『始まりの母の国』 倉数茂 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
女性だけが暮らす国があった。彼女たちは単為生殖で娘を成し、母となった。その国に一人の男性が流れ着いたところから物語は始まる。
語り口はスムーズで、物語も面白くないわけではないのだけれど、なんだかどこかで聞いたような話、ありがちな結末。
アイディアはよく練られていると思うのだけれど、それが物語に入ってきていないのが残念。そもそも、この物語は何を意図したものだったのか。
素直に読むと、男性の粗暴性と権力欲をデフォルメして見せただけのように見えてしまう。しかし、今さらそんな物語を書いてどうしようというのか。
物語の途中に出てくる木守たちは重要な役回りを担うはずだった。彼女たちは、女たちが暮らす国からドロップアウトした者たちだが、その理由は、単一性、完全性を満たすもの以外を求めない文化からの脱出だった。つまり、単為生殖によって生まれた子供が奇形だった場合に、その存在を排除するのかどうか。
単一遺伝子の群れは、外乱に弱い。たとえば、伝染病が発生した場合でも、遺伝子が近いもの同士は抵抗力にほとんど違いが無く、一気に群れごと全滅してしまう可能性がある。
単為生殖による遺伝子の画一化を是とするべきか、奇形児も含めた多様性を維持するべきか。そこに隠されたテーマを作るべきだったのではないか。特に、前半で主人公の娘(養女)が伝染病に倒れるエピソードは、その方向への伏線に充分なものだったはずだ。
しかし、支配欲に狂った男たちの軍隊が女たちの国を蹂躙し、女たちの逆襲に合って撤退する。その物語が主体になり、女から見た男の怖さだけがクローズアップされてしまう。
その物語の中では、木守たちは女軍の別同部隊を道案内するだけにとどまり、戦いの表舞台には現れることはない。
流れ着いた船の羊から感染が始まった伝染病は、主人公の娘の命を奪っただけにとどまり、女にも男にも大きな被害を与えず忘れ去られる。
始まりの女の庭は、惑星移民船を思わせる伝説と、科学的に説明のつきそうな亡霊をは孕みながらも、すべての謎は覆い隠されたまま、チラリとも見えない。
そんな感じで非常に期待倒れな作品。どんどん深くSF的な考察できるポイントがあるにも関わらず、著者自身が気づいていないのか、力量が追いつかなかったのか、なんとも残念な結果になってしまっている。
女性だけが暮らす国があった。彼女たちは単為生殖で娘を成し、母となった。その国に一人の男性が流れ着いたところから物語は始まる。
語り口はスムーズで、物語も面白くないわけではないのだけれど、なんだかどこかで聞いたような話、ありがちな結末。
アイディアはよく練られていると思うのだけれど、それが物語に入ってきていないのが残念。そもそも、この物語は何を意図したものだったのか。
素直に読むと、男性の粗暴性と権力欲をデフォルメして見せただけのように見えてしまう。しかし、今さらそんな物語を書いてどうしようというのか。
物語の途中に出てくる木守たちは重要な役回りを担うはずだった。彼女たちは、女たちが暮らす国からドロップアウトした者たちだが、その理由は、単一性、完全性を満たすもの以外を求めない文化からの脱出だった。つまり、単為生殖によって生まれた子供が奇形だった場合に、その存在を排除するのかどうか。
単一遺伝子の群れは、外乱に弱い。たとえば、伝染病が発生した場合でも、遺伝子が近いもの同士は抵抗力にほとんど違いが無く、一気に群れごと全滅してしまう可能性がある。
単為生殖による遺伝子の画一化を是とするべきか、奇形児も含めた多様性を維持するべきか。そこに隠されたテーマを作るべきだったのではないか。特に、前半で主人公の娘(養女)が伝染病に倒れるエピソードは、その方向への伏線に充分なものだったはずだ。
しかし、支配欲に狂った男たちの軍隊が女たちの国を蹂躙し、女たちの逆襲に合って撤退する。その物語が主体になり、女から見た男の怖さだけがクローズアップされてしまう。
その物語の中では、木守たちは女軍の別同部隊を道案内するだけにとどまり、戦いの表舞台には現れることはない。
流れ着いた船の羊から感染が始まった伝染病は、主人公の娘の命を奪っただけにとどまり、女にも男にも大きな被害を与えず忘れ去られる。
始まりの女の庭は、惑星移民船を思わせる伝説と、科学的に説明のつきそうな亡霊をは孕みながらも、すべての謎は覆い隠されたまま、チラリとも見えない。
そんな感じで非常に期待倒れな作品。どんどん深くSF的な考察できるポイントがあるにも関わらず、著者自身が気づいていないのか、力量が追いつかなかったのか、なんとも残念な結果になってしまっている。