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10代でヤクザの性奴隷、20代で指名手配犯…二度服役の元レディス総長がビジネスホテルを"一棟買い"したワケ

2024年07月13日 20時05分51秒 | 社会のことなど


10代でヤクザの性奴隷、20代で指名手配犯…二度服役の元レディス総長がビジネスホテルを"一棟買い"したワケ



6/9(金) 11:17配信

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撮影=中川カンゴロー

日本における再犯率は48.6%と高い。そんな中、注目されているのが出所者の社会復帰サポートを目的に雇用を行う「協力雇用主」だ。栃木県の建設請負会社・大伸ワークサポート代表取締役の廣瀬伸恵さんはそのひとり。自身も中学時代以降に荒れた生活で二度服役した。その波乱万丈の半生と人物像を『人生上等!  未来なら変えられる』(集英社インターナショナル)で描いたノンフィクション作家の北尾トロさんが廣瀬さんの最新事情をリポートする――。

 【写真】レディス暴走族『魔痢唖』の初代総長時代

 ■二度服役し獄中出産した元レディス総長の社長の生き様  

2007年に発刊された『裁判官の爆笑お言葉集』(長嶺超輝 幻冬舎新書)が再び脚光を浴びている。裁判官が法廷で被告人に語りかけた発言を集めたものだが、そのひとつにこんなものがある。  

「私があなたに判決するのは3回目です」  

覚せい剤常習者への、うんざりした気持ちが込められているようで笑ってしまうが、裁判官が自嘲気味に言った言葉でもあると思う。裁判の目的は、悪いことをした人に罰を与えるだけでなく、再び悪事に手を染めないよう反省し、立ち直ってもらうことなのに、過去の裁判で裁判官がかけた言葉は効き目がなかった。その無力感が、この発言を味のあるものにしている。 

 法務省の「再犯防止推進白書」令和4年度版によると、2021年の再犯者率は48.6%。およそ2人に1人が再び犯罪をおかして捕まるのは尋常とは言えないだろう。 

 しかし、再犯者率の高さには本人のせいとばかり言えない事情もある。更生を誓って少年院や刑務所から出所しても、住む家や仕事、お金、サポートしてくれる人など、人生をやり直すために必要なものがなかったらどうすればいいのか。ただでさえ、世間の見る目は厳しいというのに。

  住む場所や生活費を得るためにまず欲しいのは仕事だろう。仕事を得て生活が安定すれば、小銭稼ぎの犯罪に手を染めたり、ヤケになって悪事に走ったりするケースを減らすことができる。そこで期待されるのが、社会復帰に協力することを目的として雇用を行う“協力雇用主”だ。

  長年、裁判傍聴をしてきた僕は、実刑判決を受け、うなだれて法廷を去っていく被告人を見ているうちに、彼らの出所後が気になってきた。“協力雇用主”に話を聞けば、実態の一部がわかるのではないだろうか。元犯罪者を積極的に雇い入れようとする企業のトップは、社会のために尽くしたいという崇高な理念を持っているに違いない。そう考え、つてを頼って会いに行ったのが、栃木県にある大伸ワークサポート代表取締役の廣瀬伸恵だった。  

ところが、会うなり彼女は、崇高な理想を掲げるだけでは、“協力雇用主”はできないと言い切った。そんなキレイごとじゃないと。 

 出所者の過去は十人十色。犯罪歴も詐欺や窃盗から覚せい剤、暴力がらみなど幅広い。本気で更生を誓っても、きっかけひとつで崩れることも多い。社内でのいざこざ、脱走、警察沙汰も頻発する。彼らを束ねて仕事を回していくには、雇用する側もタフでなければ務まらないのだ。

  「私もさんざん悪いことをして、刑務所に二度服役しましたし、獄中出産も経験しています。私自身が再犯者。まっとうに生きようと思っても、悪評が知れ渡っている地元では仕事を得ることさえ難しかった人間なんです」 

