醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  842号  白井一道

2018-09-06 12:57:24 | 随筆・小説


 吟醸酒を楽しむ黒耀会九月例会「秀鳳恋おまち・毛利ひやおろし」


侘輔 今日のお酒は馴染みのお酒なんだ。一本は山形県山形市、秀鳳酒造の銘柄「秀鳳・恋おまち」、もう一本は山口県周南市山縣本店の「毛利・純米ひやおろし」だ。
呑助 えっ、もう「ひやおろし」の季節ですか。
侘助 九月になると本格的な日本酒の季節到来だよ。
呑助 旨い日本酒の季節ということなんですか。
侘助 「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ驚かれぬる」と藤原敏行が『古今集』に詠んでいるように立秋が過ぎればもう秋だよ。
呑助 季節はもう秋ですか。まだまだ暑い日が続いていますがねー。
侘助 そうだよ。「あかあかと日はつれなくも秋の風」と芭蕉が三百年前に詠んでいるようにお酒の旨い季節が来ているということかな。
呑助 熟成したお酒を「冷おろし」と言うでしたね。
侘助 そう、「秋あがり」とか、「冷おろし」と言っているんだ。
呑助 新酒をおよそ半年寝かせたお酒、真夏でも蔵に入ると冷っとする蔵の中で熟成したお酒を今日は楽しめるというこです
か。
侘助 「秀鳳恋おまち」は広島県が開発した酒造米「こいおまち」を五十%精米した純米吟醸のお酒のようだ。
呑助 酒造米「雄町」を品種改良したものなんですかね。
侘助 「改良雄町」をさらに品種改良した酒造米が「こいおまち」のようだ。この米で醸すと吟醸香が高く濃醇に仕上がる。主に酒どころ広島で使われている酒造米を秀鳳さんが広島県農業組合から分けてもらい醸した酒が「秀鳳恋おまち」のようだ。上品な吟醸香と芳醇な日本酒の味を味わってみたい。
呑助 秀鳳さんのお酒は喉越しが柔らかく、切れのいいお酒ですよね。
侘助 なかなかノミちゃんも酒通のような発言をするようになったね。
呑助 お酒の味が分かってきているんですよ。
侘助 山口県のお酒、「毛利」は今まで何回か楽しんだお酒なんだけれど、印象に残っているかな。
呑助 忘れちゃっていますね。
侘助 今年七月に楽しんだお酒が山縣本店の「毛利無濾過原酒」のお酒だったかな。
呑助 味ののったお酒だったような印象がうっすらとありますね。
侘助 このお酒は酒造米山田錦で醸したお酒なんだ。
呑助 山口県周南市近辺で栽培されている山田錦で醸したお酒なんですね。
侘助 そうなのかもしれない。酒蔵に確認していないけれども、前回楽しんだお酒も山口県産の山田錦で醸したお酒だったから、今回のお酒も地元産の山田錦を使って醸したお酒なんだと思う。
呑助 最近はどこの酒蔵も中心は地元産のお米を使い、醸しているお酒が多いですね。
侘助 地産地消、ここにその土地の風土性というか、特色が出てくるのがいいんじゃないのかな。日本国中、どこで造ったお酒も同じ香り、味、味わいのお酒じゃつまらないし、地方の小さな酒蔵は生き残れない。地方色があってこそ、地方の小さな酒蔵が生き残れる。ここに日本酒の豊かさのようなものがある。だから我々は地方の小さな美味しいお酒を楽しみたい。