鳥が視覚的に磁場を見ている仕組み、量研機構などがその一端を解明
2022/05/10(火) 19:10:23.
鳥が視覚的に磁場を見ている仕組み、量研機構などがその一端を解明
量子科学技術研究開発機構(量研機構)は、ハトの網膜細胞内に存在するタンパク質「ISCA1」が、磁場の強度に応じて長さの異なる柱状になる性質を持つこと、その柱状のISCA1が網膜細胞内の別の磁場感知タンパク質「CRY」と結合し整列することで、磁場情報を方位の情報などに変換していることを明らかにしたと発表した。
同成果は、量研機構 量子生命・医学部門 量子生命科学研究所 タンパク質機能解析研究チームの新井栄揮上席研究員、同・清水瑠美主任技術員、同・安達基泰チームリーダー、群馬大学大学院 理工学府の平井光博名誉教授らの共同研究チームによるもの。
量子科学技術研究開発機構(量研機構)は、ハトの網膜細胞内に存在するタンパク質「ISCA1」が、磁場の強度に応じて長さの異なる柱状になる性質を持つこと、その柱状のISCA1が網膜細胞内の別の磁場感知タンパク質「CRY」と結合し整列することで、磁場情報を方位の情報などに変換していることを明らかにしたと発表した。
同成果は、量研機構 量子生命・医学部門 量子生命科学研究所 タンパク質機能解析研究チームの新井栄揮上席研究員、同・清水瑠美主任技術員、同・安達基泰チームリーダー、群馬大学大学院 理工学府の平井光博名誉教授らの共同研究チームによるもの。
詳細は、タンパク質学会が刊行するタンパク質の関連分野全般を扱う主力学術誌「Protein Science」にオンライン掲載された。
カワラバトなどの一部の鳥は、迷うことなく長距離を移動し巣に帰ることが知られており、その帰巣行動などの研究から、磁場の強さや磁力線の角度を視覚的に捉えていると考えられており、その能力は「磁覚」と呼ばれている。
これまでの研究から、“磁覚”に重要な役割を担っていると考えられてきたのが、カワラバトの網膜細胞内に存在して光を受け機能を発揮し、視覚に影響を与えるISCA1とCRYのタンパク質複合体の形成だという。ただし、その複合体の性質はよくわかっていなかったともする。
ISCA1は磁性の強い鉄と硫黄の集合体である鉄硫黄クラスターを結合し、通常は単量体もしくは二量体で存在している。また、ISCA1はCRYを結合する時に柱状の多量体を形成することや、CRYは磁力線の角度に応答する磁場センサーの役割を持つことなどが知られているものの、個々のCRYがランダムな方向を向いてしまうと、検知した磁力線の角度はバラバラになってしまい、磁場センサーとしての機能は発揮できないことも分かっており、こうしたことからCRYの向きを揃えて固定する「未知の仕組み」が存在すると考えられていた。
そこで研究チームは今回、ISCA1の磁場応答に着目し、その仕組みの解明に挑んだという。
具体的には、タンパク質の構造や動きを調べることができるX線溶液散乱法と、タンパク質周辺の磁場の強さや方向を操作できる独自開発の磁石装置を組み合わせ、カワラバトのISCA1が詳細に調べたところ、ISCA1は鉄硫黄クラスターを結合して磁場に応じて動くこと、柱状の多量体を形成すること、多量体の大きさは磁場に応じて変化することを明らかにしたとする。また、多量体を形成したISCA1が足場となり、向きを揃えてCRYを固定化させることで、磁場情報を方向情報などへと変換する「磁場情報変換システム」を持っていることも判明したとする。
- CRY/ISCA1複合体の外観。黄と赤の円は、本研究により明らかにされた鉄硫黄クラスターの配置。黄は硫黄原子、赤は鉄原子 (出所:量研機構プレスリリースPDF)
これらの結果は、網膜細胞に存在するCRYとISCA1の複合体形成が、「鳥が視覚的に磁場を見ている」というこれまでの仮説をサポートすると同時に、磁力線の角度と磁場の強さを視覚的に捉える初段階を具現化するものだと研究チームでは説明しており、今回の成果について、鳥の“帰巣本能”を解明する新たな手掛かりになると考えられるとしている。
- 今回の成果により推測されたカワラバトのCRY/ISCA1複合体形成と地磁気の関係。磁場が強い高緯度に向かうほど、ISCA1の柱状多量体が伸びてCRYが固定されやすく、逆に磁場が弱い低緯度に向かうとISCA1とCRYがそれぞれバラバラに存在しやすくなると考えられるという (出所:量研機構プレスリリースPDF)
なお、ISCA1とCRYの複合体形成が、磁覚を持つすべての動物で普遍的なものなのかどうかはまだ不明であることから、今後は、磁覚を持つほかの動物(ヨーロッパコマドリ、マウスなど)や磁覚の有無自体が不明なヒトなどのISCA1やCRYに対応したタンパク質の性質を明らかにし、生物ごとの磁覚の仕組みや磁場の感じ方の違いを分子・量子レベルで解明することで、生き物が持つ磁覚の全容に迫りたいと考えているとしている。
(以下略、続きはソースでご確認ください)
マイナビニュース 2022/05/10 14:35