神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] 冷たい方程式

2012-05-27 23:14:40 | SF
『冷たい方程式』 トム・ゴドウィン 他 (ハヤカワ文庫 SF)




タイトルだけでもやたらと有名な、あの「冷たい方程式」を含む短編集。

もともとは〈SFマガジン・ベスト 1〉として出版された短編集の新版という触れ込みなのだが、旧版に収録されている作品は表題作のほかは1篇だけというまったくの別物。

1950年代から60年代初めの、SF黄金期の名作を集めた短編集なのだけれど、現代から見て古びてしまった作品は敢えて削除しているとのこと。

たしかに、コンピュータがカチカチとリレーの音をたて、表示はアナログメーターとランプで、出力はリールテープであっても、テーマ性や物語は全く古びていない作品が並ぶ。こういうものを読むと、SFの魂みたいなものは、昔から変わっていないんだなと実感する。

テーマ的には、後の作品にパクられたりインスパイアさせたものも多いが、オリジナルの持つ力は健在で、新鮮味を失われていない。逆に、これぞ原典という古びなさをしっかりと感じ取れる作品ばかりになっている。

温故知新という言葉があるが、まさしくそのために現代に復活したアンソロジーと言えるんじゃないだろうか。




「徘徊許可証」 ロバート・シェクリイ
地球から遠く離れた惑星で営まれていたユートピア。そこに、戦争に明け暮れた地球からの指令がやってくる。犯罪さえも含む文化とは何かという皮肉がよく利いている。

「ランデブー」 ジョン・クリストファー
SFというよりはファンタジック・ホラーなのだけれど、理屈の組み立て方がうまいミステリになっている。

「ふるさと遠く」 ウォルター・S・テヴィス
これって、タイトルに二重の意味があるのだよね。ふるさと遠く離れたアリゾナに出現した鯨。そして、それが可能であると知った少年は、やはり、ふるさと遠く離れたどこかへ……。

「信念」 アイザック・アシモフ
旧版から再録された数少ない作品のひとつ。“科学”とは何かということがわかりやすく明確に書かれている。放射能やら電力不足やらにおびえる現代の日本人こそが読むべき作品。

「冷たい方程式」 トム・ゴドウィン
かの有名な悲劇的作品。このシチュエーションで、何かうまい解決方法がないものか、SF作家もSFファンも、これまで何十年も考え続け、これから何十年も考え続けるだろう。

「みにくい妹」 ジャン・ストラザー
今、明かされる! シンデレラの真実! 笑っていいものかどうかがよくわからない。

「オッディとイド」 アルフレッド・ベスター
すべてが自分の思い通りにできる人物にとっても、深層意識(イド)はどうにもならないということ。要するに性悪説なんだけど、妙に説得力がある。他の同様作品と違って、本人に悪気がないどころか、本人は気づいてさえいないというところがポイント。

「危険! 幼児逃亡中」 C・L・コットレル
これも同様作品が多いが、強力な超能力を幼児(といっても、この作品では8歳)が持ってしまったら。ひとつ前の作品との相乗効果で、この悲劇的結末が正当化しないわけにはいかない。サンデル先生にも聞いてもらいたい正義の話。

「ハウ=2」 クリフォード・D・シマック
デアゴスティーニ商法の話かと思いきや、大きく世界を変えるかもしれないロボットたちの話。法廷でのピンチを切り抜けるドタバタ・コメディがメインなのだけれど、SFとしてはその先の未来がどうなっていくのか、いろいろ議論の余地があり、そこが面白いところではないかと思う。



[コンサ] 2012 J1 第13節 札幌 vs 広島

2012-05-27 18:27:31 | コンサ

2012年 J1 第13節 コンサドーレ札幌 0-1 サンフレッチェ @スカパー


前節の0-7という歴史的大敗が、ある種のカンフル剤になってくれないだろうか。多くのサポーターがそう願いながら迎えたこの日の試合は聖地厚別でのホームゲーム。

札幌は雨の予報を覆す晴天。雲ひとつ無いとはいかないまでも、大きく青空が広がる気持ちのいい天気になった。

しかし、風が強い。この風を味方につけられれば勝機はある。それがあってこそのホームアドバンテージだ。


前半は追い風でキックオフ。

パスで攻撃を組み立ててくる広島にボールを回される。そこに果敢にプレスをかける札幌という図式。どれだけ回されても、ペナルティエリアまで入れさせなければ、どうということはない。

