副題が「誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術『超』入門」である。
冒頭にカラー写真の8ページがある。最初のページでまず驚く。蔵書は自宅、仕事場(2ヶ所)合わせて約4万冊という。収納スペースは全体で約7万冊分を既に確保しているそうだ。ふと思い出した。大阪に司馬遼太郎記念館が開館した時、そこを訪れその蔵書に圧倒されたことを。また、本で読んだだけだが、
つまり、知の巨人たちにはそれだけの情報源が背景にあり、その情報源の上に自らの卓見や創造が積み重ねられていくのだ。それだけの本をどう読むのか。それがその人の編みだした読書技法なのだろう。
強烈な印象として通底する点は、彼らにとって「本」は自らの知的創造のための「道具」(情報源)であり、それらをどう使いこなすかのようだ。道具は使うためのものであり、ぼろぼろに汚くなってかまわない。そこから効用を引き出せればよい。使い方は様々なレベルがある。しょっちゅう使う道具もあれば、1回だけの道具など様々というところか。目的に合わせて使い分けるのだから、目的(執筆のテーマ)が増えれば、あるいは変われば、大小様々な道具(本)も変化していく。手にとって汚して使える道具は物理的に手許にないと、すぐには使えない。蔵書という形で道具が増えるのはあたりまえなのだろう。書架が林立する写真、本に囲まれた仕事場の写真を見るだけで、まずは強烈な刺激を受ける。
「はじめに」と「おわりに」を読んでまずわかることは、本書は『週刊東洋経済』に2007年5月から連載された「知の技法 出世の作法」から読書に関する部分を抽出し大幅に加筆、編集して単行本化したもの。著者の読書術を初めて体系化したのが本書のようだ。知力をつけるために読書は不可欠。だが、その読書には読み方がある。時間は有限。その中でいかに本を読むか。著者は自らの読書術について「全力投球して書いたのが本書である」とする。さらに、「読書の技法というタイトルになっているが、物の見方・考え方、表現の仕方まで視野に入れているので、知の技法についての入門書と考えていただきたい」と言う。本書を読み、この点は確かにそこまで踏み込んで実体験を語り、助言がなされている。
少しネット検索してみると、著者はこんな読書術関連の本も書いている。キーワード検索で見つけた順で記す。『功利主義者の読書術』(新潮文庫)、『世界と闘う「読書術」思想を鍛える一○○○冊』(共著・集英社新書)『野蛮人の図書室』(これも読書術に触れているかも)。私は未読だが。
「時間が人間にとって最大の制約条件になる」(p3)から正しい読書法を身につける必要があると主張する。だから、月平均300冊以上に目を通す、多い月は500冊を越えると発言できるのだ。
どうしてそんなに読めるのか? 秘密は読み方にあるようだ。
熟読、普通の速読、超速読という3区分があり、読む/読まないの判断を的確にするギア・チェンジと読書法で本に目を通す。この読書術があるからこそ、効率的な読み方で300~500冊という冊数がはじき出されるのだ。「300冊のうち、熟読している本は洋書を含めて平均4~5冊である。500冊を越える場合でも、熟読しいるのは6~7冊だ。熟読する本を2冊増やすのは、そう簡単なことではない」(p26)と記す。
著者自身の読書術による区分と内訳説明ではこうなる。
熟読(読書ノート作成を含む) 4~5冊(あるいは6~7冊)
普通の速読(30分から2~3時間での読書) 50~60冊
超速読(1冊5分程度での処理) 240~250冊
つまり、「どうしても読まなければならない本を絞り込み、それ以外については速読することである」(p26)という鉄則がある。MUSTの本=熟読については、この「熟読」レベルを押さえておくことが必要になる。
著者の「熟読」概念の前提は、その分野やテーマに対して、根底の基礎知識が身についていて、強靱な思考力の錬磨が成されている/されることである。その上でのMUST(読まなければならない)の本ということなのだ。「熟読」の意味を押さえておく必要がある。
著者の普段の「熟読」は基礎知識の先の発展的・応用的段階での話が中心なのだ。だから「著者の専門分野であるインテリジェンスやロシアについての新刊本であるならば、まったく新たに知る事項は5~20%程度である。その部分だけを熟読すればよい」(p27)のであり、それが「速読」との組み合わせによる読書術につながって行くのである。これは、新しい専門書もその分野のプロなら1~2割読めば著者の論点がわかるという同じ見解を他書で読んだことと共通する。やはり、そんなものか・・・と、改めて納得した。
