神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] 始まりの母の国

2012-05-13 23:55:17 | SF
『始まりの母の国』 倉数茂 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)






女性だけが暮らす国があった。彼女たちは単為生殖で娘を成し、母となった。その国に一人の男性が流れ着いたところから物語は始まる。

語り口はスムーズで、物語も面白くないわけではないのだけれど、なんだかどこかで聞いたような話、ありがちな結末。

アイディアはよく練られていると思うのだけれど、それが物語に入ってきていないのが残念。そもそも、この物語は何を意図したものだったのか。

素直に読むと、男性の粗暴性と権力欲をデフォルメして見せただけのように見えてしまう。しかし、今さらそんな物語を書いてどうしようというのか。

物語の途中に出てくる木守たちは重要な役回りを担うはずだった。彼女たちは、女たちが暮らす国からドロップアウトした者たちだが、その理由は、単一性、完全性を満たすもの以外を求めない文化からの脱出だった。つまり、単為生殖によって生まれた子供が奇形だった場合に、その存在を排除するのかどうか。

単一遺伝子の群れは、外乱に弱い。たとえば、伝染病が発生した場合でも、遺伝子が近いもの同士は抵抗力にほとんど違いが無く、一気に群れごと全滅してしまう可能性がある。

単為生殖による遺伝子の画一化を是とするべきか、奇形児も含めた多様性を維持するべきか。そこに隠されたテーマを作るべきだったのではないか。特に、前半で主人公の娘(養女)が伝染病に倒れるエピソードは、その方向への伏線に充分なものだったはずだ。

しかし、支配欲に狂った男たちの軍隊が女たちの国を蹂躙し、女たちの逆襲に合って撤退する。その物語が主体になり、女から見た男の怖さだけがクローズアップされてしまう。

その物語の中では、木守たちは女軍の別同部隊を道案内するだけにとどまり、戦いの表舞台には現れることはない。

流れ着いた船の羊から感染が始まった伝染病は、主人公の娘の命を奪っただけにとどまり、女にも男にも大きな被害を与えず忘れ去られる。

始まりの女の庭は、惑星移民船を思わせる伝説と、科学的に説明のつきそうな亡霊をは孕みながらも、すべての謎は覆い隠されたまま、チラリとも見えない。

そんな感じで非常に期待倒れな作品。どんどん深くSF的な考察できるポイントがあるにも関わらず、著者自身が気づいていないのか、力量が追いつかなかったのか、なんとも残念な結果になってしまっている。


[SF] リライト

2012-05-13 23:26:35 | SF
『リライト』 法条遥 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)





『時をかける少女』へのオマージュがいっぱいの青春タイムトラベルSF。と思いきや、叙述トリックあり、信じられない語り手ありの底意地の悪いミステリー。

1992年と、2002年の物語が交互に語られるのだけれど、その中に矛盾点やおかしなことがたくさん。読者はそれらを手掛かりに、本当にタイムトラベルはあったのか、あの夏に起こった出来事はなんだったのかを探らなくてはいけない。

最終的に明らかにされる結末は、それらの矛盾点や謎をきれいに説明する鮮やかなものだったが、ちょっと無理矢理過ぎな感じで、いまひとつ。

そして、なぜそれらの矛盾が発生したのかという理由と、殺人事件の謎が組み合わさったとき、そこに見える動機を悍ましいとみるか、馬鹿馬鹿しいとみるか。

個人的には、40人分の夏という結末の時点で「そんな馬鹿な」と思ってしまったので、未来人が囚われしまった動機についての方が印象が薄くなって、あまり衝撃を受けなかった。残酷な、とか、悍ましいといった形容は、ほかの紹介や感想からの借り物。

