私は非力だ。
この手はあまりにも小さすぎて
世界全てを救えなくて。
もうキラとラクスに剣をとらせたくない。
ならば私が全てを背負おう。
そう願って思い知る。
私の力の非力さを。
どうしたら良い?
どう願えば世界は穏やかなものへと変わってくれるだろうか?
「カガリ、カガリ!」
「アスラン?」
「ごめん、うなされていたからつい。」
「ううん、ごめん。私こそ起こしてしまったみたいで。お前だって疲れているのに。」
「こうしてカガリを抱けたんだ。むしろ疲れなんて吹っ飛んだよ。」
そう言って微笑む翡翠。
改めてじっと見つめてしまう。本当にきれいだ。コーディネーターだから端正な顔立ちなのは当たり前だけど、それだけじゃない。
人柄は顔に出る。彼がこんなに美しい顔立ちなのは、本当に優しくて理知的で、でもそれを誇ることなく控えめだからだろう。
吸い込まれそうな澄んだ優しい碧い瞳。
戦えば、おそらく敵うもの無き強さをもつ人と同一人物とは思えないほど、私の頬を、髪を撫ぜてくれるその手は優しくて。
つい思わず甘えてしまう。
「アスラン、お願い。」
「カガリ?」
「キ……キスをして……。」
「いいよ。」
嬉しそうな微笑みと共に、優しいキスの雨が降ってきて。
でもそれだけじゃ足りなくて、もっと強く抱きしめて欲しくて。
アスランの首に腕を回すと、アスランも私の背中に腕を回してくれる。
だからぎゅっとしがみつくように抱きつけば、アスランはそれ以上の力で抱きしめ返してくれる。
もう絶対離さないと言わんばかりに……。
ああ、私は幸せだ。今この瞬間が本当に幸せだ。
アスランもそう感じてくれているだろうか?
「カガリ、どうかした?」
「え……?」
「なんだか幸せを怖がっているみたいだ。」
ああ、やっぱりアスランにはわかっちゃうんだなあ。
いや、これは私の弱さのせいなのか……。
「…どうしたら強くなれるのかな、って…」
「…カガリ…?」
私は彼の首に回していた手をほどき、彼の前でこの両手を掬うようにして見せる。
「本当に小さい手だよな。キラみたいに強くなれず、ラクスのように世界を導くこともできず。」
苦笑する私に、アスランは小さく首を振った。
「カガリは強いよ。俺なんか敵わないくらいに。」
「お前はハツカネズミだもんな。」
そう言って茶化して見せるけど、やっぱり心は波立って。
「お前が思っているほど、私は強くないよ。強いフリをして見せているだけだ。その嘘がいつか本物になるんじゃないかって。でも…」
何でかな?目の奥が熱い。
「やっぱり嘘は付くもんじゃないな。知っているか?メイリンから聞いたんだが、私は世界から『地の女神』とか呼ばれているらしいぞ。笑っちゃうよな。神様だったらこんなに非力じゃないのに。」
「カガリ……。」
「はは……。ごめん、こんなこと言っても困るだけだよな。」
あれ?私、なんでこんな話を始めちゃったんだろう? ああ、私はアスランに甘えているんだ。アスランなら私の苦しみを受け止めてくれると知っているから。そして実際に受け止めてくれる優しい人だから。
なのに泣くなんて卑怯だ、私。
でも止まらない……。涙がポタポタと溢れていくのがわかるから目を瞑っても無駄で。きっとひどい顔なんだろうなあ、私。
「カガリ。」
アスランは優しい声で私を呼ぶと、私の顔に手をやりながら、流れる涙を親指で拭ってくれる。
そしてそのまま彼は私の顔を自分の方へと向かせ、顔を近づけたかと思うと、私の瞼にキスをしてくれた。
ああ……キスって本当に魔法だ……。さっきまで波立っていた心まで凪いでいくのがわかるから不思議だ。
「カガリは『地の女神』なんかじゃないよ。『地の女神』は時に大地を枯らし、時に恵みの雨を降らせる。そんな不安定な存在じゃないだろ?カガリはちゃんと『世界』をその両腕に抱いているじゃないか。」
「アスラン……。」
「もしも世界が君を女神だと言うのなら、俺はそんな世界は要らないな。」
そう言って彼は私の唇に口づけた。
ああ、本当に魔法みたいだ。
さっきまであんなに波立っていて苦しかった心が、今はこんなにも凪いでいて。
アスランがいてくれるから……。
「なあ?アスラン?」
「ん?」
「私って幸せ者だな。」
「俺も幸せ者だよ。」
アスランはそう言って、私の瞼や頬、唇に何度も何度もキスをしてくれる。