 建設業に活路を見出し、やがて起業しても、ハローワークは誰も紹介してくれなかったそうだ。 

 「だから、最初は苦し紛れに少年院や刑務所にいる知人が出所したら雇うことを始めたんです。でも、“協力雇用主”の制度を知って思ったの。これって、出所者の悩みや苦しみがわかる自分にぴったりの役割じゃないかって」 

 予想外の答えを聞いた僕は、その場で廣瀬に「あなたの本を書きたい」と申し込んだ。彼女の半生は出所者のリアルなレポートであり、再犯者率を下げるためにどうしたらいいかを考えるきっかけにもなると考えたからだ。


■壮絶な過去とガチンコの日常 

 取材を進める中でわかってきたのは、廣瀬の嘘のない生き方だ。過去を隠さず、すべてオープン。問題が起きると人任せにせず自分で対処するし、社員の不満は直接聞く。当然、ケンカにもなるが、それでも逃げない。覚せい剤を使う社員を発見すれば、薬物依存症からの回復施設であるダルクに引っ張っていくだけでなく、クスリを売りつけたヤクザの事務所に自ら乗り込んで「うちの社員に手を出すな」と交渉したりもするのだ。 

 中学入学と同時にヤンキーに目覚めた廣瀬の人生はとにかく波乱万丈。ケンカやカツアゲ、シンナーを皮切りに、家出、覚せい剤デビュー、温泉街でのコンパニオン、ヤクザの性奴隷などを中学生で経験し、18歳でレディス暴走族『魔痢唖』を結成。初代総長となって栃木全域を傘下に収め、覚せい剤の売人として稼ぎまくる。 

 暴力とSEX、ドラッグ、非合法な金儲けがすべての凄まじい日々。その結果、指名手配までされて、20代の大半を刑務所で過ごす羽目になった。 

 その廣瀬が、二度と悪の道に戻らないと心に誓い、建設請負会社を立ち上げて、元犯罪者たちの“母親役”を買って出たのだ。中途半端が大嫌いな性格は、いい方向に転べば武器になる。問題だらけの過去も、培ってきたネットワークが社員を守る際には役に立つ。

  廣瀬は現場仕事のある日は必ず、夕食を希望する社員のために食事を作っている。そのために自宅の1階を開放し、出入り自由にしているほどだ。ただでさえ過去のある面々である。こちらが心を開かなければ信用されない。

  食事が終わると飲み会に発展することもしばしばで、夜が更けるまで社員たちと時間を共にする。また、本音でぶつかり合う場は、社内の人間関係や、個々の精神状態を観察する機会でもある。銀行口座を作れない社員が多いから給料は手渡し。廣瀬は現場に出ないが、そうすることで最低でも月に一度は会話ができる。  

私が非行に走った大きな理由は、寂しさだったんです。そういう子はここにも多い。だから、私は社員たちの“母ちゃん”でいたい。他人の集まりだとしても、ここにいる間は家族同然に付き合うのが私のやり方です」  

その思いが、必ずしも伝わるとはかぎらない。実際、社員はどんどん変わる。生活の基盤を築いて巣立って行く者もいるが、再犯をして捕まる者、ある日突然消える者もいる。

  僕は2年半の取材期間に廣瀬宅を20数回訪れたが、社員の入れ替わりやトラブルがそのたびに起きていた。それでも廣瀬がめげないのは、自分を必要とする者がいるという実感があるからだ。見事に立ち直り、会社の幹部になった出所者について話すときの彼女は本当にうれしそうなのである。 

 「いまでは少しずつ周囲の見方も変わってきて、どこでも手を焼く出所者を『あなたのところで引き受けてほしい』と頼まれることも増えてきました。厄介だとは思わない。逆に、やってやろうと燃えるよね」


