金日成→金正日→金正恩と継がれてきた北朝鮮の権力基盤は、金正恩にとっては危ういと自覚したのだろうか、身内の粛正が相次いでいる。
2013年12月、金正恩の叔父に当たる、張成沢(チャン・ソンテク)元国防副委員長や側近が粛正された。金正恩の後見人ともいわれた人物だ。
そして今回、義兄の金正男が女性刺客によって暗殺された。
数年前に「命乞い」の書簡が届いていたにもかかわらずという。
金一族が栄華を誇っている図ではなく、互いに疑心暗鬼となって権力保持に汲々としている。
2013年12月、金正恩の叔父に当たる、張成沢(チャン・ソンテク)元国防副委員長や側近が粛正された。金正恩の後見人ともいわれた人物だ。
そして今回、義兄の金正男が女性刺客によって暗殺された。
数年前に「命乞い」の書簡が届いていたにもかかわらずという。
金一族が栄華を誇っている図ではなく、互いに疑心暗鬼となって権力保持に汲々としている。
北朝鮮の金正男氏、マレーシアで暗殺か 韓国メディア報道
2017年02月15日 03:03 発信地:ソウル/韓国
http://www.afpbb.com/articles/-/3117799
【2月14日 AFP】(更新、写真追加)北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(キム・ジョンナム、Kim Jong-Nam)氏が、マレーシアで北朝鮮の女工作員により毒針を使って暗殺されたと、韓国メディアが14日、報じた。
韓国とマレーシアの両当局は正男氏の死亡を確認していない。マレーシア警察は14日夜の声明で、「キム・チョル」という名の北朝鮮人男性がクアラルンプール国際空港(Kuala Lumpur International Airport)で体調を崩し、病院へ搬送途中に死亡したと発表。韓国メディアは、正男氏がキム・チョル名義の偽造パスポートを使用していたと報じている。
韓国の通信社、聯合(Yonhap)ニュースは関係筋の話として、正男氏は13日、北朝鮮の情報機関・人民武力部偵察総局(Reconnaissance General Bureau)によって暗殺されたと伝えている。
韓国のテレビ局、TV朝鮮(TV Chosun)によると、正男氏は空港で身元不明の女工作員2人により毒針で刺され殺害された。女工作員2人はタクシーを呼び止めて乗り込み、すぐに立ち去ったという。
故金正日(キム・ジョンイル、Kim Jong-Il)総書記の長男である正男氏は、かつてその後継者と目されていたが、2001年に東京ディズニーランド(Tokyo Disneyland)を訪れるため偽造旅券を用いて日本への入国を図り失敗したことがきっかけとなって、後継者候補から外れたとされる。
その後は事実上の亡命生活を送り、主に中国の特別行政区マカオ(Macau)に居住していた。(c)AFP
2017年02月15日 03:03 発信地:ソウル/韓国
http://www.afpbb.com/articles/-/3117799
【2月14日 AFP】(更新、写真追加)北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(キム・ジョンナム、Kim Jong-Nam)氏が、マレーシアで北朝鮮の女工作員により毒針を使って暗殺されたと、韓国メディアが14日、報じた。
韓国とマレーシアの両当局は正男氏の死亡を確認していない。マレーシア警察は14日夜の声明で、「キム・チョル」という名の北朝鮮人男性がクアラルンプール国際空港(Kuala Lumpur International Airport)で体調を崩し、病院へ搬送途中に死亡したと発表。韓国メディアは、正男氏がキム・チョル名義の偽造パスポートを使用していたと報じている。
韓国の通信社、聯合(Yonhap)ニュースは関係筋の話として、正男氏は13日、北朝鮮の情報機関・人民武力部偵察総局(Reconnaissance General Bureau)によって暗殺されたと伝えている。
韓国のテレビ局、TV朝鮮(TV Chosun)によると、正男氏は空港で身元不明の女工作員2人により毒針で刺され殺害された。女工作員2人はタクシーを呼び止めて乗り込み、すぐに立ち去ったという。
故金正日(キム・ジョンイル、Kim Jong-Il)総書記の長男である正男氏は、かつてその後継者と目されていたが、2001年に東京ディズニーランド(Tokyo Disneyland)を訪れるため偽造旅券を用いて日本への入国を図り失敗したことがきっかけとなって、後継者候補から外れたとされる。
