うららかな日の午後。自室にいたアスランの鼻を、甘い香りがくすぐった。
(これは・・・そういえば今日、カガリがアップルパイ作ってくれるって言ってくれたな)
カガリの料理の腕は、見た目は一見形容しがたい(苦笑)なのだが、味に関しては飛び切りなのだ。
普段、果物といっても桃しか食べないアスランだったが、カガリの手作りアップルパイを食べたことがある、というキラに
―――「へぇ~君食べたことなかったんだ。すっごく美味しかったよ!また作ってもらいたいなぁ・・・」
と世にも羨ましいことを聞かされて、気になっていたのだ。
自分もなんとしても食べてみたい。
だが普段から公務で忙しいカガリにそんな我儘を言っていいものか、悩んだ。
カガリを思いやる優しさか、それとも、自分の我儘か
優しさ・・・我儘・・・優しさ・・・我儘・・・
ずっとひたすら自問自答を繰り返したところ、対に堪えは「我儘」の方に軍配が上がった。
なので、さりげなく、あくまでさりげなく聞いてみることにした。
―――「なぁ、カガリ・・・」
―――「なんだ?」
―――「いや・・・その・・・」
―――「なんだよ。はっきりしろよ。それともまた何か『ハツカネズミ』になっているのか?」
けげんな表情で自分の顔を覗うカガリに、ついに思い切って打ち明けてみた。
―――「その・・・この前キラと話していて・・・君が作った『アップルパイ』の話になって・・・」
(言うんだ!「俺にも作ってほしい」と――)
モジモジと視線を泳がすアスラン。意を決して口を開こうとしたその時
―――「なんだ、作ってほしいのか?」
あっけらかんとカガリが言った。
―――「あ。あぁ・・・でも君忙しそうだし、無理だったらいい――」
―――「だーかーらー!」
すっとアスランの正面に立つと、カガリが両手でアスランの頬をパシっと抑えた。
―――「お前いつも相手のことばっかり考えて、遠慮ばっかりして。ちゃんと言いたいことがあったら言う!隠されている方がよっぽど相手は気になって、そっちの方が思いやりないぞ!」
そしてニッコリといった。
―――「任せろ!今度とびっきりの作ってやるから!」
そう言って今日の午後3時。甘い香りがどんどん近づいてくる。そして…ドアのノック音が―――
「・・・・・・」
(あれ?)
相手の気配は確かにドアのすぐそばにある。だが、一向にドアをノックする気配がない。
「どうしたんだ?」
急くようにしてドアを開けてみたら、そこにはピンクのエプロン姿のカガリが、視線をそらしながらモジモジと落ち着かない様子で立っていた。
「どうした、カガリ。アップルパイのにおいがするから、てっきり焼けたかと―――」
「ごめん!」
アスランの言葉がいい終わらないうちに、カガリが思いっきり斜角90℃以上で頭を下げた。
「カガリ?・・・もしかして、失敗したとか」
「う・・・それは大丈夫、だったんだが・・・」
カガリが視線を後方に向けると、ワゴンの上に、切り分けられたパイと紅茶のセットが置いてあったのだが、そのパイがどうにもつぶれている。
「上手く膨らまなかったのか。」
「えと、そうじゃなくって、あのな・・・怒らないで聞いてくれるか?」
「あぁ。」
そういうとカガリは頬を赤らめながら、ぼそぼそと言い始めた。
「その、中のリンゴのフィリングを作っていたら、砂糖を何グラム入れるか忘れちゃって、それで「このくらいか?」「もうちょっと追加した方がいいかな?」って味見続けていたら、いつの間にか、何故だかフィリングが少なくなってきちゃったんだ。」
つまり・・・味見していたら、どんどん中身を食べつくしてしまい、少なくなってしまった。というわけか。それをカガリ自身がさっぱり気づかないうちに。
「ぷ・・・あははは!」
思わずおかしくなって、アスランにしては珍しく大笑いした。
「わ、笑うなよ!」
「ごめん、あんまりにも君らしくって。でも、ご賞味させてくれるんだろ?」
「うん。こんなんだけど、いいのか?パイ皮ばっかりで、中身ないけれど」
「いいよ、中身の甘酸っぱい部分は、ここから味あわせてもらうから。」
「え?」
そう言ってキョトンとしている、カガリの唇に、そっと唇が重なった。
「―――っ!お前、何するんだよ!//////」
真っ赤になったカガリが叫ぶ。
だがアスランはしれっと言ってのけた。
「だって、カガリが美味しいフィリング食べたのなら、その唇にはさぞかし美味しいフィリングの味がついていると思って。」
「そ、そんなわけないだろ!?」
「いいや、美味しかったよ。甘酸っぱい味がして。俺の分まで食べたのなら、もっと味あわせてもらおうかな。」
「馬鹿っ!やめろってば!アスラァァーーーン!!///」
キラの食べたアップルパイもさぞかし美味しかっただろうけれど。
こっちは至福の味がするよ。
もちろん俺にとっての、世界一の味のアップルパイだ。
・・・Fin
***
・・・なんて小話を一発。
今日アップルパイ作ったんですよ。リアルで。
紅玉(リンゴ)が久しぶりに売っていたんで、3個ばっかり買い込んで作ってみたんですが、すっかり砂糖の分量間違えて、なんか水っぽくなっちゃった(涙)
パイの皮も水分すっちゃって、しんなりしすぎてたし
見事に失敗しましたとさorz
味はままよかったんですけれどね。
