先ずタイトル「鬼とはなにか」に引き寄せられて手に取った。表紙カバーの写真がさらに惹きつける。この本のための図柄かと思ったが、目次の末尾に、「朝光寺鬼追踊」と付記されている。関心を持ち、調べてみると、朝光寺は兵庫県加東市畑にあり、朝光寺鬼追踊保存会が毎年5月5日に踊りを奉納されていて、重要無形民俗文化財に指定されているという。また、扉には滋賀県の大津絵「鬼の念仏」が使われていてこれまたおもしろい。
さて、本書は「あとがき」に記されているが、著者の願望から生まれた一書という。鬼誕生の秘密を解き明かし、その正体を知りたいという願望である。その願望の一端がまとめられた。ただし、本書は「鬼」についての概説書ではないと著者自身が記している。とは言いながら、読者のために、多少概説的にまとめて書いている箇所がある。第7章の後半部分(p134-147)である。
概説書でないなら、何か? 著者は「鬼とはなにか」の正体を探るために、「鬼」について様々な観点から切り込んで、その正体にアプローチしていく。その究明のプロセスを章立てに構成した書である。それぞれの章において著者は己の所見を導き出し、それを集積していく中から、著者は「鬼」の正体を導き出す。
著者は本書で「漂着外国人や渡来人、犯罪者を除けば、『縄文人』のことである。」(p176)と結論づけている。なぜそう結論づけられるのかのプロセスをお楽しみいただくとよい。
著者は「まえがき」で、漢語「鬼」が日本に伝わる以前に、大和言葉には「おに」という言葉があり、それは「『かみ』と同類の畏敬すべき何者かを意味していた」(p1)と言う。「鬼(き)」という漢語が「おに」に当てはめられたことにより、「おに」という大和言葉に含まれていた日本人の信仰心が変質、歪曲されて行ったと解いていると私は理解した。著者は、折口信夫が「おに」には本来「穏(おぬ)」の字を充るのが相応しいと指摘し、「隠れている、見えない存在、つまり『かみ』と同義である」(p2)としたことをとりあげ、その考えを否定するつもりはないという。一方で、折口の所見を語源とする説が流布していることを誤解の元だと断言している。
「鬼」「鬼門」「鬼退治」「百鬼夜行」「鬼は外」「まつろわぬ民」など、鬼に関わり多くの人が知る言葉などをも解明するプロセスを通し「日本人の信仰心の原像に迫ろうという試み」(p5)が本書といえる。その上で「鬼」の正体に迫っていく。
「鬼、おに」を考える上で、知らなかった事項を数多く学べた。素朴ないくつかの疑問点もまた氷解し、そうだったのかという知的興奮と楽しみを与えてくれる一書だった。
本書で知り理解したこと、つまり各章の要点を紹介してみよう。各章の論述はその論証プロセスと言える。ビジネス文書風に言えば、結論⇒論証(内容)であり、結論に相当する箇所等を要点として記す。論証(内容)部分は本書を開いて、熟読しつつ確認していただきたい。以下は、私自身への覚書でもある。
まえがきー「おに」の原像
*漢語の「鬼」は死人を意味し、「毛髪がわずかに残った状態の白骨を意味する象形文字」である。
*「おに」に「鬼」をあてはめた結果、「神の道」が「鬼の道」に化けた。
*かつて「おに」は、「もの」とも「かみ」とも呼ばれていた。
第1章 鬼のクーデター あずまえびす、ヤマトに叛逆す
*平将門、将門の乱に焦点をあて、「将門信仰」は「御霊信仰(怨霊信仰)」の典型と説く。
*平将門を祭神とする神社は全国に18社。うち13社が関東に所在する。
*東国の叛乱は、京の都からみれば「まつろわぬ民」であり、「鬼のクーデター」ととらえた。まつろわぬ民=害をなす鬼。それは、京の為政者の見方・立場による。
第2章 怨霊は鬼か 鬼となる怨霊、ならぬ怨霊
*『日本書紀』に記す蘇我馬子による崇峻天皇殺害説には疑問符がつく。崇峻は怨霊にも鬼にもならなかった。
*鬼とならなかった怨霊:崇峻天皇、蘇我入鹿(乙巳の変で暗殺される)
鬼となる怨霊:日本三大怨霊⇒菅原道真・平将門・崇徳院
⇒ ただし、天神信仰は祟りや天罰、怨霊とは無縁の信仰の側面である。
