城台山日記

 城台山の麓で生まれ、毎日この山に登り、野菜・花づくり、読書、山登りをこよなく愛する年寄りの感動と失敗の生活日記です。

四つの小話題(後編) 23.2.19

2023-02-19 13:30:14 | 地域のこと他
 前編は経験してきたことを書いたが、後編はテレビで見たこと、本で読んだことについて書く。いずれも印象深いものであったので、その印象も含め紹介することにする。

③おひとりさまの看取り
 昨年の9月4日NHKテレビで放送された「おひとりさまでも、家で死ねますか?」という少しある意味挑戦的なタイトルの番組を録画しておいたのを、つい最近見た(録画したことさえ忘れていたが)。この番組の主人公は岐阜市内で開業している小笠原医師、そして二人の終末期のガン患者である。NHKいろいろ批判もあるが、このような長期取材の番組を作ることが出来るのはNHKしかないと思う。

 ネットで検索したら真宗大谷派の記事に載っていた 小笠原医師はまた同派の住職でもあるから

 二人のガン患者、家庭環境は全く対照的で、一人はおひとりさまだが、二人の娘が近くにいて、いつも父親のことを気にかけている。もちろん、二人の娘も様々な問題を抱え、同居はできないし、何より父親自身が同居を望んでいない。彼を支えているのが、小笠原医師を中心とする看護師(看護ステーションを併設)、ヘルパーなどのチーム。痛みがひどくなるにつれて、モルヒネなどの痛み止めの処置がなされる。父親自身、調子の良いときには庭に出て作業をする。最後の看取りができないという娘に小笠原医師は言う。誰でも最後までつきあうことはできないし、父親もそれを望まない。日頃のお互いの信頼があればそれで十分であると。

 もう一人、年齢は60代前半。随分好き勝手な生活をしてきたようで家族との連絡は途絶えている。担当の医者に対しても時に感情をぶつけるくらい、難しい性格。カメラはベッドのシミ、周りのごみの山まで写す。調子の良いときには福祉事業所で簡単な作業をしている。ご機嫌の良いときにごみを片付ける提案をし、やっとのことで片付けられた。この担当医自身もかつては外科医であったが、心を病み、その後小笠原医師のもとで復帰した経歴を持つ。家族への連絡はできないまま看取りは終わりを迎える。

 小笠原医師は、一日を明るく過ごすことを重視する。そうすることが残されたいのちを長くする。2020年3月3日付けで「終活について考える」というブログ記事で中村伸一医師のことを取り上げた。我家では母親を昨年2月特別養護老人ホームに入居させた。小笠原医師や中村医師が行っているような在宅ケアはこの地域で受けることができないので、介護する家族が大変な負担を背負うことになってしまう。現状では、「おひとりさまで家で死ねますか」と問われれば否定的な答えしかできない。

④「最高の老後」を読んで
 最後は、山田悠史「最高の老後ー「死ぬまで元気」を実現する5つのM」から。著者は2015年から米マウントサイナイ医科大学で米国老年医学専門医である。加齢というと「もの忘れ」「認知症」など脳の機能が衰えていくようなイメージが強いが、良い面もあることを忘れてはいけない。知恵が豊富になる、多様な病原体に対する免疫を獲得できる(例えば風邪を比較的引かなくなる)、アレルギーが改善する、自由時間を獲得できるなど。
 ※5つのM
  Mobility(からだ、身体機能)65歳以上の約10人に一人は車いすか寝たきりー歳を重ねていくうちに杖や歩行器が必要となる。また車いすや寝たきりにもなる。歩く能力に一見問題がない人でも転倒リスクが増す
  Mind(こころ)65歳以上の約5人に一人は認知症ーいくら体が元気でも、脳や心が元気がないと、体全体の具合が悪くなり、人の助けが必要となる
  Medication(くすり)65歳以上の約3人に一人は5種類以上の薬を飲んでいるー薬と上手につきあっていく
  Muiti-complexity(多様な疾患を抱えた状態になることを予防する)65歳以上の約5人に4人は、少なくとも一つ以上の慢性疾患を持つー
  Matters Most to Me(いきがい)死に直面している人の10人中7人は自分で意思決定ができない

 5つのMにそってもう少し具体的に中身をみてみる。まず Mobility から。筋肉の細胞は寿命がとても長く、平均は15年。筋肉トレーニングで成長するのは筋肉の伸び縮みを助ける筋繊維が多く作られることで、ボリュームが増えるからである。この筋肉、病気により10日間ベッドで過ごすと、平均1kg減る。平均的な男性の筋肉量はだいたい20kgだとすると10日でその5%を失うことになる。そして高齢者の抱える問題に「転倒」がある。65歳以上の2~3割の人が一年に1回以上転倒を経験するとされている。そして、「一度転んだ人はまた転ぶ」という事実がある。転倒への不安と恐怖は活動性の低下につながり、さらに転倒リスクは高くなる。転倒は、筋力の低下だけでなく、バランスの障害、糖尿病などの病気、視力の低下、認知症、自宅の環境など様々な 要因によって起こる。また、高齢者の歩けなく最大の要因は、膝の痛みによることが多い。運動の効用として、死亡、心血管疾患、高血圧などのリスク低下と関連する。また、肺がん、乳がん、膵臓ガンなど8種類のガンのリスク低下との関連も示唆されている。

 同書86ページ
 
 Mind(こころ)、ここで問題になるのは認知症とうつ病。認知症は認知の機能が障害されてしまったという結果であり、その原因を探ることが大切である。認知症を予防する科学的根拠のある予防法はなくて、世の中にある食事法や栄養は十分な根拠を欠いている。運動は認知症予防に役立つのでないかについては、運動量が多ければ多いほど、認知症リスクが低いという関係はありそうだということがわかっている。しかし、認知症になるような人はそもそも運動しないという逆の関係があるかもしれなく、根拠とはならないようだ。運動をしていなかった人に飲酒や喫煙が多く、運動ではなく、その多さが認知症の原因になっていたかもしれない。

 Medication(くすり)、 特に問題なのは複数の医療機関にかかり、それぞれから薬を処方されている場合、その情報を医療機関なり薬局が掌握していないことである。
 Muiti-complexity 年とともに病気は増えるので、早期発見に努めることが必要となる。糖尿病や高血圧や腎臓病など、発症初期には症状を出しにくい病気が多く、健康診断を定期的に受けることが必要となる。ただし、この著者は胸部X線検査は結核が極めて稀となり、肺がんについてもこの検査では発見できないこともあり、欧米では推奨されていないと述べている(日本では一端始めると止められないことが多くある)。(日本では人間ドックは40代以上の人が企業の支援などにより受けることが多い。65歳以上になると役場から健康診断の申込み書が届く。おじさんは自費で一昨年まで人間ドックを受けていたが、昨年はどちらも受けなかった。血液検査だけは診療所で腎臓機能のチェックのため2ヶ月毎に受けている。)

 最後にMatters Most to Me(いきがい)最期のとき、自分で意思決定できない可能性は大きい。このため「事前指示書」を作成するなどの準備が必要であるが、日本ではこの準備が出来ていない。医療現場もまた準備ができていない。人口3億人強の米国では、5千を超えるホスピスと毎年150万人を超える人がホスピスを新たに利用する。対して、日本はホスピスが全国で5百未満、利用者も5万人から6万人となっている。また、米国にはホームホスピスという仕組みもあり、自宅で最期を迎えたい人に対し、自宅にホスピスチームが足を運ぶ。患者の意思を尊重しながら、最期のケアを行うことが重要となる。


  

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