ニュースなはなし

気になるニュースをとりあげます

ケンタッキーが絶好調。大戸屋と明暗分けたランチ戦争に注目

2024年12月21日 12時03分36秒 | 食のこと
ケンタッキーが絶好調。



大戸屋と明暗分けたランチ戦争に注目

いきなりフケーキ!>  これは、いきなりステーキを運営する株式会社ペッパーフードサービスが、先月14日に行った令和元年12月期連結決算発表を受けて、Twitterユーザーがツイートした文言です。 



著者 馬渕磨理子 氏

3/9/2020 



この言葉に象徴されるように、チェーン飲食店は浮き沈みがとても激しい業界です。たとえば、5年ほど前まで、急成長を遂げていたことで知られていた鳥貴族。  2017年10月に1品280円から298円への値上げしたことをきっかけに顧客が遠のいてしまいました。 【過去記事】⇒「吉野家が勝ち、鳥貴族は転落。2019外食チェーン戦争の勝者と敗者とは」  


そんな“フケーキ”なニュースが目立つ中、外食業界で好調なのが日本KFCホールディングス(以下、ケンタッキー)です。  ケンタッキー? あの竹内まりやが12月にクリスマスの到来を告げるソングを流してるお店でしょ? 12月以外に需要があるの? そう思う方は、ここから始まる解説に驚くはずです。  





ケンタッキーはなぜ勝っているのか? 私、馬渕磨理子がフライドチキンのように、サクッと3分でお届けしましょう。 


ケンタッキーは“日常食”へシフト

 前述したように、クリスマスにしか用事のないお店、それがケンタッキーだと思っている方は驚くかもしれません。実は、最近のケンタッキーはランチや夜ごはんといった“日常食”として利用されるケースが増えており、それが新規客や常連客の来店頻度を上げ、利益がV字回復に結びついています。それは、テレビCMを見ても明らかです。  

高畑充希さんが最後に口にするセリフは、「今日、ケンタッキーにしない?」。従来のキャッチコピーは「やっぱり、ケンタッキー」でした。  


わずかなセリフの違いですが、両者で消費者に訴求したいメッセージは大きく異なります。日常の食事の選択肢としてケンタッキーを思い浮かべてほしい。そんな同社の意図は、財務諸表にもしっかり現れていました。 

 2年前まで、ケンタッキーの利益は最悪でした。  2018年の経常利益は6.2億円。過去最低水準まで落ち込んだものの、2019年3月期には前年比4.6倍の29億円にまで回復しています。  


下記のデータを見れば、業績が回復していることが一目でわかるはずです。 【ケンタッキーの売上高推移】 2018年…734億円(前年比-146億円) 2019年…743億円(前年比+9億円) 2020年…800億円(前年比+57億円)※予想 【ケンタッキーの経常利益推移】 2018年…6.2億円(前年比-17.8億円) 2019年…29億円(前年比+22.8億円) 2020年…49億円(前年比+20億円)※予想 【ケンタッキーの純利益】 2018年…5.7億円(前年比-7.3億円) 2019年…20億円(前年比+14.3億円) 2020年…34億円(前年比+14億円)※予想 ※FISCO 日本KFCホールディングスより 

500円のランチは、実質910円のメニュー
 では、日常でケンタッキーを選んでもらうために、ケンタッキーが具体的にとった施策はなんでしょうか。それは大きく二つ。  一つは500円ランチ。もう一つは、期間限定のキャンペーン商品です。  500円ランチは、2018年7月から何度か期間限定で販売していましたが、あまりの好調ぶりをうけ、2020年1月6日からレギュラーメニュー化しています。消費増税で家計が苦しくなる中、ワンコインで食べられる手軽さと美味しさを兼ね備えたケンタッキーのランチは、消費者から12月に限らず年中支持を集めたのです。  しかも、500円の中身がかなり大盤振る舞いなのです。
ケンタッキーのHPより


「Sランチメニュー」の中身4点は以下の通り。 ・オリジナルチキン:1ピース(単品だと250円) ・特製ハニーメイプルをかけて食べるビスケット:1個(単品だと230円) ・ポテト(S):1個(単品だと230円) ・ドリンク(S):1個(単品だと200円)  なんと、単品で購入すると合計910円(税込)するセットが、500円で食べられるのです。ここまで読んで、最寄りのケンタッキーを検索したくなった人も少なくないはず。ケンタッキーのランチが提供しているのは、“お得感”ではなく、本当の“お得”なのです。

大戸屋ランチは70円の値上げで…
 一方、ランチタイムの勝者がケンタッキーだとすれば、現在“敗者”と言わざるをえないのが定食チェーンの「大戸屋ごはん処」です。なんと、既存店売上高は12カ月連続で前年割れ。  

人気メニューであった「大戸屋ランチ」(720円)は、昨年4月に廃止しています。  このランチメニュー廃止による、客離れは深刻でした。その6ヶ月後である2019年10月に「大戸屋ランチ」(790円)を復活させていますが、客離れは止まらない状況です。  それは財務諸表にも現れています。 


【大戸屋の売上高推移】 2018年…262億円(前年比+6億円) 2019年…257億円(前年比-5億円) 2020年…245億円(前年比-12億円)※予想 【大戸屋の経常利益推移】 2018年…6.6億円(前年比-5000万円) 2019年…4.6億円(前年比-2億円) 2020年…-2.4億円(前年比-7億円)※予想 【大戸屋の純利益】 2018年…2億円(前年比-1億5000万円) 2019年…5000万円(前年比-1億5000万円) 2020年…-5.3億円(前年比-5億8000万円)※予想 ※FISCO 大戸屋ホールディングスより  特に、純利益はマイナス5億円。ここからどうやって回復できるのか。注目が集まります。 


“日常使い”で勝ったケンタッキー
  鳥貴族はたった、18円の値上げで顧客にそっぽを向かれ、大戸屋も実質70円の値上げで客離れが起きました。不調の理由は値上げだけとは言えませんが、好調なケンタッキーと比較すれば、両者の明暗分けた違いが見えてきます。  

たとえば、テレビCM。  多くの飲食チェーンは新メニューや期間限定メニュー開始のタイミングで集中的にCMを打つことが多いですが、ケンタッキーは日常食であることをアピールするために、恒常的にCMを流し続けました。 


 また驚異のコスパである「Sランチ」のように、最初は期間限定で導入し、顧客のニーズを把握できたところでレギュラーメニュー化に踏み切りました。顧客のニーズがわかるまではテストマーケティングを繰り返していたのです。  その姿は、まるで関心が変わりやすい消費者のニーズに合わせて態度を変える風見鶏(チキンだけに)。しかし、その企業態度こそが、飛躍の理由だったのです(フライなだけに)。


馬渕磨理子
経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「電車売ります!」東急電鉄... | トップ | 「コンピューター苦手」で廃... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

食のこと」カテゴリの最新記事