■自立を支援する活動をライフワークに 

 極悪非道だった自分がやり直すことができたのは、見捨てずにいてくれる仲間がいたからだと廣瀬は思っている。だったら自分もそうしよう。誰も見捨てず、寄り添おう。 

 全国の少年院や刑務所から入社希望の思いが綴られた履歴書が届くと、廣瀬は1週間程度の面会ツアーを組んで足を運び、直接会う。雇い入れが決まれば、出所日には迎えにも行く。はたから見れば身を削るような毎日だが、ストレスは少ない。なぜなら、やりたくてしていることだからだ。 

 「社員たちが働いてくれて、会社もそれなりに成長できました。これまで雇い入れた出所者は約80人。少しは更生の役にも立てるようになったかな。でも、私には新しい夢ができたの」 

 取材も終わりに近づいた頃、これまで夢など語ったことのない廣瀬が言い出した。それは何か。会社とは別に、自立支援ホームを作ることだという。出所者が一定期間過ごし、仕事探しなどをするための施設だ。 

 「うちは建設関連で現場仕事なので、誰でも雇えるわけじゃない。でも、高齢者や障害を持っている出所者など、本当に困っている人っているんだよね。その人たちのサポートをライフワークにしたいんです」 

 そのうちに、の話かと思ったのだが、僕は廣瀬の行動力を見くびっていたようだ。しばらくすると電話がかかってきたのである。 

 「近くに出物があったので、ビジネスホテルを買いました。自立支援ホームはハードルの高い事業なので、前科者の私でも認可が下りる事業を見つけて必ずやりたい」  

過去は変えられなくても、未来なら変えられる、はず。でも現実には一度でもしくじった者を徹底して叩く、失敗を許さない風潮がはびこっている。みんなの気持ちに余裕がなくなれば、ますます失敗を恐れる気持ちが強くなり、冒険心やチャレンジ心にブレーキをかけてしまいそうだ。 

 廣瀬の半生を書いた拙著『人生上等!  未来なら変えられる』(集英社インターナショナル)が今冬に出てネットニュースになったときも、コメント欄には辛辣(しんらつ)な意見があふれた。元犯罪者に何ができる、引っ込んでろ、ロクなもんじゃない……。それを伝えると、彼女は「あはは」と笑った。

  「叩かれるのは慣れてるんで気にしません。“協力雇用主”に関心を抱いたり、再犯者率について考えてくれたりする人が少しでも増えたらいいんです。私は、圧倒的にサポートが足りない現状を世の中に理解してもらう足掛かりになりたい。そのためにできることは何でもするつもりです」 

 目標はあくまでそこなのだ。やることを決めたら、迷うことなくまっすぐに進む。何をしでかすか予想がつかない廣瀬の元へ通う日々は、当分続きそうだ。 --


-------- 北尾 トロ(きたお・とろ) ノンフィクション作家 主な著書に『裁判長! ここは懲役4年でどうすか』『裁判長! おもいっきり悩んでもいいすか』などの「裁判長!」シリーズ(文春文庫)、『ブラ男の気持ちがわかるかい?』(文春文庫)、『怪しいお仕事!』(新潮文庫)、『もいちど修学旅行をしてみたいと思ったのだ』(小学館)、『町中華探検隊がゆく!』(共著・交通新聞社)など。最新刊は、『なぜ元公務員はいっぺんにおにぎり35個を万引きしたのか』(プレジデント社)。公式ブログ「全力でスローボールを投げる」。 ----------



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夕日のある風景、麹町、女子学院付近

2024年07月13日 19時07分02秒 | 日々の出来事

都内名門女子の中高一貫校の女子学院、今は改築中のようです。

手前が日本テレビの跡地で、ここに90階建ての多目的ビルが建つというので物議巻き起こしてますね。


5・12・2023
コメント (2)
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マリーゴールドのオレンジの花です

2024年07月13日 17時44分21秒 | 日々の出来事



マリーゴールド、季節の花ですね⭐
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円急騰、一時1ドル157円台前半に急伸 「再介入も」と疑心暗鬼

2024年07月13日 15時06分15秒 | 国際情勢のことなど

素人が見ても
「焼け石に水」なんじゃ?