そんな中、オープニングシュートは近藤の追い風に乗った長距離砲。まず、近藤が一発撃つ。これは去年っぽくていいかも。

しかし、前半21分という早めの時間帯に、河合が中央でボールを奪われ、そのままカウンターで失点。河合はその後も危険なパスミスを繰り返したり、いまひとつ調子が出ない感じ。いったいどうした、キャプテン。

失点直後には隙をついて、今日は左SBの高木純平がサイドから広島のDFライン裏に抜け出すも、キーパーに引っかかって転倒。しかし、どういう判定かPKなし。シミュレーションなら高木にイエローカードのはずだし、故意でなくとも、相手選手をひっかければファールはファール。

この試合の主審は飯田淳平だが、この人、PR(プロフェッショナルレフェリー)で、国際主審なんだよね。それが、サッカーのルールを知っているのかどうかわからないくらいの判定ってひどすぎる。他のプレーでも、ファールの基準が曖昧な感じ。

しかも、純平は痛めている膝をさらに捻ってヤバい感じ。これ以上のけが人は、本当に勘弁してほしい。

そんなこんなで、おいおいどうなってんだよと思っているうちに、ロングボール一発からあっさり2失点目。観客が騒いでいたって、集中力切らしてんじゃないよ。

古田のFKなど、得点チャンスはあったものの、完全に広島ペースで前半0-2。

鹿島戦後に何か変わったかと言えば何も変わっていない。返って、悪い方にターンしてしまった。せっかく1点差ゲームで惜しい惜しいと言っていたのに、今後は大差負けばっかりになってしまうんじゃないか。


そんな危惧も、後半5分、内村のゴールで一気に雰囲気が変わる。エースストライカーが遂にゴールゲットし、そこからは札幌ペース。内村、大島、近藤が絡んで、広島のゴールを何度も脅かす。

しかし、それも後半20分ごろまで……。札幌の勢いは徐々になくなり、スタミナ切れが目立ち始める。

そして、FKから壁の隙間を通されて3失点目。近藤とノースが壁の中で向き合ってキャイーンのポーズ。その腰が引けた腹と腹の間をボールが通過。あんなとこ、狙って通せないだろう。とはいえ、壁に隙間をつくっちゃ壁の意味がない。

その後は気力も切れて、まったくボールを奪えなくなり試合終了。7失点は伊達じゃなかった。返って、今まで完全に力負けしてても1点差が続いたのが奇跡だったのだ。


今日は試合後のコールリーダーの表情がすべてだった。周囲から罵声が飛ぶ中、後頭部に手をおき、言葉が出てこない。いつもは負けた試合の後でも選手たちを鼓舞していた彼の、涙をこらえている表情。

また負けたか、仕方ないなと、ちょっと諦めにもにた感じで悔しさもあまりなかったのだけれど、あの様子を見ている間に、こちらもだんだん泣きそうになってきた。やっぱり悔しい。情けない。

試合データでは、シュート数は札幌 9-11 広島。完敗とは程遠いが、実際には完全に試合を支配された完敗。攻撃では縦に入れるボールがことごとくパスミスとなってしまい、それを恐れて後ろでボールを回すだけ。守備ではカウンターで人を捕まえきれず、フリーの選手を作ってあっさりと失点というシーンを繰り返す。

後半開始から20分間だけが札幌の時間帯。ここでのサッカーを90分間続けられることが最初の課題。あとは、相手の時間帯で、どれだけミスを少なくすることができるか。

怪我人が相次ぎ、怪我人だけでスタメンが組めそうなくらいの状況下では仕方がないとはいえ、今後の試合をどうやって戦っていくのか。3週間の中断後には復帰してくる選手もいるだろうから、彼らに期待するしかない。しかし、一人二人、選手が入れ替わっても、大きくチームが変われるのかどうか。