その後は事実上の亡命生活を送り、主に中国の特別行政区マカオ(Macau)に居住していた。(c)AFP
【産経抄】兄からは「命乞い」の書簡が届いていた…しかし、暗殺は実行された 2月16日
http://www.sankei.com/column/print/170216/clm1702160003-c.html
1940年8月、メキシコ市郊外にある邸宅の書斎に、ロシア革命の立役者の一人、トロツキーの姿があった。政敵のスターリンによって国外追放され、11年余りの漂流の末に、この地に逃れていた。
▼3カ月前に銃撃を受け、屋敷の警備は厳重だった。ただラモンと名乗る青年は、トロツキーのシンパとして出入りが許されていた。そのラモンによって、ピッケルで頭を一撃されて絶命する。
▼鮮血は執筆中だった、スターリン批判の原稿を真っ赤に染めたという。ラモンは裁判で自分の一存で犯行に及んだと主張し、ソ連国内でもその通りに報じられた。もっとも今では、スターリンの指示による暗殺を疑う専門家は一人もいない。
▼北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(ジョンナム)氏(45)が、マレーシアで殺害された。首都クアラルンプールの空港で、2人組の女に毒殺されたもようだ。北朝鮮から「犯行声明」が出ているわけではないものの、こちらも正恩氏の指令がなければ起こりえない事件である。毒針を仕込んだペンや毒物を発射する小型銃は、北の工作員がこれまでも常用してきた暗殺道具である。
▼韓国の情報機関によると、正男氏の暗殺計画は5年前からあった。もはや権力を脅かされる心配はなく、兄からは「命乞い」の書簡が届いていたにもかかわらず、である。正恩氏は規模ではスターリンには及ばないものの、国内では血まみれの粛清を繰り返している。独裁者の猜疑(さいぎ)心は、底が知れない。
▼「刺客を放つ」。この言葉が、政敵を選挙で落とすという意味で使われるようになったのは、いつごろからだろう。しかし世界を見渡せば、本物の刺客が跋扈(ばっこ)している。今回の惨劇は、そんな現実を日本人に改めて突きつけた。
©2017 The Sankei Shimbun & SANKEI DIGITAL All rights reserved.
http://www.sankei.com/column/print/170216/clm1702160003-c.html
1940年8月、メキシコ市郊外にある邸宅の書斎に、ロシア革命の立役者の一人、トロツキーの姿があった。政敵のスターリンによって国外追放され、11年余りの漂流の末に、この地に逃れていた。
▼3カ月前に銃撃を受け、屋敷の警備は厳重だった。ただラモンと名乗る青年は、トロツキーのシンパとして出入りが許されていた。そのラモンによって、ピッケルで頭を一撃されて絶命する。
▼鮮血は執筆中だった、スターリン批判の原稿を真っ赤に染めたという。ラモンは裁判で自分の一存で犯行に及んだと主張し、ソ連国内でもその通りに報じられた。もっとも今では、スターリンの指示による暗殺を疑う専門家は一人もいない。
▼北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(ジョンナム)氏(45)が、マレーシアで殺害された。首都クアラルンプールの空港で、2人組の女に毒殺されたもようだ。北朝鮮から「犯行声明」が出ているわけではないものの、こちらも正恩氏の指令がなければ起こりえない事件である。毒針を仕込んだペンや毒物を発射する小型銃は、北の工作員がこれまでも常用してきた暗殺道具である。
▼韓国の情報機関によると、正男氏の暗殺計画は5年前からあった。もはや権力を脅かされる心配はなく、兄からは「命乞い」の書簡が届いていたにもかかわらず、である。正恩氏は規模ではスターリンには及ばないものの、国内では血まみれの粛清を繰り返している。独裁者の猜疑(さいぎ)心は、底が知れない。
▼「刺客を放つ」。この言葉が、政敵を選挙で落とすという意味で使われるようになったのは、いつごろからだろう。しかし世界を見渡せば、本物の刺客が跋扈(ばっこ)している。今回の惨劇は、そんな現実を日本人に改めて突きつけた。
©2017 The Sankei Shimbun & SANKEI DIGITAL All rights reserved.