*怨霊は「怨まれている」と感じる他人が創造するものである。⇒鎮魂のために神社を創設
第3章 鬼を祀る神社 温羅(うら)伝説と国家統一
*「鬼」が祭神名に含まれる神社で神社本庁に登録されているのは全国に15社ある。
⇒ 本文に列挙し説明を加えている。そこからわかることを著者は究明する。
*「鬼」を社名に採用している神社は、同様に全国に61社ある。
⇒ 神社の創建当時、だれを鬼と見做していたかがわかると説く。
*岡山県の吉備地方にある吉備津神社と吉備津彦神社に着目。
*「鬼」と関わりのある神社は総数78社で、うち54社が東国にある。その半数が福島県に。 ⇒ これらの神社では鬼は福をもたらす神だと信仰されてきた。
*「桃太郎の鬼退治」は「国家統一譚」の一種である。
*東北地方の「鬼まつり」は、アラハバキ(荒脛巾=東人の先祖に連なるもの)を偲ぶ祭りだといわれる。⇒東国(鬼=神)とヤマトでは鬼の位置づけが違う。
第4章 女が鬼になる時 舞い踊る夜叉
*夜叉はサンスクリット語の音写で、一般的に古代インド神話に登場する鬼神を総称する語である。
*大陸には古代から奇形の怪物がいて、その一部は「鬼(き)」と呼ばれたが、「ツノ」はない。ツノがないのがもともとの鬼の姿である。
*世阿弥の能楽が、女性の恨みを鬼に化身させ般若面を創作し、「ツノ」が生えた。
*御霊信仰はもともとは、怨霊(鬼)への恐怖が生み出した。怨霊を慰霊して、神上がりしたと考えて「御霊」とした。祟り鎮めである。鬼を恐れたのは京都の文化である。
第5章 ヒミコの鬼道 神の道と鬼の道
*ヒメ神が怨霊として祀られているという証左はない。
*「ヒミコの死」から「アマテラスの誕生」への変換は「よみがえりの思想」である。
*原初的な神道祭祀と原始道教との複合が「ヒミコの鬼道(鬼神道)」である。そこには「天円地方」の思想がある。この思想が「前方後円墳」の形の根拠となる。前方後円墳は「鬼道の集大成」である。
*前方後円墳の被葬者から「北枕」になる。道教では古来から定着している風習。
北枕と仏教は無関係と著者は言う。
*日本神話の最初の鬼はスサノヲである。
第6章 鬼門という信仰 都人の祟り好き
*怨霊あるいは鬼が侵入するのは東北(丑寅)方面からとする「鬼門」の考え「禁忌」は京都から生まれた。鬼門に特異な意味づけをしたのは日本人、都人である。日本で創造された観念・概念だ。京都の文化であり、江戸徳川はそれを政策的に取り入れた亜流である。
*漢土では鬼は死者の霊を意味するにすぎない。漢土では、鬼門(東北、丑寅)、天門(西北、戌亥)、人門(西南、未申)、風門(東南、辰已)と呼ぶ。単にそれぞれの出入りする門であり、鬼門は死者の霊が出入りする門というに過ぎない。
*「鬼門」の「禁忌」は日本人に刷り込まれていて、歴史を繙くキーワードになっていることは否定できない。
*鬼の姿は鬼門が「丑寅」の方位であることに関係する。二本のツノ(丑のツノ)と虎皮の褌(寅の姿)。
第7章 異世界のまつろわぬ民 山人・海人・平地人
*外-海の彼方、山奥-からの来訪者は、異世界・異次元からの来訪者であり、鬼の姿をした客神ととらえ、歓待した。
*歴史的に実在した鬼とは、記紀の系譜である中央政権(ヤマト朝廷)に対し、「まつろわぬ民」(=中央の意向に従わない民)を意味し、彼らの土俗神は「まつろわぬ神々」となる。中央政権は「鬼」とみなして「神殺し」(=征服の証)を行った。「まつろう神」は弥生神であり、新たな神・アマテラスだった。「まつろわぬ神」は縄文神である。弥生人による縄文人の征服の図式が背景にある。
*異形の神とは、「天狗」「河童」「案山子」そして「鬼」である。
第8章 鬼の栖(すみか) 縄文神への追憶
*海の向こうからやってきた弥生人がヤマト朝廷であり、新しい神を祀った。その神に従う者は「まつる者」(ヤマト人)であり、従わない者は「まつろわぬ者」である。まつろわぬ者の信仰する神は「鬼」とみなされた。まつろわぬ者は土着の縄文人だった。かれらは「鬼」として東西の辺境に駆逐された。東へ追いやられた縄文人は蝦夷と呼ばれ、西へ追いやられた縄文人は熊襲や琉球になったという。
