「・・・やっぱり駄目だな・・・」
午後の明るい陽射しが差し込む応接間。大きなソファーに身を沈めるようにしてカガリは目の前の難問に悪戦苦闘していた。
そこへ―――
<コンコン>
軽いノックオンとともに、聞こえたのは耳慣れた声
「カガリ、入るぞ。」
「わっ!ちょ、ちょっと待―――」
慌ててカガリが手にしていたものを、足元に置いた紙袋に突っ込み、足でテーブルの下に押し込んだところで彼がドアを開けた。
「な、なんだよ!扉は「どうぞ」って言われてから入るもんだぞ!」
「でもカガリが指定した時間から軽く20分は待たされたし。」
アッサリと返されて、カガリは二の句を注げなくなる。
そのちょっとしたことで素直にクルクルと変わる表情が愛らしくって、思わずアスランは「クス」っと笑みをこぼした。
「わ、悪かったな!その・・・待たせて・・・」
視線をそらし謝るカガリに、アスランは空気を切り替えてカガリに尋ねる。
「で、「今日の午後2時に来てくれ」ということだが、どうしたんだ?」
「・・・これ・・・」
視線を逸らしたまま彼女がつっけんどんにソファーの横に置かれていた紙袋をアスランに差し出す。
「これは・・・」
「今日誕生日だろ。だから、いわるゆ「誕生日プレゼント」ってやつだ!」
両親を亡くし、このほど誕生日を覚えていてくれる人は殆どいないと思っている。その中唯一いつもこうして覚えていてくれるのは大事な彼女
「ありがとう、カガリ。」
心を込めて言う。いや込める必要もない。こんなに十分想いは溢れているのだから。
「開けていいか?」
「あ・・・うん。」
カガリの承認を得て、アスランがテーブルの上で紙包みを開けてみると
「『マフラー』?」
アスランの髪の色と同じ、深い藍色のマフラーだった。
「あぁ。プラントと違って、いくら南国といえど、ここは気象変化が予測できないだろ? お前以前制服の襟立てていたのを見たから。」
こんな風に自分のさり気ない行動を見てくれている。そんな人が自分の傍にいてくれるということは、何と幸せなことなのだろう。
でも―――
「じゃぁカガリ、その『下にあるもの』は?」
思わずごくりと息をのんだカガリ。だがその隙もつかせぬ速さでアスランがさっと手を伸ばす。
「な、ダメっ!それは―――見るなぁぁぁーーーーっ!!
」
先ほどカガリがテーブルの下に突っ込んでいたのを、アスランはしっかりと目撃していたのだ。こういうあたりが流石はコーディネーターと褒めるべきところだろう。だがカガリにとっては今日ほどそれが恨めしく思ったことはない。
「あ・・・」
カガリの前で紙袋から取り出したそれをアスランが広げてみると
「これ・・・『マフラー』?」
確かにそれも同じ濃紺の『マフラー』だった。しかしよく見て見れば、網目は荒く、場所によっては一目少なくかがったりしていて、どうにも綺麗とは言い難い。
「手作り・・・してくれていたのか?」
翡翠を広げて見てみれば、頬を真っ赤にしたカガリがモジモジと膝を抱きながら言った。
「う・・・うん。本当はちゃんとしたのを作ってあげたかったんだけど、上手くいかなくって・・・あ、だからそれは「クリスマス用」の練習ってことで・・・だ、だから本番はクリスマスな!だから―――って、おい!」
アタフタと説明するカガリの目の前で、アスランは先ほどのマフラーを外し、カガリの手編みのマフラーを首に巻いた。
「や、やめろよ///、は、恥ずかしいだろっ!」
「こっちの方がいい。」
アスランは目をつぶりながら、そっとマフラーを頬に寄せる。
「カガリの匂いがする。こっちの方がずっといい。」
頬どころか顔中真っ赤にして、カガリが慌てる。
「で、でも、そんなへたっぴなの―――」
「じゃあその分は別の形で補てんしてもらおうかな。」
「ほ、ほ、『ほてん』??」
カガリがその意味を理解するまもなく、アスランはカガリの隣に座るとそのままカガリの膝上に頭を乗せて横になった。
「お、おい、いきなりこんなところで寝るなよ///」
カガリの声などお構いもなく、アスランはそのまま目を閉じ、スースーと気持ちよさげに寝息を立てた。
「全く・・・こんな簡単に寝るなよな…って、敵の前でもすぐ寝る奴だったけど。まぁいいか!今日は特別な日だからな!」
そう言いながら、カガリは笑顔でアスランの髪をなぜた。
その心地よい微睡の中、アスランはそっと囁く
一時のプレゼントなんかより、君はそれ以上にずっと俺の望んでいるものをくれているよ。
―――『俺の居場所と君のぬくもり』を
<Fin.>
===============================
>アスラン、誕生日おめでとう!!
