遊心逍遙記

読書三昧は楽しいひととき。遊心と知的好奇心で本とネットを逍遥した読後印象記です。一書がさらに関心の波紋を広げていきます。

『英文快読 政権交代から見えてくる日本の歴史』 著=西海コエン IBCパブリッシング

2018-11-25 12:53:38 | レビュー
 英文快読シリーズを読むのは2冊目である。本書の特徴は、5章構成になっていて、日本の歴史の中で、政権交代が行われた転換点だけに絞り込んで、その歴史的状況を説明している点である。全体では、52の転換点にまとめられている。その転換点の抽出数を本書の構成の紹介と合わせてまず量的にまとめてみよう。
1章 古代 Acient Period    (11)
2章 中世 Medieval Period    (10)
3章 近世 Early Modern Period (12)
  4章 近代 Early Modern Times (12)
  5章 現代 Modern Times ( 7)
 私にとっては、ここでまず「近世、近代、現代」を英語でどう表現するかから学ぶことになった。今まで、どう英訳するか考えてもいなかったからである。現代の事項について数が少ないのは、「過去の歴史ではなく、評価するには時期尚早」という判断によると「あとがき」に触れられている。

 日本の歴史を学校教育で学んでいる。そして、個人的にも特定の時代や特定の関心から歴史関連書を読んだことはある。時代小説レベルでは結構読んでいるが、ここには史実とフィクションが入っているから別枠とみよう。だが、通史的に政権交代の変遷を考えたことはなかった。そういう意味で本書は、まず英文を読みながら古代から現代までの政権交代の有り様や新たな変化が生じた時のことを学び直すという副産物が第一のメリットになった。今までに身につけていた断片的知識を再整理するという意味でも役立つ。
 第1冊目の紹介で触れているが、英文には単語や熟語に翻訳語(句)がルビとして付いている。その助けだけで、まあまあ読みすすめる「快読」感もある。勿論、英文全文の訳文が載っている。
 
 英文快読シリーズと言いながら、日本語タイトルで語ってきた。本書の英文タイトルは、
   Japanese History through the Struggle for Power
である。

 たとえば、「3章近世」の政権交代としてどの事項がとりあげられているか見出しをご紹介する。最初の番号は52項目としての通し番号である。日本語の見出しを先に書き、その語句自体を英語でどう表現されているか、英文見出しを並記した。ここからだけでもいくつか英単語の使用法を学ぶことができる。
22 本能寺の変   The Honno-ji Incident
23 秀吉の統一 Unification under Hideyoshi
24 関ケ原 Sekigahara
25 江戸幕府の政権樹立 The Establishment of the Edo Shogunate
26 家光の改革 The Reforms of Iemitsu
27 吉宗登場 Yoshimune's Ascendance
28 大名のお家騒動 Clan Power Struggles
29 田沼政権の崩壊 The Fall of the Tanuma Regime
30 寛政の改革 The Kansei Reforms
31 天保の改革 The Tempo Reforms
32 一橋派と紀州派 The Hitotubshi Faction and te Kishu Faction
33 桜田門外の変 The Sakuradamon Incident

あなたが日本人であるなら、これだけの項目について、通史的レベルでその基本的な歴史的事実のポイントをまず日本語で説明できますか? そして、それを英語で説明することはできますか?
 私は、残念ながら歴史的知識としては、まだら模様というのが正直なところだ。本書で英文をまず読み進めることで、通史レベルにおいても、ああそういう側面・事実もあったのか、と認識を新たにする箇所がいくつもあった。

 現代についての7事項を日本語見出しで触れておこう。「46.吉田茂の時代 47.片山内閣の成立 48.55年体制の確立 49.岸内閣と池田内閣 50.田中角栄逮捕 51.天の声?福田内閣の崩壊 52.細川政権による自民党長期政権の終焉」である。

 本書の表紙に記されてるキャッチフレーズをご紹介しておこう。
「権力闘争から浮彫にされる日本史の全貌を英語でスッキリ快読!」というもの。

 さて、本書を読み終えて気になっていることに触れておこう。
 表紙に「著=西海コエン 訳=マイケル・ブレーズ」と記されている。表裏に二人のプロフィールが記されている。西海コエンは「1955年大阪生まれ。ニューヨークと東京をベースとするジャーナリスト、ライター」で、「英文で日本人の伝記なども書きおろし出版している」とする。一方、マイケル・ブルーズは「日本の大手出版社に編集者として30年以上にわたって勤務、独立後は、フリーの翻訳者・編集者として活躍」するという。
 本書は「英文快読」書だから、英文にルビ付きを主にし、「訳文」と題して、日本文の全訳説明が記載されている。
 西海コエンは本書の日本文説明を執筆し、マイケル・ブルーズが英文に翻訳したのだろうか? そして「英文快読」書として、英文(主)・訳文(従)というスタイルになっているだけなのか。あるいは、西海コエンが本書の英文を著し、マイケル・ブルーズが翻訳文を担当したのか。西海コエンが日本人で英文で執筆したなら、日本文での説明も自分自身で執筆するのが一番適切な筈である。日本生まれ日本育ちだが外国籍の人で日本人と結婚して日本姓を名乗る日本文化・歴史を熟知した人であっても、それは同じと思える。とすると、著=西海コエン、訳=マイケル・ブレーズという表記は、どう理解すればよいのか?
 本文を読む事からは外れるが、ちょっと気になる・・・・・。

 いずれにしても、「もともと日本人にとって親しみ深い『日本の歴史』を通して英語を勉強し、そこで得た知識で海外の人に日本を語るという一石二鳥の効果を狙ってみましょう」と、冒頭の「日本史を通して英語を勉強する意味とは」の中に記されている一文は的を射ていると思う。
 英文快読を通じて、改めて日本の歴史を学ぶことになったなあ・・・・。そんな感想を抱いている。

 ご一読ありがとうございます。

バイリンガルの英語学習本としては、徒然に次のご紹介をしてきました。こちらもご一読いただけるとうれしいです。
『英文快読 意外と知らない世の中の「なぜ?」』 ニナ・ウェグナー IBCパブリシッング
『世界のトップアスリート英語名言集』 デイビッド・セイン 佐藤雅子 Jリサーチ出版
『世界のトップリーダー英語名言集 BUSINESS』デイビッド・セイン 佐藤淳子 Jリサーチ出版


 


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