ああ、好きだな……。
「なあアスラン?」
「ん?」
「その……シないか?」
私がそう言って彼の首に腕を回すと、彼は一瞬驚いたような顔をしてから頷いた。そして優しく笑ってくれる。
ああ……好き……。
「あっ……ダメ……。」
弱いところを攻められて思わずそう漏らす私に、アスランはフッと笑ってみせたかと思うと、私の耳朶を軽く食んでくる。
「う……ん……。」
ああ、また魔法にかけられたみたいに甘い声が出る。
「ダメじゃないだろ?」
アスランはそう言うと、今度はうなじへとキスをする。その触れ方がとても優しくて、ああこの人は本当に優しい人なんだなあと思うと同時に、私を大切にしてくれるんだなあと実感する。
そしてそんな人が私を愛してくれていることにも幸せを感じてしまうのだ。
私はアスランの首に腕を回したまま、彼の唇へ自分のそれを重ねると、彼の口内へと舌を忍ばせる。
そしてお互いの舌を絡め合わせると、クチュリという水音が耳に響いた。
ああ、ドキドキする……。でも気持ちいい……。
「カガリ……。」
唇を離したアスランに名前を呼ばれると、その声の艶っぽさにドキリとする。きっと私しか知らない彼の声だ。
嬉しくて思わず微笑むと、また深いキスの雨が降ってきて、それが私の胸をキュンキュンさせるから参ってしまう。
ああもう本当に私は彼が好きで好きでたまらないんだなあ。
「アスラン……。」
私は彼の名前を呼ぶと、今度は自分からキスをしかけてみた。そしてそのまま彼へと抱きつく。
すると彼は私の背中に腕を回してくれて……。
ああもう幸せだ……。
「カガリ、愛している……。」
「私も……。」
そう答えてからまたキスをすると、アスランは優しく微笑んでくれる。ああ本当に幸せだな……私。
そんなことを考えているうちに、いつの間にか私の意識は夢の世界へと誘われていたのだった……。
翌朝目覚めると、アスランの綺麗な寝顔が目の前にあった。
ああ、そういえば昨晩は何度も抱き合ったんだっけ……。
なんか途中から自分がどう振る舞っていたかも曖昧だが、それでも彼が優しく愛してくれたことだけは覚えている。
「ん……。」
小さく声を漏らすと、彼はゆっくりと目を開いた。そして優しい笑顔で微笑んでくれて……ああもう本当に幸せだ。
「おはようカガリ……。」
そう言って私の額にキスをしてくれる彼に私もキスをする。すると彼は嬉しそうに笑ってくれるから嬉しくなる。
そして私は彼の首に腕を回すと、ぎゅっと抱きついてから言ったのだ。
「おはようアスラン。」
そしてそのまま彼の唇に自分のそれを重ねたのだった。
この手はあまりにも小さすぎて
世界全てを救えなくて。
もうキラとラクスに剣をとらせたくない。
ならば私が全てを背負おう。
そう願って思い知る。
私の力の非力さを。
どうしたら良い?
どう願えば世界は穏やかなものへと変わってくれるだろうか?
「カガリ、カガリ!」
「アスラン?」
「ごめん、うなされていたからつい。」
「ううん、ごめん。私こそ起こしてしまったみたいで。お前だって疲れているのに。」
「こうしてカガリを抱けたんだ。むしろ疲れなんて吹っ飛んだよ。」
そう言って微笑む翡翠。
改めてじっと見つめてしまう。本当にきれいだ。コーディネーターだから端正な顔立ちなのは当たり前だけど、それだけじゃない。
人柄は顔に出る。彼がこんなに美しい顔立ちなのは、本当に優しくて理知的で、でもそれを誇ることなく控えめだからだろう。
吸い込まれそうな澄んだ優しい碧い瞳。
戦えば、おそらく敵うもの無き強さをもつ人と同一人物とは思えないほど、私の頬を、髪を撫ぜてくれるその手は優しくて。
つい思わず甘えてしまう。
「アスラン、お願い。」
「カガリ?」
「キ……キスをして……。」
「いいよ。」
嬉しそうな微笑みと共に、優しいキスの雨が降ってきて。
でもそれだけじゃ足りなくて、もっと強く抱きしめて欲しくて。
アスランの首に腕を回すと、アスランも私の背中に腕を回してくれる。
だからぎゅっとしがみつくように抱きつけば、アスランはそれ以上の力で抱きしめ返してくれる。
もう絶対離さないと言わんばかりに……。
ああ、私は幸せだ。今この瞬間が本当に幸せだ。
アスランもそう感じてくれているだろうか?