著者の論じる読書の技法を習得するには、まず「熟読」レベルの前提を我々はクリアすることから始めねばならないことになる。
著者の言う「熟読」の前提、つまり基礎知識の学び方を明確に技法として説明している。ここは虚心に学ぶ必要がある。凡人の私はまずここから再出発する必要を痛感している。なぜなら、「重要なことは、知識の断片ではなく、自分の中にある知識を用いて、現実の出来事を説明できるようになることだ。そうでなくては、本物の知識が身についたとは言えない」(p58)と論じられると、返す言葉がないから・・・・。
そこで、著者の技法を要約すると、
1)高校の教科書と学習参考書レベルの知識が基本である。これを確実に修得する。
これは大学受験勉強式丸暗記の意味ではない。その分野の論理をきちんと理解した上での暗記ということだ。「ロシアの知的エリートは、大学入学前2徹底的に教科書を読み込む。・・・・ロシアやイギリスの知的エリートは、きちんと理解したうえで徹底的に暗記につとめるので、その知識が血肉となり、将来応用が利くものになる。」(p43-44)
教科書は事項の羅列になっている箇所がある。学習参考書は自己完結型なのでそれで理解を補強できるから役立つという。
「より高度な専門知識を身につけるために高校レベルの基礎知識が不可欠であるとの認識を持って、再度、教科書と受験参考書をひもとけば、その知識は確実に生きた知に転化する。」(p8)
2)その際、基礎知識の欠落部分を自己診断せよ。欠損部分の重点的補強が大事。
それには、大学入試センターの試験問題が解けるかどうかが目安となる。
3)学習法として9つのポイントを意識する。
①テーマを決める、②事実を知る、③最新のデータを知る、この3つがまず基本。そして、④インタビューする、⑤専門書を読む、⑥アンケート調査をする、⑦レポートを書く、⑧プレゼンテーションをしてみる、⑨ディベートなどの方法を試みる、などのステップアップを行う。 (第Ⅱ部はこの1)~3)を詳説している。)
4)論理的思考力と読解力を鍛えること。
p192-193に、論理について4つのポイント、文脈について3つのポイントが引用されている。読者のテキスト読解力が飛躍的に向上すると著者は請け負っている。ご一読されたい。
その上で、普段の熟読の技法を説明している。要点はこうだ。
1)熟読する際の基本書は3冊、5冊と奇数にする。
学説の偏りなどによる「刷り込み」を回避する。定義や見解はまず多数決で判断しておくため。基礎知識段階では、上級の応用知識まで欲張らないこと。
2)熟読法の要諦は、同じ本(=基本書)を3回読むことである。
具体的な「熟読の技法」手順をこう説明する。手順だけ抽出する。
(1)まず本の真ん中くらいのページを読んでみる(第一読)
(2)シャーペン(鉛筆)、消しゴム、ノートを用意する(第一読)
(3)シャーペンで印をつけながら読む(第一読)
(4)本に囲みを作る(第二読)
(5)囲み部分をノートに写す(第二読)
(6)結論部分を3回読み、もう一度通読する(第三読)
3)正確な知識を身につける。→突っ込んだ質問に答えられるレベルの理解と知識の定着
「10冊の本を読み飛ばして不正確な知識をなんとなく身につけるより、1冊の本を読み込み、正確な知識を身につけたほうが、将来的に応用が利く」(p101)
「速読」という概念に対して、著者の見解は非常に明確である。
大前提がある。それは「速読」は「必要な情報を拾い上げる」分野の本にのみ適用するということ。娯楽のために楽しんで読む類いの本-小説や漫画など-は、それぞれ好きに読めばよいと切り離している。「速読」の要点を記す。
1)速読術は熟読術の裏返し概念である。熟読術を身につけずに速読術を体得することは不可能である。
→ページのめくり方や視線の動かし方の指南本は役立たない。
2)速読術は読む必要のない本を排除するために必要である。
→記載の言葉の定義がなく、先行思想の成果を踏まえていないデタラメ本の排除
→自分にとって基礎知識のない専門書かどうかの判断。基礎知識がなければ排除
読む必要があるなら、基礎知識の習得から始めること(=基本書の熟読)
3)「普通の速読」と「超速読」に区分する。いずれかの技法で読む。
普通の速読: 400ページ程度の一般書や学術書を30分程度で読む技法
超速読 : 1冊を5分程度で読む技法。これは「試し読み」が目的。
試し読みとは、書籍を自分にとっての4つの範疇に区分するための評価。
①熟読する必要があるもの
②普通の速読の対象にして、読書ノートを作成するもの
③普通の速読の対象にするが、読書ノートを作成するには及ばないもの
④超速読にとどめるもの
4)「超速読」の技法 5分の制約を設けて読む。