お祝いが何もないのも悲しいので、珍しくショートショートでお祝いv
ご一読下さった方、ありがとうございます<(_ _)>
午後の明るい陽射しが差し込む応接間。大きなソファーに身を沈めるようにしてカガリは目の前の難問に悪戦苦闘していた。
そこへ―――
<コンコン>
軽いノックオンとともに、聞こえたのは耳慣れた声
「カガリ、入るぞ。」
「わっ!ちょ、ちょっと待―――」
慌ててカガリが手にしていたものを、足元に置いた紙袋に突っ込み、足でテーブルの下に押し込んだところで彼がドアを開けた。
「な、なんだよ!扉は「どうぞ」って言われてから入るもんだぞ!」
「でもカガリが指定した時間から軽く20分は待たされたし。」
アッサリと返されて、カガリは二の句を注げなくなる。
そのちょっとしたことで素直にクルクルと変わる表情が愛らしくって、思わずアスランは「クス」っと笑みをこぼした。
「わ、悪かったな!その・・・待たせて・・・」
視線をそらし謝るカガリに、アスランは空気を切り替えてカガリに尋ねる。
「で、「今日の午後2時に来てくれ」ということだが、どうしたんだ?」
「・・・これ・・・」
視線を逸らしたまま彼女がつっけんどんにソファーの横に置かれていた紙袋をアスランに差し出す。
「これは・・・」
「今日誕生日だろ。だから、いわるゆ「誕生日プレゼント」ってやつだ!」
両親を亡くし、このほど誕生日を覚えていてくれる人は殆どいないと思っている。その中唯一いつもこうして覚えていてくれるのは大事な彼女
「ありがとう、カガリ。」
心を込めて言う。いや込める必要もない。こんなに十分想いは溢れているのだから。
「開けていいか?」
「あ・・・うん。」
カガリの承認を得て、アスランがテーブルの上で紙包みを開けてみると
「『マフラー』?」
アスランの髪の色と同じ、深い藍色のマフラーだった。
「あぁ。プラントと違って、いくら南国といえど、ここは気象変化が予測できないだろ? お前以前制服の襟立てていたのを見たから。」
こんな風に自分のさり気ない行動を見てくれている。そんな人が自分の傍にいてくれるということは、何と幸せなことなのだろう。
でも―――
「じゃぁカガリ、その『下にあるもの』は?」
思わずごくりと息をのんだカガリ。だがその隙もつかせぬ速さでアスランがさっと手を伸ばす。
「な、ダメっ!それは―――見るなぁぁぁーーーーっ!!

先ほどカガリがテーブルの下に突っ込んでいたのを、アスランはしっかりと目撃していたのだ。こういうあたりが流石はコーディネーターと褒めるべきところだろう。だがカガリにとっては今日ほどそれが恨めしく思ったことはない。
「あ・・・」
カガリの前で紙袋から取り出したそれをアスランが広げてみると
「これ・・・『マフラー』?」
確かにそれも同じ濃紺の『マフラー』だった。しかしよく見て見れば、網目は荒く、場所によっては一目少なくかがったりしていて、どうにも綺麗とは言い難い。
「手作り・・・してくれていたのか?」
翡翠を広げて見てみれば、頬を真っ赤にしたカガリがモジモジと膝を抱きながら言った。
「う・・・うん。本当はちゃんとしたのを作ってあげたかったんだけど、上手くいかなくって・・・あ、だからそれは「クリスマス用」の練習ってことで・・・だ、だから本番はクリスマスな!だから―――って、おい!」
アタフタと説明するカガリの目の前で、アスランは先ほどのマフラーを外し、カガリの手編みのマフラーを首に巻いた。
「や、やめろよ///、は、恥ずかしいだろっ!」
「こっちの方がいい。」
アスランは目をつぶりながら、そっとマフラーを頬に寄せる。
「カガリの匂いがする。こっちの方がずっといい。」
頬どころか顔中真っ赤にして、カガリが慌てる。
「で、でも、そんなへたっぴなの―――」
「じゃあその分は別の形で補てんしてもらおうかな。」
「ほ、ほ、『ほてん』??」
カガリがその意味を理解するまもなく、アスランはカガリの隣に座るとそのままカガリの膝上に頭を乗せて横になった。
「お、おい、いきなりこんなところで寝るなよ///」
カガリの声などお構いもなく、アスランはそのまま目を閉じ、スースーと気持ちよさげに寝息を立てた。
「全く・・・こんな簡単に寝るなよな…って、敵の前でもすぐ寝る奴だったけど。まぁいいか!今日は特別な日だからな!」
そう言いながら、カガリは笑顔でアスランの髪をなぜた。
その心地よい微睡の中、アスランはそっと囁く
一時のプレゼントなんかより、君はそれ以上にずっと俺の望んでいるものをくれているよ。
―――『俺の居場所と君のぬくもり』を
<Fin.>
===============================
>アスラン、誕生日おめでとう!!
お祝いが何もないのも悲しいので、珍しくショートショートでお祝いv
ご一読下さった方、ありがとうございます<(_ _)>