私は非力だ―――
<今後の運営をどうするおつもりです?アスハ代表。>
あの戦争から数か月―――ファウンデーション並びにプラントクーデター鎮圧後の交渉通信会談で、海千山千な各国の代表が、モニターの向こうから私を臨む。
「何を今更。引き続き、ファウンデーションやユーラシア連邦の被災地へは、救援活動を続ける。人命の救助が何よりの先決であろう?」
姿勢を正し、正々堂々と意見を述べる。ただでさえ一番若輩なのは私だ。だからといって後れを取るわけにはいかない。
この背の後ろには、オーブの大事な民たちがいる。私が守らなくてはならない大事な者たちだ。
すると、
<確かに、”何の被災も負わなかったオーブ“なら、それだけのことは可能でしょう。ですが、我が国は何分、ユーラシアと国境が接している。何時またブルーコスモスが活動を再開するかわかりませんので、とても支援まで手が回ることは…>
東アジア共和国代表が、かいてもない汗をわざとらしくハンカチで拭う。
<そうです。ブルーコスモスがまた活動を再開したとして、コンパスはどうするのです?>
大洋州連合首脳がいきり立てば、他の国々もの代表も表情こそ出さないが、どう見ても同じ空気を纏っている。
(お前たち自身がコンパスの存在を一掃しようとしたくせに、いうに事欠いて、今更縋り付く気か!?)
不満が腹の底から湧き出てくるのを必死で抑える。
だが、更に彼らは私を煽ってきた。
<コンパス、といえば、ヤマト准将のユーラシア国境侵犯の件は、まだきちんと精査されておりませんな。>
辛そうな表情の陰で、口角が僅か上がったのを、私は見逃さない。
奴らの考えは手に取るようにわかる。
キラの件を追求し、あわよくば、オーブの権威を失墜させようという魂胆だ。
「ヤマト准将はMIAと認定された。だが、皆ももう既にお分かりだろう?ヤマト准将の件はもとより、ファウンデーション、いや、アコードたちが自国に核を撃ち込む自演自作を行い、ユーラシアを攻撃したということも!」
<ですが、それとこれとは別ではありませんか?>
「なんだと…?」
私が睨めば、大西洋連邦代表フォスターが同じく睨み返してくる。
<確かに核はアコードたちがユーラシアを撃つための口実かもしれませんが、ならばヤマト准将はどうして領空侵犯を犯したのです?どうそこに結び付くのですか?>
「―――っ!」
痛いところを突かれる。アコードたちが読心術を使ってキラの精神を支配した、というのは確かだ。ファウンデーションから帰還したキラや、ターミナルの情報解析をしたアスランからの話で分かったことだ。だが、読心能力という未知の、荒唐無稽な力の存在を証明する術は無い。アコードは普通のコーディネーターの更に一歩先の能力を得た人類だということは、今は亡き宰相:オルフェ・ラム・タオの宣戦布告の際に明らかにされてはいるが、見えないものを信じよ、といっても、神でもない限り、人はたやすく認めることはできまい。
だが、それでもキラを守るには、この見えない事実を押すしか現段階では手立てはない。
「何度も話したはずだ。アコードたちの読心能力によって、ヤマト准将の精神が操られたと!」
<…私も恐らくはそれが正しいと思っています。>
思わぬ援軍だ。そう答えてくれたのは、プラント最高評議会議長ラメント。
<ヤマト准将とは幾度かお会いしましたが、とても穏やかで、慎ましい方でした。そんな彼があんな暴挙に出るとはとても思えない。>
<果たしてそうですかな?>
南アフリカ統一機構代表は渋い顔をする。
<彼が一度戦場に降り立てば、そのバーサーカーとも例えんばかりの攻撃力でもって、兵器全てを破壊しつくす勢いでした。それはザフトも同じ被害を受けたのではありませんか?>
「…。」
急所を突かれ、ラメントが沈黙する。フォスターが鋭くこちらを睨む。
<アスハ代表はご存じですか?彼が一部では『破壊神』と呼ばれていたのを。>
「そんな!キ…ヤマト准将は意味もなく暴挙などしない!」
怒りのあまり立ち上がる私。キラが人民と民間施設を守ろうと、被害を最小限に抑えるために、武器の破壊だけをしていたことに気づいていないのか!? 自分を犠牲にして戦ってくれたキラを、そんな酷い目で見るとは!
