城台山日記

 城台山の麓で生まれ、毎日この山に登り、野菜・花づくり、読書、山登りをこよなく愛する年寄りの感動と失敗の生活日記です。

高山植物とマルハナバチ 23.6.10

2023-06-10 20:47:15 | 山登り
 今年の春からの山登りは、近場の山に咲く「花を追いかけて」を最大の目標にしている。3月下旬の福寿草(鈴鹿・鈴ヶ岳)、4月のイワザクラ(舟伏山)、山シャクヤク(飯盛山)、6月のキヌガサソウ・サンカヨウ他(籾糠山)などで、雨のため登れなかった山もある。そして、このあとは高い山の高山植物(森林限界の上に咲いている植物)を求めて登りたいところだが、6月下旬の八ヶ岳を除けば今のところ計画はない。

 県図書館で工藤岳著「日本の高山植物ーどうやって生きているのか?」を見つけ、早速読んでみた。ずっと前に読んだ本で小泉武栄著「日本の山と高山植物」のがあった。この本をネタにして「日本の山と高山植物についての豆知識」(2021.4.16)というブログ記事を書いた。どちらも高山植物について書かれたものであるが、前者は大雪山をベースに30年以上高山植物を研究してきた著者により書かれた本であるのに対し、後者は高山や極地の植生分布と地経・地質の関わりまどを研究してきた著者により書かれた本で、少し内容が違っている。今回は前者の本、中でも興味を持ったところを中心に書いてみたい。

※前回のブログでは、森林限界を超える場所でのハイマツと高山植物のせめぎあい、すなわちハイマツがあるところではお花畑は存在できなこと、ハイマツは雪が遅くまで残るような場所では生きていけないこと(雪の深さとハイマツの高さがほぼ等しくなる。雪が多いと光合成ができる期間が短く生きていけない。)、そしてこのような場所にこそお花畑は集中することを書いた。

 著者と高山植物の出会いは中学生の時に登った白馬岳で、そのあと大学生の時に日本の山を歩き回った。そのとき感じた大きな疑問が、「厳しい環境に生える高山植物は、なぜこんなきれいな花を咲かせるのだろうか」という素朴なものだった。そして、大雪山を訪れ、その圧倒的なスケールの高山帯に出くわし、その後北海道大学で研究を続けてきた。大学院生時代だった当時、高山植物に関する学術論文ほほとんどなかった。

 花がきれいな理由とは? 私たち人間に見てもらうために美しいのだろうか?もちろんそんなことを考えている花はない。植物が花を作るのは、ただ一つの目的のためで、生物ならば全て同じで子孫を残すためということになる。植物は動物のように動くことはできない。ではこの動けない植物の生殖活動はどのように行われるのか。離れた相手に花粉を送り届けるためには、第三者の助けが必要となる。それが風の場合(風媒花)もあれば、昆虫や小動物の場合もある。昆虫等に運んでもらうためには、その動物を引き寄せる必要があり、これが花がきれいな理由ということになる。
※昆虫は花粉を食べる、あまりたくさん食べられては困るので花が昆虫に提供する食べ物として蜜が発達した。

 両性花とは?被子植物のうち7割はひとつの花の中におしべとめしべの両方を持っている。繁殖のチャンスを増やすために、花粉を提供して他の個体が作る種子の花粉親(父親)にもなれるし、自ら種子を作って種子親(母親)にもなれる。しかし、ほとんどの植物が他の株の花粉を受け入れる(他家授粉)のは生き残る可能性を高めるためである。

 花粉を運ぶ昆虫にはどんな虫がいるのか?

 ハエの多いのにびっくりされるであろう  63ページから引用
 ハエはとても重要な運び手である。そのわけは高山の短い夏の間でも数世代を繰り返すことができるからである。

 66ページから引用

一方でハナバチ類の多くはマルハナバチで、この蜂はコロニーを作るので、女王蜂から産まれた働き蜂が運び手となる。

 マルハナバチ
 このハチは、野菜例えばトマトやナスの授粉のために利用されている。問題となっているのは、ハウスの中での授粉のために導入したセイヨウオオマルハナバチが野生化し、在来種を打ち負かしたり、交雑が進んだり、あるいは結実率が低下するなどの生態系のかく乱を引き起こしていることである。

 120ページから引用 まさしく高山植物の開花に合わせた生活サイクルとなっている
 7月後半から8月下旬にかけてが運び手の数が最も多くなり、授粉の成功率も高まる

 ハエとマルハナバチの違いは?マルハナバチはハエと比べると訪れる花が格段に多いことである。そして、それぞれのハチは、その時々で特定の花を選んで利用することが多い(沢山の種類の花が咲いている中で不特定の花を訪れると授粉の効率は非常に悪くなる)。ハエは白や黄色の花を好む傾向があるのに対し、マルハナバチは、さまざまな波長の色を識別でき、特に紫色系に強く反応する。

 97ページから引用 ニュージーランドの高山帯の花は全般的に花が小さく、目立たないものが多い。その理由として考えられるのは、ハエはいるもののマルハナバチなどハチ類がいないこと