やり方
(1)「序文の最初1ページ」と目次を読む
(2)それ以外のページはひたすら全体を見て、ページをめくる。
(3)気になる語句や箇所だけ、マーキング→シャーペンでの囲み、ポストイット利用、ページ折り
(4)結論部の最後のページを読む
目的 3)で述べた本の仕分け作業と本全体の当たりをつけるため。
5)「普通の速読」の技法 目的意識を明確に。完璧主義は論外。雑誌なら筆者で判断。
「普通の速読」は頭に情報源の「インデックス」を整理して作るためのもの。
(1)文字を早く目で追うために、定規を当てながら1ページ15秒で読む。
(2)重要箇所はシャーペンで印をつけ、ポストイットを貼る。
(3)まず、目次と初版まえがきを注意深く読み、それから結びを読む。
(4)当たりをつけた重要な箇所は(1)(2)の技法で、それ以外は超速読する。
最後に、著者は「読書ノート」の作り方を説明している。それは記憶を定着させるための抜き書きとコメントを走り書きするためという。読書で得たものを役に立つ知識にするための技法と言える。具体的な事例による説明が載っているので第Ⅰ部第4章を読んでいただくとよい。
この章で著者は次の点を強調している。
・突っ込んだ質問をされて答えられるなら、取りこんだ知識は自分の中に定着している
・1冊の本を読み込み、正確な知識を身につけたほうが、将来的に応用が利く
・大切なのは正確な形でデータを引き出せることと、積み重ねた知識を定着させること
・レーニンの読書ノートの作り方に学べ
・蓄積された知識はビジネスの武器になる
著者は読書の技法を説明する際、自分の読んだ本を例示して、技法を踏まえながら論及を広げている。そこに、「物の見方・考え方、表現の仕方」が自ずと発露されている。結果的に技法を超えた視野が本書に広がっているといえる。
愕然としたのは、著者が例えばとして例に出してきている大半の書籍名は初めて目にするものばかり・・・・だった。著者の論点と重ねられる、あるいは対比・共有できる知識/情報の定着以前であり、それらの書籍とは無縁だったことだ。
もしこの本を手に取り、その例示本の内容をご存じならば、著者の論じている内容が一層おもしろくなるかもしれないと想像する。
知の巨人、恐るべし・・・・。
ご一読ありがとうございます。
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冒頭にカラー写真の8ページがある。最初のページでまず驚く。蔵書は自宅、仕事場(2ヶ所)合わせて約4万冊という。収納スペースは全体で約7万冊分を既に確保しているそうだ。ふと思い出した。大阪に司馬遼太郎記念館が開館した時、そこを訪れその蔵書に圧倒されたことを。また、本で読んだだけだが、
つまり、知の巨人たちにはそれだけの情報源が背景にあり、その情報源の上に自らの卓見や創造が積み重ねられていくのだ。それだけの本をどう読むのか。それがその人の編みだした読書技法なのだろう。
強烈な印象として通底する点は、彼らにとって「本」は自らの知的創造のための「道具」(情報源)であり、それらをどう使いこなすかのようだ。道具は使うためのものであり、ぼろぼろに汚くなってかまわない。そこから効用を引き出せればよい。使い方は様々なレベルがある。しょっちゅう使う道具もあれば、1回だけの道具など様々というところか。目的に合わせて使い分けるのだから、目的(執筆のテーマ)が増えれば、あるいは変われば、大小様々な道具(本)も変化していく。手にとって汚して使える道具は物理的に手許にないと、すぐには使えない。蔵書という形で道具が増えるのはあたりまえなのだろう。書架が林立する写真、本に囲まれた仕事場の写真を見るだけで、まずは強烈な刺激を受ける。
「はじめに」と「おわりに」を読んでまずわかることは、本書は『週刊東洋経済』に2007年5月から連載された「知の技法 出世の作法」から読書に関する部分を抽出し大幅に加筆、編集して単行本化したもの。著者の読書術を初めて体系化したのが本書のようだ。知力をつけるために読書は不可欠。だが、その読書には読み方がある。時間は有限。その中でいかに本を読むか。著者は自らの読書術について「全力投球して書いたのが本書である」とする。さらに、「読書の技法というタイトルになっているが、物の見方・考え方、表現の仕方まで視野に入れているので、知の技法についての入門書と考えていただきたい」と言う。本書を読み、この点は確かにそこまで踏み込んで実体験を語り、助言がなされている。
