醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  804号  白井一道

2018-07-28 06:40:41 | 随筆・小説



  明治150年に思う⑭


句郎 1947年日本国憲法が制定され、天皇主権が国民主権になった。戦前の日本は大国主義であったが、現憲法は戦力、戦争を放棄した小国主義を国の基本としたと言えるのではないかと思うんだ。
華女 剃刀と言われた自民党の政治家、後藤田正晴さんはよく護憲派と言われていたわよね。彼などが自民党のなかでは小国主義の立場の政治家だったのかしら。
句郎 現憲法を大事にしたいと主張する人々は大半が小国主義の立場に立っている人々なんじゃないのかな。
華女 現憲法を改正し、正規の軍隊を編成し、戦争できる国にしようとする人々は大国主義の立場に立つ人々だということなのね。
句郎 でも戦前のように近隣諸国を侵略できるような現代世界はではなくなってきているから、戦前のような大国主義ではなく、アメリカの世界的な覇権に付き従う大国主義なのかな。
華女 日本の自衛隊は世界有数の軍事力を持っているんでしょ。
句郎 ネットで調べてみたら日本は世界第四位の軍事大国のようだ。第一位はアメリカ、第二位はロシア、第三位は中国、第四位が日本のようだ。
華女 日本はドイツやイギリス、フランスよりも強大な軍事力を持つ国になっているのね。
句郎 小国主義を唱える現日本国憲法と実体がかけ離れている状況になってきているんだ。
華女 戦後日本は戦前の大国主義政策により手痛い失敗をしたにもかかわらず、大国主義的なことをしているのね。
句郎 戦後日本政治の実権を握ってきた自民党政治家の中で大国主義者と小国主義者との闘いがあったんじゃないかと思う。
華女 自民党の中に小国主義的政策を実施してきた人々がいたということなのね。
句郎 例えば吉田茂の弟子に池田勇人という政治家がいた。彼につながる人々がそうだったんじゃないのかな。いわゆる宏池会という派閥かな。
華女 今の安倍総理は清和会という派閥なんでしょ。
句郎 岸信介、福田赳夫につながる政治家がおおよそ大国主義的な政策を追求してきたのかな。大雑把なことを言うとね。
華女 戦前も戦後も大国主義的な政策をとろうとする人々がいると同時にその政策に反対し、小国主義的な政策がいいと主張する政治家がいたということなのね。
句郎 アメリカ政府は一貫して日本がアメリカの覇権を扶翼する政治集団を援助してきた経過があるようなんだ。
華女 日本は東アジアにおける米ソ冷戦の最前線基地だったからなのね。
句郎 朝鮮戦争があり、金門・馬祖島砲撃事件、中国・インド国境紛争、ベトナム戦争というように中国を取り巻く地域で軍事衝突事件が1950年代から60年代にかけて頻発していたからね。これは米ソ冷戦とアメリカの中国封じ込め政策と密接に関係のある出来事だったように思う。だからアメリカ政府は日本の軍事力をいつでも自由に使いたいと考えていたんだと思うよ。
華女 そうしたアメリカ政府の意向に沿って日本の自衛隊を使っていこうとしているのが今の安倍政権なのね。
句郎 先日、ネットで孫崎享さんの話を聞いた。今、航空自衛隊がアメリカ空軍と最も一体化しているようだ。空軍内部にあって、アメリカ空軍大佐に会う自衛隊空将は先にアメリカ空軍大佐に敬礼しなければならないらしい。「将」の位を持つ自衛隊員が自分より位の低いアメリカ兵に先に敬礼しなければならない慣習に不満を持つ者がいるのじゃないかというような話をしていた。
華女 自衛隊空軍は日本の自衛隊なんでしょ。それなのに実態は日本の自衛隊空軍はアメリカ空軍の一部に成り下がっている。