 マルハナバチがいるからこそ、日本の高山植物は多様であることができたことを理解出来たであろう。問題は、地球の温暖化によって、雪が融けだす時期が早くなり、それにマルハナバチの生活サイクルが追いつかなくなるとどうなるのだろうか。雪どけが早くなり、花が早く咲くようになるのだが、この時にはマルハナバチの働き蜂はまだいない。そうだとすると花粉を運んでくれるハチはいなくなる。ハエはいるだろうから、ニュージーランドのように今よりもずっと花の種類が少なくなる可能性が高くなる。加えて温暖化により森林限界(北アルプス2300m、南アルプス2700m、鳥海山1500m、大雪山1300m)が高くなり、高山植物の生息地域が小さくなるのも大きな問題である。

 この本を読んでいて少し分からないことがある。高山植物の生育期間は6月~8月と非常に短くこの間に花を咲かせ、授粉を成功させ、種を結実させ、それが地面に落ちて発芽する。しかし、その頃には気温は下がり、雪が降る。発芽するのが翌年であっても時間は短い。高山植物はほとんどが多年草であるから(理由として種からの発芽、成長が難しい)雪の期間は根が残り、それが雪どけを待って発芽し、成長する。そうするとなぜ種を作る必要があるのだろうか。多年草であってもずっと咲き続けるわけでないと考えると他家受粉によって種を作り、常に株を更新していかないといけないのだと考えるのはどうであろうか。

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岐阜の宝物花の山・籾糠山 23.6.6

2023-06-06 17:35:34 | 山登り
 岐阜県の北にある籾糠山(1744.2m)、そして白木ヶ峰(1596m)は白山や北アルプスに比肩すべき花の宝庫だ。今日はそのうち籾糠山に登り、多様な花をめいっぱい味わってきた。籾糠山の登山口となる天生峠へのアクセスは今朝の時点で東側の飛騨市(旧河合村)から国道360号線をたどるしかなく、我々4人は飛騨清見インターから、県道478号線を進み、小鳥ダムを過ぎたところから360号線(道幅も狭く、急な登りが多い)により峠についた。

 駐車場は先行車は2台、ほとんど同時間に着いたのが2台。トイレで用を済ますとテントの係員に環境協力金500円を払う。しばらく良く整備された緩い登りをこれから遭遇するであろう花に期待を膨らませながら進んで行く。

 7:36 駐車場

 7.39 案内板

 湿原の入口には、動物の侵入を防ぐ柵が張り巡らされている。湿原の周辺は高山植物の宝庫となっている。

 8:04 獣害柵

 これからは花のオンパレードとなる。中にはこの周辺では花が咲いていないが、別のところへ行くと咲いているものがある。すでにエンレイソウの様に花柄だけしかないものもある。また見過ごしてしまった花もあるかとは思うが、写真にとってきたものを順次紹介する。

 8:06 この辺のマイヅルソウは花が付いていない

 8:08 チゴユリ

 8:10 コバイケイソウ

 8:13 湿原の中にはきっと多くの花が咲いているのだろう

 8:18 ツバメオモト この花はあちこちで見ることができる

 8:17 ミツバオウレン

 8:19 ミズバショウ 意外と見ることがなかった

 8:24 湿原を抜け、小さな沢を渡るといよいよカラ谷の入口


 8:25 カラ谷分岐

 分岐にある大きな木

 8:28 ラショウモンカズラ

 8:29 トリカブト まだ花は咲いていない

 今回の真打ちが登場する。

 8:33 キヌガサソウ カラ谷の至る所に咲く 

 8:40 もう一つの主役のサンカヨウ 群生しているが既に最盛期は過ぎ花柄のみのものが多い

 8:40 やっと花が咲いている株を発見

 8:47 キヌガサソウは多い

 8:51 カツラ門到着

 8:55 少しまとまったサンカヨウ

 8:56 マクロで撮るサンカヨウ

 8:57 ニリンソウ

 9:08 キヌガサソウはサンカヨウの物足りなさを十分補ってくれる 


 9:19 カラ谷から籾糠山へ

 9:27 簡易トイレ テントの中は椅子のみ 所定の袋に放出 北海道の羅臼岳等で経験済み(放出したことはないが)

 9:29 リュウキンカ 家にもあるが野生はやはり美しい!!

 9:41 ツバメオモト(再登場) とにかく至る所にある

 9:45 コミヤマカタバミ

 9:46 ムラサキサンヨウ

 この辺りから最後の急な階段が続く。

 10:10 山頂

 10:12 鎗、キレット、穂高が確認できた
 
 乗鞍

 御岳

 昼食は途中の休憩場所とする。下る途中、顔見知りに会った。1人は旧月一のSさん、お仲間のMさんは我がメンバーの息子をトレランを通じて良く知っているとのことだった。意外と世間は狭い。

 10:40 ユキザサ 花はまだ咲いていない

 11:36 マイヅルソウ

 11:43 分岐(ブナ探勝路終了)

 11:44 スダヤクシュ

 11:46 ブナの大木

 再び湿原に。一方通行のため別の道を進む。

 11:53 ミツバオウレン

 11:56 ツマトリソウ

 12:00 湿原の中 紫の花は何か ムラサキリンドウ?

