事例は、日本では皆無、世界的にも皆無に近い。貧困の当事者たちの多くは、心身の状況が良好ではなかったり、高齢であったり、持病を持っていたりする。さらに、しばしば「情報弱者」であり、基本的なリテラシーを身につける機会にも恵まれてこなかったことが多い。
それなのに、こうした人々に対する支援活動を通じた感染拡大は、ほぼ皆無なのだ。ここには、あらゆる人々の「安全」「安心」のカギがありそうだ。
「特定非営利活動法人自立生活サポートセンター・もやい」では、東京都新宿区の事務所での対面相談に加え、東京都庁での食糧配布や相談会を行っている。しかし、新型コロナ対策の観点から、事務所での活動に際してはスタッフやボランティアの人数を制限し、「3密」すなわち「密閉」「密集」「密接」を避けている。高齢であったり持病があったりする人には、無理に参加しないように促す。
また、その日の体調が思わしくない人には、参加を控えてもらう。もちろん、手洗い・マスク・消毒などの対策も行っている。「もやい」では4月以来、医師のアドバイスを受けて感染症対策をマニュアル化し、定期的な見直しを重ね、注意喚起を重ねているということだ。
「スタッフはもちろん、相談に来られる方にも遵守をお願いしています。守れない方には、参加をご遠慮いただいています」(「もやい」理事長・大西連氏)
しかし7月に入ってから、日本全体、特に東京都では感染者が増加している。一団体の対策には、限界があるだろう。それでも大西氏は、「できることをしながら、柔軟に」活動を続けていくという。万一の感染者発生に備え、一定期間の活動停止を含む対応計画も、すでに作成しているということである。
● 有効な対策は拍子抜けするほど 「基本中の基本」ばかり ついで、「もやい」にアドバイスを提供している専門家の1人である谷川智行医師に、具体的にどのようなアドバイスを行っているのかを聞いた。
「一般的な“3密”を避けること、咳エチケット、そして消毒です」(谷川医師)
拍子抜けするほど「当たり前」のことだけではないか。
「まず、支援者同士で感染させるようなことは、避ける必要があります。そのためにも、体調の悪い方は、活動に参加しないことが大切です。支援者の人数は減ることになりますが、これが大前提です。もしも相談に来られた方を感染させてしまったら、支援しているのか迷惑をかけているのかわからなくなってしまいます。また、活動全体も停止ということになりかねません。
ですから、体調を含めて不安のある方には、参加しないでいただくようにしています。体調が良くないのに来られた方には、すぐ帰っていただくようにしています。実際に、何回かそのようなことがありました」(谷川医師)
路上で行われている相談会に訪れる人々、その日初めて相談してみようとする人々に対しては、事前にマニュアルや対応を徹底するわけにはいかないだろう。
「相談に来る方にも、マスクを着けていただき、手指の消毒をしていただいています」(谷川医師) やはり、基本的なことだけだ。さらに谷川医師によれば、「屋外」という環境は感染予防において有利である。
「屋外では、3密の『密閉』はありません。リスクになり得るのは、接触です。そこさえ注意すれば、おおむね安全でしょう」(谷川医師)
もともと路上生活の人々は、感染リスクが極めて低い。
「路上生活よりも“ドヤ”(簡易宿所)や大人数のシェルターの方が、ずっと危険です。無料定額宿泊所は、この機会に個室化してほしいです。厚労省も新型コロナ対応で事務連絡を発し、個室化を求めています。『この事態下だから』ということではなく、この機会に今後も個室化してほしいです」(谷川医師)
今回のコロナ禍を乗り切れば、「それで良し」というわけではない。 「感染症は、これからも次々に来るでしょう。2000年以後、世界的に流行した感染症の多くはコロナウイルスによるものです。他にも、ウイルスは多数あります」(谷川医師)
2000年からの1000年間は、世界規模の感染症との闘いが繰り返されそうだ。今回の新型コロナウイルスへの対応によって、人類は新しい感染症への対応を学ぶ必要がある。感染症との闘いは、今後も異なるパターンで繰り返されるからだ。これは、世界中の専門家の共通した見方である。
根本的な解決法は、谷川医師によれば「人間が自然界に乱暴に入り込むのを止めること」である。その通りだろう。感染症との闘いは、生活のために自然破壊を余儀なくされる人々がいる現状を変え、気候変動に歯止めをかけ、災害リスクを減らすことと一体であるはずだ。
● 「支援を止める」という 選択肢はない中での対策とは
ついで、医療をはじめとする多数の専門職がいる特定非営利活動法人「メドゥサン・デュ・モンド ジャポン」で、より専門的な視点からの意見を聞いた。この団体は「世界の医療団」として知られており、「すべての人に医療を」というスローガンを掲げて多様な活動を継続している。ハウジングファースト東京プロジェクトのパートナー「NPO法人TENOHASI」と提携して、路上生活者の夜回りや炊き出しも行っている。 居住の貧困を解消することに主に取り組む武石晶子さんは、2月末、新型コロナが日本にパニックを引き起こしつつあった時期を振り返って、次のように語る。
