醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  797号  白井一道

2018-07-21 12:47:08 | 随筆・小説


  明治維新に思う⑧


句郎 岸信介は小菅刑務所にA級戦争犯罪人として収監されていた。その時、米ソ冷戦が厳しさを増せば俺は釈放されるという判断をしていたようだ。そのような発言をしていたという記録が残っている。
華女 米ソ冷戦と一部戦犯の釈放は一枚の紙の裏と表の関係になっていたということなのね。
句郎 そうなんじゃないのかな。現実はそのようになったわけだからね。
華女 戦後日本の政治の土台のようなものを築いたのは吉田茂という人なん
じゃないの。
句郎 吉田茂と岸信介という二人の政治家が米ソ冷戦を戦うアメリカの要請を受け入れ、日本を米軍基地に仕立て上げた。それは今も続いている。沖縄に米軍の新基地を日本国の税金で作ってあげようとしているんだから。
華女 吉田茂と岸信介は具体的にどんなことを政治家としておこなったのかしら。
句郎 それは日米安保体制というものを盤石なものに仕立て上げたということなんじゃないのかな。
華女 戦後すぐのころは日本の社会主義化阻止が最大の課題だったわけなんでしょ。
句郎 そう。戦争直後の日本に対してアメリカは当初、日本の戦前の戦争勢力を過大に評価し、土地改革をしたり、刑務所に入れられていた政治犯などの釈放などをした。その結果、日本が社会主義化するのではというの危険性をアメリカは感じ始めたんだ。中国では毛沢東率いる人民解放軍が蒋介石率いる国民党軍を圧倒し始めていたからね。
華女 戦争直後の東アジアは風雲急を告げる状態だったわけね。
句郎 米英仏はなんとしても社会主義勢力の拡大を阻止したいというのが最大の課題だったんじゃないのかな。
華女 そのためにアメリカは日本に対して何をしたの。
句郎 一九四九年中華人民共和国が成立すると日本をいつまでも占領下にしておくのは危険だと気付いた。日本を独立させよう。独立させて日米安保条約を結ばせ、日本を米ソ冷戦の最前線基地にしよう。また日本の政治を安定させるには日本国民の生活向上だと判断したんだ。その結果一九五一年にサンフランシスコ平和条約を制定して日本を独立させると同時に日米安保条約を結ばせた。吉田茂の最大の仕事とは、これだったんじゃないかと私は考えているんだ。
華女 一九四八年にはソ連の占領下にあった北朝鮮に朝鮮民主主義人民共和国が成立しているのよね。
句郎 翌年には中華人民共和国が成立した。その余勢をはったのか、一九五〇年には北朝鮮がソ連の支援を得て南朝鮮解放戦争が始まっているからね。
華女 朝鮮戦争とは、米ソ冷戦の東アジアにおける熱い戦争であったのかしら。
句郎 そうだと思う。当時のソ連の指導者スターリンが仕掛けた朝鮮半島解放戦争が朝鮮戦争だったんじゃないかと思う。
華女 この戦争は間違いよね。このような戦争をしてはいけないわ。
句郎 スターリンは間違った戦争を起こした。その結果、アメリカはなんとしても強固な米軍基地を日本に築こうとしたしたんじゃないかと思う。