我慢はしていた。 がしかし 限界というものを考慮していなかった。
それは腹部の痙攣と肩の震えからはじまった。右手で口元を押さえ、
歯を食いしばった。 だが、次の一行を読み始めた瞬間、ついに爆発した。
「ブッ、ブーーーーッ」 後の声はなんとか押し殺したものの、
腹部は激しく痙攣し、肩はまるでサスペンションの堅い車でオフ
ロードを走行しているかのごとく震えた。
少し治まった時に周囲に目をやると、満面の笑みを浮かべている
私と対照的に、無数の冷ややかな視線が無表情とともに私に向け
られていた。 どのくらい面白かったのか、説明してあげたい思い
をこらえ、多少の羞恥心と理性が、平常心を取り戻した。 周囲は、
まるで何事もなかったかのように、新聞に目を戻し、携帯電話を
チェックし、居眠りを始めた。
東京っていいなぁ~。
浅田次郎さんのエッセイ集「勇気凛凛ルリの色」 危険な本である。
それは腹部の痙攣と肩の震えからはじまった。右手で口元を押さえ、
歯を食いしばった。 だが、次の一行を読み始めた瞬間、ついに爆発した。
「ブッ、ブーーーーッ」 後の声はなんとか押し殺したものの、
腹部は激しく痙攣し、肩はまるでサスペンションの堅い車でオフ
ロードを走行しているかのごとく震えた。
少し治まった時に周囲に目をやると、満面の笑みを浮かべている
私と対照的に、無数の冷ややかな視線が無表情とともに私に向け
られていた。 どのくらい面白かったのか、説明してあげたい思い
をこらえ、多少の羞恥心と理性が、平常心を取り戻した。 周囲は、
まるで何事もなかったかのように、新聞に目を戻し、携帯電話を
チェックし、居眠りを始めた。
東京っていいなぁ~。
浅田次郎さんのエッセイ集「勇気凛凛ルリの色」 危険な本である。