醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  791号  白井一道

2018-07-14 11:16:47 | 随筆・小説


  明治150年を思う ①


句郎 今年、二〇一八年は明治一五〇年というこで、政府や日本各地の自治体、大学、研究機関がいろいろイベントを催しているようだよ。
華女 一八六八年の明治維新から数えると確かに今年は明治一五〇年目になるわね。
句郎 一五〇年前の日本とか、明治維新以来の日本の歴史はどのような歴史であったのかといったようなことがいろいろ議論されているらしい。
華女 日本とは世界の中にあってどのような国であったのかということは、
確かに日本人にとっても、また日本と何らかの関係を持つ国にとっても興味、関心のあることだとは思うわ。句郎君は日本という国はどのような国だと思っているのかしら。
句郎 元西ドイツの首相ヘルムート・シュミットが一九八六年十一月号雑誌『世界』に投稿した「友人を持たない日本」という評論文があるんだ。日本は近隣のアジア諸国に友人がいないと元西ドイツ首相シュミットは言っていた。この指摘に日本という国の本質が表現されているのではないかと私は考えているんだ。
華女 シュミットさんとは、失礼なことを言う人ね。友人がいんいなんて、言われて好い気持ちする人はいないでしょう。
句郎 なぜシュミットはアジアに友人のいない国、日本と言ったのだ思う?
華女 中国をはじめとしてアジア諸国を日本は侵略したということなのかしら。
句郎 そうなんだ。日本は東アジア諸国の中にあっていち早く近代化を成し遂げたからね。
華女 近代化することがなぜ近隣諸国を侵略することになってしまったの?
句郎 近代化とは、ヨーッロッパ化だと明治維新を指導した人々は考えてしまったからなんじゃないのかな。
華女 西洋諸国が近代化するとなぜ海外諸国に西洋諸国は侵略を始めたのかしら。
句郎 いち早く産業革命を果たしたイギリスは直ちにインドから輸入した綿花を紡績機で糸に紡ぎ、綿布を生産し、インドへ輸出し始めているからね。
華女 じゃー、インドは原料を提供し、製品をイギリスから買い入れるようになったのね。でもそれは侵略じゃないわよね。
句郎 そう、でもインド人がイギリスの綿布によって手織り綿布を生産してきたインド人手工業者が仕事を失っていくとイギリスへの不満が高まり、イギリス綿布への不買運動のような出来事が起きてくるとイギリス東インド会社はインドを植民地支配するようになっていったからね。
華女 産業革命は急激な生産力の向上をもたらしてくれた結果、過剰な生産が海外に市場を求めて進出していったということなのね。
句郎 そう、対等な交易が先進国と発展の途上にある国とでは、対等な交易であっても発展途上国にとっては不利になってしまうということがあるからね。
華女 先進国は後進国を見下げるようなことが起きてくるかもしれないわね。
句郎 ヨーロッパ諸国の近代化とは、産業革命の進展とアジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸国の植民地化、侵略の歴史であったといえるように思う。
華女 でも近代化とは民主主義化でもあったのよね。