 12:03 リュウキンカ

 登山口の手間でパトロールのおじさんから白川村への通行きるようになったとの情報を得た。とてもラッキー。

コースタイム 登山口7:36→山頂10:10→登山口12:26 帰る途中の昼食時間を含む
 
 
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城ヶ峰を登る会6月例会・鍋倉山 23.6.3

2023-06-03 19:08:41 | 山登り
 昨日は大雨が降り、各地に被害をもたらした。当地は幸いなことに大雨警報は発令されたものの、大した雨は降らなかった。明日に「城ヶ峰を登る会」の例会・鍋倉山を控えていることもあり、雨の降り具合は気になるところであった。

 今日は朝5時に起床、その時はどんよりとした曇り空であった。例会の集合は8時であったので、吉本隆明著「貧困と思想」を読み出した。ここのところ県図書館から、その著者の簡単そうな本を借りてきて読んでいる。1時間と少し読んで朝食を食べ、集合場所に出かけた。この例会は10日前にライングループで流したのだが、3日の天気予報が悪く(あるいは登る山に魅力がなかったのか)、なかなか参加者が集まらなかった。代表としては、参加者が集まらないと気落ちしてしまう。当日の天気予報が良くなって、やっとのことで7名(うち1名は共同代表)の参加表明があった。前日ヒル情報を連絡したら、1名脱落(この時期ヒルがいない山を探すことは難しいと思うのだが)し、今までの最低記録を更新する7名の参加となった。

 集合場所に集まる頃には、次第に晴れ間も見えだした。白龍の湯を過ぎると、鳶(別の猛禽類かもしれない)が蛇を両足でつかんで、飛翔する様を目撃。貝月ゲレンデの手前から旧春日村に抜ける道路(現在旧春日村側で工事中で通行不可)、昨日の強い雨のせいか小石や木の枝が散乱している。峠のすぐ下付近が登山口となっている。このコースは、鍋倉山の最短のコースであり初心者向けとなっている。途中下る箇所もあり、帰りこれが登り返しとなり、行き帰りの時間があまり変わらないのが特徴。ここのお薦めは、4月、5月のブナや楢などの芽吹きの季節ということだと思う(元々鍋倉山は5月例会だったのだが、雨で今日に変更となった)。鍋倉山の登山道のほとんどが「東海自然歩道」となっており、至る所に今や読むことができない木の案内板や土管(喫煙者用)がある。さらにその歩道、整備がほとんどなされていないので、石ころや木が散在している。今やこの歩道を維持しようとする意志すら感じることができない(林道と同じ運命をたどりつつある)。

 登山口 8:43

 最初の休憩 9:24

 そんな東海自然歩道の暗い事情とは違い、登山道を吹き抜ける風は爽やかでとても梅雨の時期だとは思えないほどだった。1時間と少しで鍋倉山山頂に到着。この先にある避難小屋まで足を延ばす。この小屋を見つけるとこの山が初めてというYさんから感嘆の声があがる。古びてきているとはいえ、立派な避難小屋であることは間違いない。壊れた避雷針が長い年月と管理されていない悲哀を感じさせる。時間が早いがここでお昼を食べた。

 鍋倉山山頂 9:59

 山頂から小屋へ 10:09 

 避難小屋 10:18

 小屋を11時に出発、登山口着は12時15分、登り下りほとんど時間がかわらない。

 登山終了後、揖斐川図書館に行く。返した本は、藤沢周平の孤剣ー用心棒日月抄、漆のみのる国(上下)、借りてきた本は、藤沢周平の「たそがれ清兵衛」と「蝉しぐれ」(いずれも映画となった)。葉室麟の本にも少し食指が動いたが、一度には読めないと自重した。

 家に帰り、バラに追肥を行った。これに要した時間1時間半。

 家内が買ってきたわらび餅を食べ、このあと畑に向かう。山で爽やかに吹いていた風は、里では心配の種となる。設置したばかりのトマトの雨よけのカバーがこの風により飛んでいってしまわないかと。幸い無事であった。トマトを始め、この時期の夏野菜は急激に生長している。これを支柱に8の字で固定しておく必要がある。これに小一時間費やす。前前日に草刈りをしておいたので、いつもなら草ボウボウの畑がきれいに見えた。

 畑から帰り、朝の続きの「貧困と思想」を読み出す。少々疲れ気味でページが進まない。夕食までにたった36ページ。

 夕食ではいただいた日本酒を晩酌。滅多に飲むことはない日本酒、ワインのグラスで飲んだ。口の中でふくよかな味が広がる。まるで白ワインを飲んでいる感覚だ。

 そして今、こうしてブログで駄文を連ねる。

 何と充実した一日だったことか!!!(自己満足だよね)
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