ヨーロッパの限りない大地

ヨーロッパの色々な都市を訪問した思い出をつづっていきたいです。

柳田国男と折口信夫(岩波書店)

2020-07-25 20:10:35 | ヨーロッパあれこれ


柳田国男と折口信夫
同時代ライブラリー202
池田彌三郎 谷川健一 著
岩波書店 発行
1994年10月17日 第1刷発行

折口信夫の高弟であり、柳田国男とも身近に接した池田彌三郎と、両者の影響を受けながら独自の民俗学を築いた谷川健一の対談です。

「山の人生」の冒頭の炭焼きの男の話
1976年に郡上八幡で「奥美濃四方山話」という聞き書き集を手に入れる。
その中の「シンシロウサ」が山の人生の炭焼きの男
娘と死のうとした動機が、娘が奉公先で意地悪をされたことであり、飢饉や貧しさが動機ではなかった。
柳田による、無意識の創作か? P49-53

序文で、自分のまだ産み落としたばかりの赤ん坊のような著作に批判を加える柳田さん。
「遠野物語」では
国内の山村にして遠野より更に物深き所には又無数の山神山人の伝説あるべし。願はくは之を語りて平地人を戦慄せしめよ。此の書の如きは陳勝呉広(物事のさきがけをすること)のみ
と書く。
自分の書いたものを高みから見下ろすこうした批判精神が、具体的な書物より、柳田国男の考えの方を大きくさせる結果を生んでいる。p141-142
(柳田国男にとって、個々の著作は、それ自体が完成物ではなく、民俗学という巨大な石垣の石の一つ一つに過ぎなかったという気がします)

折口信夫は行かないところは書けない。知識だけで書いてはいけない。肌身に感じなくては書いてはいけないんだ、という考えの人だったのでは。
民俗学はそういう学問である。p173

柳田先生があれだけの仕事をできたのは役人だったからだ。あの組織力は私立の先生にはない。
柳田学というのは、しかるべきところに人を配置し手足のごとく使うという組織力の上に成り立っていた。
柳田学はルネッサンス建築のようなもので、折口学はバロック的な雰囲気を持っている。たとえて言えばガウディのあの怪奇な建物のような。
そして折口学は柳田学の未完成な部分の上に建て加えられていく。p174-175

ヨーロッパで古典学という場合、ギリシャ・ラテンがある。
日本でいえば薄弱で、漢籍はあるものの、生活とは無縁。
日本の場合、生きた古典は生活の中にしかない生活人の慣習とか習俗の中にしかない、というのが柳田国男の考えだったのではないか。p206-207




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ブールジュのサン・テティエンヌ大聖堂の狭い正面広場

2020-07-19 08:28:18 | フランス物語
ブールジュのサン・テティエンヌ大聖堂の後方側面から前方に回ってきます。
大聖堂のファサード全体をカメラにおさめようと思ったのですが、正面の広場からでは無理でした。
仕方なく、少し路地に入ったところから、大聖堂の半身を捉えます。
フランスの大聖堂正面の広場は広い印象があったのですが、ここブールジュやルーアン、そしてストラスブールのそれは狭く、ファサード全体を写すのは無理でした。
残念な面もありますが、大聖堂建築時、中世はこういう感じに近かったようです。
というのも当時、家々や参事会境内などの関連施設が、大聖堂のそばに迫って、取り囲んでいたからです。
今風に言うと「密」の状態だったわけです。
しかしその後、宗教戦争や大革命、更に19世紀の都市改造により、周りの建物は取り壊されたりすることが多くありました。
宗教戦争や大革命においてはイデオロギー、つまり「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」的な思想により、そして都市改造においては文化財保護や「通気・衛生・安全」という第二帝政期のスローガンの実行という名目がまかり通ったのでした。
その結果、現在のフランスの大聖堂は、ぽつんと孤立した状態で居るパターンが多くなっています。
このブールジュの大聖堂も、後ろ側は庭園に囲まれているのですが、正面は別の建物が迫っている状態になり、中世の面影をかすかに残してくれています。
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ストラスブール市議会 緑の党と社会党が統合

2020-07-12 08:53:24 | フランス物語




Strasbourg : l'équipe de Catherine Trautmann (PS) intègre la majorité verte de Jeanne Barseghian
Elles vont finalement travailler main dans la main. Ce samedi 4 juillet, Jeanne Barseghian a annoncé lors d'une conférence de presse commune que Catherine Trautmann et le Parti socialiste (PS) intègreraient sa majorité.