偉大な元帥様になれない金正恩を悩ませる「抵抗勢力」の正体 重村智計(早稲田大学名誉教授)
http://ironna.jp/article/5731?p=1
恐怖の平壌
平壌では、「日米首脳会談」の事実を口にできない。禁句である。話せば、逮捕される。北朝鮮の秘密警察のトップ、金元弘・国家保衛相が1月中旬に解任されたという。処刑の可能性も指摘される。北朝鮮国民は誰も知らない。口にすれば、拘束される。
写真:1月1日、ソウル駅で北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長による「新年の辞」の発表を報じるテレビ番組を見る人々(AP)
国家保衛相解任の理由は、テ・ヨンホ駐英公使の韓国亡命というのが、平壌からの情報だ。テ公使は、家族全員で亡命した。その過程で、子供の出国のため金元弘・保衛相に数十万ドル(数千万円)の賄賂を手渡した。
北朝鮮の外交官は、少なくとも家族一人は人質として平壌に留め置かれる。家族を海外に連れ出せる許可は金元弘の権限だ。さらに、大使館内の秘密警察の担当者にも、多額のカネを握らせた。また、以前から韓国の情報機関と連絡を取っていた。
秘密警察の幹部多数が、責任を問われ処刑された。テ公使は、昨年7月の亡命以来メディアとの会見を重ねている。その中で、金正恩委員長の母親の高英姫について言及した。北朝鮮の指導部内では、母親が在日出身であるというのはなおタブーで、彼女の墓地へのお参りは、幹部も含め禁止されている。公開には指導部内に強い反対意見があったという。
金正恩委員長の誕生日は1月8日とされるが、今年も公式発表はなかった。カレンダーも祝日になっていない。北朝鮮最大のミステリーだが、母親の秘密と関係があるようだ。
誕生日を最初に明らかにしたのは、「金正日の料理人」と言われる日本人だ。彼は、昨年の八月中旬に北朝鮮に入った。妻と娘が平壌にいる。日本料理店を開き、「年末には一度帰国する」と語っていたが、消息は途絶えた。命が危険になる「誕生の秘密」を知っているから、との憶測がある。
北朝鮮の情報、工作機関は彼をスパイと疑っていたが、指導者の保護で手を出せなかった。日本の警察や公安、拉致対策室、韓国の情報機関とも接触していた、との報告が届いていた。
処刑された「張成沢(チャン・ソンテク)」の名前も、禁句だ。「チャ」と言っただけでも、捕まりかねない緊張感が漂う。テ・ヨンホ公使は、「金正日以上の、恐怖先行政治」と述べた。
マキアベッリは「君主論」で「君主は、愛されるより恐れられる方が安全である」と述べた。北朝鮮はこの理論を実践している。過去5年間で340人が処刑されたという。幹部や軍の将軍は、完全盗聴の対象だ。事務所はもちろん自宅の隅々に、盗聴器が隠されている。
「儒教全体主義」国家
北朝鮮は、哲学者ハンナ・アーレントのいう全体主義国家である。主体思想は「指導者の考え通り考え、指示通り動く」と教える。信仰の自由や思想の自由、職業の自由もないのに、「全体主義国家」と指摘するジャーナリストや研究者は、極めて少ない。共産主義と朝鮮儒教の理論が結びついた「全体主義」だ。「指導者を国民の父親とし、無条件服従」を求める。
北朝鮮の労働新聞が1月8日に掲載した、平壌の製糸工場を視察する金正恩朝鮮労働党委員長の写真(共同)
指導者になる第一の条件は、金日成主席と金正日総書記の血統と思想の継承で、息子や家族しか後継者にはなれない。第二の条件は、偉大な業績だ。金正恩委員長は、偉大な業績作りに苦労している。
偉大な業績のために、金正日総書記の「先軍政治」を捨てた。「経済と核優先」の二大政策を掲げた。何が違うのか。「先軍」は、軍人を優遇し利権を与え、軍が貿易に手を出す外貨稼ぎを認めた。それをやめて、「核開発」に利権と資金を集中した。軍が反発し不満を抱くのは当然で、従わない軍幹部を次々処刑した。
金正恩委員長は、元日に「新年の辞」のテレビ演説を行い「水素弾と核弾頭実験、ミサイル発射実験」を偉大な業績として力説した。演説では、「米帝国主義」との言葉を使わず、米大統領への期待をにじませた。トランプ米大統領は「金正恩委員長とハンバーガーを食べたい」と発言し、在韓米軍撤退に言及した。それに期待をかけたが、日米首脳会談で消し飛んでしまった。トランプ大統領は、安倍晋三首相の意向を聞き、強硬策に転換した。北朝鮮に石油禁輸の国連制裁を行う環境が、整ってきた。プーチン露大統領も反対しないだろう。
