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しゃんと伸ばして

 レゴで作った建物を載せてあるテーブルが一杯になってきた。
「もう一つ欲しいなあ」
と思っていたところ、私の胸中を察した妻が、
「特定健康診査を受けたら買ってあげる」
と意表を突く提案をしてきた。
「何だ、特定健康診査って?」
「国民保険に加入している人なら無料で受けられる健康診断」
「どんな検査をするの?」
「問診、身体測定、血液検査、検尿などって書いてあるけど」
「ふ~~ん、それくらいなら受けてもいいかな・・」
今まで一度も健康診断などというものを受けたことがない私は少しばかり警戒したが、これくらいの検査なら簡単に済むだろう。それに、なんと言ってもご褒美の魅力には逆らえない。即答すると、余りに魂胆が見え見えになってしまうので、しばらく間を置いてから、
「じゃあ、受けてみるか」
と勿体ぶって答えた。が、内心はかなりほくそ笑んでいた・・。

 で、昨日検査に行ってきたのだが、病院は毎年インフルエンザの予防接種をうってもらっている産婦人科。もう何年も通っているので、抵抗はない。それでも妻の付き添いがなければとても一人では行けない・・。
 受付を済ませて、ちょっとした健康調査の紙に記入していたら、名前を呼ばれた。
「先ずは身長体重を測りますね」
と、かなり高齢で背の低い看護婦さんが測定室へ案内してくれた。妻も一緒に付いてきたのは、背の高い私の身長測定の値を背の低い看護婦さんに代わって読むため・・。
「背筋伸ばして」
と妻の言葉に反応してぴんと伸ばしたつもりだが、猫背の私ではさほど伸びなかった。
「183.7cm」
妻が目盛りを読み上げた。
「何?183?そんなわけわけないじゃん。オレは185cmだぜ!」
「縮んだんじゃないの?最近顔が近くにあるよ」
「そんなわけあるか。じゃあ、本気でぴんとしてみる」
背中を測定器の柱に沿って思い切り伸ばした。が、背中が痛い・・。真っ直ぐできない・・。
「あごを引いて」
妻のかけ声の通りにしたつもりだが、どうしてだか上手くいかない・・。
「184.5cm」
「絶対おかしいって。185あるはずだぞ」
「ないものはないから仕方ないでしょ。はい、184.5cmです」
と横で見守っていた看護婦さんに確定数値として告げた。
「おかしいって、185ないなんて」
「縮んだんだわ。姿勢が悪いのが原因だろうね」
「そうかもしれないけど、185ないっていうのはショックだなあ・・」
「老化現象だね・・」
同い年の妻に言われる筋合いはないけれど、このままではいけないと思い立った。そこで、

『背筋をしゃんと伸ばして生活しよう』
を当面の目標とすることにした。
背が縮むなんてことはやっぱりイヤだものね・・。
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