*国立遺伝学研究所のプレスリリース(2018年)によれば、「現代の本土日本人に伝えられた縄文人ゲノムの割合は15%程度である」ことが明らかになったという。
*「鬼」という観念で覆い隠された縄文の信仰は全国各地に残る。熊野、三輪、そして地方各地に存在する神奈備(縄文時代から信仰の対象となってきた著名な山々と所在する神社)などである。そこは鬼の栖である。
あとがき-鬼からのメッセージ
*著者は、論理的資料的保証に頼らない主観の提示にとどまる部分が散見すると認めている。
*著者は己が鬼の末裔、鬼の血を引く者と言う。おもしろい。
「鬼」という言葉が意味すること、そのイメージが多角的な観点からかなり明らかに整理された考察になっている。「鬼」の原像に近づいたところで、すこし主観よりで結論づけられている感が残る。しかし、そういう結論になるのだろうなと納得できる。「おに」という大和言葉に、「鬼(き)」という漢字・漢語が当てはめられたことにより、「おに」の正体・実態が大きく歪められたという歴史プロセスを認識し、「鬼」の痕跡が全国各地に実在するということを理解するうえで、役立つ一書である。
ご一読いただきありがとうございます。
本書に関連して、関心事項をネット検索してみた。一覧にしておきたい。
朝光寺鬼追踊 :「加東市」
加東市・朝光寺で伝統の「鬼追踊」 :YouTube
加東市・朝光寺の鬼追踊 :YouTube
鬼 :「コトバンク」
鬼 :ウィキペディア
鬼とは何か? :「縄文村」
鬼とは? :「仏教ウエブ入門講座」
日本に伝わる鬼とは何か?鬼の由来と4つの種類 :「Spiritual Connect」
能面 般若 :「能面ご案内」
家の守り神「鬼瓦」の疑問~歴史、種類や産地、鬼師とは~ :「BECOS」
日本ライン 桃太郎伝説 :「桃太郎公園」
インターネットに有益な情報を掲載してくださった皆様に感謝します。
(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません。
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)
さて、本書は「あとがき」に記されているが、著者の願望から生まれた一書という。鬼誕生の秘密を解き明かし、その正体を知りたいという願望である。その願望の一端がまとめられた。ただし、本書は「鬼」についての概説書ではないと著者自身が記している。とは言いながら、読者のために、多少概説的にまとめて書いている箇所がある。第7章の後半部分(p134-147)である。
概説書でないなら、何か? 著者は「鬼とはなにか」の正体を探るために、「鬼」について様々な観点から切り込んで、その正体にアプローチしていく。その究明のプロセスを章立てに構成した書である。それぞれの章において著者は己の所見を導き出し、それを集積していく中から、著者は「鬼」の正体を導き出す。
著者は本書で「漂着外国人や渡来人、犯罪者を除けば、『縄文人』のことである。」(p176)と結論づけている。なぜそう結論づけられるのかのプロセスをお楽しみいただくとよい。
著者は「まえがき」で、漢語「鬼」が日本に伝わる以前に、大和言葉には「おに」という言葉があり、それは「『かみ』と同類の畏敬すべき何者かを意味していた」(p1)と言う。「鬼(き)」という漢語が「おに」に当てはめられたことにより、「おに」という大和言葉に含まれていた日本人の信仰心が変質、歪曲されて行ったと解いていると私は理解した。著者は、折口信夫が「おに」には本来「穏(おぬ)」の字を充るのが相応しいと指摘し、「隠れている、見えない存在、つまり『かみ』と同義である」(p2)としたことをとりあげ、その考えを否定するつもりはないという。一方で、折口の所見を語源とする説が流布していることを誤解の元だと断言している。