円急騰、一時1ドル157円台前半に急伸 「再介入も」と疑心暗鬼(毎日新聞) - Yahoo!ニュース 








円急騰、一時1ドル157円台前半に急伸 「再介入も」と疑心暗鬼
7/13(土) 1:06配信



毎日新聞
記者の質問に答える神田真人財務官=東京都千代田区で2024年7月13日午前0時ごろ、加藤美穂子撮影


 12日のニューヨーク外国為替市場で対ドルの円相場が再び急騰し、一時1ドル=157円台前半と6月中旬以来、約3週間ぶりの円高・ドル安水準をつけた。政府・日銀は前日に市場の不意を突いて約2カ月ぶりに円買い・ドル売りの為替介入に踏み切っており、市場では再介入観測が広がるなど疑心暗鬼が渦巻いた


【グラフで見る】「円の実力」はどう推移? 1995年にピーク


 取引開始から1ドル=159円前後で推移していたが、6月の米物価関連の経済指標が発表された直後に1円以上、円高が進んだ。さらに米消費者関連の経済指標が発表された直後にも1円弱、円高が進む場面もあり、157円台後半で取引を終えた。


 政府・日銀は11日、6月の米消費者物価指数(CPI)が発表された直後に3・5兆円規模の円買い・ドル売りの為替介入を実施したとみられている。


 12日のニューヨーク外国為替市場での円急騰について、神田真人財務官は日本時間13日未明、財務省内で記者団の取材に応じ「(為替)介入したかどうか、私から申し上げることはない」と述べた。【大久保渉(ワシントン)、加藤美穂子】






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40代以上はなぜ「石丸伸二」を「理解できない、大嫌い」なのか?若者不在の「オールドメディア」と化した「ネットとX」の限界

2024年07月13日 13時07分30秒 | 政治のこと

40代以上はなぜ「石丸伸二」を「理解できない、大嫌い」なのか?若者不在の「オールドメディア」と化した「ネットとX」の限界

7/13(土) 8:00配信 2024



40代以上はなぜ「石丸伸二」を「理解できない、大嫌い」なのか?若者不在の「オールドメディア」と化した「ネットとX」の限界(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース 




「高齢者に虐げられる若者」の象徴

現代ビジネス
誰も予想できなかった「異変」
Photo by gettyimages


かつてない数の候補者が乱立し、また各候補者の政見放送が社会に波紋を呼ぶなど、混乱のなかで投開票日を迎えた東京都知事選。結果はご存じのとおり、開票時間になると同時に小池百合子氏の当選確実が報じられる、いわゆる「ゼロ打ち」の圧勝劇となった。


【完全予測一覧表】「次の総選挙」で落選する「裏ガネ議員」の全実名


見逃せないのは2位以下の波乱だ。当初は2位を独走しながら小池氏を猛追、あわよくば小池都政を終焉させるのではないかと支持者たちが盛り上がっていた蓮舫氏が、広島県安芸高田元市長の石丸伸二氏に追い抜かれ、まさかの3位落選となった。


メディアでは「蓮舫氏の大惨敗」「共産と組んだことで票離れを招いた」などと報じられているが、氏の支持はもとより立憲と共産の岩盤支持層頼みでそこまで上振れも下振れもしていない。これは端的に石丸氏の大健闘と評価するべきだろう。公示直後の関係筋の事前調査では、首位の小池氏に肉薄する形で蓮舫氏が2位につけ、そこから大きく引き離されて石丸氏3位という下馬評だった。実際今回の都知事選で衝撃を受けたのは蓮舫陣営だけではない。政治関係者もメディア関係者も、ほとんどの人が石丸氏の大躍進を予想していなかったのだから。


いったいなにが石丸氏をここまで躍進させたのか? そしてなにより、なぜその躍進の兆しを、ほとんどの人が捉えられなかったのか?


