醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  794号  白井一道

2018-07-18 11:23:11 | 随筆・小説


  明治150年に思う


句郎 一九〇五年に日露戦争を終えると一九一四年には、第一次世界大戦がヨーロッパを戦場として始まると日本はこの機会だとばかりに中国への侵略を窺う。一九一四年八月にはドイツ帝国に宣戦し、ドイツが中国に持っている権益を狙う。
華女 翌年の一九一五年には対華二一カ条要求を中華民国に突き付けたのよね。
句郎 日本は日清戦争に勝利し、台湾を植民地支配した。さらに日露戦争に勝利すると一九一〇年には韓国を日本の植民地に
した。
華女 第一次世界大戦とは、どことどこの国々が軍事同盟を結び合い、戦争したんでしたっけ。
句郎 西洋列強がアフリカや西アジア地域を奪い合う植民地争奪戦だった。イギリス、フランス、ロシアが軍事同盟を結び、ドイツの侵出を阻止しようとした。それに対してドイツ、イタリア、オーストリアが軍事同盟を結んで、英仏ロに植民地の分け前を求めた戦争だった。日本はイギリスとの間に日英同盟を結んでいたからね、三国協商側、
英仏ロ側に立ってドイツに宣戦布告をした。
華女 第一次世界戦はドイツ側の敗戦で終わったのよね。
句郎 そうなんだ。第一次世界大戦中の一九一七年、ロシアでは革命が起き、ロマノフ朝が崩壊、ロシア革命政府は直ちに一方的にドイツと講和を実現し、第一次世界大戦から離脱してしまった。ドイツでも革命が起き、皇帝ヴイルヘルム二世は退位し、一九一八年降伏した。
華女 日本はヴェルサイユ条約で中華民国に要求した権益を認められたのよね。
句郎 おおよそね。南満州鉄道の経営が安定し、発展していくことになったからね。
華女 徐々に日本は中国東北部への侵出を本格化していくわけね。
句郎 一九二〇年代になると近代社会に対する疑問が提出されてくる。ドイツでベストセラーになった本がシュペングラーの「西洋の没落」だったからな。
華女 戦争に対する反省ね。
句郎 そう、戦争が西洋社会を破壊することに気づいたということなのかな。
華女 ロシア革命やドイツ革命も世界に大きな影響を与えたのじゃないの。
句郎 そうなんだろうな。日本でも大正デモクラシーなんていう動きがあったからね。
華女 侵略戦争に反対する大きな動きはなかったのよね。
句郎 1920年代というのは、西洋列強が日本の中国侵出を阻止しようとする動きが徐々に本格化していく時代じゃないのかなと思うんだ。
華女 欧米の列強は日本が中国に侵出するなんて生意気だぐらいに思っていたのかしら。
句郎 そうなんじゃないのかな。中国民衆もまた中国政府がヴェルサイユ条約調印かることに反対する五四運動が起きてくる。ロシア革命の影響下に中国共産党も成立してくる。
華女 明治維新後の日本は戦争に次ぐ戦争の中にあったということなのよね。
句郎 その行き着く先が太平洋戦争だった。1928年の張作霖爆殺事件から日本軍の中国侵略戦争は本格化していくんだ。一九三一年には柳条湖事件(満州事変)を起こす。一九三七年には本格的な日中戦争が始まっていくからね。