金正恩委員長は、生き残りのために拉致問題解決の日朝交渉再開に応じるしかなくなる。北朝鮮の外交政策立案は、外務省には権限がない。最近は、40歳代を中心にした指導者直属の部署が、対日外交戦略を密かに担当している。
「儒教全体主義」では、老人や元老が強い発言力を持つ。金日成主席は92年に日本財団の笹川陽平会長に、「わが国では、老人を手なづける能力がないと指導者になれない。儒教の伝統だ」と語った。老人たちは役職にしがみつき現状維持を図り、新しい政策に消極的だ。老人は「金日成と金正日のお言葉がある」と抵抗する。彼らなりの手続きと権限がある。独裁国家といえども、独裁者一人では何もできない。
日米は国連の制裁で、対北石油禁輸に踏み切流べきだ。中国は反対しても、ロシアは受け入れるだろう。中国は、供給削減でもいい。そうなると、北朝鮮軍は崩壊に向かう。石油がないからだ。
国連や日米韓の制裁で困り果て、米国の金融制裁でドル送金を押さえられた。中国も貿易制限に乗り出した。日米との関係改善なしには、衰退するばかりだ。関係改善には、拉致問題の解決と核開発中止が不可欠だ。軍は、核開発中止を絶対に受け入れない。
米国の金融制裁で、ドル送金も押さえられた。日本との関係改善なしには、衰退するばかりだ。日本との関係改善には、拉致問題の解決と核開発中止が不可欠だ。それでも軍は、核開発中止を絶対に受け入れないだろう。
指導者は、「核保有国になった」と米国に認めさせ、核開発の中止を軍に受け入れさせる戦略だ。でも米議会は、北朝鮮の条件を受け入れまい。今年は、金日成生誕105年で、金正日生誕75周年に当たる。お祝いの「花火」として、核実験とミサイル実験をする。実験できなければ、指導者の資格を疑われる。北朝鮮の核実験で、韓国大統領選挙の様相も変わる。国連安保理が、石油禁輸を採択すれば、北朝鮮は崩壊に向かう。
http://ironna.jp/article/5731?p=1
恐怖の平壌
平壌では、「日米首脳会談」の事実を口にできない。禁句である。話せば、逮捕される。北朝鮮の秘密警察のトップ、金元弘・国家保衛相が1月中旬に解任されたという。処刑の可能性も指摘される。北朝鮮国民は誰も知らない。口にすれば、拘束される。
写真:1月1日、ソウル駅で北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長による「新年の辞」の発表を報じるテレビ番組を見る人々(AP)
国家保衛相解任の理由は、テ・ヨンホ駐英公使の韓国亡命というのが、平壌からの情報だ。テ公使は、家族全員で亡命した。その過程で、子供の出国のため金元弘・保衛相に数十万ドル(数千万円)の賄賂を手渡した。
北朝鮮の外交官は、少なくとも家族一人は人質として平壌に留め置かれる。家族を海外に連れ出せる許可は金元弘の権限だ。さらに、大使館内の秘密警察の担当者にも、多額のカネを握らせた。また、以前から韓国の情報機関と連絡を取っていた。
秘密警察の幹部多数が、責任を問われ処刑された。テ公使は、昨年7月の亡命以来メディアとの会見を重ねている。その中で、金正恩委員長の母親の高英姫について言及した。北朝鮮の指導部内では、母親が在日出身であるというのはなおタブーで、彼女の墓地へのお参りは、幹部も含め禁止されている。公開には指導部内に強い反対意見があったという。
金正恩委員長の誕生日は1月8日とされるが、今年も公式発表はなかった。カレンダーも祝日になっていない。北朝鮮最大のミステリーだが、母親の秘密と関係があるようだ。
誕生日を最初に明らかにしたのは、「金正日の料理人」と言われる日本人だ。彼は、昨年の八月中旬に北朝鮮に入った。妻と娘が平壌にいる。日本料理店を開き、「年末には一度帰国する」と語っていたが、消息は途絶えた。命が危険になる「誕生の秘密」を知っているから、との憶測がある。