「カガリ、どうかした?」
「え……?」
「なんだか幸せを怖がっているみたいだ。」
ああ、やっぱりアスランにはわかっちゃうんだなあ。
いや、これは私の弱さのせいなのか……。
「…どうしたら強くなれるのかな、って…」
「…カガリ…?」
私は彼の首に回していた手をほどき、彼の前でこの両手を掬うようにして見せる。
「本当に小さい手だよな。キラみたいに強くなれず、ラクスのように世界を導くこともできず。」
苦笑する私に、アスランは小さく首を振った。
「カガリは強いよ。俺なんか敵わないくらいに。」
「お前はハツカネズミだもんな。」
そう言って茶化して見せるけど、やっぱり心は波立って。
「お前が思っているほど、私は強くないよ。強いフリをして見せているだけだ。その嘘がいつか本物になるんじゃないかって。でも…」
何でかな?目の奥が熱い。
「やっぱり嘘は付くもんじゃないな。知っているか?メイリンから聞いたんだが、私は世界から『地の女神』とか呼ばれているらしいぞ。笑っちゃうよな。神様だったらこんなに非力じゃないのに。」
「カガリ……。」
「はは……。ごめん、こんなこと言っても困るだけだよな。」
あれ?私、なんでこんな話を始めちゃったんだろう? ああ、私はアスランに甘えているんだ。アスランなら私の苦しみを受け止めてくれると知っているから。そして実際に受け止めてくれる優しい人だから。
なのに泣くなんて卑怯だ、私。
でも止まらない……。涙がポタポタと溢れていくのがわかるから目を瞑っても無駄で。きっとひどい顔なんだろうなあ、私。
「カガリ。」
アスランは優しい声で私を呼ぶと、私の顔に手をやりながら、流れる涙を親指で拭ってくれる。
そしてそのまま彼は私の顔を自分の方へと向かせ、顔を近づけたかと思うと、私の瞼にキスをしてくれた。
ああ……キスって本当に魔法だ……。さっきまで波立っていた心まで凪いでいくのがわかるから不思議だ。
「カガリは『地の女神』なんかじゃないよ。『地の女神』は時に大地を枯らし、時に恵みの雨を降らせる。そんな不安定な存在じゃないだろ?カガリはちゃんと『世界』をその両腕に抱いているじゃないか。」
「アスラン……。」
「もしも世界が君を女神だと言うのなら、俺はそんな世界は要らないな。」
そう言って彼は私の唇に口づけた。
ああ、本当に魔法みたいだ。
さっきまであんなに波立っていて苦しかった心が、今はこんなにも凪いでいて。
アスランがいてくれるから……。
「なあ?アスラン?」
「ん?」
「私って幸せ者だな。」
「俺も幸せ者だよ。」
アスランはそう言って、私の瞼や頬、唇に何度も何度もキスをしてくれる。
ああ、好きだな……。
「なあアスラン?」
「ん?」
「その……シないか?」
私がそう言って彼の首に腕を回すと、彼は一瞬驚いたような顔をしてから頷いた。そして優しく笑ってくれる。
ああ……好き……。
「あっ……ダメ……。」
弱いところを攻められて思わずそう漏らす私に、アスランはフッと笑ってみせたかと思うと、私の耳朶を軽く食んでくる。
「う……ん……。」
ああ、また魔法にかけられたみたいに甘い声が出る。
「ダメじゃないだろ?」
アスランはそう言うと、今度はうなじへとキスをする。その触れ方がとても優しくて、ああこの人は本当に優しい人なんだなあと思うと同時に、私を大切にしてくれるんだなあと実感する。
そしてそんな人が私を愛してくれていることにも幸せを感じてしまうのだ。
私はアスランの首に腕を回したまま、彼の唇へ自分のそれを重ねると、彼の口内へと舌を忍ばせる。
そしてお互いの舌を絡め合わせると、クチュリという水音が耳に響いた。
ああ、ドキドキする……。でも気持ちいい……。
「カガリ……。」
唇を離したアスランに名前を呼ばれると、その声の艶っぽさにドキリとする。きっと私しか知らない彼の声だ。
嬉しくて思わず微笑むと、また深いキスの雨が降ってきて、それが私の胸をキュンキュンさせるから参ってしまう。
ああもう本当に私は彼が好きで好きでたまらないんだなあ。
「アスラン……。」
私は彼の名前を呼ぶと、今度は自分からキスをしかけてみた。そしてそのまま彼へと抱きつく。
すると彼は私の背中に腕を回してくれて……。
ああもう幸せだ……。
「カガリ、愛している……。」
「私も……。」
そう答えてからまたキスをすると、アスランは優しく微笑んでくれる。ああ本当に幸せだな……私。
そんなことを考えているうちに、いつの間にか私の意識は夢の世界へと誘われていたのだった……。
翌朝目覚めると、アスランの綺麗な寝顔が目の前にあった。
ああ、そういえば昨晩は何度も抱き合ったんだっけ……。
なんか途中から自分がどう振る舞っていたかも曖昧だが、それでも彼が優しく愛してくれたことだけは覚えている。
「ん……。」
小さく声を漏らすと、彼はゆっくりと目を開いた。そして優しい笑顔で微笑んでくれて……ああもう本当に幸せだ。
「おはようカガリ……。」
そう言って私の額にキスをしてくれる彼に私もキスをする。すると彼は嬉しそうに笑ってくれるから嬉しくなる。
そして私は彼の首に腕を回すと、ぎゅっと抱きついてから言ったのだ。
「おはようアスラン。」
そしてそのまま彼の唇に自分のそれを重ねたのだった。