「鬼」「鬼門」「鬼退治」「百鬼夜行」「鬼は外」「まつろわぬ民」など、鬼に関わり多くの人が知る言葉などをも解明するプロセスを通し「日本人の信仰心の原像に迫ろうという試み」(p5)が本書といえる。その上で「鬼」の正体に迫っていく。
「鬼、おに」を考える上で、知らなかった事項を数多く学べた。素朴ないくつかの疑問点もまた氷解し、そうだったのかという知的興奮と楽しみを与えてくれる一書だった。
本書で知り理解したこと、つまり各章の要点を紹介してみよう。各章の論述はその論証プロセスと言える。ビジネス文書風に言えば、結論⇒論証(内容)であり、結論に相当する箇所等を要点として記す。論証(内容)部分は本書を開いて、熟読しつつ確認していただきたい。以下は、私自身への覚書でもある。
まえがきー「おに」の原像
*漢語の「鬼」は死人を意味し、「毛髪がわずかに残った状態の白骨を意味する象形文字」である。
*「おに」に「鬼」をあてはめた結果、「神の道」が「鬼の道」に化けた。
*かつて「おに」は、「もの」とも「かみ」とも呼ばれていた。
第1章 鬼のクーデター あずまえびす、ヤマトに叛逆す
*平将門、将門の乱に焦点をあて、「将門信仰」は「御霊信仰(怨霊信仰)」の典型と説く。
*平将門を祭神とする神社は全国に18社。うち13社が関東に所在する。
*東国の叛乱は、京の都からみれば「まつろわぬ民」であり、「鬼のクーデター」ととらえた。まつろわぬ民=害をなす鬼。それは、京の為政者の見方・立場による。
第2章 怨霊は鬼か 鬼となる怨霊、ならぬ怨霊
*『日本書紀』に記す蘇我馬子による崇峻天皇殺害説には疑問符がつく。崇峻は怨霊にも鬼にもならなかった。
*鬼とならなかった怨霊:崇峻天皇、蘇我入鹿(乙巳の変で暗殺される)
鬼となる怨霊:日本三大怨霊⇒菅原道真・平将門・崇徳院
⇒ ただし、天神信仰は祟りや天罰、怨霊とは無縁の信仰の側面である。
*怨霊は「怨まれている」と感じる他人が創造するものである。⇒鎮魂のために神社を創設
第3章 鬼を祀る神社 温羅(うら)伝説と国家統一
*「鬼」が祭神名に含まれる神社で神社本庁に登録されているのは全国に15社ある。
⇒ 本文に列挙し説明を加えている。そこからわかることを著者は究明する。
*「鬼」を社名に採用している神社は、同様に全国に61社ある。
⇒ 神社の創建当時、だれを鬼と見做していたかがわかると説く。
*岡山県の吉備地方にある吉備津神社と吉備津彦神社に着目。
*「鬼」と関わりのある神社は総数78社で、うち54社が東国にある。その半数が福島県に。 ⇒ これらの神社では鬼は福をもたらす神だと信仰されてきた。
*「桃太郎の鬼退治」は「国家統一譚」の一種である。
*東北地方の「鬼まつり」は、アラハバキ(荒脛巾=東人の先祖に連なるもの)を偲ぶ祭りだといわれる。⇒東国(鬼=神)とヤマトでは鬼の位置づけが違う。
第4章 女が鬼になる時 舞い踊る夜叉
*夜叉はサンスクリット語の音写で、一般的に古代インド神話に登場する鬼神を総称する語である。
*大陸には古代から奇形の怪物がいて、その一部は「鬼(き)」と呼ばれたが、「ツノ」はない。ツノがないのがもともとの鬼の姿である。
*世阿弥の能楽が、女性の恨みを鬼に化身させ般若面を創作し、「ツノ」が生えた。
*御霊信仰はもともとは、怨霊(鬼)への恐怖が生み出した。怨霊を慰霊して、神上がりしたと考えて「御霊」とした。祟り鎮めである。鬼を恐れたのは京都の文化である。
第5章 ヒミコの鬼道 神の道と鬼の道
*ヒメ神が怨霊として祀られているという証左はない。
*「ヒミコの死」から「アマテラスの誕生」への変換は「よみがえりの思想」である。
*原初的な神道祭祀と原始道教との複合が「ヒミコの鬼道(鬼神道)」である。そこには「天円地方」の思想がある。この思想が「前方後円墳」の形の根拠となる。前方後円墳は「鬼道の集大成」である。
*前方後円墳の被葬者から「北枕」になる。道教では古来から定着している風習。
北枕と仏教は無関係と著者は言う。
*日本神話の最初の鬼はスサノヲである。
第6章 鬼門という信仰 都人の祟り好き
