遊心逍遙記

読書三昧は楽しいひととき。遊心と知的好奇心で本とネットを逍遥した読後印象記です。一書がさらに関心の波紋を広げていきます。

『Curious George and the Bunny』 Houghton Mifflin Harcourt Publishing Company

2022-12-23 11:20:18 | レビュー
 英語絵本の電子書籍版を探していて、本書を見つけた。表紙には illustrated by H.A.Rey と明記されている。H.A.Rey 本人によって描かれた絵本である。1998年のコピーライトが明記されていて、その所有権は Houghton Mifflin Harcourt Publishing Company である。

 冒頭から脇道にそれる。このコピーライトの記載をよく読むと経緯がわかって興味深い。絵本はあくまでリハビリ英語学習の材料にしているので、これも学習の一部と言えよう。この箇所の原文を引用する。
Copyright © 1998 by Houghton Mifflin Harcourt Publishing Company, based on
Curious George a Kite, copyright © 1958 by Margret E. Rey and H.A.Rey, ©
renewed 1986 by Margret E. Rey, assigned to Houghton Mifflin Company in 1993.

 以前のご紹介記事で、H.A.Rey が1977年に没し、Margret E, Rey が1996年に没したことに触れている。それを前提に考えるとコピーライトの所有者の変遷がよく理解できる。
 Margret E. Rey と H.A.Rey 夫妻が生前に、『Curious George a Kite』で1958年に著作権を取得していた。その著作権は H.A.Rey の死後、1986年になって更新され Margret E. Rey が著作権者になった。Margret E. Rey 存命中の1993年にその権利が Houghton Mifflin Company に譲渡された。この経緯に基づき、この本は1998年に Houghton Mifflin Harcourt Publishing Company が著作権者になっている。(たぶん、この理解で問題はないと思うのだが・・・・。間違っていればご教示をお願いしたい。)

 そこで、もう一つ、Houghton Mifflin Harcourt Publishing Company の成り立ちについてである。『Curious George The Perfect Carrot LEVEL 1』のご紹介の折に、推測を述べていた。その後でインターネット検索をして調べてみて、出版社のサイトを見つけた。HMHという形でホーページ。それで経緯がわかった。 HMH History Timeline というページで沿革が説明されていた。 クリックしてご覧いただける。

 このページによれば、1852年に Henry O.Houghton がマサチューセッツ州ケンブリッジに Riverside Press という印刷会社を始めた。彼はボストン地域の大手出版社との関係を築いて行ったという。1864年に編集者と組んでHurd & Houghton という会社を作り、出版社の買収をして出版業界に進出。Hurd 氏の引退後、社名を Houghton & Osgood に改称。1880年に Osgood 氏との関係を解消すると、George Mifflin 氏を正式のパートナーとして、Houghton, Mifflin & Co. を設立。
 その後、2007年に、Houghton Mifflin は、Harcourt Education、Harcourt Trade、
Heinemann を取得することで、社名を Houghton Mifflin Harcourt(HMH) と改称した。
こんな沿革をもつようだ。

 尚、H.A.Rey夫妻はナチのパリ侵攻前にアメリカのニュウヨークに移住した。Curious
George の原稿を Houghton Mifflin に持ち込んだことで、両者の関係が始まったそうである。

 さて、英語絵本の本筋にもどろう。
 H.A.Rey 本人によるジョージのイラスト、まずやはり微妙に後継のジョージの絵とは違うなという印象をうける。それは当然なのかもしれない。勿論絵本を楽しむ分には全く支障はない。

 この絵本、おもしろいことの一つは、黄色帽子の男は一切登場せず、ジョージだけのお話である。話はジョージが小さな小屋(a little house)を見つけることから始まる。この話でも Bunny という単語が使われている。母親ウサちゃんと赤ん坊ウサちゃんたちが中に入って居る。ジョージは、赤ん坊ウサちゃん一羽を小屋から出して抱いてみたくなる。ジョージはそれをやってみた。ジョージは楽しくなる。

 そして、赤ん坊ウサちゃんと、かくれんぼうをしたくなった。かくれんぼうって、英語では、hide-and-seek というようだ。本文に、George wanted to play hide-and-seek. と記されている。
 赤ん坊ウサちゃんを地面におろすと、ジョージが目隠ししている間に、赤ん坊ウサちゃんはまさに脱兎のごとく走り去った!
 ジョージはかくれんぼう遊びどころではなくなる。探し回るジョージを描く絵に、次の文が記されている。
  Where did the bunny go? George looked everywhere but the bunny was gone.
All the fun was gone.

 この箇所、2ヵ所で was gone が使われている。久しぶりに be 動詞の特別な使い方を思い出した。手許に残してある高校生向け文法書を確認してみた。「往来・発着を表わす少数の自動詞の過去分詞とともに、完了後の状態を表す完了形をつくる。 She is gone away.(彼女は行ってしまった)」(『高校生の完全英文法』大塚高信著・美誠社)
 ウサちゃんが消えちゃった。楽しみもみんな消えちゃった、というところか。
 子供たちが、絵本を通じて、自然とこの使い方を知るんだなと思った。

 ジョージは悲しかった。母親ウサちゃんの許に赤ん坊ウサちゃんを戻せなくなったから・・・・。さて、ジョージはどうするか? そうだ! 母親ウサちゃんに探させてはどうか! このジョージの閃きが功を奏する経緯がこの後に描かれていく。そして、Happy End!

 この絵本、やさしい文での語りとなっている。とはいうもののイディオム表現がいくつも出てくる。子供たちはそれらを日常生活の中で意味を理解しつつ自然と身につけていくのだろう。ピックアップしてみると、次のような文がある。
 He put the bunny down.....        put down
 The bunny ran off like a shot!       run off
 He could not put the bunny back in the house with Mother Bunny.   put back
 He put a string on her(=Mother bunny).   put on
 George helped the bunny out.        help out
 George took the string off Mother Bunny.   take off
 George was grad to see Mother Bunny and all her babies settle safely down
 to sleep.                   settle down

英語絵本からけっこう復習できる・・・・・・ 昔の記憶が呼び戻されてくる。辞書で再確認してみる機会にもなっている。ボリュームが多くなく、手軽で楽しめておもしろい。

 本書に明記はないが、この絵本、H.A.Rey と Margret が共同で文を作ったのだろうか。構想は二人で相談し、Margret が書いたのだろうか。あるいは、H.A.Rey が一人で創作したのだろうか。そんなことをちょっと考えるのも楽しい。

 ご一読ありがとうございます。

インターネット検索して得た情報をいくつか一覧にしておきたい。
H. A. Rey  From Wikipedia, the free encyclopedia
Margret Rey From Wikipedia, the free encyclopedia
Curious George  From Wikipedia, the free encyclopedia 
HMH  ホームページ
Curious George Official YouTube
アニメ『おさるのジョージ』で楽しく英語を学ぼう【可愛くてためになる!】
                    Azusa Kawamura

インターネットに有益な情報を掲載してくださった皆様に感謝します。

(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません。
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)


 こちらもお読みいただけるとうれしいです。
『Curious George The Perfect Carrot LEVEL 1』
Houghton Mifflin Harcourt Publishing Company
『Curious George Cleans Up LEVEL 1』 Houghton Mifflin Company
『MARGRET & H.A.REY'S Curious George and the Dump Truck』
Houghton Mifflin Company
英語絵本電子書籍版 覚書・感想 一覧  計 19冊 2022.12.1 Version 1



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