ピート・ローズの記録を塗り替えたイチローは自分を笑った者たちを見返してやることを誓ってここまで来たと自虐的に語った。振り返れば、確かに多くの人が起こり得ぬことと軽く見ていただろう様々な記録が彼の手にかかれば起こり得ぬことではなかったことを驚きと畏怖の気持ちとともに再確認することができる。
イチローのこのインタビューからわずか数日後に起きた、やはり多くの人がたかをくくっていた英国EU離脱の国民投票結果を見ると、このところ起きている同様の事象に寒々しい思いが黒い雲となってわだかまって来るのを感じる。米国大統領選でのトランプ台頭や安倍首相のリーマンショック再来発言など、多くの人があり得ないことと笑い飛ばしていたはずだった。それが現実となって目の前で次々に起きている。もちろんイチローの偉業と社会の事件を同じ文脈の中でとらえることは出来ない。だがシンプルに見れば人は合理的に論理で生きる生き物でなく、プライドで生きる生き物であることを示す共通性が見えてくる。
これ以上ない悲惨な結末を迎えた戦争の結果、互いのプライドを捨て、未来のために結束しようと作り上げてきたものを、自国の、または特定地域に暮らす人々のプライドを守るためにやすやすと放棄する。だがそのプライドの根源を覗き見るとそこには国境も枠も無い。自分の顔も暮らしも知らない天上の誰かが勝手に作った枠組みやルールに従わなければならない現実が嫌でならない。ましてそのルールが枠組みを作った連中だけを太らせるルールだと思えばなおさらだ。
ネットに突き動かされて独裁者に反旗を翻したアラブの春と構図が似ている。枠組みを壊すまでは衰えない力が枠組みを壊してしまうと急にしぼんでしまい、その先の新たな枠組みを生み出すまでに至らない。その結果訪れる混乱。イスラム国の台頭もEUへの難民流入もその混乱が生んだ結果だ。自分たちのボロボロになったプライドをスカッと元通りにしてくれる人物としてトランプに票を投じるつもりの米国民も、EU離脱を選んだ英国民もおそらく同じ道をたどる。とはいえ、やはりアラブの春がそうだったように抑圧されていると感じている人は世界中あらゆるところにいて自分たちのプライドの花を咲かせたいと機会をうかがっている。すでに始まってしまった連鎖を食い止めるのは難しいだろう。
つまり、長く続いてきた枠組みが壊されて行く現実を私たちはこれから“まさか”こんなことが起きるとは思わなかったという思いを抱きながら見つめ続けることになるだろうということだ。沖縄や広島や米国の銃乱射事件現場の町では涙ながらに世界に訴えている平和への希望はかなうことがなく、まさかとへらへら笑いながら遠ざけていた、難民でいる人たちの側や銃弾を浴びせられた側の人たちに思いをはせることのない暴力的なルールが世界を覆う日が徐々に近づいてきている感覚が強い。
国家の意味がないほどに種族や宗教で連帯している人々もいて、それぞれに強いプライドを自覚している時代だ。どうせまさかあり得ないと笑われるぐらいなら、地球と言う星に暮らすプライドを花開かせてみることを全世界の人々で考えたらどうか。壊した枠組みの向こう側にEUなどという小さな実験は通り越し、地球全体で一つの民主国家連合となる夢を実現することができれば英国EU離脱も歴史の輝かしい転換点として後世に語り継がれるものになるのではないか。(三)
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横浜に拠点を置くソフトウェア開発・システム開発・
製品開発(monipet)、それに農業も手がけるIT企業
イチローのこのインタビューからわずか数日後に起きた、やはり多くの人がたかをくくっていた英国EU離脱の国民投票結果を見ると、このところ起きている同様の事象に寒々しい思いが黒い雲となってわだかまって来るのを感じる。米国大統領選でのトランプ台頭や安倍首相のリーマンショック再来発言など、多くの人があり得ないことと笑い飛ばしていたはずだった。それが現実となって目の前で次々に起きている。もちろんイチローの偉業と社会の事件を同じ文脈の中でとらえることは出来ない。だがシンプルに見れば人は合理的に論理で生きる生き物でなく、プライドで生きる生き物であることを示す共通性が見えてくる。
これ以上ない悲惨な結末を迎えた戦争の結果、互いのプライドを捨て、未来のために結束しようと作り上げてきたものを、自国の、または特定地域に暮らす人々のプライドを守るためにやすやすと放棄する。だがそのプライドの根源を覗き見るとそこには国境も枠も無い。自分の顔も暮らしも知らない天上の誰かが勝手に作った枠組みやルールに従わなければならない現実が嫌でならない。ましてそのルールが枠組みを作った連中だけを太らせるルールだと思えばなおさらだ。
ネットに突き動かされて独裁者に反旗を翻したアラブの春と構図が似ている。枠組みを壊すまでは衰えない力が枠組みを壊してしまうと急にしぼんでしまい、その先の新たな枠組みを生み出すまでに至らない。その結果訪れる混乱。イスラム国の台頭もEUへの難民流入もその混乱が生んだ結果だ。自分たちのボロボロになったプライドをスカッと元通りにしてくれる人物としてトランプに票を投じるつもりの米国民も、EU離脱を選んだ英国民もおそらく同じ道をたどる。とはいえ、やはりアラブの春がそうだったように抑圧されていると感じている人は世界中あらゆるところにいて自分たちのプライドの花を咲かせたいと機会をうかがっている。すでに始まってしまった連鎖を食い止めるのは難しいだろう。
つまり、長く続いてきた枠組みが壊されて行く現実を私たちはこれから“まさか”こんなことが起きるとは思わなかったという思いを抱きながら見つめ続けることになるだろうということだ。沖縄や広島や米国の銃乱射事件現場の町では涙ながらに世界に訴えている平和への希望はかなうことがなく、まさかとへらへら笑いながら遠ざけていた、難民でいる人たちの側や銃弾を浴びせられた側の人たちに思いをはせることのない暴力的なルールが世界を覆う日が徐々に近づいてきている感覚が強い。
国家の意味がないほどに種族や宗教で連帯している人々もいて、それぞれに強いプライドを自覚している時代だ。どうせまさかあり得ないと笑われるぐらいなら、地球と言う星に暮らすプライドを花開かせてみることを全世界の人々で考えたらどうか。壊した枠組みの向こう側にEUなどという小さな実験は通り越し、地球全体で一つの民主国家連合となる夢を実現することができれば英国EU離脱も歴史の輝かしい転換点として後世に語り継がれるものになるのではないか。(三)
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