少しネット検索してみると、著者はこんな読書術関連の本も書いている。キーワード検索で見つけた順で記す。『功利主義者の読書術』(新潮文庫)、『世界と闘う「読書術」思想を鍛える一○○○冊』(共著・集英社新書)『野蛮人の図書室』(これも読書術に触れているかも)。私は未読だが。
「時間が人間にとって最大の制約条件になる」(p3)から正しい読書法を身につける必要があると主張する。だから、月平均300冊以上に目を通す、多い月は500冊を越えると発言できるのだ。
どうしてそんなに読めるのか? 秘密は読み方にあるようだ。
熟読、普通の速読、超速読という3区分があり、読む/読まないの判断を的確にするギア・チェンジと読書法で本に目を通す。この読書術があるからこそ、効率的な読み方で300~500冊という冊数がはじき出されるのだ。「300冊のうち、熟読している本は洋書を含めて平均4~5冊である。500冊を越える場合でも、熟読しいるのは6~7冊だ。熟読する本を2冊増やすのは、そう簡単なことではない」(p26)と記す。
著者自身の読書術による区分と内訳説明ではこうなる。
熟読(読書ノート作成を含む) 4~5冊(あるいは6~7冊)
普通の速読(30分から2~3時間での読書) 50~60冊
超速読(1冊5分程度での処理) 240~250冊
つまり、「どうしても読まなければならない本を絞り込み、それ以外については速読することである」(p26)という鉄則がある。MUSTの本=熟読については、この「熟読」レベルを押さえておくことが必要になる。
著者の「熟読」概念の前提は、その分野やテーマに対して、根底の基礎知識が身についていて、強靱な思考力の錬磨が成されている/されることである。その上でのMUST(読まなければならない)の本ということなのだ。「熟読」の意味を押さえておく必要がある。
著者の普段の「熟読」は基礎知識の先の発展的・応用的段階での話が中心なのだ。だから「著者の専門分野であるインテリジェンスやロシアについての新刊本であるならば、まったく新たに知る事項は5~20%程度である。その部分だけを熟読すればよい」(p27)のであり、それが「速読」との組み合わせによる読書術につながって行くのである。これは、新しい専門書もその分野のプロなら1~2割読めば著者の論点がわかるという同じ見解を他書で読んだことと共通する。やはり、そんなものか・・・と、改めて納得した。
著者の論じる読書の技法を習得するには、まず「熟読」レベルの前提を我々はクリアすることから始めねばならないことになる。
著者の言う「熟読」の前提、つまり基礎知識の学び方を明確に技法として説明している。ここは虚心に学ぶ必要がある。凡人の私はまずここから再出発する必要を痛感している。なぜなら、「重要なことは、知識の断片ではなく、自分の中にある知識を用いて、現実の出来事を説明できるようになることだ。そうでなくては、本物の知識が身についたとは言えない」(p58)と論じられると、返す言葉がないから・・・・。
そこで、著者の技法を要約すると、
1)高校の教科書と学習参考書レベルの知識が基本である。これを確実に修得する。
これは大学受験勉強式丸暗記の意味ではない。その分野の論理をきちんと理解した上での暗記ということだ。「ロシアの知的エリートは、大学入学前2徹底的に教科書を読み込む。・・・・ロシアやイギリスの知的エリートは、きちんと理解したうえで徹底的に暗記につとめるので、その知識が血肉となり、将来応用が利くものになる。」(p43-44)
教科書は事項の羅列になっている箇所がある。学習参考書は自己完結型なのでそれで理解を補強できるから役立つという。
「より高度な専門知識を身につけるために高校レベルの基礎知識が不可欠であるとの認識を持って、再度、教科書と受験参考書をひもとけば、その知識は確実に生きた知に転化する。」(p8)
2)その際、基礎知識の欠落部分を自己診断せよ。欠損部分の重点的補強が大事。
それには、大学入試センターの試験問題が解けるかどうかが目安となる。
3)学習法として9つのポイントを意識する。
①テーマを決める、②事実を知る、③最新のデータを知る、この3つがまず基本。そして、④インタビューする、⑤専門書を読む、⑥アンケート調査をする、⑦レポートを書く、⑧プレゼンテーションをしてみる、⑨ディベートなどの方法を試みる、などのステップアップを行う。 (第Ⅱ部はこの1)~3)を詳説している。)
4)論理的思考力と読解力を鍛えること。
p192-193に、論理について4つのポイント、文脈について3つのポイントが引用されている。読者のテキスト読解力が飛躍的に向上すると著者は請け負っている。ご一読されたい。
その上で、普段の熟読の技法を説明している。要点はこうだ。
1)熟読する際の基本書は3冊、5冊と奇数にする。
