1日3食の規則正しい食事」は胃腸に悪い…10万人の胃腸を診た専門医がたどり着いた"朝食の最終結論"
1/4(水) 10:17配信2023
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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/NataBene
日本人の7割以上は1日3食摂っている。これは正しい食習慣なのか。10万人の胃腸を診てきた消化器専門医の福島正嗣医師は「1日3食や、毎日決まった時間に食事を摂るのは、消化管の生理を無視した行為。胃腸の調子を整え、アンチエイジングにも効果的な食事の摂り方があります」という――。
【この記事の画像を見る】 ※本稿は、福島正嗣『朝食にパンを食べるな』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■1日3食は腸によくない?
現在は世界中で、1日3食という食事スタイルが主流になっています。複数の調査を見てみても、日本人の7割以上は1日3食摂っていることがわかります。
しかし、本当に1日3食は、体にとっていいのでしょうか?
歴史的に見て、1日3食摂るようになったのは、思いのほか最近のことです。おそらく原始の頃の人間は、朝食は食べていなかったでしょう。江戸時代以前にさかのぼってみても、1日2食だったという記録があります。
1日3食という食生活は、古来からの習慣ではなく、穀物をふんだんに取り入れることによって生じた食習慣だと考えられます。
タンパク質と脂質を中心とした糖質制限食を実践した場合、血糖値の乱高下が少ないため、極端な空腹感は生じません。ところが、穀物を中心とした食事をした場合、血糖値の乱高下が起こり、異常な空腹感が生じます。
私は10年前に糖質制限を始めたのですが、炭水化物を食べていた頃は1日3食どころか、空腹を感じるときには4食だった時期もあります。
ところが、糖質制限を始めてからはそうした異常な空腹感はなくなり、現在では1日1食もしくは2食となっています。つまり、1日3食は穀物を大量に消費することによって生まれた食習慣であり、1日3食食べたほうが健康であるという理屈は成り立たないと考えます。
1日3食という食生活は「脳がつくり出した習慣」であって、「腸がつくり出した習慣」ではありません。
私自身は、1日3食食べていた時期よりも現在のほうが体は軽く感じますし、食事に振り回されないため仕事の効率が上がり、自分の趣味に費やす時間も増えました
■朝食は摂らないほうがいい?
朝食に関しては諸説ありますので、一概に朝食を食べたほうがいいか悪いかはいえません。それは、その人の日常生活のリズムにもよるためです。
たとえば、夜遅くに食事を摂る人は、消化時間を考えると朝食は摂らないほうがいいでしょう。一方で、夕食は17時までに食べ終わるという人にとっては、むしろ朝食は必要だと考えます。
胃腸科医としてアドバイスするなら、原則として朝起きたときにお腹が空いていない状況で朝食を食べることは、おすすめしません。また、朝食を食べるなら胃腸への負担を考慮して、米やパンといった炭水化物以外のものを食べるのが原則で、炭水化物を摂るぐらいなら朝食はなしにしたほうがいいと考えます。
ちなみに、「朝食を摂らないと頭が回らないから絶対に食べるべき」といった説は医学生理学的に見て間違っていますし、体のことを考えているというより商業主義的な発想だと思われます。
とはいえ、もし朝食を摂るのなら、以下のような食材が胃腸にはいいでしょう。
・食べても影響が少ないもの…卵料理、ハム(加熱はしない)、野菜、ヨーグルト(プレーンのもの)、ナッツ、チーズ
・避けるべきもの…パン、パスタ、うどん、シリアル、サンドイッチ、パンケーキ、クッキー、スコーン
・少量なら影響が少ないもの…玄米、おにぎり、オートミール、果物
■朝食に代わる“中間食”のススメ
私自身も胃腸は丈夫ではないので、食事を摂るタイミングや食べる量、何を食べるかについては、かなり意識しています。
仕事をしている人の多くは、夕食は19時以降になるでしょう。その場合、朝食を起床後すぐに摂ることはおすすめしません。
私自身、夕食はどうしても19時以降になるため、翌日お腹がグーグー鳴って食べ物を受け入れる準備ができるのは、午前10時以降が多いです。
もちろん、これは私の話で、朝からお腹がグーグー鳴って胃腸の調子が絶好調という人は、朝から食べてもいいとは思います。しかし、常日頃から胃腸の調子がよくないと感じている人は、1食目はお昼以降に摂ることをおすすめします。
なかには、お腹に何も入れない状態で仕事をすることに対して、不安に思う人もいるでしょう。こうした人には中間食をおすすめします。
中間食とは、朝食でもなく昼食でもなく、その間の時間帯から少しずつ摂る食事のことです。
■朝食代わりにプロテインを飲む