私を逆上させて、発言を弱めようとする魂胆は見え見えだ。でもそのためにキラを傷つけるような発言だけは許さない!
―――続きはこちらから。
***
お久しぶりに書き下ろしです。
先週、今週と、立て続けで心身ともに疲弊というか落ち込みというか…。なかなか気持ちの方が落ち込んでついて行けない感じでしたが、ようやく持ち直してきたので、ちょこちょこっと書いてみました。
pixivのキャプションに細かいことは書きましたが、劇場版のカガリは19歳(劇中で20歳になられました)という若さにもかかわらず、世界を相手に対等に渡り合うだけじゃなく、アスランと話し合いながら(描写はありませんが、監督談話より)オーブの危機的状況を先手を打ちながら脱して、本当に為政者として成長したな~と感心ひとしきりでした(23年見守り続けて、もはや親の気持ち♥)。
ですが、やっぱりキラのことを悪く言われれば、素で怒るし、最後のアコードとの戦いでは、ルージュにオオトリ装備運搬のムラサメまで同伴させ、「いざとなったら自らカチコミに行くつもりだった」様子さえ見せていたので、やっぱり本質は変わらない(笑)代表がやはり可愛いv
そんな目下成長著しいカガリ様ですけど、やっぱりどんなに強くても、一人じゃ自分を支え切るってできないと思います。しかも戦後、キラとラクスがMIA状態で、二人がいない世界でも何とかやっていかなきゃ!(小説版ではこっち。最終週特典では「キラもアスランもいるから」と、キラを引退させない風体に^^;)と思ってますから、プレッシャーも大きいだろうなって。
勿論補佐官は周囲に居ますけど、決して彼らを風よけには使うような人じゃないので、何とか耐え抜く術を手にしようとしているでしょうが、まだ若干20歳の女性が世界を支えようとする、しかも国内だけならともかく世界から期待されたら、相当ストレスかかりそうです。
なので、やっぱりここはカガリを一番よく知るアスランが支えになってくれるだろうな、いや、なってくれ!アスラン、迷わなくなって最強ですから。心身ともに。
以前ロマンアルバム(無印終了後発行された)での両澤さんのインタビューで「アスランはカガリのことがものすごく好きだけど、カガリはそれほどじゃない。何故かといえば、アスランはカガリから沢山のものを貰ったけど、カガリはアスランからまだ何ももらっていないから」というのがありました。
確かにその通りでして、無印の時はアスランが戦争そのものに対する疑問を持てたのって、カガリと会ってから(キラとは戦いながらも迷っていた。ラクスの本質にもサインは出してくれていたのに気づいていなかった)で、キラとの和解を取り持ってくれたのもカガリで、父親と決裂した悲しみを癒してくれたのもカガリ。最後は命まで救ってくれた。
…そりゃ悩も焼かれるだろう!(笑)
だから今後はアスランがカガリに惜しみなく与えてほしい。今のアスランなら、カガリと同じ目線で対局を見計らうこともできると思うので。
―――そんな思いを込めてみました♥
そういえば、これを書きながら「世界の神様」を調べていたら『ジャガンナート』という破壊神がヒンドゥー教にいらっしゃるんですね。なるほど、名は体を表してました。
余談ですが、先日HPの方をどうするかな~と考えていたんですが、収納作品の『Vamp!』シリーズを読み始めたら止まらなくなりまして(笑)
今更ですが「よくあんな長編&複雑&サスペンス書けたなΣ(・ω・ノ)ノ!」って、過去の自分に拍手を送りたくなりましたw
たまには自作品を読み返すのもいいものですね( ̄▽ ̄)