『アッチェレランド』 チャールズ・ストロス (ハヤカワ書房)

最初、アッチェレ-Landなのかと思っていたら、音楽で言う「だんだん速く」という用語(Accelerando:イタリア語)らしい。まさしくムーアの法則。リタルダンド「だんだん遅く」は記憶にあったんだけどね。きっと高校の音楽の試験にでもあったんだろう(笑)
帯にはギブスンとクラークの名前があるが、個人的な感想ではニール・スティーブンスンとグレッグ・イーガンかな。最後の最後で『2001年宇宙の旅』か『幼年期の終わり』かって感じになるけど。あの**がモノリスだったとは(笑)
チャールズ・ストルスのシンギュラリティ物といえば、タイトルずばりの『シンギュラリティ・スカイ』があって、これは空から超越者が降ってきてすべてが変わるというもの。一方、この小説でのシンギュラリティとは、地球上のコンピュータの計算能力が、地球上の人間の計算能力を上回る時点を指し、そこでは人間の精神がソフトウェアとして計算可能になるので、社会が極端に変化するであろうポイントを指す。
さらにそこで面白いのが“人類が地球外知的生命体に出会えないのはなぜか”という回答が得られてしまったこと。シンギュラリティを迎えると、大宇宙に飛び出す暇なんて無いんですよ!
正当性はともかく、その発想は無かったわ的、目から鱗な解釈でワロタ。
とにかく、コンピュータ系、ネット系の小ネタでのくすぐりが多く、訳者の苦労がしのばれる。スラッシュドットなんて、普通のカタギな人は知らないでしょう。正式にはたぶんスラッシュドッテッドで、2chの《祭り》よりも、《さらし上げ》に近いかも。あと、道産子としては、スコットランド訛りが北海道弁で表現されているのも笑える。
そんなこともあって、解説はダンコーガイ(笑)
この人の素性はこのあたりからどうぞ(はてなキーワード>ダンコーガイ)
読んでる分にはムチャクチャ楽しいのだけれど、油断すると話についていけないブっ飛びっぷりなので、電車で読むのをあきらめたら、読み終わるまでに時間がかかりすぎて最初の話を忘れてたり。
いや、まあ、とにかく、サイバーというよりはギーク・パンクで、現代と切り離されたシンギュラリティではなく、現代と地続きのシンギュラリティなバカSFでした。
……で、後は個人的なたわごとなんだけど……。
計算量という量的な問題が、人間の精神をシミュレートするという質的問題を乗り越えられるのかというと、現時点では疑問。もうひとつ、ふたつ、知能や意識に関するブレイクスルーが必要ではないか。どちらかというと、莫大な計算資源とネットワーク化によって、人間以外の新たな意識体が生まれる方が速いかも。(この作品だと、それがネコなのか?)
一方、技術的特異点は計算機工学の発展ではないところからでもやって来そう。たとえば、3Dプリンタとか、ナノアセンブラーとか言われるやつ。幾多のシンギュラリティ物や、スティーブンスンの『ダイヤモンド・エイジ』なんかにも出てくるが、これは万能製造機であって、現代の主要産業である製造業を壊滅させることができる。一方、アセンブラーが行き渡れば、働かなくても喰える社会が出来上がるかもしれない。
まぁ、どちらが先に来そうかといわれれば、どっちもどっちなのかもしれないけどね。

最初、アッチェレ-Landなのかと思っていたら、音楽で言う「だんだん速く」という用語(Accelerando:イタリア語)らしい。まさしくムーアの法則。リタルダンド「だんだん遅く」は記憶にあったんだけどね。きっと高校の音楽の試験にでもあったんだろう(笑)
帯にはギブスンとクラークの名前があるが、個人的な感想ではニール・スティーブンスンとグレッグ・イーガンかな。最後の最後で『2001年宇宙の旅』か『幼年期の終わり』かって感じになるけど。あの**がモノリスだったとは(笑)
チャールズ・ストルスのシンギュラリティ物といえば、タイトルずばりの『シンギュラリティ・スカイ』があって、これは空から超越者が降ってきてすべてが変わるというもの。一方、この小説でのシンギュラリティとは、地球上のコンピュータの計算能力が、地球上の人間の計算能力を上回る時点を指し、そこでは人間の精神がソフトウェアとして計算可能になるので、社会が極端に変化するであろうポイントを指す。
さらにそこで面白いのが“人類が地球外知的生命体に出会えないのはなぜか”という回答が得られてしまったこと。シンギュラリティを迎えると、大宇宙に飛び出す暇なんて無いんですよ!
正当性はともかく、その発想は無かったわ的、目から鱗な解釈でワロタ。
とにかく、コンピュータ系、ネット系の小ネタでのくすぐりが多く、訳者の苦労がしのばれる。スラッシュドットなんて、普通のカタギな人は知らないでしょう。正式にはたぶんスラッシュドッテッドで、2chの《祭り》よりも、《さらし上げ》に近いかも。あと、道産子としては、スコットランド訛りが北海道弁で表現されているのも笑える。
そんなこともあって、解説はダンコーガイ(笑)
この人の素性はこのあたりからどうぞ(はてなキーワード>ダンコーガイ)
読んでる分にはムチャクチャ楽しいのだけれど、油断すると話についていけないブっ飛びっぷりなので、電車で読むのをあきらめたら、読み終わるまでに時間がかかりすぎて最初の話を忘れてたり。
いや、まあ、とにかく、サイバーというよりはギーク・パンクで、現代と切り離されたシンギュラリティではなく、現代と地続きのシンギュラリティなバカSFでした。
……で、後は個人的なたわごとなんだけど……。
計算量という量的な問題が、人間の精神をシミュレートするという質的問題を乗り越えられるのかというと、現時点では疑問。もうひとつ、ふたつ、知能や意識に関するブレイクスルーが必要ではないか。どちらかというと、莫大な計算資源とネットワーク化によって、人間以外の新たな意識体が生まれる方が速いかも。(この作品だと、それがネコなのか?)
一方、技術的特異点は計算機工学の発展ではないところからでもやって来そう。たとえば、3Dプリンタとか、ナノアセンブラーとか言われるやつ。幾多のシンギュラリティ物や、スティーブンスンの『ダイヤモンド・エイジ』なんかにも出てくるが、これは万能製造機であって、現代の主要産業である製造業を壊滅させることができる。一方、アセンブラーが行き渡れば、働かなくても喰える社会が出来上がるかもしれない。
まぁ、どちらが先に来そうかといわれれば、どっちもどっちなのかもしれないけどね。