ヨーロッパの限りない大地

ヨーロッパの色々な都市を訪問した思い出をつづっていきたいです。

ルーブル美術館展にて(京都市美術館)

2006-09-28 22:08:40 | ヨーロッパあれこれ
京都市美術館で開催中のルーヴル美術館展を見に行く。
この美術館には何度も行っている。前回はマルモッタン美術館の、モネ・モリゾの時だっただろうか。
今回はギリシャ系の彫刻、レリーフの類である。
絵画と比べ、フランスからの搬送には更なる苦労があったはずである。本当に神経を使ったのだなと関係者の皆様のご苦労には頭の下がる思いである。
今回のメインはアルルのヴィーナスとボルゲーゼのアレスであろうか。
厳密にはギリシャの原作をもとにローマなどで、前1世紀あたりに作られたものだが、そんなことには特に関係なく、肉体美に圧倒される。結構上背もあるのだ。
ただ、こういうヌード系は、たくさんお客さんのいる中でじろじろ見ているのは、何となく気恥ずかしい。
人の少ない時のルーブル美術館で、同じような作品が並ぶ中、ほろほろ見回れたらいいなと思う。

ここには、ギリシャの墓碑も展示されていた。
古い岩波新書の「ギリシャ芸術」を読んで以来、墓碑の神秘性に惹かれていたので、現物を見れたのは幸いだった。
今回の作品でも、死者とそれを悼む家族が浮き出されたものが展示されていた。
ただそれは、視線を交わしていたので、死者と遺族の間の距離が近くなり、やや神秘性に欠けていたきらいがある。
死者の視線が虚空をさまよっている方が作品としては深くなると感じる。
今回は頭の部分が欠けている作品の方が、かえって想像力を発揮することができた。

全部見終わり、帰りに売店で今回の作品集を買う。
結構重いが、フランス語の原文も載せてくれているのでしょうがない。
原文を見ながら研究できる語学力と鑑識眼があったらなと思う。
まあ、ちまちま日本文を読みながら、作品を研究していきたい。

ぼくはサイード②

2006-09-20 21:52:41 | フランス物語
今は家を出て、日本からの留学生、ヨウコと一緒に暮らしている。
といっても、彼女のアパルトマンに居候しているような感じ。のら犬と変わらない。
彼女、かわいいけど気は強い。
もともと、日本女性って、「おしとやか」というイメージがあったんだけど、ヨウコを見る限り、そんなことば、どこかに消え去ってしまう。
ヨウコは自分の出身地を「コメディの街」といっていた。
うるさくなければ生きていけないらしい。

そんなある日、ぼくたちの学校に、素晴らしいニュースが飛び込んできた。
パリ市立近代美術館で、みんなの作品を出展できるかもしれない、というのだ。
もちろんパリ市のお墨付きである。
こんなチャンスめったにない。
さすがぼくらの講師はすごい。ゲイで見かけはなよなよしているが、さすが芸術界では顔が利く。
クレイジーでいつもべたべたまとわりついてくるけど、ぼくらに道を開いてくれた。
さすがパリ、市長もゲイの街は違う。

まわりのみんなは準備を始めたが、ぼくは何もいいアイディアが思い浮かばない。
一方ヨウコは着々と準備を進めている。
透明なテントを買ってきて、天井から吊るす。
その中に丸いテーブルを置き、小物を散乱させる。
そして白いタンスを置く。半開きの中からは女の子の下着が半分取び出ている。
それでもまだ物足りないらしい。

ぼくはサイード①

2006-09-17 21:52:45 | フランス物語
ぼくはサイード
パリ生れのパリ育ち
といっても、「花の都」なんていうイメージとは全然違う、北の方の、地区。
ぼくのようなアラブ系や、アフリカ系が多く住む地域。
ぼくのおじいちゃんは、北アフリカからフランスに来て、ごみ掃除など白人がやりたがらない仕事でこつこつ金を貯めた。
そしてぼくの親父は、その金を資金にして小さな食料品店を立ち上げ、家族を養ってくれた。
移民の暮らしは相変らずよくない。
就職なんかでも、アラブ系の名前というだけで差別される。
ぼくの周りには、サルコジの野郎が言うところの「ごろつき」がいっぱいいる。
親の汚れ仕事を引き継ぐより、ぶらぶらしていたり、もっとひどい奴だと、麻薬の密売人になってるような奴もいる。
ぼくも一歩間違えればそうなっていたかもしれない。
でも、それを救ったのは芸術的な才能。
親父によると、ひいおじいちゃんは有名な工芸職人だったらしい。
隔世遺伝で、その才能がぼくの所に来たようだ。
学校でも、他の教科は全然だけだったけど、美術の時間だけは、先生はいつもぼくの作品をうっとりと見つめてくれた。
おかげで奨学金をたくさんもらい、上級の美術学校へ行く道を開いてくれた。
今ではそこでわけのわからないオブジェの制作に没頭する日々。
さすが文化の国フランス。こんなことが十分できるようなシステムを作ってくれている。
まあ、カエサルの時代から、戦争に負け続けたフランスのことだから、文化を伸ばすしかしょうがなかったらしい。
それはそれで結構な事。
おかげでぼくなんかものうのう生きていける。
たとえナポレオンがたまたま勝っても、後に残るは死体のみ。