家庭、職場、専門性、教科書と自らが限定すればするほど、学習の関連性が分断され、相互関係の複雑さを徐々に産むことになります。とはいっても、学習する場は主として家庭にあるので、一ヶ年近くも緊張を保つことは大変なことです。いかにして、少ない努力で最大の効果を生むか、つまり、決められた期間の中でしかるべき課題を履修し、資格を取得するか、いくつかの気のついた点を述べてみますと、まず、資格試験で試されることの中に、その職種を規定する法規があります。もちろん、安全衛生を含めますが、いくら技能が高く、高度の技術力を持ったとしても、法規つまり、ルールを逸脱していては技能士として失格です。次に、原因と結果とを理解していることです。物事には全て原因があり、正常に作動していた機械や現象が、突然何の理由もなく止まったり、壊れたりすることはありません。全ての現象は何らかの原因と結果とがあります。
技能士試験の学科では、作業の標準的な仕様、使用材料、作業方法が原因と結果の集約として理解されているかが試されます。通信訓練では面接試験で代替えされますが同様です。技能士試験の目的は、試験内容を難しくした入試試験のような選抜試験ではありません。技能の水準を全国的に高め、技能者としての自覚と埃を与えるための資格制度です。
もう一つ大切なことがあります。それは、全ての職業は効率を求め、より安く、早く品質を良くという原則があることです。このことを原点としてしっかり押さえておき、迷路に入って出口を見いだせないときには、原点に帰ると良いでしょう。この他にも多くの要素があると思います。物事には必ずポイント(へそ)があります。どの蛇口をひねればどんな水が出るのか、自分の希望する色の水はどの蛇口か、選択できるためには、関連する内容を出来るだけ多く知り、判断力を養うことが大切でしょう。また、扇には要(かなめ)がついています。学習する際にも要を見落とさないことが大切です。教材の要を発見し、正しく理解することが出来れば、資格が手中に入ったと言っても良いでしょう。教材の持つ限られた条件を如何にカバーするか、また、如何に利用するかは学習する側の立場によって、相当変化することがお解りいただけたでしょうか。教材の持つ一面性についてではありましたが、制作者側の意図を知ることの何らかのお役に立つと思い執筆致しました。(このシリーズ最終回です)