確かによく考えると、怖い話ではあるんだけれども。


そんなことより、何も矛盾が発生しなかった、つまり、10年前の主人公が10年後の家に携帯電話を取りに来たとして、本当に矛盾がないのかという辺りの方が気になっていた。その携帯電話は、10年後の主人公のものではなく、10年前にタイムトラベルで手に入れたものだ。だとすると、その携帯電話はいったいどこから来たのか。明らかに矛盾である。いわゆる閉じた輪のケースによるタイムパラドックス。

未来人のわざとらしさや、過剰なまでの「時をかける少女」へのオマージュから、実はタイムトラベルは無かった説が自分の中では主流だったんだよね。ほら、記憶を上書きする装置も登場していたじゃないか。MIBみたいなやつ。

なので、タイトルの『リライト』も記憶のリライトを示していて……みたいなことを考えていたのだけれど、すべて外れました。

……いや、やっぱりこの結末は、想像を超えて斜め上だわ。

[コンサ] 2012 J1 第11節 札幌 vs 東京

2012-05-13 22:13:26 | コンサ
2012年 J1 第11節 コンサドーレ札幌 0-1 FC東京 @スカパー


やっと1勝を上げたものの、アウェイで横浜に負け、最下位脱出は遠く。ホームに戻ってきての東京戦。

FC東京は昨年J2最終戦で気持ち良く勝って昇格を決めた相手だ。しかし、天皇杯を制してACLにまで参加しているFC東京と札幌の差は大きい。そう簡単に勝てる相手ではない。



と思ってはいたもの、まさかの54秒で失点。まさに秒殺。あんな形のゴールを決められるなんてめったにないだろう。またもやアクシデント的な失点で先制されてしまう。

日高の転倒がきっかけに見えるが、転倒しなくても結果は同じだったかも。しかし、この試合、なんとなく札幌も東京も転ぶ選手が多かったように思う。水撒いてたりしたのか。

その後も東京にボールを回されるが、カウンターからのチャンスもあってシュート数は互角。前半30分ごろなんて、シュート数は6-3で札幌の方がダブルスコアで優っていた。

本当に惜しいシーンが続く。河合のゆるゆるシュート、古田のゴール前1対1、岩沼が駆け上がってきての強烈なシュート。どれも綺麗に決まっていてもおかしくないシーンだった。

とにかく権田が邪魔。こんな試合で当たりまくらなくてもいいのにと思うほどの大当たり。いつもは枠内にいかないシュートも、この試合では枠内に行く回数が多かったが、結局すべて権田にはじき返されてしまった。

後半になっても互角の勝負だった。ショートパスを回すFC東京、プレスからこぼれ球を狙って速い攻撃を仕掛ける札幌。それも、カウンター一発というよりは、前田のキープからボールを左右に振ってビルドアップできていた。

逆に札幌が攻め込んで東京がカウンターみたくなるシーンもあったが、ショートパス主体なのでカウンターになりきらない。ある意味、守りやすく、札幌にとってはラッキーだった。

終了間際には大島をトップに、榊、内村をシャドウに置く、3-4-3のような形でロングボールからの局面打開を狙ったが、残念ながら不発に終わり試合終了。この形の練習ができてるのかどうかという疑問はあるが、勝ちたいという監督や選手の気持ちは伝わってきた。

そんな感じでお互いに攻め合ったものの得点は奪えず、開始直後の失点が響いて0-1での負け。ホーム連勝はならず。まぁ、ほら、厚別じゃなくてドームだったから……。



それにしても、1点差負けという惜しい試合が多すぎる。まったく歯が立たずにぼろ負けした試合は少なく、もうちょっとが足りない試合ばかり。それだけに、大きく何かを変えることができない。

何が悪いということもなく、とにかくプレー一つ一つの精度の問題としか言いようがない。そして、それは一朝一夕に身に付くものではないのだから、地道に成長していくしかない。

このメンバーでJ1は難しいと、開幕前から言われているのは知っているが、金がない以上、このメンバーで愚直に頑張るしかない。それでだめならば、J2に戻るだけだ。

それにしても、鳥栖はなんであんなに勝てているんだろうか。まったく不思議なことだ。