ストラスブール:カトリーヌ・トロットマン(PS)の会派がジャンヌ・バースジアン率いる与党緑の党と統合。
彼女らは結局手を取り合います。7月4日土曜日、ジャンヌ・バースジアンは共同記者会見で、カトリーヌ・トロットマンと社会党(PS)が与党に統合されると発表しました。

Voilà une annonce qui n'était pas attendue. Ce samedi 4 juillet 2020, sur le parvis du centre administratif et dans une conférence de presse commune, Catherine Trautmann et Jeanne Barseghian, qui a conduit la liste victorieuse lors des municipales le 28 juin dernier, ont indiqué que les socialistes intègreraient la nouvelle majorité municipale. Ainsi deux élus appartenant à la liste PS devraient rejoindre l'exécutif et la majorité sera ainsi composée de deux groupes.

これは予想外の発表です。2020年7月4日土曜日、行政センターの前庭における共同記者会見で、6月28日の地方選挙で勝利したリストを率いたジャンヌ・バースジアンとカトリーヌ・トロットマンは、社会党員が新しい市議会の与党に統合されることを示しました。よって、PSリストに属する2人の議員は執行機関に加わり、与党は2つのグループで構成されます。

Ce samedi 4 juillet, en fin d'après-midi, le conseil municipal qui mettra en place les élus et leur rôle aura lieu. Une vingtaine d’adjoints serait prévue, par thématiques mais pas par quartiers. Dans l’exécutif, un adjoint et un conseiller municipal délégué seront du Parti socialiste. Il y a aura donc une bi-majorité municipale, les 47 écologistes et les sept socialistes.

7月4日土曜日、午後の終わりに、当選した議員が市議会が召集され役割が決められます。20名の副市長(注・フランスの副市長は法定議席数の30%を超えない数まで選出可能)が分野別に選出されますが、区では提供されません。執行機関には、副市長一人と市の代表委員一人が社会党から来ます。市議会の多数与党を、47人の環境保護主義者、7人の社会党員が占めることになります。


Franceinfoの記事から抜粋して訳してみました(訳には不正確な箇所もあるかと思います)
この期に及んでの統合には驚きました。
いわゆる与党でも過半数に達していない場合、選挙後に多数派工作で統合することはよくありますが、フランスの市議選の制度では多数派が確約される仕組みになっています。
また、統合するのなら、第一回投票終了後にして第二回投票に臨む方が民主的ともいえるのですが。
こうなった理由も、新型コロナによる非常時ゆえかもしれません。
統合自体は、もともと同じ左派だったことに加え、緑の党にとっては不慣れな与党での議会運営に備えるため、社会党にとっては少数野党よりも与党に加わりたいという、お互いの思惑かもしれません。
FAIRE ENSEMBLE STRASBOURG(ストラスブール共に行う)という、トロットマンさんの会派名を体現した形になりました(笑)
今後、この統合がどうなるかも気になるところです。
それにしても、記者会見の場所が野外というのがいいですね。
乾燥した爽やかな気候の中、7月の木漏れ日が注いでいます。
ルノアールの絵画で似たような背景があったのを思い出しました。
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翼廊(トランセプト)の無いサン・テティエンヌ大聖堂(ブールジュ、フランス)

2020-07-11 07:38:43 | フランス物語


更に左に移って写真を撮ります。
全体像がよくわかってきました。
ブールジュのサン・テティエンヌ大聖堂の、一番よく見掛ける角度になりました。
この大聖堂、他の巨大なゴシック大聖堂と違い、翼廊(トランセプト)がありません。



アミアンの大聖堂です。矢印の部分が翼廊となります。横に伸びる廊で、袖廊とも呼ばれます。
これにより、大聖堂を上から見ると、ラテン十字の形になり、キリスト教の象徴である十字架を大聖堂自ら体現することができます。
また内部構造においては、祭壇付近のスペースを広げ、信者たちの巡回を容易にします。

一方ブールジュの大聖堂の場合、巨大な身廊の両側に二重側廊が平行しています。
そしてその側廊の上に、急勾配の飛び梁が載っています。
内部の高さは一番外側の第二側廊が9メートル、第一側廊が21メートル、そして身廊が37メートルとなり、どっしりとしたピラミッド型の内部空間となっています。
この複雑さとユニークさゆえに、当時の大聖堂建築の主流にはなり得ませんでしたが、今となってはその独自性がブールジュの大聖堂の魅力となっています。
(大聖堂 文庫クセジュ を参考にしました)
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サン・テティエンヌ大聖堂南塔そばの部分(ブールジュ、フランス)

2020-07-05 09:28:18 | フランス物語
大聖堂の真後ろから、少し左に移動します。
全貌が見えてきました。
とんがり屋根の塔は南塔となります。
そのそばに別の建物のように見える部分がありますが、これは大聖堂に付随しています。
少し不自然な構造に感じます。
過去の歴史を調べてみると、14世紀初頭に南塔が傾いたため、脇を巨大な控え壁で補強したそうです。
その名残が補修工事を経て、現在の姿を導いているのかもしれません。
建物自体は壮大ですが、構造は脆弱なゴシック大聖堂ならではの改築史といえます。

(週刊ユネスコ世界遺産 第41号 を参考にしました)
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