我が国職業訓練関係者の目が、現在ほど開発途上国に対し、広く注がれている時代はない。その中でも、アジア太平洋地域は、地理的にも文化的にも我が国とは親近性の高い地域であり、この地域の諸国との協力活動は今後一層強まるモノと思われる。本稿では、この地域の諸国間の協力組織として成立しているAPSDEP(アジア太平洋地域技能開発計画)の概要とその中での我が国の果たしている役割を紹介することとしたい。本稿は28年前の専門誌に掲載したモノであるが、ASEANと太平洋地域のニーズに対応した組織活動の一端を紹介する。
1.APSDEPの沿革
APSDEP(Asian and Pacific Skill Development Programme)は、1979年に国際労働機構(ILO)および国連開発計画(UNDP)の協力の下に設立され、その事務局をパキスタンのイスラマバードに置いている。現在は、パキスタンの政変後にタイのバンコックへ移転している。設立当初はARSDEP(アジア地域技能開発計画)と呼ばれていたが、1980年12月に太平洋地域の諸国が参加したことによって、現在の名称に改められた。
APSDEPの設立は1971年9月、韓国のソウル市で開催された第1回のアジア労働大臣会議の要請に源を発している。その要請とは、職業訓練に関する情報及び専門的知識を収集・分析・提供する地域的な機構が必要であるので、そのための地域計画について、ILOが技術面及び財政面から、その実行可能性を調査し、各国政府の意向を打診することを内容とするものであった。
この要請を受けてILOは、UNDPの協力の下に、フィジビリティスタディを実施し、その結果、この計画に対し、広範な指示があり、関係国政府はその実施に協力する意思のあることが確認された。(次回へ続きます)