「その時期、炊き出しが予定されていたので、厚労省のサイトを参考にして対策しました。炊き出しに来た路上の方々は、『コロナって何?』『感染したら、保険証がないから死ぬだけ』という声もありました」(武石さん)
新型コロナは指定感染症である。通常の病院で、通常の診察の手続きで治療を受けられるわけではない。治療を受ける際には、必ず保健所を通すことになる。しかし路上生活の人々には、「保健所で門前払いされるのでは」という懸念もあった。
「まず、情報が届いていないんです。そこで、他の支援団体とも話し合い、『最初に情報の貧困を解消しよう』ということで、医療ボランティアに協力いただき、必要な情報をまとめたチラシを作成しました」(武石さん)
そして武石さんたちは、感染予防や感染の可能性がある場合の対処など必要な情報を簡潔にまとめたチラシを、マスクや消毒剤とともに路上生活の人々に配布した。
この配布活動は、マスクやアルコール消毒剤の入手難を乗り越えて、現在も続けられている。現在は、ファスナー付きポリ袋に数枚のマスク、ティッシュ、消毒剤または液体石鹸がコンパクトにまとめられた「衛生キット」の形となっている。そのキットの中に、チラシが入っている。 ● まずは「情報の貧困」を解決 これからは熱中症の対策も
盛夏を控えた7月現在は、熱中症対策も重要な課題だ。チラシには熱中症対策についても記載されており、熱中症対策用の塩入りタブレットが留められている。炊き出しや相談会などに訪れた人々は、まず「衛生キット」を手にする。順番を待っている間に中を見て、タブレットを外して口にすることが多い。そのときに、チラシを読むことが多いそうである。チラシの内容に加えて、読まれるための配慮も怠っていない。
「コロナ禍で活動を中止することは、全く念頭にありませんでした。私たちが行っている活動は、医療相談も生活相談も炊き出しも、すべて命をつなぐものです。止める選択はありません」(武石さん)
活動を止めない以上は、感染症対策を十分に行う必要がある。対策は、「3密」の回避と支援者側のリスク管理に加え、「ボランティアの人数を可能な限り減らすこと」「配布した食糧をその場で食べないよう、炊き出しから弁当の配布へと形態を変えること」「並ぶときは2メートル以上の距離を空けて」であった。 またしても、拍子抜けするほど基本的なことばかりだ。しかし結果として、その基本的なことの積み重ねによって、活動の安全性が維持されてきた。
● もともと路上生活者の マスク着用率は高かった 「世界の医療団」が当初から心がけてきたことの1つは、支援者「が」ウイルスを持ち込まないようにすることだった。具体的な対応は「自らの健康管理をする」「話すときは必ずマスクを」「手指を消毒する」といったことだ。
「活発な経済活動をする人たちは、『密』になることも多くなるので、感染する確率は、路上の方より高くなります」(武石さん) 感染対策の中心となった西岡誠医師は、コロナ禍に対する世の中の恐怖心が、「自分が感染させられる」という方向に偏っていることを危惧する。
「路上生活の方々は『3密』になりにくく、新型コロナウイルスに感染するリスクは高くありません。また、排気ガスや粉塵から喉を守るため、パンデミック前からマスク着用率が高いことも、有利に働いたと思います。しかし、高血圧、肺気腫、糖尿病など基礎疾患を持つ人が多いため、感染した場合の重症化リスクや死亡リスクは高いです。われわれ支援者が、路上生活者に感染させないための対策は重要です」(西岡医師)
夏季には、マスクの弊害もある。
「夏場は、マスクによる熱中症のリスクがあります。『道を歩いている時や、周囲に人のいない場所では、マスクを外す方が良い』と伝えています」(西岡医師)
様々なリスクがある中で、誰もが限られた資源を活用して対応しなくてはならない。厳しい状況にある人々ほど、対応の難易度は高くなる。
西岡医師は、日本の現状に関して、世界各国の感染拡大地に比べれば、「今のところは、感染者数も死亡者数も抑えられている」という。日本の「3密」の効果は世界で評価されており、WHOが「3C」として採用したばかりだ。中でも最も効果があるのは、ソーシャル・ディスタンスを保つことであるという。
7・24・2020
ともあれ、基本的な対策は十分に有効だ。感染者数に一喜一憂せず、日々の感染対策を積み重ねることが、自分自身と大切な人とを守ることになるだろう。 (フリーランス・ライター みわよしこ)

鉄道会社が就活生に「アイスクリーム、コーヒー、うどんのなかでどれが好きか」と聞く重要なワケ
春を迎え、街中のいたるところで黒や濃紺のリクルートスーツに身を包んだ若者を見かけるようになった。サクラと花粉症と並ぶ日本の春の風物詩、就活シーズンの到来である。
2017年4月14日掲載
会社員の多くが通過してきたであろう就活。あの企業に入りたい、あんな仕事をしてみたいと夢見るのと同時に、企業から日々届く不採用通知、通称お祈りメールに頭を抱えていたことを思い出す人もいるだろう。
アイス、コーヒー、うどん、どれが好き?
