祖母の葬儀、喪主は長男である親父であった。
250人は入れる大きな式場は、ありがたいことにほぼ
ご参列いただいた方々で埋め尽くされていた。
一通りのお経が唱えられ、最後に 喪主から挨拶をさせて
いただく段取りになっていた。
親父がマイクの前で話す姿をこれまで何度か目にしたこと
がある。なかなかのスピーチをすると、家族でも評価され
ていた。 今回も滑り出しは順調であった。 スピーチの
前に「もう、今日は書いているものを読むよ」と、右の
ポケットに入った原稿を指さして周囲に話をしていたのに、
読んでいない。 敬語の使い方に若干おかしな点を感じ
ながらも、親父は概ね順調にスピーチを進めていた。
その矢先、突然言葉に詰まった。 私は、話しているうちに、
祖母のことが思い出され、感極まったのかと思うと、
どうやらそうでもなさそう。 突然、何を話していたか
忘れてしまったかのごとく、後にも先にも身動きできない様子。
「ポケットに原稿が入っているじゃないか」と私は心の
中で叫んだ。 その叫びが通じたのか、親父はおもむろに原稿を
ポケットから取り出したかに見えた。 しかし、原稿であると
思ったそれは、実は原稿ではなく、親族の名簿一覧であった。
ますます慌てる親父、もう、どうにもならない。 なんとかうまく
まとめてくれと願う親族の期待を裏切るように、親父の口から
次に飛び出した言葉は 「・・・よろしくお願いします」と。
その瞬間、グッと笑いを辛抱していた親族は、大爆笑。
しかし、笑いを声に出すわけにもいかず、泣いているかのごとく
手で顔を覆い、肩を震わせていた。
せめて、「本日のご会葬 誠にありがとうございました」
くらいで締めくくってほしかった。
250人は入れる大きな式場は、ありがたいことにほぼ
ご参列いただいた方々で埋め尽くされていた。
一通りのお経が唱えられ、最後に 喪主から挨拶をさせて
いただく段取りになっていた。
親父がマイクの前で話す姿をこれまで何度か目にしたこと
がある。なかなかのスピーチをすると、家族でも評価され
ていた。 今回も滑り出しは順調であった。 スピーチの
前に「もう、今日は書いているものを読むよ」と、右の
ポケットに入った原稿を指さして周囲に話をしていたのに、
読んでいない。 敬語の使い方に若干おかしな点を感じ
ながらも、親父は概ね順調にスピーチを進めていた。
その矢先、突然言葉に詰まった。 私は、話しているうちに、
祖母のことが思い出され、感極まったのかと思うと、
どうやらそうでもなさそう。 突然、何を話していたか
忘れてしまったかのごとく、後にも先にも身動きできない様子。
「ポケットに原稿が入っているじゃないか」と私は心の
中で叫んだ。 その叫びが通じたのか、親父はおもむろに原稿を
ポケットから取り出したかに見えた。 しかし、原稿であると
思ったそれは、実は原稿ではなく、親族の名簿一覧であった。
ますます慌てる親父、もう、どうにもならない。 なんとかうまく
まとめてくれと願う親族の期待を裏切るように、親父の口から
次に飛び出した言葉は 「・・・よろしくお願いします」と。
その瞬間、グッと笑いを辛抱していた親族は、大爆笑。
しかし、笑いを声に出すわけにもいかず、泣いているかのごとく
手で顔を覆い、肩を震わせていた。
せめて、「本日のご会葬 誠にありがとうございました」
くらいで締めくくってほしかった。