Xで渦巻く「理解できない」の声
いきなり結論から言ってしまうと、今回の都知事選の「石丸フィーバー」を支えたのは間違いなく10代~30代の若年層である。


逆に蓮舫氏は、立憲民主党と日本共産党の主たる支持層であるシニア世代の支持を固めた。データでみるとその差は歴然で、報道各社の出口調査を見ると10代・20代・30代では石丸氏が投票先としてもっとも多く、これらの世代における蓮舫氏の得票(支持)はかなり小さいことがわかる。


統計的には、東京は日本でもっとも少子化が進んでいるものの、しかし日本全体を見ればもっとも若年層の絶対数が多い地域だ。つまり若者が「数の論理」によって高齢世代の政治力を跳ね返しうるポテンシャルを持つ、数少ないエリアのひとつであることもまた事実なのである。今回の「石丸フィーバー」は、「若者の絶対数が多い」という東京の特性がわかりやすく顕在化した事例と見ることができる。


しかしながら、いまやアクティブな情報発信や意見交換を行うユーザーをもっぱら中高年層が占めるXを観察してみると、10~30代が石丸氏を熱烈に支持していることについて、理解がまったく及ばない人が多いようだった。


見え方が「正反対」だった
Xのユーザーたちに、若者たちの投票行動が理解できなかった理由はいたってシンプルだ。石丸氏はソーシャルネットワークを利活用してそのプレゼンスを高める「SNS時代」の政治家のひとりであるのはまちがいないのだが、しかし若者層と中高年層では石丸氏の「見えかた」が180度異なっていたからだ。


Xに常駐する中高年層から見える「石丸氏」といえば、たとえば選挙前からX上で拡散していた安芸高田市長時代の「パワハラじみた」言動の切り抜き動画や、言葉尻を捉えた揚げ足取りに終始しているイメージだった。ようは「部下を攻撃的・挑発的な態度で詰めたり、細かい言葉遣いや表現にいちいち突っかかって議論を空転させ、“仕事ができる人っぽい”演出をしているだけの胡乱な人物」との印象を持っている人が多かった。


念のため断っておくと、X民が抱く石丸氏へのイメージがまるっきり偏見や誤りだったと言いたいわけではない。実際に石丸氏には、市長時代のトラブルで名誉棄損訴訟にまで発展した来歴もあり、その不穏当な言動は必ずしも敵対陣営によって誇張された「印象操作」というわけではない。


だがそれは、TikTokやYouTubeショートで「切り抜かれた」、つまり若者たちがスマートフォン越しに見る「石丸伸二」の姿とは相当にかけ離れていたことは間違いない。


「高齢者に虐げられる若者」の象徴
YouTubeショートやTikTokで見る石丸伸二は、Xのコンテクストとはまったく異なっている。「だらけきったシニアに牛耳られた日本の古い政治体制・既得権益に、果敢にも風穴を開ける若き俊英」のように見えるし、そしてなにより、石丸氏と対立して紛糾する議会や議員たちの様子は「既得権益側の年寄りたちが、志ある若者を妨害している」という、現代の日本社会のある種の“メタファー”のようにも見えてしま
うのである。


YouTube上やTiktokで拡散している石丸氏の動画は、安芸高田市議会で、市長時代の石丸氏が高齢の市議会議員たちを論戦で言い負かすシーンを切り取ったものが典型的だ。動画には「リアル半沢直樹!」「若さと勢いがある」「日本が変わるドラマを見せてほしい」といったコメントが寄せられ、石丸氏に対して「閉塞的な高齢社会に風穴を開けてくれる存在」という期待感が寄せられていることがわかる。


石丸氏はたしかにXのアカウントを持っているが、しかしそこは彼の「主戦場」ではなかった。だからこそ、Xだけを見て「世の中」を知ろうとしている人(最近は本当にそういう人が多くなってしまったように思う)ほど、「石丸フィーバー」の深層が見えなくなってしまった。それには一般ユーザーだけでなく、政治関係者もメディア関係者も含まれていた。