高柳、山本、前田と、J1で戦うために補強した選手たちが相次いで故障し、残っているのは、去年のJ2で3位というギリギリの選手たちと、10代のルーキーばかりだ。それでも、コンサドーレ札幌はこの選手たちで戦っていくしかできない。すべては貧乏が悪いのだけど。

「どんなに苦しくても、ここにいるすべての仲間を信じろ!」

とにかく、今はそれしかない。


[映画] ロボット

2012-05-27 17:31:23 | 映画
ロボット - goo 映画


(C)2010 SUN PICTURES, ALL RIGHTS RESERVED.


スーパーエキセントリックSF超大作マサラムービーとの触れ込みで日本上陸を果たしたインド映画。キワモノかと思いきや、これがものすごく面白かった。

マサラムービーの特徴である、脈絡なく突然始まるダンスシーンは大幅カットされているとはいうものの、思っていたよりもまともな映画でびっくり。というと失礼か。すみません。

冒頭の3Dはなかなかの力の入れようで、日本やアメリカの映画と大差ない。それどころか、それ以上かもしれない。しかし、冒頭の博士の研究室のシーンでは、香港映画みたいなわざとらしい演技や、見え見えのロープアクションに失笑。やっぱりそういう映画なのかと思っていたら……。

『ムトゥ 踊るマハラジャ』で日本でも有名なインドのスーパースター、ラジニも50過ぎのおっさんになってしまっていて、ロボット役にはちょっとどうか。なんて、そんなことはない。このロボット、石黒博士のジェミノイドじゃないか。見た目おっさんで、生みの親の博士のコピーだ。この映画のスタッフ、絶対にyoutubeとかでジェミノイドを見ているだろう。

で、このロボットのチティ、フレーム問題に苦しんだり、人間の感情を理解しようと悩んだりと、正統派なロボットSFのテーマをちゃんと取り入れている。

ロボット3原則がなんだ、あんなの邪魔なだけだ、的な言説はSFファンには賛否分かれるだろうが、そこにちゃんと言及していることだけで好感が持てる。

さらに、ロボットが感情を持つなんて、奇跡でもなければ起こるわけないよとばかりに、雷が落ちたことによって感情を持つにいたるのだ。いやー、この展開は、どう考えてもスタッフにロボットSFオタクがいるだろうと思わせる程度に、お約束にはまりすぎ。

そして、博士の恋人に愛情を向けるものの、やっぱりフレーム問題と共感の問題を解決できずにあえなく廃棄処分に。

後半は悪の科学者によって廃棄物処理場から回収され、復活した悪のロボットが悪の科学者を殺し、博士の恋人をさらい、傍若無人に動き出す。

そこから先は、どちらかというとSF映画のパロディ連発。『ターミネーター』に『スターウォーズ』に、もちろん、『アイ,ロボット』も。

カーアクションシーンでは、車体に空いた穴がどう見てもステッカーだったり怪しいシーンもあるのだけれど、完全にハリウッド張りのアクションシーンが続く。

そして圧巻なのが、ロボットたちが組体操のように組み合わさって巨大なロボットや蛇になって襲ってくるシーン。その発想はなかったわ(笑)

後発であるが故の発想の斜め上加減が、しっかりしたSFX技術に支えられて映像化されたという、このヘンテコで素晴らしい戦闘シーンは必見だ。

最後は悪魔チップを抜かれたチティが正気に戻り、犯した罪の大きさを認め、自分自身を解体していく。このシーンもなかなか泣ける。

マサラムービーということで、ダンスシーンやぶっ飛びのストーリーを楽しみに見に行ったのだけれど、驚くほどまじめなSF映画だった。スタッフにSF好きがいたんだろうな。日本ではSF映画と言えば、大作になればなるほど、まったくもって、噴飯物の映画が多いのに、インド映画はすごい。

大笑いしようと見に行ったのに、ほんと、すみませんでした!