今度はちゃんと分量計量して作ります。反省。
(これは・・・そういえば今日、カガリがアップルパイ作ってくれるって言ってくれたな)
カガリの料理の腕は、見た目は一見形容しがたい(苦笑)なのだが、味に関しては飛び切りなのだ。
普段、果物といっても桃しか食べないアスランだったが、カガリの手作りアップルパイを食べたことがある、というキラに
―――「へぇ~君食べたことなかったんだ。すっごく美味しかったよ!また作ってもらいたいなぁ・・・」
と世にも羨ましいことを聞かされて、気になっていたのだ。
自分もなんとしても食べてみたい。
だが普段から公務で忙しいカガリにそんな我儘を言っていいものか、悩んだ。
カガリを思いやる優しさか、それとも、自分の我儘か
優しさ・・・我儘・・・優しさ・・・我儘・・・
ずっとひたすら自問自答を繰り返したところ、対に堪えは「我儘」の方に軍配が上がった。
なので、さりげなく、あくまでさりげなく聞いてみることにした。
―――「なぁ、カガリ・・・」
―――「なんだ?」
―――「いや・・・その・・・」
―――「なんだよ。はっきりしろよ。それともまた何か『ハツカネズミ』になっているのか?」
けげんな表情で自分の顔を覗うカガリに、ついに思い切って打ち明けてみた。
―――「その・・・この前キラと話していて・・・君が作った『アップルパイ』の話になって・・・」
(言うんだ!「俺にも作ってほしい」と――)
モジモジと視線を泳がすアスラン。意を決して口を開こうとしたその時
―――「なんだ、作ってほしいのか?」
あっけらかんとカガリが言った。
―――「あ。あぁ・・・でも君忙しそうだし、無理だったらいい――」
―――「だーかーらー!」
すっとアスランの正面に立つと、カガリが両手でアスランの頬をパシっと抑えた。
―――「お前いつも相手のことばっかり考えて、遠慮ばっかりして。ちゃんと言いたいことがあったら言う!隠されている方がよっぽど相手は気になって、そっちの方が思いやりないぞ!」
そしてニッコリといった。
―――「任せろ!今度とびっきりの作ってやるから!」
そう言って今日の午後3時。甘い香りがどんどん近づいてくる。そして…ドアのノック音が―――
「・・・・・・」
(あれ?)
相手の気配は確かにドアのすぐそばにある。だが、一向にドアをノックする気配がない。
「どうしたんだ?」
急くようにしてドアを開けてみたら、そこにはピンクのエプロン姿のカガリが、視線をそらしながらモジモジと落ち着かない様子で立っていた。
「どうした、カガリ。アップルパイのにおいがするから、てっきり焼けたかと―――」
「ごめん!」
アスランの言葉がいい終わらないうちに、カガリが思いっきり斜角90℃以上で頭を下げた。
「カガリ?・・・もしかして、失敗したとか」
「う・・・それは大丈夫、だったんだが・・・」
カガリが視線を後方に向けると、ワゴンの上に、切り分けられたパイと紅茶のセットが置いてあったのだが、そのパイがどうにもつぶれている。
「上手く膨らまなかったのか。」
「えと、そうじゃなくって、あのな・・・怒らないで聞いてくれるか?」
「あぁ。」
そういうとカガリは頬を赤らめながら、ぼそぼそと言い始めた。
「その、中のリンゴのフィリングを作っていたら、砂糖を何グラム入れるか忘れちゃって、それで「このくらいか?」「もうちょっと追加した方がいいかな?」って味見続けていたら、いつの間にか、何故だかフィリングが少なくなってきちゃったんだ。」
つまり・・・味見していたら、どんどん中身を食べつくしてしまい、少なくなってしまった。というわけか。それをカガリ自身がさっぱり気づかないうちに。
「ぷ・・・あははは!」
思わずおかしくなって、アスランにしては珍しく大笑いした。
「わ、笑うなよ!」
「ごめん、あんまりにも君らしくって。でも、ご賞味させてくれるんだろ?」
「うん。こんなんだけど、いいのか?パイ皮ばっかりで、中身ないけれど」
「いいよ、中身の甘酸っぱい部分は、ここから味あわせてもらうから。」
「え?」
そう言ってキョトンとしている、カガリの唇に、そっと唇が重なった。
「―――っ!お前、何するんだよ!//////」
真っ赤になったカガリが叫ぶ。
だがアスランはしれっと言ってのけた。
「だって、カガリが美味しいフィリング食べたのなら、その唇にはさぞかし美味しいフィリングの味がついていると思って。」
「そ、そんなわけないだろ!?」
「いいや、美味しかったよ。甘酸っぱい味がして。俺の分まで食べたのなら、もっと味あわせてもらおうかな。」
「馬鹿っ!やめろってば!アスラァァーーーン!!///」
キラの食べたアップルパイもさぞかし美味しかっただろうけれど。
こっちは至福の味がするよ。
もちろん俺にとっての、世界一の味のアップルパイだ。
・・・Fin
***
・・・なんて小話を一発。
今日アップルパイ作ったんですよ。リアルで。
紅玉(リンゴ)が久しぶりに売っていたんで、3個ばっかり買い込んで作ってみたんですが、すっかり砂糖の分量間違えて、なんか水っぽくなっちゃった(涙)
パイの皮も水分すっちゃって、しんなりしすぎてたし
見事に失敗しましたとさorz
味はままよかったんですけれどね。
今度はちゃんと分量計量して作ります。反省。