私は入社以来、国内及び諸外国の火力発電所の設計に携わりました。その中の一つの昭和61年、62年に完成した、中国電力殿向けの山口県小野田市に建設した新小野田火力発電所、1号機、2号機の思い出があります。この新小野田火力発電所は、それぞれ出力が50万キロワットの、当時石炭を燃料とする最新鋭の火力発電所でした。排煙ガス中の窒素酸化物を除去する装置や、同じく排煙ガス中の硫黄酸化物を除去する脱硫装置や燃料の貯石炭場、揚運炭設備があり、広大な敷地でした。環境対策を完全に実施したまさに最新鋭の火力発電所でした。
思い出すのはこの火力発電所の騒音防止対策も担当しましたので、数々の思い出があります。この発電所の敷地は、丁度出島のように埋め立てられた敷地でした。橋を渡って入るとすぐ左手に守衛所があり、出入りする人は身分証明の提示が必要でした。そこを少し入ると私が勤めた会社の現地建築事務所があり、その少し奥に中国電力殿の発電所の運転、維持管理をする現地職員の事務所がありました。
地域の住宅地は発電所入り口に向かって狭い湾を隔て左側と、発電所入り口側にありました。騒音防止対策をするうえで基準となるのは、運転員の健康を維持する機器端の騒音規制値と国の定めた敷地境界と住宅地の騒音値を規制する環境基準を守る必要がありました。運転員の健康を維持する機器端の騒音規制値も十二分に守れるように騒音防止対策の設計をし、発電所全体の鉄骨は高さ80数スメートルあるのですが、防音壁を取り付け、ボイラープラントから発生する騒音地が極力低くなるように完璧を期しました。地域の住民の方々に火力発電所の騒音が気になる、などと絶対言われないようにするため、火力発電所の敷地の入り口側と左側には景観を考慮し騒音防止対策の一環として植林をしていただきました。
火力発電所が完成し、敷地境界線と住宅地の騒音を朝の10時、12時、15時、及び夜間騒音値は22時、0時、午前3時に計測しました。特に住宅地の騒音値は風向きによって異なるので、1回の計測ではなく、3回の計測をし、全て環境基準を守れていることを実証できました。当時中国電力殿の現地事務所の所長は、とても騒音対策は完璧か、ということに気を配っておられ、夜間にお一人で、境界線、住宅地の騒音値を何回もチックをされており、自らご自分の耳と騒音計測計で確認されるお姿が印象的でした。私も担当者に任せきりにするのではなく、自ら真夜中も確認していましたので、そのことを所長もご存じで、大変信頼してくださり、騒音対策が完璧にできたことをとても喜んでくださったのが印象深く残っています。騒音発生源は300も超えていましたが、高さ200mの煙突から出る騒音値も計画値以内になり、全てがうまくいきました。何事にも誠心誠意取り組むことの重要性を学ばせていただきました。
新小野田火力発電所の建設時には中国電力殿の多くの職員の方々や、現地の建築事務所の社員の方々に大変お世話様になりましたことに厚く御礼を申し上げます。
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ウクライナ ロシアの非道 3ヵ月 今日の一句
庭で咲いてきた「バラの花」
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