醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  784号  白井一道

2018-07-07 12:07:28 | 随筆・小説


  名酒「福小町」を楽しむ


侘助 今日の目玉は秋田の名酒「福小町」雄町・特別純米だ。
呑助 何年か前、話題になったお酒ですよね。
侘助 そうそう、猪瀬元東京都知事がオリンピック招致ローザンヌ会議の日本ブースに出品したお酒なんだ。その時、日本酒ファンの間で話題になった酒だったかな。
呑助 ノーベル賞授賞式で振る舞われたお酒だとかいうことで話題に上るお酒がありますね。
侘助 そう言えば、伊勢志摩サミットで振る舞われた日本酒が話題にならなかったね。
呑助 獺祭だったんじゃないですか。
侘助 いや、それほど安倍総理は恥知らずじゃなかったみたいだよ。やはり三重県のお酒をふるまいたいと安倍晋三氏は述べたようだ。伝え聞くところでは、「G7伊勢志摩サミット2016」1日目の昼食会の乾杯酒として「作(ざく)智(さとり)純米大吟醸 滴取り」が提供されたようだ。
呑助 三重県のお酒だったんですか。
侘助 鈴鹿市の清水清三郎商店のお酒だ。
呑助 われわれの口に入ることのないお酒なんでしようね。
侘助 大きな話題になることがなかったにも関わらず、「作」や初日のディナーで乾杯に供された「半蔵」は一日で同じ銘柄のお酒は完売したらしいよ。
呑助 選ばれるってことは物凄いプロパガンダですね。
侘助 二十一世紀は広告時代なのかもしれないな。
呑助 今日のお酒「福小町」はどうなんですか。
侘助 秋田県湯沢のお酒だからね。味の乗ったお酒だと思うよ。酒造米「雄町」で醸したお酒だからね、綺麗なお酒だと思うよ。精米歩合が60%であるにもかかわらず、綺麗にできているようだ。
呑助 なんか女性的な感じがするお酒なんですかね。
侘助 「福小町」というくらいだからね。秋田県湯沢は小野小町の生誕地の一つとして認められているからね。柔らかで、ふくよかな味わいが売りのようだ。
呑助 じぁー、仕込み水は軟水ですか。
侘助 軟水のようだ。ミネラル成分の少ない水が軟水だから、酵母はなかなか元気がでない。発酵がなかなかはかどらない。
呑助 発酵には硬水の方が良いんですか。
侘助 そりゃ、そうだよ。カルシウムやマグネシウムといったミネラル成分が酵母の生命活動を活発にするからね。人間だってミネラルが肝臓を元気にするみたいだからね。宮水というでしょ。宮水は硬水だよ。硬水で醸した酒が男酒、軟水で醸した酒が女酒という場合があるみたいだよ。
呑助 それで灘の男酒、伏見の女酒というんですか。
侘助 灘の水は硬水。伏見の水は軟水だと言われているからね。
呑助 ヨーロッパの水と比較とよく日本の水は軟水だと言われていますよね。
侘助 イギリスやフランスの水は日本の硬水とは比べものにならないくらい硬い水のようだよ。この硬い水で入れたコーヒーを飲みなれると日本のコーヒーは飲めないなんて言う人がいるくらいだからね。しかし日本人は日本の水、軟水で入れたお茶やコーヒーの方がはるかに美味しい。味が引き立つからね。