*怨霊あるいは鬼が侵入するのは東北(丑寅)方面からとする「鬼門」の考え「禁忌」は京都から生まれた。鬼門に特異な意味づけをしたのは日本人、都人である。日本で創造された観念・概念だ。京都の文化であり、江戸徳川はそれを政策的に取り入れた亜流である。
*漢土では鬼は死者の霊を意味するにすぎない。漢土では、鬼門(東北、丑寅)、天門(西北、戌亥)、人門(西南、未申)、風門(東南、辰已)と呼ぶ。単にそれぞれの出入りする門であり、鬼門は死者の霊が出入りする門というに過ぎない。
*「鬼門」の「禁忌」は日本人に刷り込まれていて、歴史を繙くキーワードになっていることは否定できない。
*鬼の姿は鬼門が「丑寅」の方位であることに関係する。二本のツノ(丑のツノ)と虎皮の褌(寅の姿)。
第7章 異世界のまつろわぬ民 山人・海人・平地人
*外-海の彼方、山奥-からの来訪者は、異世界・異次元からの来訪者であり、鬼の姿をした客神ととらえ、歓待した。
*歴史的に実在した鬼とは、記紀の系譜である中央政権(ヤマト朝廷)に対し、「まつろわぬ民」(=中央の意向に従わない民)を意味し、彼らの土俗神は「まつろわぬ神々」となる。中央政権は「鬼」とみなして「神殺し」(=征服の証)を行った。「まつろう神」は弥生神であり、新たな神・アマテラスだった。「まつろわぬ神」は縄文神である。弥生人による縄文人の征服の図式が背景にある。
*異形の神とは、「天狗」「河童」「案山子」そして「鬼」である。
第8章 鬼の栖(すみか) 縄文神への追憶
*海の向こうからやってきた弥生人がヤマト朝廷であり、新しい神を祀った。その神に従う者は「まつる者」(ヤマト人)であり、従わない者は「まつろわぬ者」である。まつろわぬ者の信仰する神は「鬼」とみなされた。まつろわぬ者は土着の縄文人だった。かれらは「鬼」として東西の辺境に駆逐された。東へ追いやられた縄文人は蝦夷と呼ばれ、西へ追いやられた縄文人は熊襲や琉球になったという。
*国立遺伝学研究所のプレスリリース(2018年)によれば、「現代の本土日本人に伝えられた縄文人ゲノムの割合は15%程度である」ことが明らかになったという。
*「鬼」という観念で覆い隠された縄文の信仰は全国各地に残る。熊野、三輪、そして地方各地に存在する神奈備(縄文時代から信仰の対象となってきた著名な山々と所在する神社)などである。そこは鬼の栖である。
あとがき-鬼からのメッセージ
*著者は、論理的資料的保証に頼らない主観の提示にとどまる部分が散見すると認めている。
*著者は己が鬼の末裔、鬼の血を引く者と言う。おもしろい。
「鬼」という言葉が意味すること、そのイメージが多角的な観点からかなり明らかに整理された考察になっている。「鬼」の原像に近づいたところで、すこし主観よりで結論づけられている感が残る。しかし、そういう結論になるのだろうなと納得できる。「おに」という大和言葉に、「鬼(き)」という漢字・漢語が当てはめられたことにより、「おに」の正体・実態が大きく歪められたという歴史プロセスを認識し、「鬼」の痕跡が全国各地に実在するということを理解するうえで、役立つ一書である。
ご一読いただきありがとうございます。
本書に関連して、関心事項をネット検索してみた。一覧にしておきたい。
朝光寺鬼追踊 :「加東市」
加東市・朝光寺で伝統の「鬼追踊」 :YouTube
加東市・朝光寺の鬼追踊 :YouTube
鬼 :「コトバンク」
鬼 :ウィキペディア
鬼とは何か? :「縄文村」
鬼とは? :「仏教ウエブ入門講座」
日本に伝わる鬼とは何か?鬼の由来と4つの種類 :「Spiritual Connect」
能面 般若 :「能面ご案内」
家の守り神「鬼瓦」の疑問~歴史、種類や産地、鬼師とは~ :「BECOS」
日本ライン 桃太郎伝説 :「桃太郎公園」
インターネットに有益な情報を掲載してくださった皆様に感謝します。
(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません。
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)