学説の偏りなどによる「刷り込み」を回避する。定義や見解はまず多数決で判断しておくため。基礎知識段階では、上級の応用知識まで欲張らないこと。
2)熟読法の要諦は、同じ本(=基本書)を3回読むことである。
具体的な「熟読の技法」手順をこう説明する。手順だけ抽出する。
(1)まず本の真ん中くらいのページを読んでみる(第一読)
(2)シャーペン(鉛筆)、消しゴム、ノートを用意する(第一読)
(3)シャーペンで印をつけながら読む(第一読)
(4)本に囲みを作る(第二読)
(5)囲み部分をノートに写す(第二読)
(6)結論部分を3回読み、もう一度通読する(第三読)
3)正確な知識を身につける。→突っ込んだ質問に答えられるレベルの理解と知識の定着
「10冊の本を読み飛ばして不正確な知識をなんとなく身につけるより、1冊の本を読み込み、正確な知識を身につけたほうが、将来的に応用が利く」(p101)
「速読」という概念に対して、著者の見解は非常に明確である。
大前提がある。それは「速読」は「必要な情報を拾い上げる」分野の本にのみ適用するということ。娯楽のために楽しんで読む類いの本-小説や漫画など-は、それぞれ好きに読めばよいと切り離している。「速読」の要点を記す。
1)速読術は熟読術の裏返し概念である。熟読術を身につけずに速読術を体得することは不可能である。
→ページのめくり方や視線の動かし方の指南本は役立たない。
2)速読術は読む必要のない本を排除するために必要である。
→記載の言葉の定義がなく、先行思想の成果を踏まえていないデタラメ本の排除
→自分にとって基礎知識のない専門書かどうかの判断。基礎知識がなければ排除
読む必要があるなら、基礎知識の習得から始めること(=基本書の熟読)
3)「普通の速読」と「超速読」に区分する。いずれかの技法で読む。
普通の速読: 400ページ程度の一般書や学術書を30分程度で読む技法
超速読 : 1冊を5分程度で読む技法。これは「試し読み」が目的。
試し読みとは、書籍を自分にとっての4つの範疇に区分するための評価。
①熟読する必要があるもの
②普通の速読の対象にして、読書ノートを作成するもの
③普通の速読の対象にするが、読書ノートを作成するには及ばないもの
④超速読にとどめるもの
4)「超速読」の技法 5分の制約を設けて読む。
やり方
(1)「序文の最初1ページ」と目次を読む
(2)それ以外のページはひたすら全体を見て、ページをめくる。
(3)気になる語句や箇所だけ、マーキング→シャーペンでの囲み、ポストイット利用、ページ折り
(4)結論部の最後のページを読む
目的 3)で述べた本の仕分け作業と本全体の当たりをつけるため。
5)「普通の速読」の技法 目的意識を明確に。完璧主義は論外。雑誌なら筆者で判断。
「普通の速読」は頭に情報源の「インデックス」を整理して作るためのもの。
(1)文字を早く目で追うために、定規を当てながら1ページ15秒で読む。
(2)重要箇所はシャーペンで印をつけ、ポストイットを貼る。
(3)まず、目次と初版まえがきを注意深く読み、それから結びを読む。
(4)当たりをつけた重要な箇所は(1)(2)の技法で、それ以外は超速読する。
最後に、著者は「読書ノート」の作り方を説明している。それは記憶を定着させるための抜き書きとコメントを走り書きするためという。読書で得たものを役に立つ知識にするための技法と言える。具体的な事例による説明が載っているので第Ⅰ部第4章を読んでいただくとよい。
この章で著者は次の点を強調している。
・突っ込んだ質問をされて答えられるなら、取りこんだ知識は自分の中に定着している
・1冊の本を読み込み、正確な知識を身につけたほうが、将来的に応用が利く
・大切なのは正確な形でデータを引き出せることと、積み重ねた知識を定着させること
・レーニンの読書ノートの作り方に学べ
・蓄積された知識はビジネスの武器になる
著者は読書の技法を説明する際、自分の読んだ本を例示して、技法を踏まえながら論及を広げている。そこに、「物の見方・考え方、表現の仕方」が自ずと発露されている。結果的に技法を超えた視野が本書に広がっているといえる。
愕然としたのは、著者が例えばとして例に出してきている大半の書籍名は初めて目にするものばかり・・・・だった。著者の論点と重ねられる、あるいは対比・共有できる知識/情報の定着以前であり、それらの書籍とは無縁だったことだ。
もしこの本を手に取り、その例示本の内容をご存じならば、著者の論じている内容が一層おもしろくなるかもしれないと想像する。
知の巨人、恐るべし・・・・。
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