さて、都内大学に通うAくんはただいま就活真っ只中。慣れないスーツを着込み企業の説明会に赴いたり、大学の友人たちと情報交換したりしているが、彼には幼いころから働くことを夢見ている会社があった。鉄道会社である。幼少期に鉄道に魅せられた彼は、時とともに立派な鉄道オタクとして成長。そして就活生となった今、彼が目指すのは“××鉄道”ただ一つとなっていた。
「こんなに××鉄道が好きなのだから、僕は絶対受かる」、そんな熱い想いをエントリーシートに込め、いよいよ迎えた一次面接。志望動機や大学でやってきたことなど、一通り想定していた質問に答え、そろそろ面接も終わりかな……と思った時、ふいに一人の面接官が口を開いた。
「あなたはアイスクリーム、コーヒー、うどんのなかでどれが好きですか?」
あまりにも想定外だった。いったいこれはなんの質問なんだ……。ぐるぐると疑惑が頭を巡り、Aくんの顔からは大量の汗が噴き出し、思わず口から出た言葉は「××鉄道の車内で食べるなら、どれでも美味しいと思います」だった。
後日彼のもとには××鉄道からお祈りメールが届くのであった――。
さて、鉄道を愛するAくんは一体何がいけなかったのだろう。『キレイゴトぬきの就活論』(石渡嶺司・著)によれば、企業は「夢を語る学生の多さにうんざりしている」らしい。(以下、「」内『キレイゴトぬきの就活論』から抜粋、引用)。
『キレイゴトぬきの就活論』
石渡 嶺司 著
ネット書店で購入する
鉄道会社に鉄道オタクはいらない
「鉄道会社には、全国の鉄道研究会などいわゆる鉄道ファン(鉄ちゃん)が大量にエントリーする。が、そのほとんどが最終選考にすら残らない。鉄道会社からすれば、鉄道研究会ないし鉄道ファンは、欲しくない人材だからだ」
同様に、食品・飲料メーカーの面接で「商品を企画したい」、サンリオで「ハローキティが好きでした」、オリエンタルランドで「ディズニーランドが好きです」、と語る学生も、「いいお客さんのままでいてください」と相当な高確率で落ちるという。なぜなのか。
「鉄道会社は鉄道事業だけをやっているわけではない。流通、不動産、観光、ホテル、バスなど多くの事業を展開している。(中略)
どの鉄道会社にしても、鉄道事業部門しか配属を希望しそうにない鉄道研究会の学生など使いづらいから、門前払いをしている」のだという。
ちなみに先の「アイスクリーム、コーヒー、うどんの中でどれが好きか」という質問は実際にある鉄道会社が新入社員の研修中に聞く質問だ。そして選んだ商品を主力とする駅ビルの飲食チェーンに送り込むのだという。要は鉄道会社に入ってもまずは、テナントでアルバイトのような仕事をさせられるのだ。
だからAくんは面接であのような質問をされ、結果不採用となったのである。どれだけ××鉄道のことを愛していても、鉄道だけ好きな学生は求められていなかったのだ。
同著では他にも「学歴不問」「1年目から稼げる」などといった甘い言葉の矛盾や、「体育会系が使えない理由」「なぜ早稲田が慶應に負けるのか」など、声を大にして聞きづらい就職活動のホンネをあぶりだしている。
就活という戦場は、「夢を持て」と育てられた若者が「夢は夢のままで」という現実を知る場なのかもしれない。
デイリー新潮編集部