テレビや新聞といった旧来の媒体はしばしば「オールドメディア(レガシーメディア)」などと呼ばれる。しかしながら今回の一件で確信したのは、ウェブメディアやXなどの主として中高年層が集まるいわゆる「インターネット」の世界は、いまや若者たちが集まる「ソーシャルネットワーク」の世界とは相交わることがないということだ。それぞれの観測範囲や文脈やトレンドがまるで異なる分断線がふたつの世界の間には横たわっている。


端的に言えば「インターネット」も今日においては、もはやれっきとした「オールドメディア」の一員なのである。


Xを見れば、トレンド欄はいつもその日放送されているテレビドラマやスポーツ中継のタイトルばかり表示され、タイムラインでバズる話題はテレビの情報番組で取り上げられたゴシップや事件がそのたたき台になっている。そう、いまの「インターネット」ユーザーがやっていることは、「オールドメディア」のユーザーとなにもかわらない。お茶の間のワイドショーからスマホのアプリにその舞台が移っただけだ。



「国政進出」の後で起きること
いずれにしても、ウェブメディアやXで拡散する切り抜きから見える(≒中高年層がネットメディア越しに見る)石丸伸二と、YouTubeショートやTiktokといった動画SNSで見られる(≒若者層がソーシャルメディ
ア越しに見る)石丸伸二には、同一人物とは思えないようなコンテクストの差がある。


だが先ほども述べたように、どちらか一方が真実でどちらか一方が虚像というわけではない。おそらくどちらも石丸氏の一面を捉えたものだろう。とはいえ石丸氏やその陣営は、自分がどういう「コンテクスト」によって支持を獲得しているのかよくわかっている。彼の支持層たる若者層がもっとも多く住んでいる街が東京であり、そしてその東京で、ちょうど都知事選が行われる――それは彼にとって、自分がSNS上でつくってきた「コンテクスト」の強さを内外に示すまたとない好機に見えたことだろう。


蓮舫氏を抑えての2位という圧倒的な実績を得た石丸氏が狙っているのは、次の衆院選だろう。当人は表面的には国政進出に否定的な発言をしているようだが、確実に出馬するだろう。行政の長から代議士になったとき、これまではやや曖昧だった石丸氏の政治的スタンスも明らかになる。彼の支持層が10代~30代であることや、ライブ配信での言動をふまえると、ネオリベラル的な構造改革派としての政治的カラーを鮮明にしていくのではないかと予想する。


再びマジックを起こせるか?
とはいえ国政では、ほとんどの選挙区で高齢者票をいかに取れるかがそのまま当落に直結してしまう傾向がある。国政に出たとたんに、石丸氏がこれまでの「若者ウケ」のスタンスをいきなり捨てて「シニア寄り」に豹変するとは考えにくいが、今回の東京都で起こったような“マジック”を地方で起こせるかどうかは不安要素では
ある。


次の衆院選にどこで出るのかは未確定であるにせよ(おそらくは地元の広島で出るのだろうが)、選挙区の選択が嵌りさえすれば現職を倒しうる地力があることは、蓮舫氏に勝利したことによって十二分に証明されたのではないか。


一部メディアではすでに今後の去就についての話題がひっきりなしだ。「地元広島、それも1区で出るのではないか」といった憶測も駆け巡っている。たしかに広島1区は市内随一の繁華街を擁しており、県内でも若者が多数暮らしているエリアではある。個人的にはさすがに無謀というかありえないとは思うのだが、もし石丸氏が本当に広島1区で本当に出馬して、そして本当に現職(岸田文雄)を倒してしまうようなことがあったら、それはもはやフィーバーどころではなく、「無血革命」といっても過言ではない。


果たして「石丸フィーバー」が今後どれほどのうねりとなるのか。


ウェブメディアやXのような、分断された「オールドメディア」の世界から眺めているだけでは、もはやなにも見えなくなっている。


御田寺 圭










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