前述したように、夕食が遅い人は胃腸が次の食事を食べられる準備ができるのは翌日の10時以降です。しかし、当然10時には仕事が始まっている人が多いので、その時間に朝食を摂るのは難しいでしょう。朝食を食べないと次にいつ食事ができるかわからない人もいると思います。
そのような人は、無理に朝食を食べるのではなく、仕事をしながらプロテインを飲むという方法もあります。
私が実際にしているのは、朝、職場に着いたときにプロテイン入りのドリンクをつくり、仕事をしながら少しずつ飲むという方法です。
ポイントは、プロテイン飲料を一気に飲むのではなく、時間をかけて少しずつ飲むことです。少しずつ飲む理由は、胃腸への負担を減らし、インスリンホルモンの誘導を避けるという意図があります。
この方法のメリットは、朝食を摂らないことへの不安感が小さくなる点と、胃腸にとってベストなタイミングで食事を摂ることができる点にあります。運動前のストレッチのように、その日の胃腸の状況を確かめながらエネルギーを摂取できるため、もたれるようなら少し飲んでやめることもできます。
プロテインだけでお腹がいっぱいになる日は、昼食は摂らずに、自分のやりたいことに昼休みの時間を使ってもいいでしょう。
プロテインにはソイ(大豆由来)とホエイ(牛乳由来)がありますが、消化のよさと栄養を重視するなら、ホエイがおすすめです。
注意点としては、プロテインは消化の負担は少ないものの吸収は速いため、量が多かったり、頻繁に摂取するとインスリン分泌を刺激するため問題になります。
ここでプロテインを紹介したのは、胃腸の調子を取り戻すきっかけづくりのためです。筋トレのために1日複数回も飲むというアスリート向けの方法とは、まったく目的が異なります。
1回のプロテインの量は20グラム以内からスタートすると、体への負担は少ないでしょう。
■断食は胃腸の調子を整えてくれる
最近は「ファスティング」という言葉を聞く機会が増えました。昔からの言い方では「断食」になりますが、これは毎日酷使されている消化管にとってはいい習慣です。
人によっては同じ量を食べるのなら、1日に3回よりも、5回以上に分けたほうが太らなくて、胃腸にも負担にならないという意見もあります。
もちろん、この方法が体に合う人は継続してもいいですが、1回1回の食事の量をコントロールして、これ以上食べないと決めるのは至難の業(わざ)です。
コントロールできずに食べすぎたら単なる過食となり、胃腸に負担がかかるだけです。
胃腸は、4~5時間以上、食べ物を入れない時間をつくらないと正常に働いてくれないといわれています。消化・吸収の時間を考えても、それは正しいと考えます。
このため1回1回の食事の量を減らして回数を多く食べるよりは、食事の回数を減らし絶食時間を長くしたほうが、消化管の負担にもならず、栄養吸収の面でも効率的です。
もちろん、これは単にエネルギー摂取という意味だけではありません。胃腸に負担をかけず、かつ細胞にあるミトコンドリアをリセットする効果もあり、アンチエイジングにも効果的です。
■「規則正しい食事」は胃腸に悪い
胃腸科医の立場からいうと、「食べる時間を決めない」ということも重要です。
学校や会社では集団行動をとるため食事時間が決められたりするのですが、その場合、たとえお腹がすいていなくて、その人にとっては食事を摂るタイミングではないのに、時間が来たために食べなければならなくなります。
これを繰り返していれば、胃腸の調子が悪くなるのは当然です。
規則正しく食べるという習慣は、人間の生活リズム(医学的には概日(がいじつ)リズムといいます)を整える意味でも重要と考えられています。
しかし、現代のように、消化の負担が大きい糖質に偏った食事を、時間になったからといって消化管が疲れているのに摂る行為は、消化管の生理を無視しています。
このため、胃腸の調子を整えるためには、食事の時間を決めず、お腹がすいたら食べるという習慣が重要です。
しかし、現代人にとっては、「お腹がすいたら食べる」「時間を決めない」ということはとても贅沢な行為になっているのかもしれません。もし、企業に働き方改革を求めるのなら、休みの確保や労働時間の制限だけでなく、好きな時間に休みをとり、食事時間も自由にすることも重要だと思います。
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福島 正嗣(ふくしま・まさつぐ) 医療法人社団正令会みらい胃・大腸内視鏡クリニック理事長兼院長 1993年、聖マリアンナ医科大学卒業。東京女子医科大学消化器病センター外科に入局後、主に消化管および肝胆膵の悪性疾患の手術を担当。2017年に内視鏡検査専門のみらい胃・大腸内視鏡クリニックを設立、現在に至る。これまでに消化器外科手術2000件、胃内視鏡検査6万件、大腸内視鏡検査3万件の実績を誇る。40歳から糖質制限を始めて肥満や脂質異常症を克服し、自身の体験もベースに多くの患者さんに薬以外の治療として食事指導を行なって成果を上げている。 ----------