醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  792号  白井一道

2018-07-16 11:29:58 | 随筆・小説


  明治150年を思う③


句郎 イギリスは世界で一番早く市民革命を実現した。その結果、法の支配、話合いによる議会政治が実現した。その指導者であったクロムウェルは政権をとるとアイルランド侵略戦争を行った。封建社会と同じような弱肉強食の社会を招来した。
華女 自由、平等、友愛を掲げたフランス革命の結果はどうだったのかしら。
句郎 フラン革命の中から出てきたナポレオンもまたスペイン侵略戦争をしているからね。
華女 近代世界の成立とは、新たな侵略戦争の時代の
幕開けだったということなのかしら。
句郎 そうなんじゃないのかな。世界的に見て中世世界の弱者というか、被支配者たちは酷かった。がしかし近代社会に生きる労働者と呼ばれる人々も植民地に生きる被支配者たちは酷かった。
華女 市民革命のスローガンであった「自由、平等、友愛」はまだ実現していないということなのね。
句郎 「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」と福沢諭吉は『学問ノススメ』の中で述べているがこの「人」とは、
日本人のことを意味していると私は考えているんだ。アメリカの独立宣言を学んだ福沢諭吉は人間の平等を唱え、身分制を批判した。このアメリカ独立宣言が唱えた自由、平等はアメリカに入植した白人たちのことであって、先住民やアフリカ人奴隷の自由、平等を意味してはいなかったからね。
華女 確かにそうよね。アメリカ合衆国にあっては、一九六〇年代になって初めて公民権法が成立し、黒人と白人の法的平等が実現したんですものね。
句郎 侵略戦争はしてはいけないということが世界の常識になったのはまだ最近のことだからね。
華女 第一次世界大戦後からかしらね。
句郎 ロシア革命の指導者レーニンが掲げたスローガンがあったんだ。「第一次世界大戦は帝国主義戦争だ。強盗の戦争だ」。直ちに止めろと、述べたんだ。敗戦国から富を奪うことはしてはいけないと主張したんだ。それが第一次世界大戦即時講和に関する提案「平和に関する布告」というものなんだ。その内容は「無賠償」・「無併合」・「民族自決」だった。敗戦国からお金を奪ってはならない。領土を奪ってはならない。植民地支配をしてはいけないというものだった。
華女 アメリカのウイルソン大統領も「平和十四カ条」を提案しているわね。
句郎 レーニンに先を越されて提案されたので負けじと提案したらしいけどね。
華女 「民族自決」を世界中の国々は認め合いましょうということなのね。これが侵略戦争はしてはいけないという世界の常識へとなっていったということなのね。
句郎 それでもまだまだアメリカ合衆国は世界中で第二次世界大戦後も侵略戦争してきているからね。
華女 例えばどんな侵略戦争をアメリカはしてきたのかしら。
句郎 第二次世界大戦後の東アジア世界における最大の戦争はベトナム戦争だったと考えているんだ。第二次世界大戦後、ベトナム人は民族の独立戦争をフランスと戦った。このベトナム人の民族独立戦争を許さじと戦ったのがアメリカだった。このアメリカの戦争は侵略だ。