醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  860年  白井一道

2018-09-24 11:39:21 | 随筆・小説




二〇一八年九月例会 唎酒した冷おろしお酒

A、越後秀山 巻機 純米吟醸 限定生詰原酒ひやおろし  720ml 1750円 
  新潟県南魚沼市    高千代酒造    
  酒造米:新潟県産米の一本〆  精米歩合:53%精米  アルコール度数:17~18度
  日本酒度:+5 酸度:1.5 アミノ酸度:1.3  酒販店、季節限定のお酒です。
「ひやおろし」の語源とは
江戸の昔、冬にしぼられた新酒が劣化しないよう春先に火入れ(加熱殺菌)した上で大桶に貯蔵し、ひと夏を超して外気と貯蔵庫の中の温度が同じくらいになった頃、2度目の加熱殺菌をしない「冷や」のまま、大桶から樽に「卸(おろ)して」出荷した酒。

B、水芭蕉 純米吟醸ひやおろし  720ml 1400円
  群馬県利根郡川場村    永井酒造株式会社
  酒造米:兵庫県産山田錦 精米歩合:60% アルコール度:15度 日本酒度:+3  季節限定酒
  秋に一番の飲み頃をむかえる酒。純米吟醸酒特有のお米の旨みがしっかりと表現され、辛口に仕上がっています。飲み飽きの来ない味わいです。

C、浦霞 純米酒ひやおろし 生詰  720ml 1300円  宮城県外のみの流通限定の季節商品
  宮城県塩竈市市    株式会社佐浦
  酒造米:まなむすめ 精米歩合:65% 日本酒度:+1 酸度:1.5 アルコール度:16~17度 
  ひと夏越えてほどよく熟成した、米の旨味と酸味が感じられる純米酒です。もっとも美味しいと言われる時期のお酒を加熱殺菌せずに生詰めし、蔵出しそのままの旨さがお楽しみ頂けます。

D、高千代 純米酒 秋あがり 無調整生原酒(無調整とは、無濾過ということ) 720ml 1200円
  新潟県南魚沼市  高千代酒造
  アルコール度:16~17度 酒造米:美山錦 精米歩合:扁平精米65%  日本酒度:+19 
酸度:1.5  アミノ酸度:1.5
  
E、紀伊国屋門左衛門 純米酒限定ひやおろし 720ml 1180円  
 和歌山県海南市    中野BC株式会社   
  詳しい情報は特になし。秋の夜長を楽しむお酒。
 
酒塾のしをり  第三二号。
 毎年のことです。九月、十月例会のお酒は「冷おろし」のお酒です。「冷おろし」のお酒を「秋あがり」といったりしています。呑ン平の歌人若山牧水は秋の夜の酒を「白玉の 歯にしみとほる 秋の夜の 酒はしづかに飲むべかりけり」と詠んでいます。昔の人は清酒のことを「白玉」と呼んでいたようです。
 牧水の友人であった石川啄木は『悲しき玩具』の中で「しっとりと酒のかをりにひたりける脳の重みを感じて帰る」と詠っています。お酒を飲むと生きる哀しみが胸に迫り、頭の重みを感じたのかもしれません。明治に生きた歌人の哀しみに対して昭和に生まれた恋の歌人、『サラダ記念日』で脚光を浴びた二〇代前半だった俵万智は「コップ酒濱の屋台のおばちゃんの人生訓が胃に沁みてくる」と詠んでいます。若い女が一人、浜の屋台でコップ酒を楽しんでいる。時代は変わっても若者が生きていくのは昔と変わらず、生き難いものがあるのだろう。
 快い海風に吹かれてコップ酒を若い女が楽しむようにはなっても生きる哀しみは変わらない。