ヨーロッパの限りない大地

ヨーロッパの色々な都市を訪問した思い出をつづっていきたいです。

望遠鏡以前の天文学 古代からケプラーまで(後半)

2024-03-02 20:03:20 | ヨーロッパあれこれ

第8章 イスラーム世界の天文学

9世紀から15世紀までの間、ムスリムの学者は科学的知識のあらゆる分野において卓越していた。特に天文学と数学への貢献は著しいものだった。

 

天文学が異なる二つのレベル、

すなわち理論を持たず空に見えるものだけに基づいた民間天文学と

組織的な観測と数学的な計算や予知に関わる数理天文学とにおいてイスラーム世界で栄えた。

 

アラビア語で書かれた最古の天文学テクストは、7世紀にはすでにムスリムに征服されていたスィンド(インダス川下流域)とアフガニスタンで書かれたと思われる。それはテクストと表から成っており「ズィージュ」と呼ばれた。

 

ムスリムの暦は太陰暦である。暦月は三日月が最初に見えた時に始まる。月の初めと終わりを正確に決定することは、断食の月であるラマダーンや他のさまざまな宗教的行事にとって特に重要である。

 

ラマダーンの始まりに関する混乱が、今ではしばしば見られる。この混乱は、三日月がある場所では見えるが別の場所では見えないという事実と、まさしく新月の最終通告をする宗教学者が天文学者に耳を傾けたがらないことに由来している。

 

第9章 中世ヨーロッパの天文学

かつての属州にあったローマの学校が姿を消し、ギリシア語が忘れ去られていた西洋では、ローマ帝国の崩壊によって、基本的に二言語併用であった文明が消滅した。

 

一般に科学史、そして特に天文学史において、この「暗黒の」世紀について報告するに値する理由

・天地の創造者としての唯一の神というキリスト教の信仰の伝播が、自然に対する一般的に態度を変え、かつて自然現象に関係があると考えられた多くの神や霊魂を排除することで、自然現象に学問的アプローチの道を作った。

・キリスト教の典礼が、時間の計算に対する新たな需要を生んだ。

 

カロリング朝時代(800年頃)以降、通常は田舎にあった修道院の学校以外には、数を増しつつあった司教座聖堂の学校があった。これは都市部に置かれ、俗人と聖職者の門弟の両方に開放されていた。

 

1200年以前はどの学問分野においても現存するギリシア語作品のほとんどが、イスラームの地で生まれた多くの著作とともに、ラテン語に翻訳された。

 

中世の学生は少なくとも天文学と宇宙論の初歩を習得することなしに修士の学位を取ることができなかった。

 

自分自身の持つ豊かさに気付かなかったコペルニクスは、もっぱら、自然ではなく、プトレマイオスを代弁することを引き受けたのだ。それにもかかわらず、彼は誰よりも自然に近づいた人物であった。

 

第11章 中世後期およびルネサンスの天文器具

本格的な天文観測が始まる本当の転換点は、1492年にクリストファー・コロンブスがスペインから西に向かって出帆した15世紀末に訪れた。

南北アメリカ大陸の発見によって、正確な天体観測に対する実用的な必要性が生じた。

 

第12章 中国、朝鮮、日本の天文学

グノーモン

地面に垂直に突き刺した棒。1年のさまざまな時の正午の日影を測定することであり、その結果、太陽暦を採用することを促した。

 

第13章 現代における古代天文学の活用

古代史に記録された天文現象

日食と月食、超新星現象として知られる巨大星の爆発、彗星、太陽黒点、流星雨、隕石、そして北極光

 

古代や中世の長期にわたる観測記録で、太陽の活動や地球の自転が識別できる。

また超新星爆発のように稀にしか起こらない現象の記録は、古代のデータが有効

 

前8世紀末頃に、ようやく最古の組織的な観測記録が、バビロンと中国で始まる。

 

1006年5月の初め頃、ヨーロッパ、イスラーム、そして東アジア(藤原定家の明月記の中で記述あり)で観測した人々は、南の空で光り輝く超新星が現れたのに気づいた。

 

1181年の秋、おそらく歴史上最も暗い超新星が見られた。中国と日本の天文学者だけが発見していた。

明月記に記録があるが、ヨーロッパでもイギリスのネッカム(1157-1217)も著書の中でこの超新星に言及していた。

 

古代の天文学者が残した観測記録がなければ、われわれは、宇宙の遥かなる広がりの中や、地球それ自体の上で起こる多くの変化に気付かなかったかもしれない。

現代の天文学者が、十分な装備を持たずとも勤勉であった先人たちに感謝するのは当然である。

 

 

 

 


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1 コメント

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花神ロボティクス (グローバルサムライ)
2024-03-04 03:22:52
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタインの理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズム人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より特殊鋼関係はもとより様々な分野で脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。日本的というか多神教的なこの科学哲学はっどこか懐かしさを覚える。
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