北朝鮮の情報、工作機関は彼をスパイと疑っていたが、指導者の保護で手を出せなかった。日本の警察や公安、拉致対策室、韓国の情報機関とも接触していた、との報告が届いていた。
処刑された「張成沢(チャン・ソンテク)」の名前も、禁句だ。「チャ」と言っただけでも、捕まりかねない緊張感が漂う。テ・ヨンホ公使は、「金正日以上の、恐怖先行政治」と述べた。
マキアベッリは「君主論」で「君主は、愛されるより恐れられる方が安全である」と述べた。北朝鮮はこの理論を実践している。過去5年間で340人が処刑されたという。幹部や軍の将軍は、完全盗聴の対象だ。事務所はもちろん自宅の隅々に、盗聴器が隠されている。
「儒教全体主義」国家
北朝鮮は、哲学者ハンナ・アーレントのいう全体主義国家である。主体思想は「指導者の考え通り考え、指示通り動く」と教える。信仰の自由や思想の自由、職業の自由もないのに、「全体主義国家」と指摘するジャーナリストや研究者は、極めて少ない。共産主義と朝鮮儒教の理論が結びついた「全体主義」だ。「指導者を国民の父親とし、無条件服従」を求める。
北朝鮮の労働新聞が1月8日に掲載した、平壌の製糸工場を視察する金正恩朝鮮労働党委員長の写真(共同)
指導者になる第一の条件は、金日成主席と金正日総書記の血統と思想の継承で、息子や家族しか後継者にはなれない。第二の条件は、偉大な業績だ。金正恩委員長は、偉大な業績作りに苦労している。
偉大な業績のために、金正日総書記の「先軍政治」を捨てた。「経済と核優先」の二大政策を掲げた。何が違うのか。「先軍」は、軍人を優遇し利権を与え、軍が貿易に手を出す外貨稼ぎを認めた。それをやめて、「核開発」に利権と資金を集中した。軍が反発し不満を抱くのは当然で、従わない軍幹部を次々処刑した。
金正恩委員長は、元日に「新年の辞」のテレビ演説を行い「水素弾と核弾頭実験、ミサイル発射実験」を偉大な業績として力説した。演説では、「米帝国主義」との言葉を使わず、米大統領への期待をにじませた。トランプ米大統領は「金正恩委員長とハンバーガーを食べたい」と発言し、在韓米軍撤退に言及した。それに期待をかけたが、日米首脳会談で消し飛んでしまった。トランプ大統領は、安倍晋三首相の意向を聞き、強硬策に転換した。北朝鮮に石油禁輸の国連制裁を行う環境が、整ってきた。プーチン露大統領も反対しないだろう。
金正恩委員長は、生き残りのために拉致問題解決の日朝交渉再開に応じるしかなくなる。北朝鮮の外交政策立案は、外務省には権限がない。最近は、40歳代を中心にした指導者直属の部署が、対日外交戦略を密かに担当している。
「儒教全体主義」では、老人や元老が強い発言力を持つ。金日成主席は92年に日本財団の笹川陽平会長に、「わが国では、老人を手なづける能力がないと指導者になれない。儒教の伝統だ」と語った。老人たちは役職にしがみつき現状維持を図り、新しい政策に消極的だ。老人は「金日成と金正日のお言葉がある」と抵抗する。彼らなりの手続きと権限がある。独裁国家といえども、独裁者一人では何もできない。
日米は国連の制裁で、対北石油禁輸に踏み切流べきだ。中国は反対しても、ロシアは受け入れるだろう。中国は、供給削減でもいい。そうなると、北朝鮮軍は崩壊に向かう。石油がないからだ。
国連や日米韓の制裁で困り果て、米国の金融制裁でドル送金を押さえられた。中国も貿易制限に乗り出した。日米との関係改善なしには、衰退するばかりだ。関係改善には、拉致問題の解決と核開発中止が不可欠だ。軍は、核開発中止を絶対に受け入れない。
米国の金融制裁で、ドル送金も押さえられた。日本との関係改善なしには、衰退するばかりだ。日本との関係改善には、拉致問題の解決と核開発中止が不可欠だ。それでも軍は、核開発中止を絶対に受け入れないだろう。
指導者は、「核保有国になった」と米国に認めさせ、核開発の中止を軍に受け入れさせる戦略だ。でも米議会は、北朝鮮の条件を受け入れまい。今年は、金日成生誕105年で、金正日生誕75周年に当たる。お祝いの「花火」として、核実験とミサイル実験をする。実験できなければ、指導者の資格を疑われる。北朝鮮の核実験で、韓国大統領選挙の様相も変わる。国連安保理が、石油禁輸を採択すれば、北朝鮮は崩壊に向かう。