落葉松亭日記

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米朝会談

2018年06月13日 | 政治・外交
米朝会談は予定通りシンガポールで行われた。
合意された「シンガポール共同声明」については、懸案事項解決の第一歩ととらえる評価が多い。
拉致問題については、金氏は「聞き置く」にとどまった。
【米朝首脳会談】「あいまい」「ショーは終わり」「不可欠な一歩」 独仏、EUなどの反応は… 2018.6.12 23:34
http://www.sankei.com/world/print/180612/wor1806120159-c.html

写真:会談場所のホテルで笑顔で手を振る北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(左)とドナルド・トランプ米大統領=12日、シンガポール(ロイター)

 ドイツやフランス、インド、パキスタン、欧州連合(EU)、国際原子力機関(IAEA)の米朝首脳会談に対する反応をまとめた。
■フランス「あいまいな内容」
 米朝首脳会談の共同声明について、仏紙ルモンド(電子版)は12日、「朝鮮半島の非核化」の日程が示されず、「あいまいな内容」だと指摘した。トランプ米大統領はこの日の記者会見で、金正恩朝鮮労働党委員長がミサイルのエンジン実験場を近く破壊すると約束したと発表したが、同紙は北朝鮮が5月に核実験場の坑道の爆破を発表した際、「まったく証拠が示されなかった」として実現性に疑念を示した。(パリ三井美奈)

■ドイツ「一歩に過ぎない」
 米朝会談を受け、ドイツ紙フランクフルター・アルゲマイネ(電子版)は12日、「会談の雰囲気をみれば成功」との見方を示す一方、「ショーは終わりだ」とし、「朝鮮半島の平和的な将来への道」への「一歩に過ぎない」と伝えた。
 同紙は非核化や朝鮮半島の将来をめぐっては米朝だけでなく、中国など関係国がそれぞれの思惑が絡むことを踏まえ、「これからの交渉が非常に緊張するのは確実」と指摘。悪化する米欧関係も念頭にトランプ米大統領が功績のため、「同盟国を損なう合意に手を出す」可能性も警戒した。
 DPA通信は金正恩労働党委員長のホワイトハウスへの招待について「孤立した共産主義国家の指導者にとり大きな国際的地位の向上」とし、会談談果は「北朝鮮が超大国の米国と同じ目線に立つことを示している」と伝えた。(ベルリン 宮下日出男)

■インド「前向き」、パキスタン「期待」
 シンガポールでの米朝首脳会談について、インド政府は12日午後にコメントを発表し、「前向きな展開だ。朝鮮半島における平和と安定が永続するため、首脳会談の成果が実現することを願っている」として歓迎する意向を示した。
 また、北朝鮮と関係が深いパキスタンを念頭に、朝鮮半島の非核化が「隣国に(核技術が)拡散するのではないか、という懸念を解消するものになると期待する」とも言及した。
 パキスタンも「地域の平和と安定につながることを期待する」とのコメントを出した。(ニューデリー 森浩)

■EU「重大で不可欠な一歩」
 EUのモゲリーニ外交安全保障上級代表は12日、米朝首脳会談の結果について「重大で不可欠な一歩」と評する声明を発表した。「外交が朝鮮半島の永続的平和への唯一の方法という、われわれの強い信念を再確認した」ともし、米朝首脳会談の実現に尽力してきた韓国の文在寅大統領の「指導力」をたたえた。
 米朝両首脳の共同声明には「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)という文言はなかったが、モゲリーニ氏は「最終目標はCVID」であり、共同声明は「それが達成しうるとの明確なシグナル」と表明。今後の交渉を支援していく用意も示した。(ベルリン 宮下日出男)

■IAEA「いかなる検証活動も引き受ける用意」
 IAEA(本部ウィーン)の天野之弥事務局長は12日、米朝首脳会談を受け、「朝鮮半島の完全な非核化に向けた約束」を含む両首脳の共同声明を「歓迎する」との声明を発表した。
 天野氏は声明で首脳会談の結果の実行に向けた米朝両国の交渉を注視するとした上で、IAEAとしては関係国からの要請に備え、「北朝鮮でのいかなる検証活動も引き受ける用意をしている」と強調した。(ベルリン 宮下日出男)
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【米朝首脳会談】元自衛艦隊司令官・香田洋二氏「壮大な無駄遣いの政治ショー」2018.6.13 07:06
http://www.sankei.com/politics/news/180613/plt1806130003-n1.html

 壮大な無駄遣いの政治ショーだ。共同声明は肝心なところに重しも押さえもない。トランプ米大統領の記者会見も全く得心できる内容ではなかった。トランプ氏は「過去の失敗を繰り返さない」と言ってきたが、同じ線路の上を走っているように見える。5月に訪米した際、多くの安全保障関係者が「大統領の功名心が危険だ」と指摘していた。まさにそうなった印象だ。

 非核化には実施の担保が全くない。拉致問題や人権問題も具体的なものが何もない。一方で北朝鮮は文書で体制保証を取り付け、義務を課せられないまま、米国からの軍事攻撃を相当な期間にわたり回避できることになった。何も失わないで時間稼ぎに成功した。

 北朝鮮はミサイルのエンジン試験場の解体を表明したというが、大陸間弾道ミサイル「火星15」など、配備済みのミサイルはそのままだ。火星15のエンジンテストは終わっており、実験場の解体に意味はない。あれを成果だというのは、正確に現状を理解していないのではないか。核実験場の廃棄も掘っ立て小屋をつぶしただけの子供だましだった。その延長にすぎない。

 トランプ氏は記者会見で将来的な在韓米軍の撤退にも言及した。わが耳と目を疑った。最大の失敗であり、大統領が決して言ってはいけないことだ。東アジアで今後、対中国の戦略を考えないといけないときに、自ら飛車・角を捨てるようなもの。日本にとっても在韓米軍の撤退は絶対に避けなければならない。もう一度、日米でしっかり戦略を整合する必要がある。

 今回の会談で、米国が北朝鮮に軍事力を行使する可能性は遠のいたとはいえる。ただ、北朝鮮の対応がトランプ氏の期待を裏切った場合、また軍事オプションが浮上する可能性はある。トランプ氏は軍事力を使う大統領だ。北朝鮮も高をくくったような対応はできないかもしれない。

 あえて言えば、両首脳に個人的パイプができたのは成果かもしれない。北朝鮮の今後の行動を見極め、必要なら直ちに厳しい態度に出ることが必要だ。事ここに至っては、そう言うしかない。
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